自分から幸せを壊してしまう人

誰でも幸せになりたいと思うのは当たり前のことです。ですから、今回のテーマの「自分から幸せを壊してしまう」というと不思議に感じるかも知れません。

しかし、世の中には、大好きなパートナーや家族、友人を傷つけてしまい、大切な人間関係を自分から壊してしまうという人がいます。自分には幸せになる資格がないという思いが心の底にあり、幸せになることに不安を感じて、その前に自分から壊してしまったり、逃げてしまうのです。


一見矛盾したように見える心の動きですが、子供の頃に親から十分な愛情をもらえず、辛い経験してきたことが影響しています。このような人たちは永遠に幸せになることができないのでしょうか?

今回は、自分から幸せを壊してしまう人の特徴を紹介しましょう。





1 「どうせ私は幸せになれない」という思いが染みついている


子供の頃に親から愛情をもらえなかった人、家庭に居場所がなかった人、孤独や辛い思いをしてきた人、こうした人たちは、「生きていていいんだ」という自己肯定感が育たちません。

「どうせ私は幸せになれない」、「どうせまた辛い目に合う」といった人生への諦めの思いが心に染みついています。安心感がなく育ったため、いつも最悪のことが起きることを想定して生きています。人を心から信用できず、心配症です。

こういった人が幸せを感じるような状況になると、嬉しく思う以上に、「いつ壊れるのだろう?」という不安に襲われます。最悪のことを想定する癖が働いてしまうのです。そして、「この幸せは長続きしない」と思うと、むしろ居心地が悪くなります。

まるで、いつ爆発するか分からない時限爆弾の上に座っているような感じです。楽になるためには、先に進むのをやめるか、逃げるしかありません。



2 我慢のし過ぎで爆発する


親に甘えられず、いつも親の目を気にして生きてきた人は、周りに気を配る癖がついています。相手から嫌われないように、自分の感情を抑え込み、相手に合わせる生活をしてしまうのです。

しかし、我慢は無限にできません。溜まった不満は、怒りとなって爆発します。自暴自棄になって大切な関係を壊してしまう結果になります。





3 見捨てられ不安


普通は、人と仲良くなり、親しくなればなるほど、その関係に安心を感じるものです。ところが、子供の頃に、親や大切な人が突然いなくなる、もしくは裏切られる、といった経験をしている人は違います。

人と親しくなればなるほどに、「この人はいなくなってしまうのではないか?」「裏切られてしまうのではないか?」という不安感に襲われるようになります。これを「見捨てられ不安」と呼びます。


見捨てられ不安がある人は、できるだけ相手と同じ空間にいることを望み、近くにいない場合は、電話やラインで行動をつねに把握しようとします。また、傷つくことをわざと言ってみたり、振り回してみたり、相手の愛情が本物であるか試します。

相手としては、裏切ったわけでもないのに、束縛や意地悪をされているように感じて不愉快になります。不安を解消するための確認行為で、むしろ相手に苦痛を与え、ついには関係が壊れてしまうきっかけになります。



4 不安が高じて自暴自棄になる


見捨てられ不安のある人は、相手のちょっとした言動に、「自分は嫌われている」「迷惑に思われている」と被害妄想のように感じます。

不安のつよい人は、相手の冗談やつよい口調でさえも、拒絶されたと感じます。裏切られることには敏感に反応するため、どんな些細なことでも大切な関係が壊れてしまうサインと捉えてしまうのです。


不安が高じると、自暴自棄になり、お酒を大量に飲んだり、過食をする人もいます。怒りが相手に向けられると、まるで悪魔に取り憑かれたようになり、激怒したり、暴言や吐いたり、物を壊したり、よけい相手に不快な思いをさせる結果になります。

普段大人しい人がヤクザのように変身することもあり、変身していた時に言ったこと、やったことはあまり記憶にありません。これを解離症状と呼びます。見捨てられ不安に耐え切れず、まるで、自分がどこかへ飛んで行ってしまい、代わりに悪魔が体に入り込んで、幸せを壊してしまうのです。


いつも虚しさを抱えて、見捨てられ不安がつよく、解離症状で激しく相手や自分を傷つけてしまう場合は、境界型パーソナリティ症という病気と考えた方が良いでしょう。境界型パーソナリティ症の人は、脳の発達の偏りがあることが多く、生まれつき相手の気持ちを読み取る能力に問題があり、相手の言動に過敏です。



自分から幸せを壊してしまう人は、「誰も私のことを分かってくれない」が口癖です。周りとうまくやろうと一生懸命なのに、不安から空回りしてしまうのです。その上、複雑な心の中を言葉で伝えることも苦手です。

結局、周りを振り回してしまうのですが、「私の大事な人だからこそ、私のことを分かってもらいたい」というのが一番の本音なのです。


それでは、自分から幸せを壊してしまう人が、幸せになるためには、どうしたら良いのでしょうか?一番大切なことは、身近な人が、不幸な生い立ちからくる複雑な心の中を理解してあげることです。

また、自分からも、不安な気持ちを冷静に言葉で伝えるよう努力することも必要でしょう。そのためには、心理カウンセラーなどの専門職の人に手伝ってもらうのも手かも知れません。

複雑な心の状態を理解してもらうことで、生活に安心感を得られるようになれば、自分から幸せを壊すような言動は少しずつ減っていきます。