親が発達障害

本来、発達障害は知的障害とほぼ同じ意味で使われていました。知性や言葉に大きな問題はなく、コミュニケーションの能力だけに問題がある発達障害が知られるようになり、1994年に「アスペルガー障害」と正式に呼ばれるようになりました。
現在、アスペルガー障害は「自閉症スペクトラム障害」、略して「ASD」の一つとして扱われています。





アスペルガー障害の一番の特徴は、相手の立場で物事を考えられないことです。子供の時に人が嫌がることをすると、「あなたが同じことをやられたらどうなるか考えてみなさい。」と叱られることがあります。
これができないのがアスペルガー障害です。他人に共感ができないのです。中には、脳の別の回路をつかって相手の気持ちを推理できるようになる人もいますが、普通の人の共感とは違うものです。
通常は小学校高学年までに障害に気付かれますが、軽い場合は、結婚や子育てをして初めて判明するケースがあります。家庭生活で人間関係が密になり、初めて障害が見えてくるのです。
そこで起きる一番の問題は、子育てがうまくできないことです。早めに気付いてあげて、配偶者や祖父母が子育てをサポートすることが必要になるでしょう。保育園などの公的な保育支援が必要になることもあります。

それでは、親がアスペルガー障害である場合、どのような特徴があるのでしょうか?子育ての色々な場面でみられる5つの特徴を紹介しましょう。
1.子供より自分の楽しみが優先

シングルマザーの場合、子供を置いて彼氏との生活を優先してしまうこともあります。暑い日に子供を車に放置したままパチンコをして、子供を死なせてしまう事件もありました。
このようにアスペルガー障害の親は、子供を置いて自分の友人や趣味を優先しがちです。これは子供を愛していないからではありません。1度に1つのことしか考えられないので、自分の楽しみで頭が一杯になると他のことは意識からなくなってしまうのです。
2.自分の考えを押し付ける

しつけ、生活週間、教育のいろいろな場面でこだわりがあり、それを子供に押し付けようとします。はたから見ていると、おせっかいで過干渉です。
普通の親ならば、子供の機嫌をとりながら穏やかに教えようとしますが、それができずに力ずくになります。「野菜をたべないとダメ」、「ゲームは絶対やってはダメ」、「東大へ行かないとダメ」と子供が嫌がっているのに強要します。言うことを聞かないと突然怒り出すので、子供も従わざるをえません。
3.子供と会話ができない

子供の気持ちや関心あることが分からないため、どう接したら良いか分かりません。子供を愛しているのに、思いやりのない言葉や言動で子供の気持ちを傷つけてしまうこともあります。
それに気付かず謝ることもなく平気にしているので、子供はさらに傷ついてしまいます。子供から見れば冷たい親で、同居人としか思えなくなります。
4.突然怒り出す

アスペルガー障害の親は、いつもと違う突然の状況に頭が混乱してパニックになります。子供は自分の思い通りにならないことが多いため、子育てのさまざまな場面でパニックを起こします。
パニックを起こすと、子供に向かって暴言を吐いたり、叩いたりします。子供が憎いから怒っているのでなく、どうしたら良いか分からず混乱して怒るのです。子供は一方的に怒られるので、親の前ではいつも緊張して委縮するようになります。
子供も発達障害の場合は、いっしょにパニックを起こして手がつけられなくなり、力づくで子供を従えようとするために虐待になります。力加減が分からず、子供に大怪我を負わせてしまうケースもあります。
5.学校に文句をいう

いわゆるモンスターペアレントです。特にADHDの傾向がある場合に見られます。怒るのは子供がいじめられた時など、子供を守ろうとする正義感から始まるのですが、文句の言い方が尋常ではありません。先生や他の父兄に向かって、女子が部下を叱り飛ばすように文句を言います。学校側に非があったとしても、ヤクザのように怒るので、どちらが悪いのか分からなくなります。
残念ながら、アスペルガー障害は生まれつきのもので治すことはできません。障害に気づいたら、周りがサポートしてあげましょう。ただし、子育てに悩んでうつ状態になった場合には精神科で治療できます。
自分の親のことを振り返ってみて、「友人の親と違って変わった親だ」、「子供の気持ちを理解しないひどい親だ」と感じている人は親がアスペルガー障害なのかも知れません。中には、毒親のために縁を切っている人もいるでしょう。しかし、親に障害があるのかと思うと、子供の頃の辛かった仕打ちの理由が分かってくると思います。「親も障害で辛かったのかな」と思えば、少し許してあげられるかもしれません。