うつ病が良くなっている以外なサイン

うつ病の回復は地味で小さな変化の積み重ねです。


うつ病の回復は、期待しているほどドラマチックなものではありません。一進一退を繰り返しながらジワジワと良くなっていくので、「やる気が出てきた」「気分が明るくなった」と実感できるのは、治療を開始してから数カ月以上してからです。


しかし、こういった分かりやすい変化よりも先に、もっとひっそりとした、気づかなければ見落としてしまうような変化が、日常のあちこちにそっと現れています。


以前の記事では、「うつ病が良くなっているサイン」としてよく知られているものをご紹介しました。部屋の片付けがしたくなる、エンタメが楽しめるようになる、ひまを感じるようになる、といった変化です。


今回は、そうした変化よりもさらに早い段階で現れる、ひっそりとした「うつ病が良くなっている意外なサイン」を6つ紹介したいと思います。もしかするとあなた自身、あるいはあなたの身近なうつ病の人に、すでに現れているかもしれません。





1 一つのことに縛られない・悩みを途中で切り上げる

うつ病の症状が重い時期は、常に頭の中を心配事がグルグル回っています。「あの時こうしなければよかった」「このままではいけない」「どうせ何をやってもだめだ」と、周りがどれだけアドバイスや優しい言葉をかけてくれても、ネガティブな考えから抜け出せません。


「考えるのをやめよう」と思っても、気づけばまた同じことを考え続けています。終わりのないトンネルの中を歩き続けるような苦しさです。


ところが回復が始まると、「仕方なかった」、「まあいいか」、「何とかなるかな」と、少し違う角度から物事を見られるようになります。頑なだった思考が、少しずつほぐれて柔軟な考えができるようになってくるのです。


「考えても仕方ないから、音楽でも聞いて切りかえよう」と、心配事を自然に切り上げることができるようになります。心配が消えたわけではないのですが、それに飲み込まれません。


劇的な変化ではないので本人も気づきにくいのですが、この「まあいいか」となれることは大切な回復のステップです。縛られていた心が解放されてきた大きな証拠です。



2 視野が開けてきた

うつ病の重い時期には、頭にモヤがかかっている感じがします。ブレインフォッグとも呼ばれることもあり、周りで何が起きているか十分に把握できません。回復してくると、頭のモヤがはれていきます。少しずつ周りで起きていることに気づくようになるので、視野が開けてきたような感覚になります。



3 部屋の隅のほこりに気づいた

うつ病が回復して、みなさんが最初に始めるのが部屋の片付けです。これはうつ病のサインとしてよく知られていますが、その前の段階として、「部屋の汚れや乱れに気づく」という変化もみられます。


長い間放置され、うつ病の重い時期にはまったく目に入らなかった部屋の散かった荷物、テーブルの上のゴミ、部屋の隅のほこりなどが視界に入るようになります。これは、視野にあっても認知できなかった不潔なものをきちんと把握できるようになった現象です。脳の認知機能が回復し、外の世界の細かいことに気づく余裕が出て来たのです。 


ただし、行動に移すまでは意欲の回復を待たなくてはいけません。実際に片付けができるまでにはもうしばらく時間がかかるでしょう。 




4 家族とたわいのない話ができるようになった

うつ病の療養中は、家族から話しかけられても気持ちの良い返事ができません。「今日どうだった?」「ご飯できたよ」といった言葉かけにも、うなずくだけであったり、紋切(もんき)り型の返事しか返せなかったりするのです。これはふてくされているのではなく、脳の働きが低下しているからです。


回復してくると、言葉が増えていきます。「そういえば今日こんなことがあった」、「この番組は面白いね」といった、たわいのない一言が自然に口から出てくるようになるでしょう。これは脳の機能が改善してきたサインです。


さらに、自分から話しかけられるようにもなります。この変化は自分では気づきにくいのですが、家族にとってはとても嬉しいこととして気づかれるでしょう。



5 薬の飲み忘れが起きた

調子の悪い時期は、薬を飲むことを決して忘れません。薬が唯一の支えという感覚があるからです。ところが回復してくると、「きのう薬を飲んだか忘れた」ということが起こるようになります。


これは病気を忘れられる時間が生まれてきたと考えられます。それほど日常が戻ってきたということです。もちろん薬を勝手にやめてしまうのはよくありませんが、飲み忘れが出てきたこと自体は、立派な回復のサインです。



6 お酒が美味しいと感じなくなった

うつ病の療養中にお酒に頼ってしまう人は少なくありません。アルコールには一時的にうつ気分を和らげる作用があるため、うつ病がある時はお酒がとても美味しく感じます。


ところが回復が進んでくると、「お酒が美味しくない」「以前のように飲むと気持ち悪くなる」と感じることがあります。これは脳が健康な状態に近づいてきた証拠です。この感覚を大切にして、これを機会にお酒と縁を切れたら良いと思います。




以上、うつ病が良くなっている意外なサインを6つ紹介しました。


今回紹介したサインは、「復職できた」といったような輝かしいものではなく、どれも地味で小さなものばかりです。「働けるようになった訳ではないのに、これが回復なのか?」と拍子抜けするかもしれません。


しかしうつ病の回復とは、ドラマチックな変化が突然訪れるものではなく、こうした小さな変化が少しずつ積み重なっていくものです。


これらのサインに気づいた時は、「少しずつ戻ってきているんだな」と、安心を感じましょう。ただ薬を飲むだけで、毎日何もしていないと感じていた生活でも着実に療養が成功しているのです。遠回りに思われていても、これまでの時間は無駄ではなかったのです。