うつ病はいつ治りますか

いつになったら気分が晴れる日が来るのでしょうか?


本来うつ病はゆっくり休むことで半年から1年半で自然に良くなる病気です。ところがそれで終わりではなく、何かのきっかけで再発を繰り返します。


データによると、1度うつ病を経験した人は、その後の20年間に平均して5~6回の再発を繰り返すとも言われています。これは、最初のうつ病の経験で脳がダメージを受けており、症状が良くなっても潜在的な脳のもろさが残っているためです。


再発を繰り返していくと、そのうちうつ病が慢性化してしまい、気分の落ち込みが性格だか病気だか分からなくなってしまいます。これを「慢性うつ病」とか、最近では「持続性抑うつ症」と呼びます。


これを防いでくれるのが抗うつ薬です。薬を飲むと1カ月から3カ月程度で症状は良くなり、さらに続けて服薬をすることで再発の予防もしてくれます。


それではいつになったら薬をやめてうつ病から解放されるのでしょうか?今回は、うつ病に必要な治療期間について詳しく説明しましょう。





1 回復後も最低1年間の予防服薬が必要

原則として、症状がなくなった後も予防のために1年くらい服薬を続けて、問題がなければ薬をやめることはできます。これでうつ病とさよならをできれば良いのですが、再発は絶対にないとは言い切れません。生きている限り、ストレスを避けて生活することは不可能だからです。


お金の心配をせずに、自然の中で趣味だけやって悠々自適に生活できたら再発はないのでしょうが、そんなことができる人はいません。ですから、最初の治療がうまく行ったとしても、再発する人はいるのです。


そして、万が一再発した場合は、2度目の再発を防ぐために、さらに5年以上は薬を飲むことを考えましょう。



2 慢性うつ病の人は長い予防服薬が必要

「思い返したら、10年くらい前からうつ病だったかも知れない」と訴えて、精神科を受診する人もいます。仕事が続けられたので、気分が晴れないのは性格の問題と思い込んでしまい、まさかうつ病であると気づけなかったのです。ずっと休みをとることができずに、限界が来たのでようやく受診するという話はとても多いことです。


しかし、こういった場合は、すでに慢性化していることが多く、抗うつ薬の治療で良くなっても、やめてしまうとすぐに再発します。発病から何年も経って治療を受けたなら、患っていた期間と同じくらい薬を続けた方が良いでしょう。例えば、治療を始めるまでに10年かかったら、10年は薬を飲むといった感じです。


慢性うつ病の場合は、薬を飲んで日常生活を普通に送れたら、それで治ったと考えても良いと思います。主治医の指示に従えば、抗うつ薬などの精神科の薬を長く飲むことは危険なことではありません。血圧や糖尿病の薬をずっと飲み続けることと同じです。一生涯飲み続けていても問題はないので、慌てて薬を減らす必要はありません。





3 いくら薬を飲んでも十分に良くならない人

一言でうつ病と言っても、実際にはいくつかの種類があります。中には最初から治りにくいうつ病もあるのです。


例えば、「出産後に起こる女性のうつ病」、「幻覚や妄想などの精神病症状があるうつ病」、「パニック症を合併しているうつ病」などは、薬の治療でも十分良くならないことが知られています。このように治療の効果が十分でなく、働けないなどの障害が残ってしまう場合を「難治性うつ病」と呼びます。


さらに、「ADHDやASDなどの発達障害がある人」、「子供の頃に虐待やいじめを受けた経験がある人」も難治性うつ病になりやすい傾向があります。


難治性の場合は、薬の治療だけでなく、通電治療や磁気治療などが行われることもあります。しかし、生まれつきの要素が関わっていることも多いので、こうした治療にも反応しにくいのが難治性うつ病です。


色々手を尽くしてもなかなか良くならない場合は、焦って元の生活に戻そうと努力するよりも、病気があることを前提とした生活をするのが良いでしょう。障害手帳や障害年金などを利用することで経済的な負担を減らすことができます。お金の心配が少なくなるだけでも、うつ症状が軽くなることもあります。


短時間でも働けそうならば、「障害雇用」や「就労移行施設」を利用するのも良いかも知れません。最近は、在宅バイト、スキマバイトなどの短時間で負担の少ない仕事も選べますので、こうしたことを利用するのも賢い選択です。



4 もしかしたら双極Ⅱ型障害かも

どんな治療をしても十分な効果がないまま何年間もうつが続いて、ある日から突然元気になったという場合は、双極Ⅱ型障害が考えられます。残念ながら再びうつに戻ってしまう可能性があるので、気分安定薬による治療を続けることが必要です。


双極性Ⅱ型障害のうつは治りにくいのが特徴で、躁状態がほとんど目立たない場合もあります。難治性うつ病として10年以上治療をして、後から双極性障害と判明することもあります。



うつ病を卒業できる時期は、人それぞれです。病気そのものの問題だけでなく、家族関係、職場の事情、経済的な事情などの環境の問題も絡むので、必ずいつまでに治るとは言えません。支えてくれる人との出会いなど、巡り合わせの問題も絡むこともあります。スケジュール通りに回復しないのがうつ病なのです。


うつ病の治療は、高血圧や糖尿病と同じと考えましょう。薬を飲みながら背伸びをしない生活を続けることが必要です。うつ病だからといっても何もできない訳ではありません。障害雇用や就労移行施設を利用するなど、今できることから始めてみましょう。焦らないことが回復への一番の近道です。