子どもの頃のストレス 5つの後遺症

虐待、ネグレクト、いじめなど、子どもの頃にたくさんのストレスを受ける人がいます。つらい思いをした人ほど幸せをつかんでもらいたいのですが、子どもの頃にストレスを受けると、大人になっても心と体に後遺症が残ることもあります。


特に思春期までの期間は、心と体がつくられるとても大切な時期です。この時期に虐待、ネグレクト、いじめなどを受けると、それを跳ね返すことはできず、トラウマになって残ったり、神経系やホルモン系に異常を残してしまいます。


今回は、子どもの頃のストレスで大人になっても残ってしまう5つの後遺症を紹介しましょう。





1 自己肯定感が低く、良好な対人関係をつくれない

子どもの時に十分な愛情を受けられず、ネガティブな感情をぶつけられてばかりいると、自己肯定感が育ちません。「自分は必要な人間だ」、「生きていていいんだ」という感情がないままに大人になってしまいます。

自己肯定感が低いので、良好な人間関係もつくれません。他人と仲良くなることが怖かったり、親しくなると依存的になったりと、適当な距離感を保つことができないのです。 

また、大人になっても感情を表に出せなかったり、コントロールを出来なかったりするので、発達障害と診断される人もいますが、実は子どもの頃のストレスが原因であるケースも大変多いことです。



2 ストレスに敏感な体質

子どもの頃にストレスを受けすぎると、大人になってからストレスに敏感な体質になります。問題に直面すると冷静に対処できず、うつや不安を感じやすかったり、疲れやすい体質になるのです。

ストレスに敏感になるのは、ストレスホルモン分泌のコントロールがうまくできないことが原因です。ストレスホルモンとは、ストレスを受けた時に副腎から分泌されるコルチゾールと呼ばれるホルモンで、ストレスに対応できるように、全身の細胞を活発にさせる効果があります。非常事態に疲れていても頑張れるように、体に無理をさせるホルモンと言えるでしょう。

研究によると、子どもの頃にストレスを受けすぎると、ストレスホルモンが高い状態が慢性的に続くようになります。このような状態は、脳に悪い影響を与え、特にセロトニンの分泌が減ることから、ストレスに敏感になるのです。



3 うつ病になりやすい

脳のセロトニン分泌は、うつ病やパニック症などの精神疾患と深い関係にあります。子どもの頃にストレスを受けると、ストレスホルモンの影響でセロトニン分泌が減りやすくなり、うつ病やパニック症になりやすくなります。研究では、うつ病になる割合が健康な人よりも2~3倍も高いと言われています。




4 アレルギー体質になりやすい

ストレスホルモンは免疫系の働きを抑えるため、高い値(あたい)が続くことで、アレルギーの症状が現れることがあります。例えば、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくなどの病気になりやすいことも報告されています。



5 生活習慣病になりやすい

高い値のストレスホルモンが続くと、食行動や睡眠にも影響が出ます。具体的には、ストレス食いなどの過食の傾向が出たり、不眠症になります。こうしたことから、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病になりやすいことが知られています。



子どもの頃のストレスの後遺症により、心では自己肯定感の低下、体ではストレスホルモンが高い値になることを説明しました。マイナスのことばかりを話しましたが、心にも体にも自然治癒の力があるので、子どもの頃のストレスの影響は少しずつ改善させることができます。今回のサインに当てはまる人は、自然治癒を後押しできるような生活が大切です。


まず、毎日心が安らぐ時間をもちましょう。楽しみを増やすこと、趣味をすること、人と話すことなど、「生きていて良かったな」と感じられる時間をできるだけ多くすることです。当たり前のようですが、毎日の生活に安心や癒しを意識することで、自己肯定感も上がり、ストレスホルモンの分泌も減るようになります。


ストレスホルモンを減らすためには、睡眠、食事、運動の生活習慣を見直しましょう。最低でも1日7~8時間の睡眠が必要ですので、睡眠時間が不規則になりがちな残業の多い仕事、夜勤の仕事、シフトのある仕事は避けた方が良いかも知れません。「みんな寝不足でも頑張っているのに、寝てばかり」と自分を責めないで、ストレスに敏感な人はともかく睡眠を大切にするべきです。


毎日の軽い運動は、ストレスホルモン分泌の切り替えに効果があります。ストレッチでも散歩でも良いので毎日体を動かす習慣をもちましょう。また、これを食べたらストレスホルモンが減るという食べ物はありませんが、栄養バランスを良くすることが大切です。