慢性うつ病の8つのサイン

うつ病が長びくと、症状と性格の区別がつかなくなることがあります。


「うつ病で薬を飲み始めてもう何年も経つのに、なぜ良くならないのだろう」と感じている人はいませんか?「抗うつ薬を飲んでも以前のように働けない」、「薬を減らそうとすると具合が悪くなる」という人もいます。


なかには、「うつであることが通常の自分になっていて、本来の自分を思い出せない」「うつが性格になってしまった」と言う人もいるでしょう。これらはうつ病が慢性化した「慢性うつ病」という状態です。慢性うつ病は決して珍しいことではありません。


今回は、慢性うつ病に見られやすい8つのサインを紹介します。慢性化していると、「どうせ変わらないから、薬だけもらえればいいや」と主治医に詳しく相談しないまま受診を終えている人が多いようです。「これは自分のことだ」と感じたら、ぜひ今の生活や治療について、もう一度主治医と話し合うきっかけにしていただけたら幸いです。




1 死にたいという気持ちがなかなか消えない

うつ病の慢性化に伴い、希死念慮も慢性化することがあります。以前ほどではありませんが、いつも頭の片隅に「消えてしまいたい」「死んだほうが楽になれる」という考えが残っていて、何かある度に顔を出します。


「薬を飲んでいるのに、どうしてこんなことを考えてしまうのだろう」と、自分を責めてしまう人も少なくありません。しかし、これも症状の一つです。いつもよりも強く感じてしまう場合は、主治医と相談するのが良いでしょう。薬の調整で解決するかも知れません。



2  休みの日は夕方まで眠り続けてしまう

慢性うつ病の人には過眠傾向が見られることもあります。1日中眠気があり、休日は目が覚めたら夕方になっていたという感じです。中には眠気で仕事もできないという人もいます。


過眠は怠けではなく、仕事やストレスが多過ぎることが最もよく見られる原因です。また、現在の体調に対して薬がつよいために眠気を催していることも考えられます。


ただし、過眠症は双極症の症状でもあることから、あなたの病気はもしかすると双極症なのかも知れません。この場合は治療の薬の種類が変わってくることもあるので、主治医と相談してみる必要があるでしょう。



3  小さなことで一気に崩れてしまう

ちょっとした一言、予定の変更、メールの返信が遅いなど、些細なことで、気分がガタっと落ちるのも慢性うつ病の特徴です。調子が良い時期があっても、小さなストレスでたちまち崩れてしまうという感じです。


変化のない毎日ならば大きな問題はないのですが、イレギュラーな出来事が起こると崩れやすい傾向があります。心の抵抗力が弱っているので、環境のちょっとした変化に心が追い付かないのが原因です。これも症状ですので、「自分は感情のコントロールができない人間だ」と落ち込まないようにしましょう。



4  罪悪感や無価値感が抜けない

うつ病の慢性化で、症状である認知の歪みが性格の一部のようになります。「自分は迷惑な存在だ」という罪悪感や「自分は生きる価値がない」という無価値感が性格のように心に染みついてしまうのです。


例えば、「夕方まで眠ってしまった自分を責める」、「何もできない自分が情けない」、「家族に迷惑をかけている」、「自分はいてもいなくても同じだ」、こういった考えが頭から離れません。


薬の治療でネガティブな考え方がスッキリなくなる人もいますが、罪悪感や無価値感がいつまでも改善されない場合は、認知行動療法などの心理的なアプローチが有効なこともあります。




5 いつまでも薬が減らせない

薬を減らすと具合が悪くなるので、いつまでも減らせない。これを薬の依存症と勘違いしている人もいますが、うつ病が慢性化していることが原因です。


うつ病が慢性化するのは、脳神経に炎症などのダメージがいつまでも残っているためです。そして、このダメージが症状として顔を出すことを薬が予防してくれます。慢性化によるダメージは数年から数十年続くと言われていますので、薬を長期に飲むことが必要なのです。




6  仕事も家事もできたり、できなかったり


思い当たる原因もなく体調の波が来て、突然仕事を休んでしまったり、家事ができなくなったり、というのも慢性うつ病の特徴です。


しばらく調子が良いので、少し仕事を増やしたら寝込んでしまう。気圧の変化で食事作りができなくなる、といった感じです。そのために旅行などの大きな予定を入れられないという人もいます。


このような体調の波も症状の一つですから、「甘え」や「努力不足」と考えずに無理をしないことが大切です。



7  衝動的な怒りが出てくる

うつ病が慢性化していると、許せないことがあったり、プライドが傷ついたりすると、カーッと怒りがこみ上げてくることがあります。普段は元気がないのに、怒ると爆発してしまうのです。体が重くて寝込んでいたのに、怒り出したらその勢いで家を飛び出してしまったという話も聞きます。


慢性化している人は、ネガティブなエネルギーが心の中に充満しているので、常にイライラしています。そして何かのきっかけでそれが爆発してしまうのです。


ただし、激怒することが多い場合は、抗うつ薬が効き過ぎていたり、双極症であったりする場合もあるので、主治医に相談してみましょう。



8  胸が痛むほどの孤独感がある

うつ病が慢性化して、いつも孤独を感じている人がいます。誰かのそばにいても、家族と一緒にいても、胸のどこかが締め付けられるような孤独感です。「自分のことを本当に分かってくれる人はいない」、「この苦しさは、どれだけ説明しても伝わらない」と表現する人もいます。


これは、長い治療期間で自己肯定感が低くなるために起こる現象です。この孤独感は、薬の治療だけでは効果がありません。医療スタッフとの信頼関係、家族の支援など、人とのつながりが回復に必要です。



以上、いつまでも続くうつ病に見られやすい8つのサインを紹介しました。


脳科学の立場から見ると、うつ病が慢性化してしまうのは、脳神経の使い過ぎによる炎症が長引いていることが原因です。これを改善させるためには、ストレスによる神経の使い過ぎを減らすことが大切です。


生活からできるだけ心配や不安がなくなるように、気になることは人に相談し、福祉の援助も積極的に利用しましょう。また、炎症は不規則な生活や飲酒で悪化します。7時間以上の十分な睡眠と規則正しい生活を心がけてください。薬もやめないようにしましょう。


心理的な立場からは、やはり孤独や不安が慢性化の原因になります。何か楽しみをつくることや、医療スタッフとの信頼関係、家族からの理解が大切です。


働きながら治療していればストレスも溜まり、かといって福祉を受けて働かないでいると後ろめたさがストレスになります。いつも心に重荷があるために治るきっかけを失っているのが慢性うつ病です。


治らないのは、あなたの意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。しかし、心は病気を治す自然治癒の力をもっています。慢性といっても決して治らないものではありません。「去年の今頃よりも良くなっている」という感じで改善されていくはずです。