女性のうつ
うつ病は女性の方が2倍かかりやすいことをご存じでしょうか?日本人男性の10人に1人がうつ病になりますが、なんと女性は5人に1人がなるという数字が出ています。
今回は男性に理解できない女性のうつ病について説明したいと思います。
今回は男性に理解できない女性のうつ病について説明したいと思います。

1 女性にうつ病が多い理由
女性にうつ病が多いのは、まず、女性は男性に比べて繊細でストレスを感じやすいことがあげられます。同じストレスでも男性ならば流せるものが、女性は気持ちに引っ掛かってしまい前に進めないことも起こります。
その上、世の中では男女平等が叫ばれていても、まだまだ男性からの力の圧力に苦しむ女性はたくさんいます。こうした理由から、職場でうつ病を発症する女性はたくさんいるのです。
2 生理期間中のうつ
女性の生理は、エストロゲンという女性ホルモンの分泌の周期によって起こります。エストロゲンはうつ病の発症とも関連があり、生理前にエストロゲン分泌が急激に少なくなる女性は、それに伴いうつが起こりやすくなります。
生理の1週間前くらいから、生理痛や体調不良を起こす女性は多く、「月経前症候群・PMS」と呼ばれています。それだけでなく、うつ気分、情緒不安定、イライラ、頭痛が起こり、日常生活にも大きな支障をきたす場合は、「月経前不快気分障害・PMDD」と呼ばれるうつ病の一つです。毎月10日間程度、周期的にうつ病になるという女性特有の病気です。
ふだんは優しい人なのに、生理期間中になると機嫌が悪くなり、ちょっとしたことで怒ってけんかになってしまう女性は、月経前不快気分障害の可能性があります。抗うつ薬に効果があり、薬で治すことのできる病気です。
3 産後うつ病
出産直後の女性が理由もなく気分が落ち込み、涙が出るということがあります。これも女性ホルモンの変化が大きな原因です。マタニティーブルーとかベビーブルーと呼ばれており、一時的な現象であることが多いのですが、10%くらいの女性は2週間以上もうつ気分に苦しむことがあります。これは産後うつ病という女性特有のうつ病です。
産後うつ病は女性のうつ病で最も多く、「子供を可愛いと思えない」、「産まなければ良かった」といったことから自分を責めたり、家族からも責められたりすることもあるでしょう。女性の自殺で最も多い原因としても知られているくらい深刻な状態です。
「子供のことでいつもイライラしている」、「ちょっとしたことで子供を叱り飛ばしてしまう」、「子育てに限界を感じている」といった場合は、産後うつ病の可能性があります。
やはり抗うつ薬による治療に効果がありますが、長い治療期間が必要な病気です。

4 更年期うつ病
女性ホルモンは50才を境に徐々に減るようになり、女性は生理が止まり更年期を迎えます。女性ホルモンが急激に減る女性もいて、自律神経失調症や関節痛などの症状が現れます。いわゆる「更年期障害」です。特に気分の落ち込みがつよいケースは「更年期うつ病」と呼びます。
この時期は子供が独立して家を出る時期とも重なり、子供を失う喪失感からよけいにうつを感じやすくなります。命がけで育て上げた小鳥たちが巣立ってしまい、空っぽになった巣に取り残された状態に似ているので、「空の巣症候群」とも呼ばれます。
5 老年期うつ病
女性が老年期を迎えると女性ホルモンの分泌がほとんどなくなります。それに伴い美容の衰えが気になるようになり、これがうつの原因となることがあります。
年をとれば肌がたるみ、シワが増えるのは当たり前というのは男性の理屈です。女性はいくつになっても美を保ちたいのです。60才、70才になっても美容整形を受ける女性もいます。
また、老年期は体の病気の問題、配偶者との死別、孤独なども起こるために、これがうつの原因になることもあるでしょう。

肉体的にも、環境的にも、女性がうつ病になりやすいことを理解していただけたと思います。心の繊細さ、生理の問題、子育ての問題などは、男性にとって理解しがたい問題でもあります。職場でも家庭でも、女性が心の問題を抱えやすいことを理解するべきでしょう。
こうしてみると、「女性の方が損をしている」と感じる方もいるかも知れません。しかし、女性の方が男性よりもコミュニケーションの能力は高く、辛い時に周囲に相談できるという強みもあります。むしろ、男性は弱みを見せずに我慢してしまい、うつ病をこじらせてしまう傾向があるのです。
実際にうつ病による自殺率は男性の方が女性よりも2倍高いという数字が出ています。男性は心の問題を自分だけで抱え込んでしまい、突然自ら命を絶ってしまう傾向があるのです。
心の問題は、周りの人に助けを求めることがどれだけ大切なことか理解できると思います。
