気分変調症ってどんな病気?

うつ病は、元気に生活していた人が、気分が落ち込むようになり、生活に支障が出てしまう病気です。ところが、いつ発病したか記憶になく、物心ついた頃からずっと気分が落ち込み、自分は必要のない人間であると思い続ける病気があります。

これはうつ病とは違い、「気分変調症」・「持続性抑うつ症」という病気です。子供や学生の頃に発病することから、「子供の頃からずっと死にたかった」と訴える人もいます。


軽いうつ病と同じような症状ですが、学校や職場には行けるので、病気というよりも性格と考えている人もいます。昔は、「抑うつ性人格」と呼ばれていた時代もありました。

軽いうつ病の症状が、2年以上続いている場合に診断がつけられます。実際に病名をつけられる場合は、気分変調症と言う言葉よりも、分かりやすいので、うつ病と言われることが多いかも知れません。しかし、正確には、うつ病とは近いものでも、違う病気として分類されています。


実は、とても多い病気で、人口の5%に見られるという調査結果もあります。ところが、性格の問題と考えてしまい、辛くても治療をしない人がたくさんいます。

今回は、気分変調症とはどのような病気か説明しましょう。





1 子供の頃から死にたかった

「気分変調」という言葉は、そもそも不機嫌という意味から来ています。周りの人からは、病気というよりも、いつも機嫌が悪い人とか、無気力な人に見られます。いっしょに生活している家族から、「暗い」、「不愛想だ」、「元気を出しなさい」と叱られることもあるでしょう。

学校や職場には行けますが、「気づいた時からずっと落ち込んでいる」と訴え、自分には生きる価値がないと考えています。いつも元気がなく、何かに熱中することもありません。

繊細で、周りの人の言動に敏感に反応することもあり、感情的になります。そのために、学校や職場でトラブルを起こしたり、ひきこもりになることもあります。

「子供の頃から死にたかった」というように、子供や学生の頃に発症し、大人になっても同じ状態がずっと続きます。自然に良くなることもありますが、治療をしないで、一生涯そのままの人もいるでしょう。



2 病気と気づくまでに10年くらいかかる

若い頃から病気の中にいるために、元気がないのが病気であるとは、自分も周りも気づきません。病気と気づいて受診するまでに、10年くらいかかる人が多いと言われています。原因が分からずにひきこもりになっている人の中には、気分変調症の人がたくさん含まれているとも考えられています。



3 子供の頃に失望体験がある

気分変調症の原因はまだ十分に分かっていませんが、子供の頃に失望した体験が原因であるという説があります。人間関係で傷ついたことが、その後の性格形成に何らかの影響を与えたのではないかというのです。子供の頃の辛かった体験を通して、「自分は必要のない人間である」、「誰も助けてくれない」、「一生幸せになれない」といった、ネガティブな考え方が、心に染みついてしまったのかも知れません。





4 治療は長くかかる

子供の頃の心理の問題が影響していることから、治療は、カウンセリングが中心になりやすい傾向にあります。しかし、抗うつ薬の治療に大きな効果があるので、医師から薬を勧められたら積極的に飲むようにしましょう。

抗うつ薬の力で気持ちが楽になると、社会との接点も増えてきます。それを通して、楽しみが増え、生活が良い方向に向いてくると、自己肯定感も改善されます。このように、薬を飲むことをきっかけに、生活の良いループに入ることが、最も回復につながります。

ただし、1年間の治療で良くなるのは、10%くらいと言われており、治療には何年間もかかります。「どうせ長くかかるなら、治療を受けなくても良い」と考える人もいますが、時間はかかっても、治療を受ければ回復しますので、放置するのは良くありません。



5 うつ病や双極症になることがある

気分変調症の人の経過をたどってみると、20%の人がうつ病になり、15%が双極Ⅱ型障害になるという調査結果があります。気分変調症に、うつ病や双極Ⅱ型障害が重なるケースはとても多いのです。むしろ、気分変調症だけでは、病気と気づかなかったのに、うつ病や双極Ⅱ型障害になったことがきっかけで、精神科に通うようになったという人もいます。

また、うつ病の診断で、2年以上精神科に通院している人がいますが、その半分近い人に気分変調症があるという調査結果もあります。


大きな原因もなく、若い頃から生きる価値を感じられていない人は、気分変調症の可能性があります。うつ病のようですが、うつ的な暗い性格と間違ってしまう病気です。

ずっと性格の問題かと思っていて、30才、40才になってから病院へ行って、抗うつ薬を飲んだところ、生活がとても楽になったという人もたくさんいます。長い間、「性格の問題では?」、「親子関係の問題では?」など、苦しんでいた気持ちが、薬1粒で良くなるというケースもあるのです。


ただし、薬は長く飲む必要があります。特に大きな副作用はありません。精神科の薬に抵抗がある人も多いのですが、治療が面倒な手術やリハビリでなく、「毎日1粒の薬を飲むだけで人生が楽になるならラッキー」と、考えてはどうでしょうか?