無価値感が心に染みついてとれない人の6つの特徴

大失敗をした後、自分を責めてしまい、「自分は必要のない人間だ」と感じる人がいます。このように、自分に生きる価値がないと感じることを無価値感と呼びます。自己肯定感の真逆の感情です。大きな挫折や大切な人を失った時に一時的に感じることがありますが、健康な人ならば普段は感じることはありません。

無価値感は、うつ病の症状として現れることがあります。これは、思い込みや被害妄想に分類されるもので、病気になるまでは自分の価値について考えなかったような人が、「自分は罪深い」、「生きている価値がない」と自分を責めてしまう状態です。

ところが、うつ病とは診断できないのに、子供の頃からいつも「自分は必要がない、いらない存在だ」と考えてしまう人もいます。心の中には、つねに自分を否定する感情がうずまいていて、そのために生きづらさを感じている人です。無価値感が染みついてしまった原因は、子供の頃の否定された経験の積み重ねと考えられます。

死別や離婚で親を失った、親や学校の先生からいつも否定的な言葉をかけられてきた、クラスメートからいじめを受けてきた、こうした辛い体験の積み重ねから起きているのです。愛着障害とか複雑性PTSDという診断がつけられる場合もあります。

今回は、このように無価値感が心に染みついてとれない人の6つの特徴について説明しましょう。





1 人の役に立っていないと気がすまない

自分に生きる価値がないと感じているので、努力して人の役に立とうとします。人の役に立っていないと自分に価値を感じません。何かに役に立っている状況が続いていれば安心を感じますが、それができなくなると消えてなくなりたいと感じます。

無理をしてでも人に役に立とうとするので、うつ病や適応障害などの心の病気になりやすい傾向があります。病気になっていつものことができなくなると、自分の生きている意味を失い、自死を考えてしまうこともあるでしょう。



2 人の気持ちに敏感

自分に価値はないと思っているので、他人の評価が、そのまま自分の価値です。どう思われているか、いつも気になっています。人と会うと、よく思われようと気を遣い過ぎて疲れます。



3 うまく行っている人と比べて自分を責める

自分の価値に敏感なので、無意識に人と比べてしまいます。輝いている人、うまく行っている人と比べては、自分には価値がないことを責めます。SNSには成功を自慢する人が多いので、それを見るたびに気持ちが落ち込みます。





4 どうせ何をやってもうまく行かないと思う

よい仕事に出会ったり、人を好きになっても、どうせうまく行かないと思います。ですから、仕事でも恋愛でも積極的になれません。幸せを感じても、すぐに壊れると感じます。



5 自分の成功を認められない

仕事でそれなりの実績を積み上げた人であっても、自分の力で成功したとは思えません。たまたまうまく行っているだけと考えます。謙虚というわけではなく、自己評価が低すぎるのです。褒められても、嫌味に聞こえてしまうことがあります。ですから、新しい仕事を託されると、うまくできる自信がないために、不安で仕方ありません。

周りから実力を認められ、職場でよいポジションを与えられても、「実力がないのに周りを騙している」と感じる場合もあります。これを「インポスター症候群」と呼びます。「インポスター」とは詐欺師という意味です。



6 完全主義

柔軟な発想ができず、物事を白か黒で判断する傾向があります。そのために、よくない出来事があると、自分が原因であると感じ、徹底的に自分を追い込みます。よくない出来事が起きるたびに、自分には価値がないという考えが確信となるでしょう。この悪循環でいつまでも無価値感から抜け出せません。


うつ病の症状で無価値感を感じる場合は、薬の治療で改善されて行きます。しかし、子供の頃からずっと無価値感を感じている人は、愛着障害とか複雑性PTSDという病名がつけられて、確実な治療方法がありません。

最近はポジティブ心理学が流行しているので、物事をポジティブに考えれば解決するようなアドバイスを受けやすいのですが、無理やり自分に価値があると言い聞かせても変わりません。また、インポスター症候群のように、何か成功をして、人から認められたら改善されるものでもありません。努力して解決できるものではないのです。

それでは、どうしたら無価値感から抜け出せるのでしょうか?実は、変わろうとする努力ではなく、癒されることが必要なのです。自分を肯定する感情、すなわち「生きていていいんだ」と感じることは、誰でも生まれつき備わっているものです。

ところが、子供の頃に生きることを否定され続けたので、自分を肯定する感情は抑え込まれてしまいました。時間はかかりますが、生きることを楽しむことを通して、本来の自分を肯定する気持ちが少しずつよみがえってきます。信頼できる人と話ができる、ペットとふれあう、趣味に興じる、こうした日常の安らぎや楽しみを経験することで癒されていきます。特に信頼できる人との出会いは大切です。いっしょにいて安らげるパートナー、友人、カウンセラーの存在はとても大きい力となります。