2021.02.15

統合失調症の3つの時期

統合失調症をご存知でしょうか?

統合失調症を含むこころの病気の治療では、「リカバリー」という考え方が注目されています。リカバリーには「回復」「改善」「取り戻すこと」という意味があります。単に「症状がなくなることを目指す」という一元的な見方ではなく、周囲のサポートを受け、薬を使いながら、自分らしく生活できることを目指すということを表しています。リカバリーが注目されたのは「自分らしく生きる」ということが、こころの病気がある人やその家族にとっては、とても難しいという現状があるからです。これは統合失調症に対して誤解されている部分が多いことが一つの要因です。

今回は統合失調症の3つの時期の症状についてお話します。
統合失調症は慢性の病気です。回復への道はゆるやかで個人差が大きいうえに、病気の時期によって、症状がかなり異なります。そのため、本人がつらいこと、家族が困ることは時期によって変わります。
発症直後、神経の興奮が激しい時期です。精神的に興奮しやすかったり、落ち着きなく動き回ったりします。幻覚や幻聴、妄想などの症状が現れます。

多くの場合、発症の前に不眠などの前兆があります。周囲の人は「なんとなくおかしい」と思っていたところ発症し、驚いてしまいます。
●幻覚や妄想に悩まされます。
自分の中から様々な声が聞こえ、行動を監視されたり、命令されたりするなどの症状がみられます(幻覚・幻聴)。「死んでしまえ」など自分を脅かす内容の声が多く、実際に痛みを感じる場合もあります。また、「やくざに狙われている」「悪の組織が自分を監視している」などの思い込みが生じることもあります(妄想)。身の回りの些細なことを、すべて自分に関係があることと解釈し、不安を強めてしまいます。

●否定的な内容の妄想が多く、強い不安にさいなまれます。
妄想は本人にとっては非常に現実的であるため、不安もそれだけ強いものです。妄想を自分でそんなはずはないと否定することも難しく、消えることはありません。

●周囲が症状を理解せず、孤独を感じる
発症直後は、家族も病気の知識がありません。そのため、苦しさや不安を分かってもらえない、自分にとっての現実を否定されるなど、孤独を感じる場合があります。
●何がなんだか分からない
症状が身体の不調として現れないため、初期には周囲の人が「病気」とは思わない場合もあります。本人の様子がいつもとは違うことは分かりますが、言動があまりにも突飛なので、つい否定したり、説得したりしてしまいます。

●突然の症状にどう対処していいか分からない
「なんとなくおかしい」とは感じていたものの、突然の症状に家族は戸惑います。その戸惑いから「そんなことあるわけないでしょう」「馬鹿な事いわないで」と否定したり、「気の持ちようだ」「しっかりしなさい」と説得したりする場合も少なくありません。

●予期せぬ事態に恐れを抱く
「なぜこんなことに」「あれがいけなかったのではないか」と思い悩みます。
休息にエネルギー不足に陥り、回復には時間がかかります。幻覚や妄想などの症状は治まりますが、元気が全くなくなってしまいます。
●つらくて何をする気も起きません。
「やらない」のではなく「できない」状態です。感情の起伏が乏しく、口数が少なくなり、外出しようとしません。疲れやすく、本人もなぜこんなにも動くことができないのか歯がゆさを感じます。

●何を見ても心が動きません。
体力も気力も充実せず、寝てばかりいることが珍しくありません。薬による鎮静作用が効きすぎている場合もあり、ものごとに集中したり、自分から進んで何かをすることが難しい状態です。
●もどかしく感じます
急性期を超え、症状は落ち着いたにも関わらず、元気がなくボーっとしたり、寝てばかりいる状態にもどかしく思います。「外に出てみたら?」と励ましたり、「家事くらいしなさい」「ずっと寝てないで早く起きなさい」と説得したりと期待を向けてしまいやすくなります。

●先行きを不安に感じますそれでも少しずつでも元の生活に戻る気配が見られないと、家族は不安を感じます。「まだできないのか」「まだ無理なのか」と嘆きやすくなります。


●元気のない本人にどう接していいか分からないと悩みます。
ちょっと落ち着いてきたし、少しくらい何かさせた方がいいのではないかと周囲は思いやすくなります。しかし、当事者は身支度すら非常に苦しいなど、普段できていたことができなくなっていることのギャップに、家族は戸惑いを感じます。
ゆっくり体を休めていると、少しずつエネルギーが溜まってきて、体や心が動き出します。活動範囲が広がり、出来ることが増えてきます。この時期に入ってきても、回復のペースはとてもゆっくりです。それが家族にも歯がゆく感じられるかもしれません。
●焦りが強くなります。
かつての自分の「当たり前」ができなくなっているので、とても苦しく、焦りを感じています。いい年齢や経歴を持っていれば、「いい年下大人が…」「家事くらいしないと」「働かないと」「大学まで出たのに」と自分を追い込んだり、「気持ちが重くて、やりたいことができない」「仕事が好きで頑張ってきたのに戻る自信がない」と以前の自分ならできたことに苦しさを感じます。

●思うようには回復しないことに腹を立てることがあります。
やらなければいけないことは分かるので、焦りを感じて動こうとしますが、上手く動かない自分自身に腹立たしく思うことがあります。また、何とか頑張って外に出たとしても、失敗してしたり、怒られたりすると、それが自信喪失に繋がることもあります。

●周囲の期待がプレッシャーになることがあります。
回復にはそれぞれペースがありますし、自分がしたいことと家族がしてほしいことの間にもギャップがあることがあり、急かされると辛くなります。復職、復学には、体力的にも、能力的にも、自分がどこまでできるのか分からず、不安を感じます。
●回復のスピードに期待しすぎてしまいます。
当事者にとっては、ようやく少し元気になってこれたところですが、家族にとっては「今なら行ける」という期待になり、励ましたり、気晴らしに誘ったりすることもあります。しかし、当事者には「しょせん、わかってもらえない」「理解していない」と受け取られてしまうこともあります。

●思ったより回復が進まないと失望や戸惑いを感じます。
回復期に入ったはずなのに、思ったよりも回復が進んでいないと焦りを感じます。
病気を持っている人自身も、偏見や理解不足だと「自分はもうだめだ」と悲観してしまうことがあります。しかし、慢性の病気や障害を持っていても、工夫を重ね、サポートを受けることを通して、社会の中でのびのび生きていくことができます。これが最初にお話した「リカバリー」の考え方です。統合失調症の人の中には、「今は親がいるから安心だけど、青やいなくなったあとを考えると自信がない」という人もいます。将来への不安を感じながら過ごしている人が多いことが伺えます。仲間や支援者とこのような点についても話しながら、具体的な解決策を一緒に探していきましょう。

カウンセリングのご予約はこちらから
参考文献:伊藤順一郎・NPO法人地域精神保健福祉機構(2010)「統合失調症の人の気持ちが分かる本」講談社