うつ病がよくなっているサイン
うつ病は、疲れや怠けと状態が似ている上に、血液検査や画像検査で異常が出ません。そのために、病気の自覚において難しいところがあります。
風邪ならば、熱が下がり、咳やのどの痛みがなくなれば、治ったことを自分で理解することができます。しかし、うつ病に関しては、そうは行きません。良くなっているのか自分でなかなか判断がつかず、十分治っていないのに、「がんばれば何とかなる」と勘違いすることもあります。昔の自分はどうだったか、元気な頃の感覚を忘れてしまう人もいます。
ここでは、うつ病が回復している目安となる、日常生活でのサインを8つ紹介しましょう。

1. 部屋の片付けをする
ほとんどの人が、回復してまずやることは部屋の片づけです。久しぶりに掃除機をかける、机の上の古い書類や手紙の整理をする、服の断捨離をする、家具の配置換えをする、などです。「やりたいな」とずっと頭の片隅にあったことが、少し力が出てきたので行動に移せるようになったサインです。
2. 睡眠・食事が安定する
夜は睡眠がとれるようになり、食事をおいしく感じるようになります。睡眠、食事はうつ病を治すための要(かなめ)です。これができるようになると、回復は早いのです。
うつ病の原因は、脳内物質のセロトニンの分泌が減っているためと考えられています。十分な睡眠と食事は、脳のセロトニン分泌を改善するために最も大切なことです。
3. 現実感が出てくる
頭のモヤがとれて、何かをしている実感が出てきます。うつ病の時は、脳がきちんと働いていないので、頭にモヤがかかったように感じます。何をしても現実感がありません。食事をしてもおいしくない、人と話しても頭に入ってこない、何をしても楽しくない、といった感じです。これらがなくなり、頭がスッキリして、生きている実感が湧いてくるのは回復のサインです。
4. 心配が減る
心配や不安が減って、「なぜあんな小さなことを心配してたのだろう?」と、むしろ以前の自分を不思議に思うようになります。うつ病の時は、脳内物質のセロトニンが減ることで、脳が警戒モードになっています。ちょっとした出来事でも「危険だ!何とかしろ!」と反応するようになっているのです。普段ならば気にもとめない出来事が頭の中でグルグル回り続け、「このままではいけない!」と追い立てられてしまうのです。
しかし、セロトニンが増えて、うつ病が良くなってくると、脳の警戒モードが解除されます。すると、何か出来事があっても、「なんとかなるさ」という気持ちがつよくなり、あまり心配をしなくなるのです。

5. イライラしなくなる
情緒が落ち着いてくるので、イライラしなくなります。治療を受ける前は、家族や職場の人に対してイライラして、ちょっとしたことで怒ったり、もめ事になることが多かったと思います。身近な人から「怒っているの?」と聞かれたこともあったでしょう。失敗や注意を受けることで、「もうダメだ」と投げやりになっていたのも症状です。うつ病が回復してくると、辛かった人間関係もスッキリしてきます。
6. 薬を飲み忘れる
調子の悪い時は、きちんと薬を飲みますが、良くなってくると薬のことを忘れるようになります。「1回飛ばしてしまった」ということが起こるようになります。もちろん、そこで勝手にやめてしまっては良くないのですが、これは辛い気持ちが消えたため、病気のことを忘れられるようになったサインでもあるのです。
7. エンタメを楽しめる
集中力が回復してくるので、動画や音楽などのエンタメを楽しめるようになります。具合が悪い時は、集中力がないので、動画を少し見ただけで疲れてしまったり、音楽が雑音にしか聞こえなかったりします。好きな歌を口ずさむようになったら相当回復しているサインです。
8. ひまを感じる
休職中に「ひまだな」と感じるのは、回復のサインで、仕事に戻るチャンスかも知れません。逆に、「何かしなくては」「早く仕事に戻らなくては」と追い立てられているのは、焦燥感といううつ病の症状です。症状ですから、焦っている時は、むしろ働かない方が良いのです。ひまを感じてきたのは、このような焦燥感や緊張感が取れてきたサインなのです。

うつ病の回復のサインは、薬を飲み始めてから2週目くらいから、薬の治療なしで休職するならば1か月くらいで現れてきます。そこから本来の自分の体調を取り戻すまでは、最短で1カ月くらいですが、さらに半年から1年くらいかかる人もいます。回復時間には個人差があるのです。
仕事に戻るのは、ほぼ自分の体調を取り戻せたタイミングです。ただし、復職しても再発の予防のためにプラス1年くらい、無理は禁物です。薬を飲んでいる場合は、働きながら予防服薬を続けましょう。治ってからの1年間が最も再発しやすいからです。
1年間の再発予防で問題がなかったら、次は薬を減らしていくステップです。月に1錠ずつ減らせたら良いペースです。スムーズに減らせたらよいのですが、現実には、再発とまで言えなくても、薬を減らすと具合が悪くなることがあります。そのために、何年も服薬する人もたくさんいます。
これは薬の依存ではなく、ストレスの原因が改善されていないために、脳内でセロトニンを十分分泌できていないからなのです。薬は長期に飲めるものですので、「いつまでやめる」と期限は決めないで、主治医と相談しながら時間をかけてゆっくり減らしていきましょう。同時に、生活の中のストレスを減らすような努力をしましょう。
また、万が一再発してしまう場合、最初のサインは睡眠と食欲に出てきます。治ったはずなのに、寝つけなくなった、眠りが浅くなった、朝早く起きてしまう、食欲が減った、となると危険なサインです。この場合は早めに医師に相談しましょう。
