うつ病の療養中で苦しい…具体的な場面と対処法

うつ病は、例え治療を始めたからと言ってもすぐに治る病気ではありません。かぜのように、1回病院で薬をもらったら終わりではないのです。最低、数か月間は通院しないと良くなりません。良くなる日もあれば、調子を崩す日もあり、全体としては、「3歩進んで2歩下がる」という感じで良くなっていきます。

しばらくは辛いことが続くため、調子が悪い時には、ネガティブになってしまうこともあるでしょう。また、うつ病の療養中に限って、「同期が出世した」、「友達が結婚した」など、周りがうまくいっているニュースが耳に入ってくるものです。

そうすると、世の中から自分だけ取り残されたような気持になってよけい不安になります。将来のこと、仕事のこと、お金のことなど、病気以外のことでも悩んでしまいます。

今回は、うつ病の療養中に具体的に苦しくなる状況を紹介し、その対処の仕方について説明しましょう。





1 心配や不安で押し潰されそうになる

一人でいると、将来のこと、仕事のこと、お金のことなど、ネガティブな考えが止まらなくなり、「このままではいけない!」と焦ってしまうことがあります。

答えの出ない問題が頭の中をグルグルとまわり、マイナス思考の底なし沼にズブズブとはまってしまうのです。こんな時は考えることにブレーキをかけなくてはいけません。しかし、人は、考えを止めようとすればするほど、考えてしまうもの。考えを止めるためには、体に意識を向けることがコツです。

まずは深呼吸。ゆっくり腹式呼吸をして、全身に酸素が行き届く感じに意識を集中してみるのです。ストレッチや体操など、体を動かすのも良いでしょう。日頃から、散歩、軽い運動、ヨガなどを習慣にしておくことをお勧めします。

何かおいしいものを食べて、意識を味覚に向けるのも手です。また、誰かに電話をしてみて、会話に集中してみるのも良いでしょう。何をしてもダメなら、思い切って早めに眠ってしまいましょう。

ただし、アルコールで考えを止めるのはお勧めではありません。アルコールが抜けたときによけい苦しくなったり、習慣になることもあります。



2 できない自分を責めてしまう

うつ病は、気力がなくなり、今までできた事ができなくなる病気です。できないのは当然なことです。しかし、何事も頑張って生きてきた人からすれば、これを怠けとか努力不足と感じます。そして、「ダメな人間だ」と自分を責めてしまい、ついには生きる価値がないという結論が出てくることもあるでしょう。

人生うまく行っている時は、「どうして生まれてきたのか」、「人生の目的は何か」と、哲学的なことを考えることはありません。自分を責め続け、「生きる価値のない、世の中に必要のない人間だ」と、哲学的になってしまうのは、うつ病の症状です。

できないことは、努力不足とか、怠けではありません。むしろ、病気が良くなってくると、何かできそうな感じが出てくるので、できないことに焦りを感じます。病気であることを再認識しましょう。

理屈では分かっても、それでも自分を責めてしまう場合は、不安や心配でパニックになる場合で説明したように、意識を体に向けるようにして、自分の価値については考えないことが大切です。そもそも自分にどのような価値があるかは、誰にも分からないことです。



3 消えてなくなりたい

自分を責め続けていると、消えたい気持ちが衝動的に来ることがあります。これは、自殺につながる大変危険な症状です。一人で抱え込まずに、誰かに助けを求める連絡をしましょう。





4 ヒマなのに、何をしたら良いのか分からない

うつ病が良くなってくると、仕事を休んでいる場合、時間を持て余してしまうことがあります。「ヒマなのに、何をしたら良いのか分からない」「朝起きて、今日も1日やることがない」と感じるのです。

仕事で忙しい人が聞いたら、幸せな悩みと勘違いされますが、うつ病の人は、「時間があるならば、何か建設的なことをしなくてはならない」という強迫観念をもっていることが多く、やるべきことができない状況をこのように表現することがあります。実際には、「できないのに、時間だけがある」という意味なのです。

そもそも何もできないのですから、「病気だから仕方ない」と開き直るしかありません。とりあえず好きなことをして1日を過ごしましょう。ゲームでも、動画を見るのでも、何でも良いのです。建設的なことは何もできなかったと後悔する必要はありません。こうした1日の過ごし方でもうつ病は回復していきます。



5 友人に病気を言えない

うつ病のために人付き合いをしなくなると、友人から付き合いが悪くなったと誤解されることがあります。うつ病を説明しても、心配してもらうどころか、「そんなの気の持ちようだよ」と、病気であることを認めてもらえず、傷ついてしまうことも良くあることです。

病気のことを伝える場合は、分かってもらえる人にだけに伝えるようにしましょう。病気と理解しない友人は、本当の友人ではないのかも知れません。


うつ病は、無理をして頑張ってきた人ほどなりやすい病気です。しかし、病気は頑張って治すものではありません。むしろ、「病気だから仕方ない」とあきらめて、「何もできないことが当たり前」と開き直ることが大切です。薬の力を信じて、自然な回復を待ちましょう。

未来のことはできるだけ考えないことです。また、元気だった頃と今の状況を比べず、むしろ最悪だった時と比べて、「先月より良くなっている」、「去年より良くなっている」と長い間隔で症状をとらえるようにしましょう。

また、お金のこと、仕事のことなどの具体的な心配事は、自分だけで抱え込まずに病院の医師やケースワーカーなど、病気をよく知っている人に気軽に相談してみましょう。