ASDが持つあまり知られていない9つの特徴
大人の発達障害の代表として、自閉スペクトラム症・ASDがあります。以前は、アスペルガー症候群という名前で知られていましたが、最近はASDという呼び方が一般的になってきました。
相手の気持ちや場の空気を読みとる能力に劣り、友達をつくることや、友達関係を続けることが得意でありません。こだわりという症状もあり、自分のルールを変えられず、あらゆる場面で融通が利きません。社会に出ると、チームプレイの必要な職場で浮いてしまうのが特徴です。症状のレベルに差はありますが、日本人の10%に見られる一般的なものです。
ASDというと対人関係の問題と考えがちですが、それ以外にも、心の抵抗力の弱さ、体の感覚の違和感などが見られることがあります。それほど知られていませんが、大人になってからの生きづらさとして実感されることがあるのです。
今回は、あまり知られていないASDの特徴を9つ紹介しましょう。
相手の気持ちや場の空気を読みとる能力に劣り、友達をつくることや、友達関係を続けることが得意でありません。こだわりという症状もあり、自分のルールを変えられず、あらゆる場面で融通が利きません。社会に出ると、チームプレイの必要な職場で浮いてしまうのが特徴です。症状のレベルに差はありますが、日本人の10%に見られる一般的なものです。
ASDというと対人関係の問題と考えがちですが、それ以外にも、心の抵抗力の弱さ、体の感覚の違和感などが見られることがあります。それほど知られていませんが、大人になってからの生きづらさとして実感されることがあるのです。
今回は、あまり知られていないASDの特徴を9つ紹介しましょう。

1 辛いことに向かっていけない
心の抵抗力が弱いため、心に傷を負いやすい傾向があります。辛い出来事があると、後遺症でトラウマが残りやすいのです。普通の人なら、「そんなことで傷つくの?」と言われるような小さな出来事でもトラウマになり、苦しかった場面がフラッシュバックしたり、繰り返して夢で見るようになります。また、出来事に関連した場所や人を無意識に避けるようにもなります。
何かのきっかけで傷つくと、そのことを再度チャレンジできません。気持ちに強力なブレーキがかかってしまうのです。それでも向かって行こうとすると心が壊れてしまいます。はたから見ていると辛いことから逃げているように見えますが、本人もできずに苦しんでいるのです。
2 知らないうちに相手を傷つけ、自分も傷つく
これを言ったら相手がどう反応するか想像できません。例えば、最近体重が増えて気にしている女性に向かって、「太りました?」と言って、相手の機嫌を損ねるといった感じです。しかし、何で怒っているのかが理解できません。
むしろ、突然相手が怒ったことにびっくりするのです。「失礼なことを言わないでください!」と怒られてしまうと、心の抵抗力が弱いために深く傷つきます。相手を知らないうちに傷つけて、自分も傷ついてしまうのです。
3 ストレスが体に出やすい
例えば、職場で辛いことがあると、翌日は倦怠感がつよくて家を出られません。声が出なくなったり、手足にしびれが出る人もいます。他にも、体の痛みや胃腸障害が出ることもあります。自分の心の状態を言葉で理解する力に劣るため、ストレスをため込んでしまい、心の不調が体の不調として現れやすいのです。
4 疲れているのに気づかない
脳と体は神経系やホルモンによって密接につながっていて、体は脳からの指令で動きます。この仕組みがあるため、自分の意思によって体が動き、心と体が一体である感覚を持つことができるのです。ところが、ASDの人は、神経系やホルモン系の発達に問題があることから、心と体の一体感に乏しいと言われています。
困ってしまうのは、実際の体の疲れと、感じている疲れにギャップがあることです。一旦仕事を始めると、仕事への義務感や集中のしすぎも重なり、終わるまでは疲れを感じません。仕事が終わって、ひどい疲れに気づき、何日間も寝込んでしまうこともあります。こうしたことを続けていると、職場で信頼を失ってしまいます。

5 体の性に違和感をもつ
思春期には体の性的な成長が起こりますが、心と体の一体感に乏しい場合、このような体の変化を自分のものでないように感じるASDの人がいます。その上、異性との関係で傷ついたりすると、自分の体の性を否定的に感じることもあります。ASDの中には、心の性と体の性が一致しないでいる人もいるのです。
6 酷い仕打ちをされても関係を続ける
普通ならば、危害を加えそうな人には近づきませんし、酷い仕打ちをされたら、その人との付き合いをやめます。ところが、ASDの人は、危ない人と知り合いになろうとしたり、良くない関係を保ち続けようとすることがあります。
例えば、パートナーからDVを受けても別れない、詐欺でお金をとられても友達でいる、職場でハラスメントを受けても辞めない、といったような感じです。
闇バイトに手を出してしまい、いつのまにか、悪のグループの手下になっていることもあります。
7 心配性で不安になりがち
ASDの人は、想像力を働かせるのが苦手と言われています。辛い状況では、それが良くなっていくというイメージを広げられません。何かトラブルにぶつかると、最悪のことばかりが頭に浮かんで、不安になります。
冷静に解決策を考える気持ちの余裕は出てきません。ひどいとパニックを起こす場合もあります。周りの人からは、心配性でいつも不安を抱えているように見えてしまうのです。
8 ASDの60%近い人がADHDも合併している
大人の発達障害でもう一つ代表的なものが、ADHD・注意欠如多動症です。不注意、落ち着きのなさ、衝動性があるため、大人になってからも、「おっちょこちょい」「時間を守れない」「片付けができない」「計画性がない」といった問題が起きます。
最近のアメリカの調査では、ASDの人の約60%に、ADHDの症状が見られることが分かってきました。どちらも脳の報酬系という部分に問題があるので、両方が合併することは当然のことなのです。
精神医学では、最も大きな症状を通して病名をつけます。ASDと診断されている人でも、その半分以上には、不注意、落ち着きのなさ、衝動性といったADHDの症状も見られるのです。自分は、ASDかADHDか分からないと言う人も多いのですが、それは両方がいっしょにあると考えたら良いでしょう。
9 HSPの中にはASDが多く含まれている
HSPとは、ハイパー・センシティブ・パーソンの略で、生まれつき感覚の敏感な人を呼ぶ心理学用語です。感覚の敏感な人が、どのような心の傾向をもっているかを研究したことから始まったものですが、いつしか自己啓発本やネットで取り上げられるようになり、社会でも広く知られるようになりました。「繊細さん」とも呼ばれています。あくまでも心理的な傾向を説明するものなので、障害ではありません。
ASDには、音・光・臭いなどの刺激に敏感な感覚過敏という症状を持つ人がいるため、それだけを取り上げるとHSPに含まれてしまいます。HSPと思っている人の中には、ASDがかなり含まれているということです。「病院でASDと診断されているけれど、本当はHSPだと思う」という人がいますが、そうでなく両方あると考えるべきでしょう。
こうしたASDの症状を見ていくと、仕事の効率や実績が最優先される現代社会では、とても生きづらいことを理解できたかと思います。それだけでなく、本人は一生懸命頑張っているのに、「努力していない」「辛いことから逃げている」と、誤解される場面も多くあるでしょう。
生まれつきの脳の仕組みからそうなっているので、努力で大きく変えられるものではありません。背伸びをして社会の歯車に合わせていると、自分が壊れてしまうことがあります。人の価値は、能力や仕事の実績で決められるものではありません。周りと比べることなく、自分なりの生き方のペースをつかめることが大切です。
