いじめの経験

これは、いじめ・気分変調症・うつ病を経験した人の実際の話です。


ご家族と幸せな毎日を送っているアラ還のヒロムさん。実は、中学生の時に酷いいじめを受け、その後は気分変調症とうつ病の経験もあります。


今回は、ヒロムさんが実際に乗り越えて来られた人生をご紹介したいと思います。いじめの体験、うつ病の体験をされた方の支えになるような内容です。それではヒロムさんの物語を始めましょう。





ヒロムさんは、東大出のお父さんから、「俺と同じように東大へ行け」と言われて厳しく育てられました。昭和の学歴中心の時代ですので、当時はそれほど珍しいことではありませんが、まるで、東大に行かなければ人生失格のように洗脳されて生きて来たそうです。


お父さんは戦後の貧しい時代に苦労して東大に入った経験があり、それが誇りでした。それとは逆にお母さんは家庭で存在感が薄く、権威主義的なお父さんに文句ばかり言っていました。しかし、教育に関してはお父さんに歩調を合わせていたと言います。ヒロムさんにとって家庭に安らぎはありませんでした。


ヒロムさんは小学校低学年から塾通いし、家にいる時には勉強部屋に閉じ込められました。少しでも成績が下がるとお父さんの機嫌が悪くなるので、怒鳴られたくないために必死に勉強をしました。自分の将来のためでなく、親の機嫌取りのための勉強です。今は辛いけれども中学に合格すれば人生が変わるにちがいないと我慢していたそうです。


努力が実り、中学は東大合格トップの有名進学校に進学できました。ところが、勉強しかやってこなかったヒロムさんは友達の作り方が分かりません。いつも一人でいるので、いじめの対象になりました。


進学校のために勉強漬けで、みんなストレスが溜まっており、学校は弱い者いじめが当たり前の世界だったのです。「物を隠される」、「突然後ろから突き飛ばされる」、「トイレに閉じ込められる」、「財布を盗まれる」などなど、陰湿ないじめを受ける毎日になりました。


いじめをしたのは、担任とも仲の良いクラスの人気者グループです。ヒロムさんは親に心配をかけたくないので、誰にも相談できずに学校に通い続けました。


最もショックだったのは、修学旅行で逃げ場のない状態で延々とプロレスごっこをさせられた時です。先生の目の届かないところでボコボコにされ、帰宅した時までの記憶がありません。その後、学校へ行こうとすると喘息発作と頭痛が起こり、痛みと吐き気で食べた物を吐くようになりました。ヒロムさんは学校を休み、病院通いの毎日になりました。


小児科、脳外科、眼科など、あらゆる科を回って診察を受けましたが、いじめのことを聞いてくれる医師は一人もいませんでした。当時は子供の心の病気への認識があまりなかったためです。最終的に喘息と片頭痛の診断で薬の治療を受けることになりました。


その後、クラス替えのおかげでいじめグループから離れられたヒロムさんでしたが、感情は固まり、笑顔は消えて淡々と学校へ行く日々です。成績も下がり、東大を目指すどころではありません。浪人して、家から離れた私立大学に進学することになりました。


東大に行けなかったことについて、お父さんは「俺に勝てなかったな」と吐き捨てるように言ったそうです。子供の事情を一切理解せず、こんな酷いことしか言えないお父さんに対して、「学歴だけの最低の人間だ」とヒロムさんは呆(あき)れてしまったそうです。そして、この言葉をきっかけに親と関係なく生きようと決心しました。





ヒロムさんは一人暮らしをしながら大学に通い、親の監視がないことから大きな解放感がありました。少しずつ感情が戻ってきて、笑えるようにもなったそうです。しかし、いじめの経験から、突然人から嫌なことをされる不安につきまとわれ、人と深く関われませんでした。親しくしてくれる人がいても、自分から距離をとってしまうのです。


就職してからも、人と深く交わることが苦手で表面的なつきあいしかできません。それでも仕事に関しては、真面目さが評価されました。文句を言わないヒロムさんのところに仕事が集まるようになり、仕事の多さがキャパを超えるようになります。ついに、中学生の頃と同じように喘息と頭痛に苦しむようになりました。人に助けを求められないヒロムさんの弱点が響いたのです。気分も重くなり、仕事も続けられなくなりました。


かかりつけの内科医の紹介で精神科を受診してみたところ、うつ病の診断を受けました。SSRIという抗うつ薬の治療が奏功し、体調も良くなり、心のモヤのようなものが消え、数カ月の休職で復職します。精神科医によると、中学の頃に不登校があったことから、その頃から気分変調症があったとのことです。


ヒロムさんは薬を飲んで、これが普通の人の心の状態なのだと驚きました。天気で例えれば、いつも曇りか雨が普通の状態だったので、晴れを忘れてしまっていた感じです。医師の言う通りに、子供の頃からずっと心を病んでいたことを理解できました。


医師の指導で再発しないように、復職してからは問題を一人で抱え込まずに人を頼るように努力しました。頼んだことを気持ちよくやってくれる人も多く、こうした体験から、世の中には親やいじめっ子のような人ばかりでなく、良い人もいると感じたそうです。


その後Tさんは結婚。お父さんは早く亡くなりましたが、最後までヒロムさんが東大へ行けなかったことをグズグズ言っていたそうです。ヒロムさんはお父さんのことを憎むよりも、「可哀そうな人だったな」と哀れに感じているそうです。


ヒロムさんは、大人になってからも中学時代のいじめられた夢を見続けていました。心の中で何十年もずっと引きずって来たのです。ところが、40代になってから、中学の同窓会の誘いが来ました。以前ならば破り捨てていたはずの案内状でしたが、この時は思い切って参加してみたそうです。


会場では、元いじめっ子のリーダーと再会しましたが、過去のやんちゃなイメージは全くなく、落ちぶれた印象だったそうです。ヒロムさんが座っていると、向こうから話しかけてきて、仕事や家庭がうまく行っていないことなど、身の上話を聞かされました。


過去の謝罪の意味で、こんな話しをするのかなとヒロムさんは感じました。そして、「人にあんな酷いことをして、幸せになれるわけないよな」と思い、彼を許す気持ちになったそうです。この体験の後は、いじめの夢をピタリと見なくなりました。

やりきれない日の過ごし方

やりきれない日は頑張ることをやめ、自分自身を許して大切にする日と考えてください。


毎日辛い仕事や勉強をしている方、希望の見えない日々を送っている方、朝起きた瞬間に「今日は何もやる気が出ない。体が重い。何もかも嫌になった。」と感じることはないでしょうか。


これは、心と体の危険なサインです。気づかないうちに無理が重なり、見えない疲労が蓄積していることが原因です。何よりもこの疲労をとらなくてはいけません。


ここで無理をすると、心がポキッと完全に折れてしまい、うつ病などの精神疾患の発症につながります。すでに発症して治療中であるならば、病状の悪化につながります。このような絶望的な日はどう過ごすのが良いのでしょうか。


