うつ病の人に贈る 7つの言葉

うつ病ほど誤解を受けやすい病気はありません。見た目は変わらないのに、仕事や家事をしなくなるので、「怠け」と勘違いされます。病気になったら心配されるのが普通なのに、うつ病では、「元気出しなよ」、「気のもちようだよ」と、むしろ追い立てられることもあります。病気の苦しみを理解されないことほど辛いことはありません。うつ病はとても理不尽な病気です。

今回は、うつ病を抱えて苦しんでいる人のために、7つの言葉を準備しました。長い闘病生活を少しでも楽に過ごせるように、力になると幸いです。





1 心が弱いからうつ病になるのではありません

うつ病は、心の弱い人がなる病気ではありません。以前は、うつ病になりやすい性格が論じられていましたが、結論は出ませんでした。今では、つよいストレスを抱えたり、休みなく無理をしていたら、誰でもなる病気と考えられています。むしろ、頑張り過ぎた証拠とも言えるでしょう。



2 病気だから、できないのが当たり前です

うつ病は、仕事だけでなく、家事や身の回りのこともできなくなる病気です。部屋は汚れ、風呂も入らない、というだらしない生活になります。これは症状によるものですから仕方がありません。むしろ、部屋がきれいで、身だしなみもきちんとしているならば、うつ病は治っています。できない自分を「情けない」と責めるのでなく、「病気だからできなくて当たり前」と開き直りましょう。



3 人より多くの荷物を背負っています

病気を抱えて生きて行くことは、人よりも見えない荷物をたくさん背負っていることです。

同じことをするのに、健康な人よりも何倍もエネルギーが必要になります。ですから、人とペースが同じでなくても良いのです。人と比べないようにしましょう。「今日1日、洗濯しかできなかった」でなく、「今日は洗濯を頑張れた」と、胸を張るべきです。





4 休むことは自分を大切にすることです

健康状態に応じて休むことは、サボることではありません。自分を守るために大切なことです。むしろ、自分を大切にしてこなかったから、うつ病になったのかも知れません。

「みんなが働いているのに、休むのは罪深い」、「働いていないと気が済まない」という人も多いのですが、自分の健康は自分でしか守れません。周りに合わせるだけでなく、「できないことはできない」、「やれないことはやれない」とブレーキをかけないと、自分が壊れてしまいます。休むことは、自分を大切にすることです。



5 克服しなくてもいいのです

「病気を克服する」という言葉がありますが、うつ病は努力して良くなる病気ではありません。むしろ、力を抜くことで回復して行きます。朝の散歩や運動は、確かに効果がありますが、無理してやればよけい悪くなるでしょう。「今日も何もできなかったな」という日を重ねているうちに、自然に回復して行くものです。

また、薬を飲んで生活ができているのならば、治ったと考えましょう。予防のために薬を続けながら、少しずつ減らしていけば良いだけです。



6 薬は長く飲んでも問題ありません

たくさんの人が一番気になることは、10年20年と、こんなに長く薬を飲んでも大丈夫かということです。うつ病に使う薬が世に出て60年以上たちますが、大きな問題はありません。

欧米の情報をもとに、安定剤や睡眠薬で依存症や認知症になると言う医師やメディアがいます。実際には、日本と欧米では、体質、医療制度、法律、歴史と、事情が大変異なります。適切に使用する限り、依存症に関しては、日本で大きな問題は起きていません。また、安定剤や睡眠薬で認知症になることは否定されています。医師が健康保険で処方している薬は、心配なく飲むことができます。

ただし、うつ病の薬の中には、食欲が出たり、便秘をするものもあるので、体重増加による生活習慣病には注意しましょう。



7 生きる意味を知っているのは神様だけです

うつ病には無価値感という症状があり、「自分は価値のない人間である」と悩むようになります。うつ病の時に生きる意味を考えるのは症状の一つなのです。生きる意味や目的は人それぞれ。それを知っているのは、神様だけです。

答えの出ないことが頭の中をグルグル回り始めたら、意識を他に向けて無視するのが良いでしょう。体を動かす、飲食をする、人と話す、など、体や外の世界へ意識を向けるのです。ただし、お酒で紛らわすのは良くありません。物事の考え過ぎが余計具合を悪くさせます。


世の中には、うつ病で働けないことをバッシングする心無い人がいます。「働かなくてズルい」と言うのです。こうした人たちは、病気で働けないことが、どれだけ辛いことかが理解できていません。


アメリカのポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマンによると、働くとは、それ自体が生きがいとなり幸福感につながります。誰でも、忙しくて一時的に「働きたくない」と考えることはありますが、健康に働けて、世の中の役に立っていることほど幸せなことはありません。お金の問題以上に、働けていること自体が幸せなのです。ですから、病気で働けないこと、失業などで働いていないことほど苦しいことはないのです。


うつ病を理解できない人の声は無視して、無理をせず、医療だけでなく積極的に福祉も利用しましょう。実際に、障害年金や生活保護などをステップにして、元気を取り戻している人がたくさんいます。自分を責めて、自分が嫌いになって、どんどん深みにハマるのが一番良くありません。いろいろな人の助けを受けながら、少しずつ本来の自分を取り戻しましょう。