子どもが発達障害だとわかったときに


夢と希望をもって臨んだ出産。ところが子育ては想像と違っていました。子どもは敏感で手がかかり、ほかの子どもと比べて言葉が出ることや歩き出すのが遅く、普通でないと感じるようになりました。


ついに健診で発達障害の疑いがあると言われて動揺してしまいます。障害のある子どもを産んだ罪の思いや後悔、一生背負わなくてはならないという不安、こうした思いでノイローゼになりそうです。夫と話し合っても責任のなすりつけ合いで喧嘩になってしまいます。



夫婦関係もうまく行かず、そのうち子どもにもイライラして怒ってしまいます。このままでは子育てどころか家庭崩壊です。このような悪循環から抜け出すためにはどうしたら良いのでしょうか?


今回は、子どもが発達障害と知った時、親はどのような気持ちや心構えでいたら良いのかを説明します。



1. 親のせいではない
発達障害の原因はまだ解明されていません。分かっていることは、親の育て方の問題ではないということです。
原因として遺伝的な要素や妊娠中のウイルス感染などが考えられていますが、どちらにしても親の責任ではありません。一つの命が誕生することは偶然ではなく、自然の摂理に従ったものです。何か意味あって神様から授かった命です。ですから、子どもの障害に対して、親が罪の思いを感じることはありません。





2. 公的な支援や補償がある
2005年に発達障害支援法が制定され、教育・就労・医療・福祉など、発達障害への支援の輪は年々広がっています。障害のレベルによりますが、毎月6万円前後の障害年金が20才から受け取れます。
また、障害者雇用を採用する企業も増えていて、月に20万円前後の給料を受け取る人もいます。国の支援に守られているので、障害があるから「子どもにたくさんお金を残さなくてはいけない」ということはありません。






3. 普通に近づけようとしない
高度成長期の日本は、子どもは同じように教育され、同じようなレールを生きていく時代でした。よい学校を出て、大きな会社に勤めるというのが子育ての目標だったのです。発達障害であっても、重症でない限りは、勉強にも仕事にも普通にあわせるように無理強いされました。


結局社会の歯車からはずれてしまいましたが、どこにも受け皿はなく、家にひきこもるしか道がありませんでした。こうして心傷ついて、ひきこもりになった発達障害の人たちは現在40代から50代の年令になっています。いまでも改善策はなく、80才の親が50才のひきこもりの息子の面倒をみることまで起きています。これを「50・80問題」と呼んでいますが、こうした時代背景があったのです。






いまはナンバーワンよりオンリーワンと言われるように、個性を大切にする社会になりました。発達障害は個性と考えて、子どもがやりたがることを尊重し、その子どもにふさわしい生き方を選んであげましょう。少しでも普通に近づけようとして、勉強や運動で無理をさせることはやめましょう。アメリカには、好きなゲームだけやって、今ではプロゲーマーで大成功しているADHDの人、ゲームYouTuberで大成功しているアスペルガー障害の人もいます。






4. 親は息抜きをする
発達障害の子どもは感覚の偏りがあり、敏感なために子育てが難しいことがあります。親も思い通りにならずに疲れ果てて、子どもをつよく叱ってしまいます。このように発達障害の子どもとは、親子の情関係をつくるのが難しいのです。


親子の情関係を愛着と呼びますが、愛着を築けないでいると、情緒が不安定で自信のない子どもになってしまいます。子どもにイライラをぶつけないことが大切です。



何よりも、親自身が子育てで燃え尽きないように、息抜きの時間をつくりましょう。趣味をしたり、体を動かしたり、子育てのストレスを発散できるようにしましょう。また福祉の子育て支援を積極的に利用しましょう。






5. 社会の偏見やいじめから守ってあげる
障害に優しい社会になっているとはいえ、いじめの問題は絶えません。学校や施設などで問題がある場合はすぐに介入して子どもを守ってあげましょう。
また、感覚が敏感なために、普通の人なら気にならない出来事を理由に、うつ病や精神病になることがあります。早めに対処すれば必ず良くなりますので、おかしいと思ったら精神科に相談しましょう。






6. 社会と接点をもてるように
親が亡くなった時のことを考え、子どもにお金を残してあげようとする人が多いのですが、本人に管理する力がなければ意味がありません。せっかく財産を残しても、残った子どもはひきこもりでお金の使い方も援助の求め方も分からないというケースが多くあります。
最低限の生活費は福祉で援助を受けることができます。お金を残すことよりも、少しでも社会と接点をもつことや、自分から助けを求める力をつけてあげることの方が大切です。