自殺の原因
死神の正体を知っていますか?
死神はファンタジーの世界の存在ですが、自殺未遂をした患者さんの話を聞いていると、実際に存在するような気持ちになります。
例えば、ホームから電車に飛び込もうとした患者さんは、突然後ろから「飛び込め!」という声とともに、突き飛ばされたような感じがしたのが原因だと言います。
また、窓から飛び降りて奇跡的に助かった人の話では、パートナーからきつい言葉を言われた途端に頭が真っ白になり、やはり「飛び降りなくてはならない!」という強い衝動にかられて飛び降りてしまったそうです。
精神医学では、死にたい気持ちのことを希死念慮と呼び、主にうつ病などの精神疾患の症状として現れます。希死念慮に取り憑かれると、普段からぼんやり消えていなくなりたい気持ちがついて回り、何かの拍子に衝動的に大きくなることを繰り返します。
そして、理性が衝動に負けてしまった時に実行に移されてしまいます。まるで人生のどこかの時点で死神に取り憑かれ、心が弱ったタイミングで死神が暴れ出す感じです。
実は、希死念慮を自分の心の内側の存在ではなく、死神のような心の外の存在として考えることは、治療的にも効果があります。これを精神医学では「外在化(がいざいか)」と呼びます。抱えている葛藤を外に表現することで、葛藤が軽くなる現象です。
漫画「デスノート」にリュークという死神が主人公の横にいますが、希死念慮をそんなイメージで捉えることは治療的に意味があります。希死念慮を感じたら、「死神がやってきた」と客観的に考えることで、衝動を抑えることができるのです。
今回の記事では、どんな人が希死念慮を感じやすいのかを説明しましょう。なぜ死神に取り憑かれてしまうのか、その理由を解明したいと思います。これをもとに、外在化を使った希死念慮の扱い方も解説します。
死神はファンタジーの世界の存在ですが、自殺未遂をした患者さんの話を聞いていると、実際に存在するような気持ちになります。
例えば、ホームから電車に飛び込もうとした患者さんは、突然後ろから「飛び込め!」という声とともに、突き飛ばされたような感じがしたのが原因だと言います。
また、窓から飛び降りて奇跡的に助かった人の話では、パートナーからきつい言葉を言われた途端に頭が真っ白になり、やはり「飛び降りなくてはならない!」という強い衝動にかられて飛び降りてしまったそうです。
精神医学では、死にたい気持ちのことを希死念慮と呼び、主にうつ病などの精神疾患の症状として現れます。希死念慮に取り憑かれると、普段からぼんやり消えていなくなりたい気持ちがついて回り、何かの拍子に衝動的に大きくなることを繰り返します。
そして、理性が衝動に負けてしまった時に実行に移されてしまいます。まるで人生のどこかの時点で死神に取り憑かれ、心が弱ったタイミングで死神が暴れ出す感じです。
実は、希死念慮を自分の心の内側の存在ではなく、死神のような心の外の存在として考えることは、治療的にも効果があります。これを精神医学では「外在化(がいざいか)」と呼びます。抱えている葛藤を外に表現することで、葛藤が軽くなる現象です。
漫画「デスノート」にリュークという死神が主人公の横にいますが、希死念慮をそんなイメージで捉えることは治療的に意味があります。希死念慮を感じたら、「死神がやってきた」と客観的に考えることで、衝動を抑えることができるのです。
今回の記事では、どんな人が希死念慮を感じやすいのかを説明しましょう。なぜ死神に取り憑かれてしまうのか、その理由を解明したいと思います。これをもとに、外在化を使った希死念慮の扱い方も解説します。
1 自分が迷惑な存在と感じている
自殺の原因というと、貧困、健康の悩み、いじめ被害などを思い浮かべる人が多いと思います。ところが自殺の70%以上には遺書がなく、具体的な原因はほとんど分かりません。
そうした中、自殺未遂をした人にインタビューをした世界的な調査があり、それによると自殺を試みる人に共通する心理状態が分かりました。それは、「自分の存在が周りに迷惑をかけている」と感じていることです。
自分に生きている価値を見つけられないどころか、家族や社会にとって邪魔な存在と感じることが自殺に最も近づきやすい心の状態なのです。
