うつ病を治していくためにやるべき 7つのこと

私たちの体は、呼吸と食事の栄養を通して、エネルギーをつくって生活しています。体と同じように、心にも呼吸や栄養が必要なことをご存じですか?心の呼吸や栄養とは、愛情や喜びを感じるポジティブな体験のことです。そして、これが足りなくなって、生きるエネルギ―が枯れ果てた状態がうつ病なのです。


子供は、食事を与えられただけで、親から注がれる愛情が不足していると、心が正常に育ちません。大人になっても、愛情を受けられない生活を続けていると、健康的な心の営みはできなくなります。愛情とは、いくつになっても、心に不可欠な存在なのです。


大人になってからの愛情というと男女の愛情を想像すると思いますが、それだけでなく、家族、友人、ペット、さらに自然や物など、すべての存在との関係にも愛情があります。そして、愛情があると、安らぎ、幸福感、癒しといった安心感が生まれてきます。この安心感が、心にとっての呼吸のような存在になるのです。


また、心には喜びという刺激も必要です。行動して喜びの刺激を得ると、生きる力が湧いて来ます。喜びは、心にとっての栄養のような存在です。


心は、脳の神経伝達物質の働きによって支えられており、安心感はセロトニン、喜びはドーパミンという物質が関わっていることが分かっています。うつ病とは、セロトニンやドーパミンの分泌が少なくなった状態です。心の観点から見ると、安心感と喜びという栄養が不足してしまい、心が枯れてしまったような状態とも言えるでしょう。



うつ病を治していくためには、安心感や喜びを得ていくことが大切です。そのためには、どのような生活をしたら良いのでしょうか?今回は、うつ病を治していくためにやるべき 7つのことを説明しましょう。





1 焦らずにのんびりすること

安心感とは、心地よい、穏やかな気持ちを体験することです。これは、うつ病の回復にとても大切な要素なのです。例えば、きれいな景色を見ながら、「癒される」、「ゆったりできる」、「生きていて良かったな」、「このままでいいんだ」と感じるような体験です。


ところが、「あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ」という忙しさや焦りは、安心感から離れてしまいます。社会的な地位や名誉へのこだわり、高過ぎる理想を掲げること、憧れる人と比べるなども、うつ病に良くありません。「誰々から嫌われたくない」、「職場で能力を認めてもらいたい」と背伸びをしている生活も同じです。


うつ病の治療中は、何よりも焦らずのんびりすることです。「休んでいる間に新しいスキルを勉強しておこう」とか、「早くリワークプログラムに参加しなくては」と焦るのではなく、安心を実感できるような毎日を心がけてください。



2 小さな喜びを積み重ねる

日々の生活に何か喜びがあることは、心に栄養を与えていることと同じです。喜びにも色々な種類がありますが、実は、大きな喜びよりも、小さな喜びを積み重ねていく方がより幸福を感じられるという調査結果があります。

小さな喜びとは、趣味に没頭する、ショッピング、エンタメ、カラオケ、マッサージやサウナ、カフェや公園巡り、友人とランチ、ペットとふれあう、ガーデニングなど、人それぞれに楽しめることが何かあるでしょう。こうした日々の細(ささ)やかな楽しみ積み重ねは、仕事で大成功した、試験に受かった、というような成功体験よりも、心を満たしてくれるのです。

食べ物には、栄養の質の良いものと悪いものがあります。味が濃くておいしいからと言っても体に良くないものもあり、そればかり食べていると健康を壊します。これと同じように、心の栄養にも質の差があり、一時的なつよい刺激だけを求める快楽主義は心に良くありません。心に残って、長く幸せを感じるようなことが心の栄養になります。

楽しいからと言って、何をやっても自分にプラスになるということではないのです。例えば、お酒をたくさん飲んだり、浪費ばかりしていると、心は苦しくなります。

幸福度の調査からは、自分だけが満足するような自己中心的な行動よりも、他人を喜ばすような行動の方が幸福を大きく感じることが知られています。例えば、自分のものばかり買っていると負債を感じますが、家族や友人にプレゼントを買ってあげると、より幸せを感じるのです。