今回は、やりきれない日のお薦めの過ごし方について紹介したいと思います。




1.「ごめんなさい」で仕事・予定はキャンセル

やりきれない日の一番の敵は、自分の心の中にある義務感です。私たちは、予定や約束を守るという社会のルールを身に着けてきたので、それを破ることに強い罪悪感を覚えます。「周りに迷惑をかけるから」と理由をつけて、「もう無理」と感じていても、我慢してやってしまう癖がついているのです。


しかし、どんな仕事や予定よりも健康が優先されるべきです。無理をして予定をこなそうとすると、パフォーマンスは低下し、ミスや失敗を引き起こす可能性が高まります。もしかすると、明日以降のパフォーマンスもすべて崩れるかも知れません。「自分はダメだ」と自己卑下する結果となり、かえって回復も遅れます。


やりきれない時は、シンプルに「体調が悪い」と伝え、「ごめんなさい」の一言でキャンセルする勇気を持ちましょう。断わる勇気をもてない方は、「誰かが代わりをやってくれる」ということを考えてください。仕事や予定は、組織やシステムがカバーできます。しかし、あなた自身を守ってくれる代わりはいません。


また、断った理由を相手が完全に理解してくれなくても構わないと考えましょう。予定をキャンセルしたことで信頼が崩れるくらいならば、そもそもその関係は長続きしないと思います。



2. 二度寝をする

予定をキャンセルできたら、次は心と体を十分に休ませましょう。無理に布団から出ないで、二度寝がお薦めです。


二度寝は、怠けではありません。生物学的に睡眠の質を高める行為です。最初の目覚めからリラックスして再び眠りに入ると、ノンレム睡眠に入りやすくなると言われています。


ノンレム睡眠は、ストレスで疲れ切った自律神経を整え、脳と体のメンテナンスを行うために不可欠です。目覚ましをセットせず、体が自然に満足するまで眠るようにしましょう。二度寝は最高の薬になります。



3.負担にならないことをする

1日予定がなくなったら、心にも体にも負担にならないことで過ごしましょう。「どっこいしょ」と無理にやることでなく、サラリと力を入れずに自然にやれることです。建設的、効率的、生産的でない、どちらかというと無意味で価値のないことです。


例えば、何も考えずに窓の外を眺めてみます。 思考を一時停止させ、目の前の景色、光の移り変わり、風の動きなど、「気持ちいいな」という感覚を大切にするのです。


また、肌触りの良いものに触(ふ)れるのも良いかも知れません。 お気に入りの毛布やクッションを抱きしめる、猫や犬を撫でるなど、安心を感じ取ることができます。


そして、静かな音楽を聴くのも良いでしょう。 歌詞やメロディーにとらわれず、ただ耳から入ってくる音の心地よさを感じましょう。


エンタメに触れたいのならば、動画よりも本を読むことをお薦めします。ただし、字を追うのが大変ならば無理する必要はありません。好きな雑誌をパラパラめくったり、読みかけの軽いエッセイに目を通すのが良いでしょう。


こうした負担のないことは、やりきれない感情から心を解放し、疲れた脳を休ませてくれるはずです。





4:過去にとらわれない、未来を心配し過ぎない

やりきれない感情のほとんどは、「過去の後悔」と「未来の不安」です。「あんなことしなければ良かった」、「どうせうまくいかない」と、頭の中で嫌な思いがグルグル再生され続けるのです。これは「反芻思考(はんすうしこう)」とか「グルグル思考」と呼ばれます。脳が疲れた時に起きやすい現象です。


グルグル思考で苦しい時は、考えに巻き込まれないように、「ああ、またグルグル思考が始まったな」と自分を客観的に見つめるようにします。思考にラベルを貼るという意味で、これを「ラベリング」と呼び、心理学でよく使われる手法です。


そして、後悔に対しては、「あの時の自分は、あれで精一杯だった」と、過去の自分を許してあげましょう。そもそも過去の事実は変えられません。しかし、「過去をどう捉えるか」ということは変えることができます。


また、未来を心配し過ぎることは、ないことをわざわざ予想して心配するので、「予期不安」と呼びます。


あるデータによると、予期していた不安の90%は起こらないそうです。残りの10%の確率を心配して心のエネルギーを浪費するのは、どれだけ無駄なことか理解できるかと思います。予期不安もラベリングをして深入りしないようにしましょう。



5:SNSの虚像と闘うのをやめる

やりきれない日に最もやってはいけないことは、うまく行っている人と比較することです。


特に良くないのが、「みんなはどうしているのだろう」とつい見てしまう他人のSNSです。SNSで見聞きするような他人のリア充な生活は、その人の本当の姿ではありません。


そもそも、誰も自分の失敗や醜い姿は公表せず、見栄(みば)えのよいことだけを発信し、自己満足にふけるものです。それがSNSの正体です。SNSを見て刺激され、まんまと騙されて自分を卑下してしまうことは最も避けるべきことです。


今やるべきことは、きちんと休み、自分を責めないということです。他人と比べることで、せっかくのリセットが台無しにならないようにしましょう。



以上、やりきれない日の過ごし方を紹介しました。


コロナ禍が明けたかと思ったら、不安定な世界情勢、回復しない景気、物価の上昇と、今までになく生きづらい世の中です。誰しも気が付かないうちに心を遣いすぎ、無理を重ねていることがあると思います。


こんな時こそ、心に余裕を持ち、家族や身近な人と仲良く過ごしたいものです。ところが、疲れが溜まると、気持ちの余裕までなくなってしまいます。やりきれない日は、頑張ることをやめ、自分自身を許して大切にする日と考えてください。


うつ病の寛解期やった方が良いこと

症状が治まっても、うつ病は治ったわけではありません。


うつ病という暗くて長い、出口の見えないトンネルを歩き続け、ようやく抜け出たことを「寛解(かんかい)」と呼びます。なぜあえて「治癒」と呼ばないかというと、決してうつ病が終わった訳ではないからです。


データによれば、うつ病の再発率は非常に高く、一度発症した人の約半数が再発を経験します。さらに、二度、三度と繰り返すほど、その確率は跳ね上がっていきます。


この理由は、一旦うつ病の症状が治まったとしても、脳神経の炎症はその後何年も続いているからです。そのために脳はストレスに反応しやすい敏感な状態にあり、ちょっとしたストレスが引き金で再発が起こってしまいます。

 
実を言うと、うつ病は一過性の病気でなく、糖尿病や高血圧のような慢性の病気なのです。糖尿病で数値が安定したと気を抜いて、暴飲暴食するようになったら糖尿病は悪化します。数値が安定しても食事のコントロールが必要なように、うつ病も症状が落ち着いても予防が必要なのです。


