ASDの思考
見たものを一瞬で覚えてしまう「カメラアイ」という能力をご存じですか?例えば、一瞬見ただけの本のページの内容を隅から隅まで全部覚えて、いつでも思い出すことができます。まるで目がカメラのようになって、そのままの情景が脳の中にいつまでも記憶されるのです。
「試験の時に便利でいいな」と考える人もいるかと思いますが、実際には、辛かったことや見たくなかったものまでそのまま記憶されて、いつまでもフラッシュバックして思い出されるのですから、決して喜べる能力ではありません。カメラアイを持つ人の頭の中はどのようになっているかはまだ完全に解明されていません。
カメラアイはASDの人に多く見られます。ASDとは、自閉スペクトラム症の略で、生まれながらにコミュニケーションの問題と、特定の物事や行為に強いこだわりがみられる障害です。別々の障害と考えられていたアスペルガー症候群と自閉症が、程度の差だけで同じ障害であることが分かったため、2013年からまとめてASDと呼ぶようになりました。
ASDというと、無表情で付き合いにくい人のイメージをもってしまいますが、カメラアイを始め、天才的な知能を持つ人など、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。では、ASDの本人は、実際にどのように感じたり、考えたりしているのでしょうか?
今回はASDの人の言葉を元に、その不思議な感じ方や思考方法について説明します。ASDの人の生きづらさを少しでも理解できるきっかけになることを願っています。
「試験の時に便利でいいな」と考える人もいるかと思いますが、実際には、辛かったことや見たくなかったものまでそのまま記憶されて、いつまでもフラッシュバックして思い出されるのですから、決して喜べる能力ではありません。カメラアイを持つ人の頭の中はどのようになっているかはまだ完全に解明されていません。
カメラアイはASDの人に多く見られます。ASDとは、自閉スペクトラム症の略で、生まれながらにコミュニケーションの問題と、特定の物事や行為に強いこだわりがみられる障害です。別々の障害と考えられていたアスペルガー症候群と自閉症が、程度の差だけで同じ障害であることが分かったため、2013年からまとめてASDと呼ぶようになりました。
ASDというと、無表情で付き合いにくい人のイメージをもってしまいますが、カメラアイを始め、天才的な知能を持つ人など、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。では、ASDの本人は、実際にどのように感じたり、考えたりしているのでしょうか?
今回はASDの人の言葉を元に、その不思議な感じ方や思考方法について説明します。ASDの人の生きづらさを少しでも理解できるきっかけになることを願っています。

1 目からの情報で考える
ASDの人は、すべてがカメラアイを持っている訳ではありませんが、目からの情報をつかって物事を考える傾向があります。
人は論理的に考える時には言葉が必要です。ところが、ASDの人の思考には言葉が必要ありません。むしろ、思考と言葉がうまくつながっていないために、思考を言葉に変換するのに手間がかかってしまうくらいです。言葉を介さずに、目にした出来事を直接に理解するのです。途中に余計な言葉への変換が必要ないので、これがカメラアイにつながっているのかも知れません。
ASDの人は目からの情報に頼っており、耳から入った言葉は瞬時に理解することができません。耳からの情報を集めることができないので、会話においては、「聞いていない」、「言っても覚えてくれない」ということが起こります。中には、会話よりも筆談にした方がうまくコミュニケーションがとれる人もいます。
2 感情の後出し
例えば、嫌なことをされてもその場はモヤモヤするだけで何も反応できません。ところが、後から悲しくなったり、悔しさが湧いてきたりします。いじめにあっても、その場では意味が分からずに抵抗しないために、さらにいじめられてしまいます。しかし、後からフラッシュバックのように辛さを感じるのです。
同じように、人から親切にしてもらっても、その場は何事もなかったように過ごしてしまいます。後から感謝の気持ちが湧いてくるのですが、その場では何も言えなかったために、「失礼な人だ」と勘違いされます。

3 タイムスリップ現象
ASDの人は時間の感じ方が独特で、時間と感情・思考がうまくつながっていません。昔のことを思い出すのに、まるで今起きているように感じることがあり、心だけが過去にタイムスリップしたようになります。これを「タイムスリップ現象」と呼びます。
楽しかった過去の出来事を、今も再体験して楽しめるのは良いかも知れませんが、忘れたい過去やトラウマまでもフラッシュバックしてしまうので、これは大変苦しいことです。
過去だけでなく、「今が現実かどうか分からない」というフワフワした感覚を訴えることもあります。私たちは、時間を連続した一本の直線としてとらえますが、ASDの人にとっての時間とは、ハッキリとした一つ一つの点のようにして存在しているのです。
4 ロボットの操縦席体験
ASDの人は、心と体がうまくつながっていない感じを訴えることがあります。特に体調が悪い時には、体が心に連動してくれません。体の中に小さなコックピットがあって、そこに小さな自分がいて、一生懸命操縦しようと焦っていると表現する人もいます。まるでロボットの操縦をしているような感覚と言います。
自閉スペクトラムの「自閉」とは、自分の心の中に閉じこもっているという意味ですが、ASDの人の日常とは、体の中のコックピットに心があって、そこのモニター越しに現実とつながっているような感じなのです。特に気持ちが不安定であったり、体調が悪かったりする時に感じやすいと言います。
以上、ASDの人の感じ方と思考方法について説明しました。

ASDの人がもっているのは、「目で理解する」、「感情の後出し」、「タイムスリップ現象」、「ロボットの操縦席体験」の不思議な感覚です。これらは、心と現実がうまくつながっていない状態と考えたら良いでしょう。ガンダムのように、体の中のコックピットに心があって、コックピットの中からモニター越しに現実と向き合っていると考えると、イメージが湧きやすいかも知れません。
ASDの人は、コミュニケーションを取ることが苦手な人が多いことから、社会で生きづらさを感じている人もいます。しかし、世界一のお金持ちであるイーロンマスクや、フェイスブック創業者マーク・ザッカーバーグなど大成功している人にはASDの人が多いのです。
IT、AI分野においてはASDの人のつよみが生かされていきます。今後も社会の進歩に従って、ASDの人がより活躍していく時代が続いていくでしょう。
