うつ病の人が理解してもらえないこと
うつ病で治療を受ける人が年間100万人を越えるようになり、社会のうつ病への理解が進んでいます。ところが、いまだに「怠け病」、「気の持ちよう」、「責任から逃げている」、「弱い人がなる病気」といった偏見にさらされているのが現状です。こうした誤解がうつ病の人の気持ちを傷つける原因となっています。
今回は、うつ病の人が健康な人から理解してもらえないことを7つ紹介しましょう。うつ病の方だけでなく、うつ病を経験されていない方にも、うつ病がどのようなものかを理解していただけるきっかけになることを願っています。
今回は、うつ病の人が健康な人から理解してもらえないことを7つ紹介しましょう。うつ病の方だけでなく、うつ病を経験されていない方にも、うつ病がどのようなものかを理解していただけるきっかけになることを願っています。

1 健康な人の気分の落ち込みとは質が違う
うつ病を周りの人にカミングアウトしても、「誰でもつらい時はあるよ」と返されることがあります。健康な人は、うつ病とは自分が経験したことのある悲しみの延長線上にあるものと考えがちです。
実際には、うつ病の気分の落ち込みは、健康な人が一時的に感じる落ち込みとは異質のものです。なってみないと理解できない心の状態なのです。
ですから、元気な人から「辛い気持がよく分かるよ」と言われても偽善に聞こえてしまうことがあります。うつ病の苦しさは経験した人にしか分からないのです。
2 何かを勧められても楽しめない
気分転換にどこかに誘われても楽しむことができません。テーマパークに誘われて「楽しいよね」と言われても、感情が伴わないので返事ができないのです。
そして、せっかく連れて来てもらったのに、悲しい顔をして場の雰囲気を壊してしまったことを申し訳ないと考えます。
3 気持の持ち方の問題ではない
うつ病の療養中に「気の持ちようだよ」と友人から言われて傷つくことがあります。うつ病は自分の力で気持ちを変えて治せるものではありません。
そもそも心の病気と言われていますが、実際は脳の病気です。気合で気分を持ち上げるエネルギーはありません。治療を通してエネルギーが中から自然に回復してくるのを待つしかないのです。

4 プラス思考ができない病気
うつ病の治療に認知療法というカウンセリングの治療があります。現在は保険適用もしていますが、認知療法をプラス思考にする方法と誤解している人が多いようです。
うつ病の治療に認知療法というカウンセリングの治療があります。現在は保険適用もしていますが、認知療法をプラス思考にする方法と誤解している人が多いようです。
認知療法とは、面接を通じて、子供の頃から身についてしまっている歪んだ物事の捉え方を修正する治療です。考え方を無理やりプラス思考にさせる治療ではありません。
そもそもプラス思考になれない病気がうつ病です。「物事をプラスに考えれば治るよ」と言う人もいますが、それができていたら薬の治療は必要ないでしょう。
5 自分から孤独を求めてしまう
仲間と楽しい場にいても、孤独を感じてしまうのはうつ病の症状です。まるで見えない壁に閉じ込められてしまったように感じる場合もあります。それが苦しいので、人を避けて一人でいることを好むようになります。
「人に会わないで、ひきこもっているから治らない」と言われることもありますが、そもそも人と会うエネルギーがありません。
仲間と溶け込めないこと、人と会うエネルギーがないことからひきこもってしまうのです。人から何かを誘われると、気持ちでは嬉しい反面、辛くなってしまうのがうつ病です。
6 症状は人によって違う
一言でうつ病と言ってもいくつかの種類があります。趣味を楽しんでいる姿を見た家族から、「働けるんじゃないの」と誤解されることもありますが、最初から趣味は楽しめても、仕事はできないというタイプのうつ病もあるのです。
また、うつ病と言うと「眠れない」と連想する人も多いようですが、1日中寝てばかりのうつ病もあります。そんな姿を見た家族からは、「寝てばかりいたら良くならないんじゃない」と言われますが、これも症状なのです。
7 風呂に入れたことが喜びになる
うつ病の患者さんが、「今週は風呂に入れました!」と喜んで報告してくれることがあります。健康な人から考えると不思議なことですが、うつ病の人にとってみれば風呂に入ることすらも大変な労力が必要です。
うつ病の人は、「朝が起きられた」、「散歩に出られた」という当たり前のことに達成感を感じる場合もあるのです。
当たり前のことができない自分を責め続けているので、「こんな簡単なことができないの?」と言われることは大変苦しいことです。
逆に、当たり前のことが少しずつできるようになることは回復に向かっているサインですから、むしろ大変喜ばしいことなのです。

健康な人に、心の病気を理解してもらうのは大変難しいことです。「苦しい」と訴えても、経験した人でないと理解できない世界があります。健康な人から、「私だってしょっちゅう苦しいよ」と軽々しく言われても、「分かっていないな」と失望して心を閉ざしてしまうことでしょう。
有名人が心の病気をカミングアウトしても、「病気に逃げている」、「病気なのに海外へ行くのはおかしい」と、ネットでバッシングする人が増えています。有名人であっても、そのようなバッシングでさらに追い詰められていくこともあります。
世の中には、いまだに心の病気に対してネガティブなイメージを持っている人が多いようです。うつ病に限らず、心を病んだ人の回復を暖かく見守れる社会になることを願ってやみません。