今回は、二度とあの苦しい日々に戻らないために、寛解期の今だからこそやっておくべきことを6つ説明しましょう。 ぜひ実践して、再発のリスクをなくしてしまいましょう。





1 やりたいことの60%でブレーキをかける

抑えつけられていた気持ちが解放され、やれなかったことを再開したくなるのが寛解期です。溜まっていた家事を片付けたい、疎遠になっていた友人に連絡したい、遅れていた仕事の遅れを取り戻したい、と色々なことに手を出したくなるでしょう。これは、脳の働きが回復している証拠でもあります。


しかし、ここで全力疾走をしてしまうのが、典型的な再発パターンです。寛解したばかりの脳は非常に脆い状態が続いています。そこで守ってほしいのは、何事もやり過ぎないように、60%くらいでブレーキをかけるということです。


「もう少しできそうだな」とか「あと少しだけ進めたい」という気持ちがあっても、我慢して切り上げてください。 100点を目指して燃え尽きるのでなく、60点で「まあいいか」と笑える自分が目標です。「余力を残して一日を終える」という感覚を大切にしましょう。



2  何をやったら具合が悪くなるかを覚えておく

調子が良い今のうちに、過去の経験を振り返り、どんな行動や状況で具合が悪くなったかを思い出してください。


例えば、残業、出張、苦手な人との関わり、夜更かし、酒の飲みすぎなど、悪いスイッチを入れてしまう出来事を「NG行動リスト」とリストアップしてみましょう。NG行動は避けて生活するようにします。自分の限界を知り、地雷を避けて歩く技術を身につけることが大切なのです。



3  気を遣う人とは関わらない

「いっしょにいると常に気を遣う」、「いつも何かを命令してくる」、「なんでも干渉してくる」、などなど、世の中には、「この人と関わると疲れるし、具合も悪くなる」という特定の人が必ずいます。もしかするとこの人が発症した原因の一つになっていたのかも知れません。


「どんな人ともうまく関わるのが大人」という考えに囚われる必要はありません。「嫌な人は嫌」、「関わりたくない人とは関わらない」をモットーにして、付き合う人を選ぶようにしましょう。


SNSの返信も、無理にしなくても大丈夫です。「既読」のマーク自体が、「読みました」という返信です。返事は絵文字だけでも良いのです。相手に気を遣って丁寧な文章を入力することに無駄なエネルギーを費やす必要はありません。





4 薬の自己中断を絶対にしない

調子が良くなってくると、多くの人が「もう薬に頼らなくても大丈夫」と考え始めます。 毎日飲み続ける面倒や、副作用への不安、薬を飲んでいることへの負債感などから、自己判断で薬を中断しがちです。


うつ病の薬は症状を抑えているだけではありません。再発を予防する効果を持ち合わせています。薬の卒業は、客観的に見ている主治医に任せましょう。穏やかに毎日を過ごせているのなら、薬は予防のために飲んでいると考えましょう。



5 前の自分に戻ろうとしない

辛い期間を抜けると、つい「病気になる前の、バリバリ働いていた自分」を目標にしてしまいがちです。 以前のような生活に戻ることが治ることだと思っていないでしょうか?


しかし、一度立ち止まって考えてみましょう。 以前の生き方、考え方、そして無理の重ね方が原因でうつ病になったはずです。過去に戻ろうとするのは、再発の大きなリスクです。自分はうつ病の経験でヴァージョンアップしたと考え、リスクを避ける新しい生活習慣を身に着けることが賢い生き方です。



6 うつ病になった自分を責めず、人生を取り返そうとしない

寛解期に多くの人を苦しめるのが、「あんなに苦しむ前にどうにかできなかったのか」という後悔です。中には療養中に動けなかったことを「無駄な時間を過ごした」と後悔している人もいるでしょう。


しかし、過去の自分を責めることは、回復しかけている心に自らムチを打つようなものです。うつ病は、決してあなたが弱いからなったのではありません。むしろ、限界を超えてまで走り続け、頑張りすぎてしまったという証拠です。



うつ病の経験を通して、自分の心の限界を知り、自分を守るための具体的な対処法を学ぶことができたと考えましょう。また、同じ悩みで苦しんでいる人の気持ちも理解できるようになったはずです。 これは、病気にならなければ決して得られなかった、これからの人生を生き抜くための力になるはずです。


ですから、失った時間やキャリアを取り返そうとするのはやめましょう。過去を変えることは誰にもできないし、失ったものを埋め合わせようと無理をすれば、また同じ場所でつまずいてしまいます。


人生は「取り戻す」ものではなく、今この瞬間から「新しく作っていく」ものです。 うつ病になった過去も含めて、今の自分なのだと受け入れてみましょう。 再発を防ぐために最も大切なことは、うつ病になった自分を許してあげることです。


若者の自殺者数が過去最多

若者の自殺者数が過去最多になりました。



最近、「若者の自殺者数、過去最多」というニュースがありました。これを聞いて、胸が絞めつけられるような思いをした方も多いと思います。


政府は、2024年の小中高生の自殺者数が、1980年以降最多の529人であると発表しました。これは30年前の1.5倍の数です。日本全体の自殺者数は減少している一方で、小中高生は最多となってしまったのです。


この原因には、女子の自殺者が急激に増えていることが背景にあります。男子の自殺者数は横ばいであるにも関わらず、女子は年々増加し、2024年の自殺者529人のうち女子は290人、男子は239人でした。はじめて女子の自殺者数が男子を抜くことになったのです。


なぜいま、小中高生女子の自殺が増えているのでしょうか。今回は、その原因について解説したいと思います。





1 ネット社会が作る「自殺が身近な社会」

SNSを開けば、ニュース、投稿、匿名の言葉、そして自殺の情報まで、一瞬で目に入るようになりました。かつてはテレビや新聞を通しての出来事だったものが、いつも片手にあるスマホから、リアルタイムに流れてきます。子どもたちはまだ心の整理の仕方を知らないまま、こうした情報に毎日さらされています。



思春期の子どもたちは、まだ自我の土台が完成していません。それにも関わらず、SNSを通して、常に他人の生活、考え方、姿が目に入ってくるため、自分と他人の境界線が曖昧になって行きます。現実とSNSの世界が融合してしまうのです。


そして、辛いことから逃げられる手段として自殺が表現されていると、自殺を選択肢として考える子供が増えるのは当然のことでしょう。


アメリカでは、AIに自殺願望を助長されて、実際に実行してしまった人がいます。16才の子供を含めて、亡くなったのは4人で、チャットGPTとの会話直後に自殺を試みました。


チャットGPTには人に共感する能力が加えられています。亡くなった方のスマホには、「ここにいるよ、最後までいっしょだ」「よくやった」といったAIからのメッセージが残されていたそうです。


現在、遺族とチャットGPTとの間で訴訟が進行中です。
このように、判断力の乏しい人を間違った方向に誘導してしまうことが、今のネット社会の大きな問題の一つです。



2 SNSとルッキズム

SNSは、写真や動画を通して、自分の整った顔、やせた体型、華やかな生活を自慢する場所になっています。そのどれもが「いいね」の数で評価され、まるで美しい外見だけが人の価値になっているかのようです。


