ひきこもりの3つの原因
コロナ禍が明けた2023年、内閣府の発表によると、日本には146万人の引きこもりの人がいます。これは日本の人口のおよそ1%に当たり、男性が女性の4倍です。ひきこもりは、不登校や退職から始まることが多いのですが、特にコロナ禍での失業をきっかけにひきこもりになった人は、全体の20%もいます。
ひきこもりとは、半年以上毎日を家で過ごし、社会との接点がなく家族とだけ交流があることを言います。1日中部屋から出ない人もいれば、コンビニやスーパーへの買い物などをしている人もいます。ただし、病気のために自宅療養している人は、ひきこもりとは言いません。
ひきこもりは、40才以上の中高年の人が半数以上を占めており、80代の年老いた親が、50代の子供の面倒をみているという家庭もあります。これを8050問題と呼んでおり、社会問題として取り上げられています。このように年齢を問わず、たくさんの人がひきこもるのには何か理由があるのでしょうか?
今回は、ひきこもりの3つの原因について説明しましょう。
ひきこもりとは、半年以上毎日を家で過ごし、社会との接点がなく家族とだけ交流があることを言います。1日中部屋から出ない人もいれば、コンビニやスーパーへの買い物などをしている人もいます。ただし、病気のために自宅療養している人は、ひきこもりとは言いません。
ひきこもりは、40才以上の中高年の人が半数以上を占めており、80代の年老いた親が、50代の子供の面倒をみているという家庭もあります。これを8050問題と呼んでおり、社会問題として取り上げられています。このように年齢を問わず、たくさんの人がひきこもるのには何か理由があるのでしょうか?
今回は、ひきこもりの3つの原因について説明しましょう。

1 心が傷ついたまま戻らない
ひきこもりは、ある日突然起こるものではありません。否定されてばかり、苦労ばかりで実りがない、馬鹿にされる、仲間外れ、いじめ、こうした辛い仕事や学校生活を無理して続けているうちに、生きるエネルギーが徐々に枯れていきます。
ついに心が燃え尽きて、長い休みをとったことが引き金になり社会に戻れなくなるのです。そして、回復できないまま、半年、1年と時間だけが過ぎて行きます。ひきこもりの半数くらいが、このような燃え尽きによるものと考えられています。
限界まで我慢している状況で、一旦休みをもらうと緊張の糸が切れて、立ち上がれなくなるのです。コロナ禍でひきこもりの人が増えたのも、ずっと我慢して働いていた人が退職や在宅となり、そこから次へ進む気力を失ったのが原因と考えられます。こうした背景に、長年続いた不況により、日本には職場環境の悪い会社がたいへん多いことがあるでしょう。いわゆるブラック企業です。
それでは、しばらく休んだら、ひきこもりをやめて次へ進めばよいかと思えるのですが、そう簡単に行きません。傷ついた心を回復させ、失った自己肯定感を取り戻さなくては社会に戻ることはできません。
ところが、癒されなくてはならない心をもっているのに、社会からは「負け組」「逃げている」と呼ばれ、家族からは「いつまで休んでいるの?」「他の人たちは頑張っているよ」「恥ずかしいから近所の人に見られないようにして」と大切にされず、癒されることはありません。
せめて、家族から、「頑張ったのだから、しばらくゆっくりしていたらいいよ」と労いの言葉があれば違うのでしょうが、そうでないことの方が多いのです。ひきこもりを好きでやっている人はいません。このままではいけないと一番焦っているのは本人です。しかし、ひきこもっている家庭の中に、傷ついた心を回復させられる力がないため、心は枯れたままで先へ進む力が湧いてこないのです。
このように、ひきこもりの大きな原因として、ブラック企業が多いこと、そして、家庭や社会に傷ついた人を癒す力がないことがあります。例えば、マラソン選手がすべての力を出し切って、ゴールをすると倒れこんでしまいます。
そこで、コーチから水分や労いももらえず、「すぐにまた同じコースを走ってこい!」と言われても、心も体も動きません。ゴールに倒れてジッとしているしか手がないのです。

2 大人の発達障害やパーソナリティ症がある
発達障害とパーソナリティ症は生まれつきの要素がつよい障害で、症状が軽い場合は、自分でも周りも気づくことなく過ごします。発達障害とは、脳の発達の偏りのために、相手の気持ちや場の空気を読み取る力に劣っていたり、物事へのこだわりがあります。
パーソナリティ症は、社会と関りをもとうとしない、極端に依存的などといった性格の偏りがあるものです。どちらも、人付き合いやグループの活動がうまくできません。生まれつきのものなので、自分の努力では改善できず、我慢しながら学校や職場の生活を送るしかありません。
我慢の限界のタイミングで長い休みがあったり、仕事を辞めたりといったきっかけがあると、そのままひきこもりになることがあります。「自分はダメな人間だ」「社会に必要ない人間だ」と自信を失っており、努力しても同じ苦しみを味わうことが分かっているので、再び社会に出ていく力は湧いて来ません。
このように、発達障害やパーソナリティ症があることに気づかないまま、社会に適応できずに挫折してひきこもりになるケースは、全体の40%以上と考えられています。
3 未治療の心の病気がある
心の病気は、自分も周りも気づかないうちに発症することがあります。病気の症状でひきこもっているのに、それに気づかずにいるケースは全体の20%と言われています。
ひきこもりを起こす心の病気には次のようなものがあります。
・心身症:子供のひきこもりの原因になる代表的なものです。頭が痛い、腹が痛い、朝が起きられない、と訴え、小児科や内科で検査をしても異常がみつかりません。原因不明の痛みや自律神経失調などがみられる病気です。
・社交不安症:周りから変な目で見られているという不安や緊張から、人前に出られなくなる病気です。以前は対人恐怖症と呼ばれていました。
・強迫症:強迫症の中でも、口臭、便臭、腋臭(わきが)など、自分の臭いが人に迷惑をかけると思い込んでしまうことを自己臭症(じこしゅうしょう)と呼んでいます。自己臭症はひきこもりの原因になりやすい病気です。
・醜形恐怖症(しゅうけいきょうふしょう):自分の姿が醜いと思い込み、人に見られたくないために外に出なくなる病気です。何度も美容整形を受ける人もいます。
・統合失調症:人に監視されている、悪口を言われている、というような被害妄想により
外へ出ることが不安になる病気です。
これらの病気は、薬の治療で回復することができます。病気がよくなると、ひきこもりも改善されて行きます。ところが、長い間病気があることに気づかなかったり、本人もこれ以上傷つくのが嫌で治療を希望しないこともあり、ひきこもりが長く続いてしまうことがあります。
人がひきこもるのには必ず理由があります。決して怠けているわけではなく、好きでひきこもっている訳ではありません。どうして良いか分からずに一番苦しんでいるのは本人です。力ずくで家から連れ出そうとしてもよい結果はえられません。
保健所や病院に相談窓口があります。ひきこもりの背後に、発達障害、パーソナリティ症、心の病気が隠れていることも大変多いので、早めに専門機関に相談しましょう。
