うつ病の時の気持ち

どんな病気でも、経験していない人には100%理解することはできません。うつ病も、なった人にしか分からない心の世界があります。うつ病の人に向かって、元気がないようなので、「気の持ち方次第だよ」「元気を出しなよ」と励ましてあげて、逆に傷つけてしまうこともあります。

元気づけられて傷つくというのも不思議に思えますが、うつ病は怠けでも単なる疲れでもありません。病気のために考え方を変えたり、元気を出すことができない状態です。

このような人に「元気を出しなよ」と言っても、「できないことをやれ」と言われていようで、受け止め切れません。例えば、足の骨が折れて困っている人に、「がんばって走ってごらんよ」と言っているようなものです。


うつ病は、生きるエネルギーが枯れ果てた状態です。生きるエネルギーとは、愛情、楽しみ、喜びなどの情緒的なエネルギーのことです。

頑張ること、楽しむこと、休むこと、こうしたリズムを繰り返すことで、保つことができます。ところが、休むことなく無理を続けたり、心配が絶えない状況が長く続くと、エネルギーは消耗するだけです。

ついに枯れ果てた状態になると、健康の人からは想像できないようなネガティブな心理状態になってしまうのです。


うつ病の時の心の状態は複雑です。今回は、うつ病がどのようなものかを少しでも理解できるように、その心の状態を具体的に紹介しましょう。





1 朝から疲れている

朝から疲れを感じるのがうつ病です。目覚めた時から、会社から帰って疲れ果てているような状態が始まるのです。

そもそも眠りも浅く、悪い夢ばかりを見ます。朝も早くから目覚め、やらなくてはいけないことが頭の中でグルグル回っています。起きなくてはならない時間になっても、気持ちも体も重く、ふとんから出られません。1日中ずっとふとんの中で過ごしたい気分です。


2 何も楽しめない

これまで楽しめていたことに、全く面白みがなくなります。好きだった音楽や動画に感動しなくなり、趣味をするのも面倒なだけです。電話にも、部屋のインターフォンにも出たくありません。人と関わるのが煩わしくなり、誰からも干渉されずに一人で過ごしたいと思うようになります。

食事もおいしくなく、何を食べても同じ味です。おしゃれにも関心がいきません。いつも同じ服でも気にならないのです。風呂に入るとサッパリするので大好きだったのに、1週間でも平気でシャワーも浴びずに過ごせるようになります。



3 自己肯定感がなくなる

それまでがんばってきたのに、過去の実績はすべて価値を失ってしまい、何もできないダメな人間だと感じるのがうつ病です。

友人、職場の人、SNSやテレビの人など、目に入る人は誰でも自分よりも輝いて見えてしまい、自分が劣っているように見えるのです。自分は、価値のない人間であり、生きていてもみんなの邪魔になるだけだと感じることもあります。



4 希望をもてない

どうやっても今の状況は良くならないと感じます。一つ問題があるだけで、すべてがダメだと思います。何かの心配事がいつも頭の中をグルグル回っています。

何をしてもどうせ失敗すると感じるので、何にも希望が持てません。そもそも何のために生きるのか、生きる目的が分からなくなります。




5 後悔してばかり

失敗したことが頭から離れません。「あんなことを言わなければ良かった」、「どうしてあんなことをしてしまったのだろう」と自分を責めてばかりいます。

今ではどうにもならないような、ずいぶん前の失敗までも頭に浮かんできます。考えても仕方がないのは分かっていても、後悔の思いから抜けられず、自分を責め続けるのがうつ病です。



6 ゲームやネットがやめられない

時間はどんどん過ぎていくのに、一度始めたゲームやネットがやめられません。「やめなくては」と思っていても、単調な繰り返し動作の中に安心感を感じます。楽しんでやっているというよりも、気持ちの逃げ場になっているのです。

ようやく抜け出せても、今度はやり過ぎて無駄な時間を過ごしてしまったことに後悔し、自分を責めてしまいます。これの繰り返しです。

ネット通販にハマる人もいます。同じようなものを何個も買ったり、せっかく買ったのに届いた箱を開けないでそのままの場合もあります。欲しい物があるというよりも、買う行為が止まらないのです。



7 いなくなりたい

仕事でも、家庭でも、何かに責任を持つことができなくなります。無理をしてやろうとするとイライラして、怒りが湧いてきたり、自分が壊れそうになります。自然に涙が出ることもあります。できれば、すべての責任を放り投げて、どこかに逃げてしまいたいです。

さらに辛くなると、過去に戻って人生をやり直したいと思います。それができないのなら、癌や交通事故で死にたいと思います。人生をリセットしたいと思うのです。せめて知っている人のいない世界に行きたいと感じます。



うつ病の心の状態を紹介しました。人は、生きるエネルギーが枯れ果てるとこのようなネガティブな心の状態になります。こうした時は、エネルギーの充電が必要です。

具体的には、社会的な責任を免除してもらい、ゆっくり休むことです。充電のポイントは十分な睡眠と食事をとることです。ところが、度を越えて消耗していると、不眠症と食欲不振が症状として現れます。こうなると薬の治療が必要です。早めに精神科で相談してみましょう。