外見や体の特徴で人を評価したり、差別したりすることをルッキズムと呼びます。ルッキングとは、日本語で「見た目」ですから、「見た目重視主義」、「外見重視主義」のことです。SNSは、このルッキズムを加速させているのです。


さきほども説明しましたが、大人であれば、ルッキズムに対して距離を置いて眺めることができます。心の境界線が弱い子どもにはそれができません。


特に女子はルッキズムに取り込まれてしまいます。自分の優しさや誠実さといった内的な価値に気づく前に、「自分の顔が嫌い」、「自分の体型を変えたい」と苦しむことになるのです。外見に恵まれないだけで、存在そのものを否定されているように感じる女子も出てくるでしょう。


このように、女子の自殺の増加を促している原因として、ルッキズムの影響が大きいと考えられています。



3 ネットを介した性的搾取

ネットを介した性犯罪は年々増えており、手段も巧妙になっています。最も犠牲になっているのが小中高生の女子です。そして、性犯罪の被害から自殺に追い込まれる女子も増えています。警察の取り締まりや規制にも限界があるのが現実です。


スマホを通じて、知らないうちに犯罪に巻き込まれてしまうケースも多いようです。女子の自殺が増加した背景には、荒れたネット社会の現状と性犯罪が横たわっていると考えられています。





4 親子関係の問題

遺族の聞き取り調査からは、親子関係が良くなかったケースもあります。「親に一方的に叱られた」、「苦しみを理解してもらえない」といったことが自殺の引き金になることも報告されています。


親の暴力、ネグレクト、過干渉、ヤングケアラーといった問題はいつまでも改善されていません。若者の自殺が増えているということは、こうした家族の問題が増えていることを暗示しているのかも知れません。



5 学校のいじめ

いじめ被害による小中高生の自殺も続いています。ただし、いじめの件数は数字の上では年々増えていますが、学校のいじめを報告するシステムが機能していることを反映しているとも言われています。



6 子供のうつ病

自殺者の多くには、精神疾患があったことが報告されています。これは未成年でも例外ではありません。


例えば、うつ病は3才からなる可能性がある病気です。特に子供のうつ病は女子に多く、これは女性ホルモンの影響によると考えられています。生理が始まる小学校高学年くらいから、うつ病になる女子が増えます。また、統合失調症や双極症の多くは、思春期に発症します。


子供は、自分の感情を言葉で表現することが未熟なため、精神疾患が起きていることを自覚できず、周囲にSOSを伝えることも難しいことです。


ほとんどが、「元気がない」、「機嫌が悪い」、「学校の成績が落ちる」といった変化でしか気づけません。そして、親や先生が、「甘え」、「怠け」、「我慢が足りない」と誤解してしまい、状況がこじれるケースが大変多くあります。


未成年の自殺者の増加の背景には、うつ病などの精神疾患の影響も考えなくてはいけません。大人は子供の様子の変化に敏感であるべきです。そして、子供であっても、大人と同じような精神疾患になることを知ることが大切です。



今回は、若者の自殺数が増えているというテーマでご説明しました。みなさんは若者の自殺の増加についてどう考えますか?


これをきっかけに、みなさんも若者の自殺の現状を理解し、関心を持っていただければと思います。


親に傷つけられた

親に傷つけられたことが、生きづらさになっていませんか?


私たちの人間関係は、生まれ育った時の親子関係にルーツをもっています。大人になってから人間関係で悩む人は、振り返ってみると、親子の関係が良くなかった場合が多いのです。


親子関係が良かったならば、大人になってから良好な人間関係を築くことができ、親子関係が悪かったならば、人間関係もギクシャクしがちです。


それでは、親子関係の何が大切であるかと言うと、親から注がれる愛情を通して、「無条件に私は生きていい存在」という思いが心の真ん中にできあがることです。


この感情が土台になって、「自分は大切な存在だから、他人も大切な存在である」という思いが育ち、大人になってからの良好な対人関係をつくることができます。


ところが、親から否定的な言葉や批判を受け続け、心を傷つけられることが続いた場合は、「私は生きていい存在」という思いを持てません。それどころか、「私は必要ない存在」という思いがこびりついてしまう場合もあります。


対人関係では、「あの人は大切な存在」という感情が湧いて来ないで、「あの人は敵」、「あの人は味方」といった表面的にしか相手を見られなくなります。そのために良好な人間関係をつくることができないのです。


今回は、親に傷つけられた人が、どのような生きづらさを抱えてしまうのかを詳しく説明しましょう。これらは傷ついた心が未だに癒えていないサインでもあります。





1 傷ついた場面をいつまでも思い出す

例えば、「お前なんか産まなければ良かった」、「醜い子供だ」という悪口、理不尽に怒られたり、殴られたりした場面、大切な物を捨てられた記憶、いつも一人で留守番をさせられて不安だった気持ちなど、これらが長い期間、何度も繰り返されていたならば、心の傷として残ってしまいます。


そして、大人になってからも、疲れている時や嫌なことがあった時には鮮明に思い出すでしょう。いくつになっても記憶から消えてくれず、時には夢にまで出てくることもあります。


大人になってから、親を許そうと思って交流をしても、昔と同じような態度をとられ、過去の辛かったことがフラッシュバックします。「親とは付き合えない」と不快になります。いつまでも親を許せない気持ちと、許したい気持ちが行ったり来たりするのです。



2 親しくなると、相手から傷つけられたり、関係を切られたりすると思う

親から傷つけられてきたので、「私は人から嫌われる」といつも考えています。誰かと親しくなればなるほどに、この思いは大きくなります。「どうせ嫌われる」、「裏切られたらどうしよう」という不安のために、気持ち良く人付き合いができません。


「不安で苦しむならば、付き合わない方が良い」となって、せっかく人と親しくなったのに、さっさと縁を切ってしまうこともあります。



3 周囲の判断に流される、自分を主張できない

人に嫌われるのが嫌で、主張をするのが苦手です。相手に反発して拒否されることが怖いのです。


そのために大切なことも周囲の判断に任せてしまい、後から後悔することがあります。自分で決めていないので、失敗すると「あの人のせいでこうなった」と怒りが湧いてきます。





4 自分の本性を知られたくない

自分に自信がないため、人前では「私の本当の顔を知られると嫌われる」と考えてしまいます。「こんなことを言ったら変に思われるだろうか?」、「こんな行動をしたら嫌われるだろうか?」ということを気にしながら、相手の顔色を見ながら交流します。人前では、素の自分を出せないのです。



5 対人トラブルが多い

人を敵・味方でしか見られないので、同じ人がちょっとしたことで味方に見えたり、敵に見えたりを繰り返します。


「あの人はいい人だな」と付き合っていても、少しでも拒否されたら敵として考えるようになります。敵と思っていた人が、優しい言葉をかけてくれると今度は味方として考えます。こんな感じなので、対人トラブルが多く、安定した人間関係が作れません。



6 人に親切にしていると、いつのまにかお節介になる

嫌われないように、いつも相手のお世話をする人もいます。贈り物をしたり、面倒なことを代わりにやってあげたりしますが、相手の気持ちを汲んでやっている訳ではないので、少々お節介な感じです。


自分が嫌われないことが動機なので、行った行為に対して「どうでしたか?」と聞くことも多く、相手の反応を確認したがります。そこで否定的な返事が返ってくると、傷つき落ち込んでしまいます。



7 リラックスができない

人間関係でいつも気を遣っているので、1日中緊張がとれません。子供の頃から眠りが浅く、夢を多く見ます。そのため、リラックスすることも上手ではありません。疲れが溜まりやすく、体調も壊しやすい傾向があります。



心の傷はどのようにして回復するのでしょうか?