これを「無価値感」と呼びます。挫折、失敗、いじめなどのさまざまな理由を通して、「どうせ私は必要のない存在だ」、「生きている価値はない」と感じることが大変危険な状態なのです。
特に無価値感を感じやすいのは、うつ病などの精神疾患がある場合です。調査でも自殺者の90%以上に精神疾患があったことが知られています。特に統合失調症・双極症・うつ病の症状として多く見られます。
無価値感は、子供の頃に親から大切にされなかった体験や、学校でのいじめの体験なども影響します。
家庭や学校で酷い仕打ちを受けた体験は、「お前なんか生きる必要がない」と子供の頃から言われ続けたようなものです。そうなれば、無価値感が心に刷り込まれてしまうのは当然と理解できるでしょう。
このように、自分の存在を否定するようになると、希死念慮を感じるようになります。「自分はいらない存在」と感じることから、死神が近寄って来るということです。
2 人とのつながりがない
さらに調査によると、「家族や友達など、信頼していた人から裏切られる」、「大切な人や存在がいなくなる」といったような、人との絆がなくなった状況も自殺のリスクが高くなることが分かりました。
人のつながりもなくなって、家庭・学校・職場などで孤独な立場になると希死念慮が湧いてくることがあるのです。死神は孤独を感じている人のもとに訪ねてきます。
また、無価値感のある人は自分から人を避けてしまいがちです。普通ならば人に助けを求めるべき辛い場面でも、「迷惑をかけてしまう」といって助けを求めません。無価値感のある人は死神に好かれてしまうのです。
3 トラウマを抱えている
過去の心の傷を通して死神がやってくることもあります。例えば、虐待やいじめの体験が大人になってフラッシュバックすることで希死念慮が湧いてきます。
過去のトラウマを思い起こさせるような場面に出くわす、映像を見るといった些細なことが引き金になる場合もあるでしょう。
なかには、数年、数十年経ってから何かの拍子にフラッシュバックに襲われ、希死念慮を感じるようになる人もいます。このように、過去の心の傷を通して死神がやってくることもあるのです。
4 アルコールや違法な薬物の摂取
自殺の衝動を抑えるのは理性の力です。理性が弱っていると、死神の説得に負けてしまいます。
アルコールや違法な薬物は理性を弱らせてしまうので、希死念慮がある時に摂取することは避けるべきです。理性を失い死神の思いのままになってしまいます。
死神は、理性が弱って思い通りになる人が好きです。特に酒飲みが大好きです。
私たちは、出会いを「縁」という言葉で表現しますが、縁とは仏教の「因縁生起(いんねんしょうき)」という言葉から来ています。これは、あらゆるものには原因があり、つながりがあるという考え方です。
どんな人でも、自然の摂理の中で、必要だから産まれて来て、すべての存在がつながっています。世の中に生きる価値のない人はいません。
自分のことを「必要のない存在」、「迷惑な存在」と感じるのは、子供の頃に人から大切にされなかった体験の影響が大きいのです。いまは感じていなくても、将来必ず誰かの必要な存在になることでしょう。
最初にも説明した通り、希死念慮があるならば、外在化してリュークのような死神と考えてください。死神が来て、「生きる価値がないよ」、「いなくなった方がいいよ」と囁かれても、聞き流すのが良いでしょう。
そこで深く考えると、死神はよけいに親しく近づいてきます。「また来ているな」と見て見ぬふりをして慌てないことが一番賢い選択です。こちらが慌てなければ、死神は何も手出しはできないはずです。見えないストーカーとでも考えれば良いのです。
そして、自分で対処できない時は誰かに助けを求めましょう。ストーカーされたら警察に相談するように、死神が来たら公的な電話相談や精神科を訪ねてみてください。
実際のところ死神の正体は分かりません。しかし、もし私たちが自分の存在を否定し、人とのつながりを失った時にどこからかやってきて、命を奪おうとする詐欺師のような存在です。
世の中に必要のない人はいませんから、死神が言う「お前は必要ない」という言葉は嘘です。死神の言葉に騙されないようにしましょう。
