2020.10.26

夫婦関係を理解する

私たちは夫婦の関係を他の人間関係とは異なる「特別な関係」としてみています。私たちは結婚し夫婦になろうとする時、大きな期待を持っていますが、それが叶わなかったとしたらそれだけ大きな失望や落胆を感じます。夫婦関係は家族の基盤となる関係ですが、親子の関係ともさまざまな点で異なります。また、恋人関係、友人関係とも異なります。そのような意味で夫婦という関係には独自性があると言えます。それでは夫婦という関係にはどのような独自性があるのかについて見ていきましょう。
当たり前のことですが夫婦という関係には血の繋がりはありません。お互いに相手を選ぶことによって結ばれる社会的な関係です。本当は他の人が好きだった、親に勧められたから、という事情があったとしても、結婚することを選んだのは自分自身であり、責任は自分にあると見なければなりません。

パートナーを選ぶ際に「この人と結婚したら幸せにしてくれるだろう」という期待を持っていた場合、期待通りにならなければ責任のすべてを相手に感じるかもしれませんし、他に「幸せにしてくれそう」な人を探すかもしれません。
このように夫婦は親子とは違い相手を選択して築く関係ですので、逆に解消することもできる関係です。夫婦の間で葛藤や問題が生じれば、それが関係を解消する原因になることもあります。それだけ夫婦の関係は不安やストレスを他の人間関係以上に感じさせるものです。二人の関係を続けるためには、時に葛藤や問題を感じることがあっても、その都度関係を維持していく意思とそれを可能にするコミュニケーションのスキルが必要です。
一昔前までは結婚は家と家の結び付きと考えられてきましたが、近年では個人と個人の結び付きとして考えられるようになってきました。パートナーを選んだ責任は自分にありますが、夫と妻の背景にはそれぞれの家庭で育った家族の歴史や文化、価値観、夫婦や家族に対するイメージや理想、日常的な習慣などがあります。つまり、結婚とは個人という枠を超えた異なる二つの家族が繋がることと考えることができます。
生まれ育った地域や国が異なれば、文化や生活習慣、家族に対するイメージなどは異なるという心構えがあるかもしれません。しかし、地域や国に関わらず、育った家が異なるという時点でそこには様々な文化や生活習慣、家族に対するイメージが存在するのです。恋人時代には見えてこなかったことが、結婚生活を送る中で初めて見え、衝撃を受けることも時にはあるでしょう。
夫婦の関係においては夫と妻という関係がありますが、必ずしもそれだけの関係とは限りません。夫は子どもがいれば父親であり、実家に変えれば息子で、兄弟がいれば兄や弟になり、会社に務めていれば会社員です。妻も同様に母親であり、娘であり、姉や妹であり、会社員であると言えます。
したがって親という役割で見れば、子育てをめぐって意見が衝突することがあるかもしれません。また実家との関係で言えば年末年始やお盆はどちらの家に帰るかをめぐって喧嘩になるかもしれません。さらに会社どの仕事の負担が大きく帰宅時間が遅くなる日が続くかもしれません。このように、夫婦にはさまざまな人間関係の中でになっている役割がたくさんあり、いずれかの役割がストレス源となって夫婦の関係を脅かすことも十分起こり得ます。お互いに相手の状況や立場をよく理解しておくことも必要になります。
私たちがパートナーとどのような関係を築いていくかということは、実は子どものころからの養育者との関係の中で体験したことに強く影響を受けています。自分の父や母との関係、両親の夫婦関係などから私たちは夫婦や家族のイメージを作り上げ、それをもとにパートナーと関わります。子どもの頃親との関係が良好ではなかったから必ずマイナスに働くというような単純なことではありません。

例えば、ある夫婦はともに親が専業主婦でした。夫の父親は非常に亭主関白で母親は黙って従順にしてきた人でした。その姿を見てきた夫は結婚したら自分が働いて、妻には仕事はせず専業主婦になってもらおうと考えていました。一方妻は母親から「これからの時代、女性も自分で稼げるようにならないといけない」と言われていたので、子どもができても働き続けようと考えていました。新婚生活は上手くいっていた夫婦でしたが、この夫婦に子どもが生まれると、妻が仕事を続けるか、専業主婦になるかをめぐってたびたび口論するようになりました。夫は父親に服従してきた母親の寂しさや悲しさを理解していなかったのかもしれませんし、妻は母親から父親の不満や恨みを感じていたのかもしれません。
したがって、夫婦の関係が上手くいっていないとき、どのような子ども時代を過ごして何を体験してきたのか、親との関係がどのようにして心の中に生き続けているのか、どのような価値観を身に着けてきたか理解すると、その謎が解けることがあります。アメリカの家族療法家のフラモは「夫婦が離婚を考えているとき、本当に別れるべきなのはパートナーではなく、心の中に生き続けている親であることがしばしばある」と指摘しています。
カップル・セラピーでは、夫婦は基本的に自分と同じくらいの心理的な成熟度の人をパートナーとして選択すると考えられています。しかし一見すると成熟度の高い人と低い人が一緒になっているように見えることも少なくありません。これは、男女の違いや問題に対する見方、自尊感情の程度の違いが関係しています。これはまた機会が会った時にお話したいと思います。
カップルが出会った時、さまざまな理由でお互いに魅力を感じ引く付けられ、結婚を決意します。しかし、魅力に感じていた部分が元が不満に変わるという皮肉が生じることは少なくありません。

例えば、パートナーの男性を頼りがいのある自信に満ちた男らしい人だと魅力を感じていたとしましょう。しかし、結婚をすると次第にパートナーが自分の気持ちに共感してくれない強引な人と感じるようになるかもしれません。一方、男性の方も女性が自分が頼ってくれるとことにひかれて結婚したはずなのに結婚後は依存的で子どもっぽいと疎ましく感じるかもしれません。
これは一例に過ぎませんが、共通しているのはもともとパートナーの魅力と思っていた面が、結婚後本人も気がつかないうちに不満の種になっているということです。そして、それはパートナーが結婚してから変わってしまったからだと思っていることが多いのです。そうすると、パートナーを変えようと努力します。しかし、実際にはパートナーが変わったのではなく、自分自身の見方が変わってしまったために不満に感じていることも少なくありません。パートナーをまず変えようとせず、自分のパートナーに対する見方や期待を見直し、自分自身の関わり方を変える努力をしてみましょう。
上の表はパートナーに魅力を感じている時と不満に感じている時の違いを表しています。これらはいずれもある特徴をプラス面から見た時とマイナス面から見た時の違いで、同じものを見ているのです。あなたはどのようにパートナーを見ているでしょうか?
夫婦という関係は「独自性のある」特別な関係です。いかに独自性があるのかお話しました。こうした夫婦の特徴を知ることが、夫婦の関係について考える大切な一歩になります。
参考書)野末武義著「夫婦・カップルのためのアサーション」

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