体の傷の場合、これ以上傷が大きくならず、悪い細菌も入らないように、傷を絆創膏やガーゼで守ります。そして、安静にしながら、あとは自然に傷がふさがるのを待ちます。大きな傷の場合は、医師に縫ってもらうことも必要でしょう。


心の傷も同じような原理で回復します。まずは、あなたを否定し、心の傷を蘇らせるような人や職場からはすぐに離れることが必要です。例えば、いつも否定的なことを言う家族や友人がいるならば、接触しないようにしましょう。


また、働けば働くほど自尊心が病んで行くような職場はすぐに辞めた方が良いでしょう。


そして、あなたを否定せず、肯定してくれるような環境に自分を置いてみることが必要です。あなたを大事にしてくれる人、安心できる場所、没頭できる趣味、なついてくれるペット、愛着のわく物などとの出会いを大切にしてみることです。


生きづらさが深刻な場合は、心理カウンセラーなどの専門家に相談することも考えてみましょう。


体の傷は数カ月で良くなりますが、心の傷の回復には年単位の長い時間がかかります。「自分を大切にしよう」と少しずつ感じられるようになったら、心の傷が回復しているサインです。


眠り方の心理

安心感のないまま眠らなくてはならないと、眠る前に特有の行動をとることがあります。


睡眠は、人生の3分の1の時間を占めており、心と体をリセットするための大切な行為です。そして、寝ている時間帯は無防備になるため、安心できる環境が確保されない限り、十分な睡眠をとることができません。睡眠に一番必要なものは安心感といっても過言ではないでしょう。


ところが、「心配事がある」、「辛い仕事が待っている」といったように、安心感のないまま眠らなくてはならないと、眠る時に特有の行動をとることがあります。


例えば、「音がないと眠れない」、「ソファで眠る」、「リベンジ夜更かし」、「ドカ食いしないと眠れない」、「寝ている間にドカ食い」、「寝酒」、といったものです。


今回は、ストレスがある人の眠る時の特有の行動について説明しましょう。当てはまる方は、日常に大きなストレスや不安を抱えている可能性があります。





1 音がないと眠れない

音楽や人の話し声を流しながら眠る人がいますが、これにはいくつかの理由があります。一つは、静かすぎることが不安になる人です。


日常の不安を抱えている人は、外からの刺激がなくなると、様々なことが頭に浮かんで来ます。考えが止まらなくなり、睡眠を妨げてしまうのです。こういった人は、音楽や人の声でマスキングして、頭の中の考えに集中しないようにしています。


また、自閉スペクトラム症などから聴覚過敏がある人は、静寂の中の時計、エアコンの音など、ちょっとした物音が気になり、睡眠が妨げられます。やはり音楽や人の声を流してマスキングする人がいます。


どちらにしても、音を流さないと眠れない人は、歌詞のない静かなBGMがお薦めです。歌詞がある歌や人の話声は刺激になってより覚醒することがあるからです。



2 ふとんがあるのにソファで眠る

仕事が中途半端に残っている時や、疲れ過ぎてそのままソファで眠ってしまうことは誰にでもありますが、目の前にふとんがあるのに、毎日のようにソファで眠る人がいます。


これは、不安があって寝床でゆっくり休むことができないでいるのです。心が落ち着かないために、無意識にゆっくり休むことを拒んでいるのです。


また、親密な人間関係を避けてしまうという回避型愛着パターンという人間関係の取り方をする人がいます。このようなタイプの人も、あえて安らげる寝床で寝ないで、寝心地の悪いソファで寝ようとする傾向が見られます。



3 眠りたくない・リベンジ夜更かし

解放感から、夜間に寝ないで何かをしようとすることをリベンジ夜更かしと呼びます。

日中に充実感・満足感がないために、睡眠を削ってでもそれを取り戻そうとする行為です。日中自分の満足できる時間がなかったため、それを取り戻すためのリベンジという意味です。


部屋で一人になると「このまま寝てはいけない、何かしなくては」という強迫観念に襲われます。かといって深夜ですから、結局は動画・ゲーム・マンガ・お菓子を食べることで時間が過ぎて行きます。翌朝寝不足で後悔しますが、リベンジ夜更かしはやめられません。


原因は、日中のストレスの多さですから、生活習慣を根本から見直すことが必要です。





4 ドカ食いしないと眠れない

リベンジ夜更かしには、寝る前にドカ食いをして不安を解消している人もいます。これは病的な行動と考えられ、夜間摂食症候群と呼ばれています。朝は満腹になるために朝食や昼食はほとんど食べられません。


結局、翌日も夜間にまとまって栄養を摂るようになり、これが習慣化します。体重増加や糖尿病にもつながるリスクがあるでしょう。
また、太るのが嫌なので、夜間にドカ食いしても、それを吐いてから眠るという人もいます。週に1回以上行う場合は神経性過食症です。




5 寝ている間にドカ食い

夜間摂食症候群は、眠る前に食べたい衝動が襲ってきますが、1度眠りについてから無意識のうちにドカ食いをするという人もいます。これは睡眠関連食行動障害と呼ばれています。


いつも通りに床についたのに、朝目が覚めると、ふとんの周りに食べかけのお菓子の袋が散らかっているので気づきますが、食べたことは全く記憶にありません。
これもストレスで起こりますが、睡眠薬を使っている人の場合、睡眠薬の副作用の可能性があります。



6 寝酒

日本人男性の50%、女性の20%が、週に1回以上の寝酒をしています。少しの寝酒で寝つきが良くなる人の場合、何十年と習慣にしている人もたくさんいます。


確かに、アルコールは脳の活動を抑えるために寝つきを促しますが、2~3時間もするとアルデヒドという物質に分解され、これは逆に覚醒作用がある物質です。寝酒の習慣がある人は、寝つきは良くても眠りは浅くなります。


