女性のADHD
集中する能力や感情を抑える能力に偏りがあり、いつも気が散ってジッとしていられないことを注意欠如多動障害、略してADHDと呼んでいます。不注意・多動・衝動の3つの症状があることが特徴ですが、不注意優勢型という不注意だけが目立つ場合もあります。
ADHDは、小学生の頃に気づかれることが普通です。しかし、女性の場合は不注意優勢型が多いために、障害に気づかれないまま大人になってしまうことがあります。親のサポートがなくなり、一人暮らしや、結婚して家庭生活をする中で、当たり前の家事ができないことから何かおかしいと気づかれます。
これを障害と考えられたら良いのですが、「だらしない」と周りから注意をされ、努力してもできないことから、「自分はダメな人間なんだ」と自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。
大人になって気づかれるADHDを「大人のADHD」と呼んでいます。今回は、家庭生活で見られる女性のADHDの特徴を6つ紹介しましょう。

1 毎日の家事が苦手
料理、掃除、洗濯などの家事がうまくできません。これは不器用だとか、料理が下手とかいう意味ではありません。一つ一つのことはできても、優先順位が立てられずに思いつきでやってしまうためです。また、やるべきことをうっかり忘れてしまうこともあります。その結果、決まった時間に料理、掃除、洗濯と計画的にできません。
主婦なのに満足に家事ができないため、自信を失うADHDの女性は多いのです。残念ながら、これは脳の機能の問題なので変えることはできません。家事が得意でないことを一緒に住んでいる人に理解してもらい、それを前提に生活を組み立てたら良いでしょう。
家事は思いつきでやるのでなく、朝のうちに1日のスケジュール表を作っておきます。9時から洗濯、14時から買い物、などのようにメモに書くのも良いですし、スマホのカレンダーやメモ機能を利用するのも良いでしょう。このスケジュール表に従って動くようにします。また、1週間のスケジュールとして、仕事や用事がある平日の家事は最低限のものにして、できるだけ余裕のある週末にまとめてやるようにしましょう。
2 片付けが苦手
片付けができず、いつも部屋が散らかっています。エアコンのスイッチがない、大切な領収書がない、着ていく服がない、と探し物ばかりしています。散らかっている原因は、やりっぱなし、置きっぱなし、脱ぎっぱなしだからです。また、無計画な買い物のために物が多く、いざ片づけようとしても、どこから手をつけたらよいのか分からないのも原因です。
これを解決する一番のコツは、使ったら必ず元の場所に戻す習慣をつけることです。日頃から意識をしているとずいぶん変わってきます。脱いだ服は必ずハンガーにかける、エアコンやテレビのスイッチはスイッチ入れに戻す、飲み食いした皿や容器は台所にもっていく、など、一つ一つを面倒に思わずに実行しましょう。物が多すぎることは、各シーズンに1回、まとめて断捨離をすることで解決します。
3 家計簿をつけられない
家計のやりくりが苦手です。欲しい物から優先して買ってしまい、衝動買いも多いためです。お金があったらあるだけ使ってしまう傾向もあります。買ったことを忘れて、棚や冷蔵庫に同じものがいくつも置きっぱなしになっていることもあります。
時代はキャッシュレス払いに移っていますが、できるだけ現金払いにしましょう。カードですぐにいくらでも買える状況は良くありません。大きなお金は自分一人で管理するのではなく、いっしょに住んでいる家族にも管理してもらうことが必要でしょう。

4 手続きが苦手
役所や学校への書類提出、公共料金や税金の手続きなど、細かい事務作業が苦手です。面倒なので後回しにしているうちに忘れてしまい、提出の期限を過ぎてしまいます。
対策としては、大切なことはその場ですぐやる習慣をつけることです。後回しにしようと思ったら、その思いと闘うようにしましょう。手続き関係は、社会的な信用の問題に関わることなので、何とか改善させたいものです。
また、病院、歯医者などの予約を忘れてすっぽかすこともあります。これも社会的な信用に関わることです。自分の記憶力を信用しないで、スマホのカレンダー機能を利用したり、目につきやすい机や冷蔵庫にメモを貼ってみましょう。
5 自分の楽しみを優先してしまう
マイペースで家族をおいて自分のことを優先してしまいます。子供をつれて自分のショッピングだけをしてしまうなど、自分の楽しみに家族を付き合わせてしまうこともあります。不評を買ってしまいますので、よく家族の意見に耳を傾けるようにしましょう。
6 子育てが苦手
子育てほど思い通りにならないことはありません。ADHDのお母さんは子供の行動をジッと待つことができません。また、子育ては同じことを繰り返し根気強く続ける要素が多いのですが、それも苦手です。こうしたことから子供にイライラして、衝動的に子供を怒鳴ってしまうことがあります。一度怒りのスイッチが入ると止まらなくなり、子供が泣き続けていても、延々と叱り続けてしまうことがあります。
女性なら誰でも当たり前に子育てができるという訳ではありません。家族はよく障害を理解して、積極的に子育てのサポートをするようにしましょう。保育園や学童保育などの福祉を有効に利用しましょう。
ADHDの人は、障害の特徴から家事などの家庭生活に支障が出ます。これは、だらしない性格だからではありません。悲観的にならずに、自分の特徴を理解して、苦手を前提に生活を工夫すると良いでしょう。また、周りの人に障害を理解してもらい、サポートしてもらうことも大切なことです。
