うつ病の人が感じる6つの孤独

誰もが生きていると、「寂しいな」、「孤独だな」と感じる時があります。ところが、うつ病の人が感じる孤独感は、健康な人が感じるものと比べて、つよさでも質でも異なります。今回は、うつ病の人の孤独感について説明しましょう。


うつ病は気分が落ち込む病気ですが、それを孤独感として感じる人がいます。うつ気分と孤独感は似ている感情だからです。また、うつ病が原因で世の中と疎遠になり、そこからさらに孤独をつよく感じます。

うつ病で孤独を感じ、そこから2次的に現実でも孤独になって、さらに孤独感がつよくなるという悪循環に陥るのです。まさに、「孤独地獄」と言えるような苦しいものです。


うつ病の孤独感は、不安や恐怖とも重なります。胸の痛み、息苦しさ、このまま一人でいると死んでしまうのではないかというようなパニック発作が伴うこともあります。病気になる前は、一人でいることが好きだった人であっても、一人が怖くなります。


うつ病の人にとって孤独は何よりもつらい症状です。それでは、うつ病の人が感じる孤独を6つ紹介しましょう。 





1 社会とのつながりがなくなる孤独

療養している人は、社会との接点がなくなり、人と話す機会が減ります。「今日は誰とも話さなかった」という日もあるかも知れません。人と接する機会をつくるために、イベントにでかけようとしますが、そもそも何かをするエネルギーがないため、通い続けることができません。また、心配した友達からの誘いがあっても、「情けない自分の姿を見せたくない」と思い、断ってしまうことも多いでしょう。

このように、孤独を解消したいのに、何もできない自分の無力さに直面して余計に苦しくなるのが、うつ病の孤独です。



2 世の中の流れから取り残される孤独

一度うつ病にかかると、数年間療養しなくてはならない場合もあります。この間、世の中の活動には参加できないため、周りから取り残されている感覚です。特にSNSで同年代の人が活躍している姿を見ると、自分が情けなくなります。自分以外の人はどんどん先に行ってしまい、残された自分がみじめで仕方ありません。



3 理解してもらえない孤独

家族と同居していると、「いつから働けるの?」、「いつまで薬を飲むの?」と言われることがあります。もちろん家族も心配で言っているのですが、一番気にしているのは自分ですから、「怠けている」、「努力していない」と、嫌味を言われているような感じです。病気で何もできないと説明しているのに、いつまでたっても理解してもらえません。近くにいる人から理解されないことほどつらいことはありません。




4 目の前の人と心が通じない孤独

人と話していても、心と心の間に壁があるようです。なぜか気持ちが通じません。大勢で会う場面では、みんなが楽しんでいるテンションについていけず、自分だけ仲間外れにされたように感じます。

そのために、「自分の苦しみは、誰も理解してくれない」と無力さを感じます。他人と関わることがよけいに億劫になり、何をしても孤独から逃れられないと感じてしまいます。



5 世の中から必要とされていない孤独

うつ病になると、それまでできていたことができなくなります。何かをすることで自分の価値を見出してきた人にとっては、自分の価値や役割がなくなったと感じます。

例えば、仕事が自分の誇りであった人は、会社に行けない自分には意味を見出せません。料理作りが得意だった主婦は、料理を作れない自分が情けなくなります。その上、1日ゴロゴロして、建設的なことは何もできずに終わってしまったら、「自分は消費だけしている必要のない人間」と自己嫌悪に陥ります。社会から必要とされていない感覚は、つよい孤独として感じられるのです。



6 独りで悩み続ける孤独

うつ病になると、「どうして生まれてきたのか」、「人生の目的は何か」と、哲学的なことを考えがちです。答えのないことに答えを出そうとして、いつも頭の中はネガティブな考えに支配されています。まるで、出口のないトンネルを一人で歩き続けているような感覚です。



うつ病の孤独地獄から抜け出すためには、根っ子にあるうつ気分をしっかり治すことが大切です。気分が楽になることから、世の中との接点も少しずつできるので、孤独の悪循環から抜け出すことができます。

うつ病の人が社会と接点をもてるような施設は、公でも民間でも次々とつくられています。病気の状態によって利用できる施設も異なるので、詳しいことは主治医・ケースワーカー・役所の窓口などに相談してみましょう。


うつ病になった自分を、「カッコ悪い」、「負け組」と考えて、治療に消極的だったり、施設を利用できないでいる人もいます。うつ病になったことはカッコ悪いことではありません。うつ病は誰でもなる病気で、自分を越えて頑張り過ぎた証拠です。スポーツ選手が試合でケガをして休養するのと、本質は変わりありません。

いまは休むべき時であるにも関わらず、うまく行っている人と比べて焦ったり、一人で問題を抱えて人を頼らないことが一番良くありません。病気になったことを素直に受け入れて、「生きてさえいれば何とかなる」と、気楽に考えるようにしましょう。