少しずつ飲酒量が増えていき、アルコール依存につながりやすいこともあり、健康を考えると、寝酒の習慣は好ましいことではありません。



以上、ストレスを抱えた人の眠り方でした。


日本人のおよそ20%が睡眠の問題を抱えています。それだけ多くの人が安心して床につくことができないでいるのです。


今回紹介した中でも、ドカ食いしないと眠れない、寝ている間にドカ食い、寝酒の習慣に関しては、治療が必要な場合があります。体重増加・糖尿病・アルコール依存症などのリスクがあるからです。早めに精神科で相談されることをお薦めします。


ADHDの人の食事、食べ方

こんな食べ方をしている人は、ADHDの傾向があります。


食事の取り方や好き嫌いには、習慣だけでなく、脳の構造が関係していると考えられています。したがって、脳の発達の問題がある場合は、特徴的な食事の仕方が見られます。今回は、その中でも注意欠如多動症・ADHDの人の食べ方の特徴についてお話ししましょう。


ADHDは、注意力や衝動性に特徴がある発達障害ですが、実は食べ方にも特徴が現れます。これは「ただの好み」ではなく、脳の働きと深く関係しているのです。逆に考えると、今回紹介するような食べ方に思い当たりのある方は、それはADHD特有の行動パターンと言えるのかも知れません。


今回はADHDの人の特徴的な食べ方を6つに分けて解説していきます。

 



1 ながら食い

1つ目の特徴は、「ながら食い」です。「ながら食い」とは純粋に食事を楽しむのでなく、食べながらスマホを触る、テレビを見るなど、別のことをしながら食事をすることです。


ADHDの人は、注意が分散しやすい特徴があるために、食べることだけに意識を向けることができず、他のことに意識が向きやすいのです。「食べているのにテレビに意識が向いてしまい、気づいたら弁当の半分も残っていなかった」ということも珍しくありません。


ながら食いは満腹感を感じにくく、知らず知らずのうちに食べ過ぎてしまう原因になります。食事に集中できないことで、消化にも影響が出やすく、胃もたれや体重増加のリスクにもつながります。



2. 衝動食い・早食い

ADHDの人は、衝動性が強いため、食べる量やタイミングをコントロールすることが苦手です。そこで見られるのが「衝動食い」です。


たとえば、空腹でなくても目の前にお菓子や食べ物があると、つい手が伸びてしまう。ダイエット中なのに、気づいたら一度に大量に食べてしまった…ということが起こります。


また、先ほども紹介したように注意が分散しやすく、食事中でも別のことを考えたり、スマホを触ったりして、十分に咀嚼せずに飲み込んでしまいます。食事を味わうことをせず、ついつい早食いになってしまいます。


こうした衝動食いや早食いも、食べ過ぎを起こします。やはり胃に負担がかかることや、体重増加の原因にもなるでしょう。



3 アルコールがやめられない

ADHDであるために、ストレスや自己評価の低さを感じている人は、アルコールで気を紛らわせる傾向があります。そのうち量が増えて来て、依存症になる人も多くみられます。


「酒をやめなくては」と思っていても、ADHDの衝動性のために、つい目先の「飲みたい」という欲求を抑えられません。また禁酒という努力を持続することも苦手であるために、アルコール依存症から抜け出せない人もたくさんいます。





4 ダイエットができない

アルコールに限らず、甘い物もストレス解消に役立つため、ADHDの人には甘い物がやめられない場合があります。体重が増え、糖尿病になるケースも多く、医師からダイエットを勧められまずが、継続ができません。食べてはいけないと頭では分かっていながら、ついついお菓子やアイスクリームに手が出てしまいます。


糖尿病になってインシュリン注射をするまでになる人もいますが、命に関わる状態に陥っているにも関わらず、それでも甘い物を食べ続けてしまう人もいます。



5. 食事の時間が不規則になりやすい

ADHDの人は、時間管理や計画を立てることが苦手です。そのために、食事の時間も不規則になりやすい特徴があります。集中力にムラがあるため、仕事や趣味に夢中になっていると、つい食事を忘れてしまうこともあるでしょう。


朝食を抜いてしまったり、昼食の時間が遅くなったり、夜にまとめて食べたりする人もいます。このように食事の時間がバラバラになると、血糖値が乱れやすくなり、疲れやすさやイライラにつながることもあります。



6. 食べ方が汚い・こぼしやすい

ADHDの人は、ながら食いや早食いが多いと紹介しましたが、その結果で食べ方が汚い、こぼしやすいということも起こります。


たとえば、食べながらスマホを触ったり、テレビを見たりすると、食べる動作に集中できません。その結果、口に入れるタイミングがずれて、食べこぼしてしまうことがあります。


こうした行動を周りの人から指摘されても、本人は意図していないことが多く、これは脳の特性や集中力の偏りによるものだからです。



人によって食べ方は自由ですが、ADHDの人の「早食い」、「ながら食い」は、食べ過ぎにつながり、健康を壊す原因となります。その上、甘い物やアルコールへの依存が起こることも多く、命に関わる場合もあるでしょう。


ADHDの食べ方は生まれつきの要素が大きいと言っても、子供の頃からの習慣の部分もあります。大人になってからでも、自分の「早食い」や「ながら食い」の習慣を意識して、少しずつ変えるようにすれば、改善される可能性もあります。


一番良い方法は、家族や友人といっしょに、会話をしながら食事をすることです。会話の度に一旦箸が止まるので、「早食い」や「ながら食い」を防ぐことにつながります。


ところが、世の中は一人で食べる孤食が増えています。現在の仕事のスタイルや家族の形によるので仕方がないことかも知れません。したがって、一人で食べている時は、スマホに触れない、テレビは消す、そして味に集中するように努力しましょう。


食事中に食べることに集中するコツは、一人グルメレポーターになってみることです。食べ物を口にする度に、「この食材はなんだろう」、「この味付けはなかなか作れないな」と、味の感想を言葉にしてみるのです。


うつ病の矛盾した気持ち

「孤独が嫌なのに一人でいたい」という矛盾した気持ちはありませんか?


