子供を愛せない母親の5つのタイプ

犬や猫のような動物でも、自分のことよりも子供の食べ物を優先します。誰に習ったわけでもないのに、母性を持っているのです。母性とは、生まれつき遺伝子に組み込まれている子供を守り育てようとする本能です。代々子孫に伝えられ、自然に子供を愛おしく感じるようになっているのです。人も同じはずです。

ところが、いつになっても虐待やネグレクトの事件のニュースが絶えません。世の中には、自分の子供を愛せない人がたくさんいるのです。本来、生まれながらに母性が備わっているはずなのに、なぜ子供を愛せない人がいるのでしょうか?


今回は、母親が子供を愛せない5つの理由を紹介しましょう。





1 自分も愛されてこなかった

本来、親の愛とは無条件の愛です。「容姿が可愛いから愛する」「障害があるから愛せない」でなく、子供の存在は無条件に受け止められるものです。子供がそこにいるから愛するのであって、理由はありません。

このような愛があるから、親は子供のために犠牲になることができます。自分は満足に食べられなくても、子供が満腹ならば幸せな気持ちになれます。自分は辛くても、子供が幸せならば心が満たされるのです。

親子の情関係を愛着関係と呼びます。愛着関係の根っ子に、無条件の親の愛があることで子供の心は育まれます。もちろん、完璧な親はいないし、親の愛も完璧なものではありません。しかし、その片鱗でもあれば、子供が成長する力となります。

親から愛されず、十分な愛着関係を経験していないと、母性も育ちません。母性が未熟なまま母親になると、子供が子供を育てるような状態になります。姿は親子ですが、心は兄弟のような関係になるのです。お互いで利害が生じると、子供に譲ることをせずにライバルになったり、邪魔になったりして、争いに発展することがあります。

また、愛着の問題がある人は、完全主義の傾向があります。そのために、子供をありのままに愛することができず、自分の理想や夢を押し付けようとします。塾、スポーツ、芸術と習い事をさせて、それができることで子供を愛そうとするのです。「習い事は、子供の将来のためにやらせている」と言いますが、実は自分のためにやっています。

何かができて、自分が気に入ったら愛するという条件付きの愛情です。万が一、子供に才能がなく、習い事が身につかない場合は愛せません。例えば、「良い学校に入らないからダメな奴だ」と見捨ててしまうこともあります。兄弟で、できる子とできない子の差がでた場合は、できる子は大切にして、できない子は相手にしません。兄弟を差別してしまうのです。

誤解があってはいけないのですが、親に愛されなかった人は、子供を育ててはいけないという意味ではありません。愛を注いでくれて、よい愛着関係を築けるのは親に限りません。パートナーや友人、ペットからも愛を受け取ることができます。また、子育てを通して、子供から癒されて、愛着が育まれる人もいます。親に愛されなくても、自分の子供とはよい愛着関係を築ける人はたくさんいるのです。



2 夫婦の関係が悪い

夫婦関係が悪くなると、子供を愛せなくなることがあります。子供の姿や言動が、嫌いな夫に似ていることから、子供に夫を感じてしまいます。夫への憎しみが、子供へ移ってしまうのです。特に、夫の裏切りや浮気が原因の場合によく見られます。

また、再婚して新しい夫ができると、前の夫との子供を愛せなくなることもあります。やはり、子供の背後に前の夫を感じてしまうためです。



3 産後うつ病で子供を愛せない

女性は、妊娠出産で情緒が不安定になることがありますが、出産後3週間以上もうつ状態が続く場合を産後うつ病と呼びます。気持ちの落ち込み、気力が出ない、体調の悪さといったうつ病の症状と共に、子供を可愛いと思えないのが特徴です。周りの人は出産を喜んでいるのに、自分だけは「何で産んでしまったのだろう」と後悔し、子供を愛せない自分を母親失格と感じます。

抗うつ薬の治療で良くなっていきますが、子育てをしながらの治療でもあり、回復までに時間はかかります。子供の存在を邪魔に感じたり、思い通りにならないと感情的に怒ってしまい、そういう自分が情けなく、自己嫌悪に陥る場合があります。

「子供の頃、母親は何もしないでずっと寝ていた。」という記憶のある人は、母親が産後うつ病であった可能性が考えられるでしょう。





4 精神病で子供を愛せない

出産に伴う心の病気は産後うつ病だけではありません。双極性障害や統合失調症といった精神病になるケースもあります。また、精神病をもっていた女性が、出産を通じて病気が再発することもあります。

精神病の母親は、自分のことで精一杯になり、子供を愛する余裕がありません。また、症状から子供に無関心になるケースもあれば、愛情にムラがあり、可愛がっていたかと思うと突然怒り出すこともあります。周りの家族がサポートできれば良いのですが、そうでない場合は虐待やネグレクトに発展することもあります。



5 発達障害で子供を愛せない

病気ではありませんが、生まれつきの脳の発達の偏りにより、対人関係をうまく築けない人がいます。人の気持ちを読み取れない、場の空気を読み取れない、感情をコントロールできないといった問題が起きるためです。これを発達障害と呼びます。普通は子供の頃に気づかれるものですが、軽い場合は、自分も周りも障害に気づけません。

発達障害の母親は、子供が嫌いなわけではありませんが、子供の気持ちに共感するのが苦手です。自分の考えを押しつけたり、嫌がることを無理にやらせたり、それでいて自分の楽しみを優先して、子供の心を傷つけます。

また、気分にムラがあり、些細なことで子供に激怒することもあります。子供は傷ついているのに、本人は悪いことしていると感じません。いわゆる毒親と呼ばれる人には、このような発達障害がみられることが多いのです。



本来、母親は子供を愛せるようにできているのですから、子供を愛せないことには必ず理由があります。今回紹介したような内容がいくつか重なっている場合もあるでしょう。

もし、あなたが子供を愛せない母親である場合は、一人で抱え込まないで、早めに心理相談や医療機関に助けを求めましょう。完全に良くすることは難しいのですが、相談することや、薬を飲むことで少しずつ改善されることがあります。

すでに子供の心を傷つけてしまった場合は、子供に謝りましょう。親にも事情があったからと開き直るのでなく、自分が傷つけてしまった事実を素直に認め、心から謝るべきです。「黙っていても、いつか子供は分かってくれる」と期待するべきではありません。自分の言葉で、謝罪の気持ちを直接伝えましょう。


また、あなたが母親から愛された経験がなく、それが苦しみや恨みになっているならば、その理由を知ることは大切なことと思います。それを知ったからと言って、恨みを解くことはできないかも知れません。しかし、母親の冷たい仕打ちに事情があったことが分かれば、自分を責める気持ちに関しては少し楽になるかも知れません。