3 嫌なことは我慢しない

いくら心に良いことをするように努力していても、周りの人から心ない言葉をかけられたり、酷い仕打ちをされては、心を傷つけられてしまいます。例えば、「いつになったら働くの?」「もう治っているんじゃないの?」といった言葉をかけられたり、病気を理解せずに「しっかりしろ」と説教をしてくる人もいます。

こうした悪いものから、自分で自分の心を守らなくてはいけません。具体的には、付き合って疲れる人とは付き合わない、関わって不愉快になることはやらないようにしましょう。自分の素直な気持ちを最優先にして、嫌なことは避けるような生活を心がけましょう。



4 規則正しい生活

生活の中の安心感は、規則正しい生活習慣と深くつながっています。セロトニンという物質は、生活リズムとも関係があるように、脳の構造からも、規則正しい生活と安心感は密接に関連しているのです。特に朝起きる時間、夜床につく時間、食事をする時間を一定にすることが大切です。
うつ病の時には規則正しい生活を心がけましょう。楽しむことが大切だからと言っても、規則正しい生活を壊しては意味がありません。例えば、動画を夜遅くまで見てしまうとか、SNSをダラダラしてしまうとか、楽しいからと言っても、生活のリズムを崩すようなことは禁物です。





5 たくさん睡眠をとる

毎日しっかり睡眠をとることは、セロトニン分泌のために最も大切なことです。日中の安心感にもつながります。しっかり眠ることがうつ病の治療だと考えても過言ではありません。毎日7~8時間の睡眠をとることを心がけましょう。

最近は、睡眠グッズや睡眠アプリが人気です。眠ることを楽しいイベントのように感じられるものがあればお勧めです。

また、うつ病の症状で不眠症がある場合は、積極的に睡眠薬を利用するべきです。睡眠薬は「認知症になる」「依存性がある」とネットに書いてあることもありますが、ほとんどがデマ情報です。医師の指導のもとで使うならば危険はありません。むしろ不眠を放置しておくと、うつ病は治らないどころか、他の内臓の病気にもなってしまいます。



6 バランスの良い食事

ネットには、うつ病に良い食事として、セロトニンの材料になるトリプトファンが多く含まれたバナナや、葉酸やビタミンBが含まれたサプリなどが紹介されています。しかし、よほど偏食がない限りは、特別なものを無理して食べる必要はありません。何よりもバランスの良い食事を心がけましょう。

米、パン、麺類などの炭水化物だけでなく、必ず肉・魚・豆類などのタンパク質、そして野菜を付け加えてください。また、美味しく食べることも大切なことです。

ただし、栄養の取り過ぎは、うつ病を治りにくくさせることが知られています。肥満はうつ病を治りにくくする原因の一つです。特にスイーツなどの炭水化物やアルコールの取り過ぎには要注意です。



7 軽い運動

初期の頃は家でゴロゴロしているべきですが、回復してきたら、週に3日程度の軽い運動をしましょう。運動といっても、1日20分程度のウォーキングで十分です。無理をしてスポーツジムに通う必要はありません。体を動かして「気持ち良い」と感じることが大切なのです。


心のゆとりがなくなり、本来の心の状態を失ってしまったのがうつ病です。安心感、小さな楽しみの積み重ね、我慢をしない、食事・睡眠・運動を柱にした規則正しい生活、こうしたことを意識することで、本来の心の状態を取り戻すことができるでしょう。

かと言って、今日をのんびり過ごしたら、明日は元気というほど簡単なものではありません。時間をかけて悪くなったのですから、良くなるのにも同じくらいか、それ以上の時間がかかります。焦らずに、安心感のある生活を積み重ねていきましょう。