うつ病になると、「~したいのに~しない」もしくは「~したくないのに~してしまう」といった矛盾した心の状態を経験します。心と行動が逆の方向に向かってしまうのです。


これは、うつ病で病んでいる自分と、それを認められない自分の2つが心の中にあるためです。辻褄が合わない2つの自分がいるために、矛盾した気持ちが湧いてくるのです。


このような矛盾した気持ちを放置していると、思い通りにならない自分自身を責め始めるようになり、ついには「情けない」「ダメ人間」と卑下するようになります。


これでは、うつ病で自信を失っているところに、さらに追い打ちをかけることになるでしょう。うつ病の治りづらさにもつながるため、矛盾した気持ちを抱いても、自分を責めないことが必要です。


今回は、うつ病の矛盾した気持ちを8つ紹介したいと思います。病気を受け入れきれていない自分に気づき、自分の心を大切にするようにしましょう。





1 孤独が嫌なのに一人でいたい

うつ病で最も苦しいことの一つが孤独感です。世の中から一人だけ取り残されたような辛さが常について回ります。


それでいて、人と関わろうとする意欲や集中力はなく、むしろ一人で過ごしたい気分です。「孤独は嫌なのに一人でいたい」というのは矛盾した状態ですが、これがうつ病です。



2 大丈夫でないのに、大丈夫なふりをする

辛くても人に助けを求めず、我慢強い人は、うつ病になりやすい傾向があります。大丈夫でないのに、大丈夫なふりをしてしまうのです。


辛くても弱音を吐かないことは立派なことですが、度が過ぎれば、心を病んでしまいます。もしかすると、これがあなたのうつ病の原因かも知れません。



3 やりたいのにやれない

「やらなくては」という強い義務感がありながら、体が鉛のように重く、すぐに行動に移れないのがうつ病です。


大事な用事も先延ばしになってしまいます。やり残したことが山のように積もり、どこから手を付けたら良いのか分からなくなり、逃げ出したい気持ちになります。



4 頑張りたいのに頑張れない

同じように「頑張りたいのに頑張れない」のがうつ病です。怠けているのではなく、誰よりも努力したいのにできないのです。


「働きたいのにできない」、「人の役に立ちたいのに迷惑をかける」、この矛盾した気持ちに振り回されていると、いつのまにか「私はダメ人間だ」という結論に陥ってしまいます。





5 考えたくないのに考え続ける

嫌な過去、嫌な人の顔、将来の不安など、考えたくないことが無意識に浮かんでくるのもうつ病の特徴です。そして、いつまでも頭の中をグルグル回り続けます。


考えないようにするとよけいに考えてしまい、辛くて「ワー」と声を出して叫んでしまうこともあるでしょう。これは脳疲労が原因の「グルグル思考」と呼ばれるものです。




6 怒りたくないのに、怒ってしまう


うつ病にはイライラや怒りが伴います。感情のコントロールがつかず、ちょっとしたことで人を叱りつけたり、大きな声を出したりするようになります。後から、「何であんなことで怒ったのだろう」と自己嫌悪に陥ってしまうことは、よく聞く話です。



7 買いたくないのに買ってしまう

いつも虚しさが伴うため、コンビニやネットで余計なものを買ってしまいます。買い物には気分解消の力があるからです。


同じ物や無駄な物を買ってしまい、いつも後悔するのですが、それでもやめられません。日常に満足感がないから、同じことを繰り返してしまうのです。



8 死にたいけれども痛いのが嫌

「死にたい」、「消えていなくなりたい」という希死念慮を感じるのもうつ病です。


かといって、「痛い死に方は嫌」、「自殺して地獄へ落ちるのも嫌」と考え、「できれば事故や癌で早く死にたい」と口にする人がいます。「楽して死にたい」というのも変ですが、これは現実が辛過ぎるために、そこから逃げ出したいという気持ちの反映です。



以上、うつ病の矛盾した8つの気持ちを紹介しました。


人はAIではありませんから、矛盾した気持ちを抱いてしまうことは誰にでもあることです。うつ病の人が矛盾した気持ちを抱えるのは、病気の自分とそれを認められない自分の2つが反発しあっているのが原因です。


病気であることを素直に受け入れて、「できないことはできなくて仕方ない」と自分に優しくしてあげてください。そうすれば、この複雑な気持ちは少しずつ解消されていくでしょう。


もしあなたの身近な人が病気になったならば、「怠けてないで頑張れ」、「だらしないからきちんとしろ」とは決して言わないはずです。必ず、「無理をしないで」、「ゆっくり休みなよ」と労い、慰めてあげることでしょう。


同じように自分に対しても、できない自分、やれない自分を優しく慰めてあげてください。


子供の頃から消えていなくなりたい

「子供の頃から消えていなくなりたかった」と言う人がいます。


日本の自殺者数は減少傾向にありますが、若者の自殺者数は横ばいで減っていません。現在、40才未満の死因の1位は自殺です。


自殺と言うと、直前に何か心が傷つくことがあったと考えやすいのですが、若者の自殺には原因が見つからないことがほとんどです。亡くなった後に「あの人がなぜ?」となるケースが多いのです。


学校や職場へ行けて、傍(はた)から見ると普通に生活を送っているようでも、理由なく死にたい気持ちを抱えて生きている人がたくさんいます。こうした人は日常生活を普通に送っており、食事も睡眠もとれているので、典型的なうつ病とまでは診断できません。


ところが、子供の頃から本心からの喜びを感じられず、いつも「消えていなくなりたい」と頭の片隅で考えています。これはうつ病の一つで、気分変調症と呼ばれる病気です。


気分変調症は慢性化したうつ状態と言えます。正式には、2013年から「持続性抑うつ症」という病名で呼ばれるようになりました。昔は「抑うつ人格」とも呼ばれていたように、性格の問題と考えがちですが、治療で良くなる可能性もありますから、専門家を頼って見ることが必要です。


今回は、子供の頃から希死念慮を抱えている人、気分変調症がどのような状態であるのか、詳しく解説しましょう。





1 子供の頃から「消えていなくなりたい」

幼い頃から自分の存在に価値を感じられず、「自分は必要のない存在」と考えています。これを無価値感と呼びますが、無価値感が心の根っ子にあるのです。


生きる意味は分からなくても、それなりに自分には価値があると考えるのが普通の人です。ところが物心ついた頃から、自分に価値を見出せないどころか、いない方が良いという歪んだ考えが身についています。


そして、人から否定されたように感じたことがスイッチとなり、無価値感は意識に上がってきて、「消えていなくなりたい」という気持ちになります。


消えていなくなりたい気持ちの正体は、心に染みついた無価値感なのです。



2 喜びがない

朝目覚めても「今日はこれをやろう」という喜びや意欲がありません。朝早くに起きるのも苦手です。いつも心配事を抱え、必ず何かをくよくよ気にしています。希望はなく、食べて寝て、言われたことをやり、ただ淡々と毎日を送っているだけの生活です。



3 ちょっとしたことで傷つきやすい

人のちょっとした言葉や態度に敏感です。人のいつもと違う言葉や態度に触れると、「嫌われている」と否定された感じになります。相手に悪い気持がなくても、被害妄想のように拒絶されたと勘違いしてしまうこともあります。


心の根っ子に「自分は必要のない人間だ」があるので、何かのきっかけでこれが顔を出すのです。





4 自分と関連付ける

特に因果関係がなくても、悪いことは自分のせいであると考えます。自己肯定感が下がるために、周りで起きる出来事を、「自分はダメな人間だ」という考えに結び付けてしまうのです。


例えば、「家族が病気になったのは自分のせいだ」、「会社のプロジェクトが失敗したのは自分のせいだ」と、自分を責めるようになります。



5 グルグル思考

過去の失敗が浮かんできて、頭の中をグルグルと回っています。心理学では、「反芻(はんすう)思考」と呼びます。「反芻」とは、牛などの草食動物が、胃で消化した草を再び口に戻して咀嚼し、これを何度も繰り返すことです。食べ物が、口と胃を行ったり来たりするように、ひとつの考えがいつまでも頭の中を行ったり来たりして、結論が出ません。


