統合失調症の知られていない6つのこと

統合失調症は、幻覚や妄想、思考の混乱が特徴の病気です。いまだに病気の正体は十分に解明されておらず、症状や経過は人それぞれであるので、一つの病気でなく、いくつかの病気の集合体ではないかと考えられています。そのため、「統合失調スペクトラム症」という呼び方をされることがあります。「スペクトラム」とは、「連続体」という意味です。


統合失調症は、思春期から20才代の若い人が発病する病気です。発病のために社会へ出るタイミングを失ってしまう人が多いため、早期発見・早期治療をすることが願われています。


初期の段階で病気に気づき、早めに治療を受ければ、それだけ早く回復することができますが、実際の調査によれば、統合失調症の人の半数は専門的な治療を受けていません。自分が病気であることに気づけず、自宅にひきこもっている人が大変多いのが現状です。


今回は、統合失調症とはどのような病気かを知っていただくために、統合失調症の知られていない6つのことについて解説していきます。特に、薬の治療とSSTというリハビリがとても大切であることを紹介したいと思います。





1 人間関係が苦手な人がなりやすい

統合失調症になりやすい人には特徴があります。子供の頃から物静かで優しい人なのですが、主張することが苦手で、何事も受け身的です。人と付き合うのが好きでなく、親しい友達がいません。野球やサッカーなどの団体スポーツを自分で楽しむことができず、アニメ・音楽・ゲームが大好きです。



こうした性格の傾向から、社会で追い詰められたり、孤独になったりすることが多く、そこから自分の心の世界に閉じこもってしまうことがあります。いつしか現実と心の世界に境界線がなくなってしまい、発病すると考えられています。



2 見えない声と会話する

統合失調症では幻聴が起こります。これは、何となく聞こえる空耳(そらみみ)のようなものでなく、現実の声と全く区別がつきません。内容はさまざまで、悪口が聞こえてきたり、噂話であったり、中には死んだはずのお母さんが優しく語りかけて来るという人もいます。


病気が進行すると、現実と心の中の世界に区別がつかなくなり、幻聴と会話をするようにもなります。幻聴と会話をする姿は、近くで見ていると独り言を言っているようです。統合失調症の人が一人でブツブツ話していたり、空に向かって怒っていたり、理由もなく笑ったりするのは、幻聴と会話をしている姿なのです。


また、幻聴がアドバイスをくれることや、命令をしてくることもあり、それに逆らえずに従ってしまうこともあります。重症になると、声に命令されて電車に飛び込んでしまったり、人を傷つけてしまったりと危険なことが起こることもあるのです。



3 薬がよく効く

覚醒剤を使用した人は、幻聴や妄想を起こして統合失調症と似た状態になることがあります。これは脳の中でドパミンという物質が過剰に分泌されることで起こる現象です。これに対して、抗精神病薬にはドパミンの分泌を抑える作用があるため、幻聴や妄想が治まります。この理屈から、統合失調症には抗精神病薬の治療が行われます。


抗精神病薬は統合失調症にとても効果があり、早めに治療を始めれば、服用を始めて1か月くらいしてくると、幻聴が聞こえなくなります。抗精神病薬は、統合失調症の人を心の中の世界から現実世界に引き戻してくれるものと言えるでしょう。ただし、治療の開始が遅ければ、それだけ回復にも時間がかかってしまいます。





4 人間関係を改善させるSSTが効果的

抗精神病薬が現実世界に引き戻してくれたとしても、再び追い詰められたり、孤独になったりと、現実に生きている世界が居心地の悪い場所であったら、また心の世界に戻りたくなるのは当然です。幻聴と会話をしていた頃の方が楽だったと感じます。だんだん薬を飲むことに意味を感じなくなり、ついには飲むのをやめて再発が起こってしまいます。


こうならないように、薬の治療と並行して行いたいのが、世の中をスムーズに生きていくテクニックを学ぶことです。統合失調症の人は、仲間をつくることが苦手で孤立したり、つよく言われると断れずに嫌な思いをしたり、辛い時に人に相談ができないといった生きづらさをもっています。そうならないような対人関係の取り方を学ぶため考えられたのが、社会技能訓練・SSTというリハビリです。



5 カウンセリングは向いていない

心理カウンセリングを受けると、統合失調症の人の具合が悪くなってしまうことがあります。カウンセリングを通して現実と向き合ったり、心の中を自分で分析したりすることで、症状を悪化させてしまうことがあるのです。カウンセリングを希望しても、「主治医から許可をもらってください」とカウンセラーから言われるのは、これが理由です。


もし、薬の治療だけでは十分でないならば、カウンセリングよりもSSTのようなリハビリを受けるのが良いでしょう。SSTは、病院や保健所のデイケアや地域の生活支援センターで行っているので、主治医に相談してみましょう。



6 怖い病気ではない

緊急入院が必要な重症の統合失調症は、数十年前から少なくなってきました。統合失調症全般に症状が軽くなっているのです。これは世界的な現象で、理由は良く分かっていません。もしかすると、インターネットやサブカルチャーの広がりで、現実世界にも心の逃げ場所が簡単に見つかるようになったのが理由かも知れません。


ところが、世の中には、統合失調症は幻聴に操られて重大な犯罪を犯す怖い病気という偏見が残っています。実際の統計調査によると、統合失調症の人による〇人事件はむしろ健常者に比べて少ないことが分かっています。統合失調症は薬やSSTで良くなる病気で、社会で活躍している人も沢山います。



以上、統合失調症の知られていない6つのことについて解説しました。


統合失調症は適切な治療を続ければ、社会で活躍できるようになる病気です。ただし、現実と向き合うことが苦手な人が多いために、再発率が高いのが現実です。再発を防ぐためにも自己判断で薬をやめないこと、リハビリでSSTを利用してみましょう。


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