反芻する内容の代表は、後悔です。「こうしておけば良かった」、「なんでああしなかったのだろう」と、後悔が止まりません。特に、風呂に入っている時、眠る前など、周りが静かでゆっくりしている時に限って浮かんできます。


「将来うまく行かない」という考えも反芻されます。新しい出来事は、過去の失敗と重なり、失敗の可能性ばかりを考えてしまうのです。



6 生きる意味を考える

生きる意味や目的を考え始めるのも、反芻思考の一つです。いくら考えても答えは出ません。そこで修行をしたり、深い思考にふけり、新たな生き方を見出せるのは、歴史に名を残すような宗教家や哲学者だけです。ふつうの人には答えは出ません。それどころか、「自分には生きる価値がない」という悪い結論を出してしまいます。


今回紹介したように、心がつらい時は、ネガティブな考え方になります。誤った判断につながり、自分を窮地に追い詰めてしまいます。思い込みで人を誤解するだけでなく、暗示や誘惑に引きずられるため、良くない人と交流をもったり、大きな買い物で失敗したり、仕事で間違った判断をすることがあるのです。先ほども紹介しましたが、詐欺師に騙されることもあるでしょう。


心がつらい時は、大きな決断をしてはいけません。生きる意味や目的も、考えない方が良いのです。何よりも、心と体を休めることを優先しましょう。脳を休めることで、ネガティブな考え方を止めることができます。特に睡眠と食事をきちんと確保することに意識を向けましょう。


今回紹介した考え方の特徴は、うつ病の人にも大変多く見られるものです。このような考え方に陥っているだけでなく、眠れない、食べられないが続いて、脳を休めることができないならば、自分の力で悪いループから抜け出せません。これは、うつ病の可能性もあります。放置しないで、精神科を受診するのが良いでしょう。


自他境界が壊れている人

人間関係でいつも疲れてしまう人は、心を守るバリアが弱っているのかも知れません。


私たちの心は見えないバリアで守られており、これが自分と他人の存在を区別しています。これを心理学では「自他境界」・「バウンダリー」と呼びます。


赤ちゃんの頃は、お母さんと心も体も一体化しているので、自分と他人の境界線が曖昧です。成長するに従い、自分と他人は違う存在であるという認識ができます。


こうして自他境界がハッキリしてくると、「私は私、人は人」、「私は何に責任を負うべきか」という考え方を持てるようになり、自分の気持ちや行動を主体的にコントロールできるようになります。


ところが、親子関係に問題があったり、発達障害で心の成長がうまくいかなかったりすると、自他境界が曖昧なまま大人になります。また、うつ病などで心が弱っている人も自他境界が曖昧になりがちです。


すると他人の悪い影響を受けて自分を見失いやすく、人間関係でエネルギーを消耗するようになります。人間関係でいつも疲れてしまう人は、自他境界に問題があり、それに気づけていない人なのです。


今回は、あなたの自他境界がきちんと機能しているか判断するために、自他境界が曖昧な人の8つサインを紹介しましょう。





1. 嫌なのに「ノー」と言えない

断ったら嫌われる」、「相手を怒らせてしまう」といった理由で、人からの要求や期待に「ノー」と言えない人は、自他境界が曖昧になっています。


例えば、自分の仕事が山積みでも、人からの頼み事を断れず、自分のキャパを超えてしまいます。心の底では「なぜ引き受けてしまったのだろう」という後悔や怒りがありますが、この怒りは心の内側に溜め込まれてしまいます。それで常に疲れている状態が続いてしまうのです。


最近では、闇バイトや性犯罪など、加害者に盲目的に従ってしまい犯罪に巻き込まれる人のニュースを耳にすると思いますが、これも自他境界が曖昧であることが原因です。



2  自己中心と思われたくなくて、自分の意見を言えない

自他境界が曖昧な人は、いつも人からの評価を気にして、周りに受け入られることを考えています。そのために「私はこう思う」と自分の主張ができません。


柔軟性があると言えば聞こえが良いのですが、実際には自分の考えを持てないでいるのです。周りの評価が自分の基準になり、自分の判断基準がありません。



3 失礼にならないか先回りして考える

自他境界が曖昧であると、嫌われないことが最優先事項になります。先回りしてでも人に失礼にならないようにいつも警戒をしています。


そもそも、日本人はおもてなしの文化を持っており、人を気持ちよくさせてあげることを優先して考えます。これは優しさが動機となっているのですが、自他境界が曖昧な人は、自分が傷つかないように、いつも予防線を張って生きている感じです。これでは神経をすり減らし、人間関係に疲れてしまいます。



4. 人の話が自分のことのように感じられて疲れる

相手に共感できることはとても大切なことです。しかし、相手の気持ちに巻き込まれ過ぎるのは自他境界が弱っているサインです。


例えば、友人の悩みを聞いているうちに、自分が辛くなってくるといったように、相手の感情をまるで自分のことのように感じ、その重荷まで背負い込んでしまう人です。これを共感疲労と呼びます。





5 人の言葉や態度に傷つきやすい

人から向けられた言葉や態度をサラッと流すことができず、それどころか深読みして、嫌われたような感覚に陥ります。


注意を受けただけで過剰に傷ついてしまうこともあります。人の言動に敏感で、ちょっとしたことで自分自身が否定されたと感じてしまうのです。



6 機嫌が悪い人を見ると自分のせいだと思う

機嫌が悪い人、怒っている人を見ると、その人が気分を害したのは自分の責任だと感じます。また、怒られている人を見ていると自分が怒られているようにも感じます。


これらのことは、自他境界が曖昧なために、他人が果たすべき責任を気づかないうちに自分が背負っている現象です。これも共感疲労を引き起こす大きな原因となります。



7. 責任転嫁 

他人の責任まで背負ってしまいがちですが、背負いきれなくなると責任転嫁することもあります。自分が負うべき責任、他人が負うべき責任の区別がつきません。自分を責めやすい人は、人も責めやすいのです。



8 人と比べて落ち込む

自分の評価が他人の価値観にあるので、いつも人と比べています。そして、自分よりもうまく行っている人を見ると自分はダメだと落ち込むのです。良くないと思いつつも、気になる人の行動をSNSでチェックするのが習慣になっている人もいます。



以上、自他境界が曖昧な人の7つのサインを紹介しました。


自他境界が曖昧であることが、どれだけ人生で損をしているか理解していただけたと思います。しかし、好きでそうなったのでなく、過去の環境や経験から心のバリアをつくることができなかったのです。


もし、自分の心のバリアが弱っていることに気づけたならば、少しずつ自他境界を持つようにしましょう。曖昧な自他境界は少しずつ変えることができます。