疲れ過ぎると起こること

日々の疲れを舐めていてはいけません。命に関わることもあるのです。


疲れとは、休まなくてはならない心と体のアラームです。発熱や痛みと同じように、私たちの体に生まれつき備わっている、心と体を守るための仕組みの一つなのです。


そもそも疲れはなぜ起こるのでしょうか?筋肉や神経を使い過ぎると、細胞の中に活性酸素という物質が増えます。活性酸素は細胞を壊してしまう物質です。


壊されないように細胞の修復が行われるのですが、この修復のスピードが追い付かないと、脳に信号が送られるようになります。これが疲労として感じられるのです。ですから、疲労を無視していると活性酸素により筋肉や神経の細胞が蝕(むしば)まれてしまいます。


このような仕組みを知ると、「疲れたら休む」という当たり前のことがどれだけ大切か理解できると思います。ところが、職場や家庭の事情で疲れたと言っていられない人、疲れをお酒で誤魔化して働き続けている人もたくさんいます。このように疲れを放置しているとどのようなことが起こるのでしょうか。中には命に関わることもあるのです。


今回は、疲れ過ぎると起きてしまう危険なことを5つ紹介しましょう。





1 突然死


疲れを放置していると、血管の老化が早まるために破れやすく、血液の塊が詰まりやすくなります。特に脳の場合は脳出血や脳梗塞、心臓の場合は狭心症や心筋梗塞になります。これは命に関わる状態であり、一命をとりとめても麻痺などの障害が残る場合もあるでしょう。


働き過ぎで突然亡くなってしまうことを過労死と呼びますが、これは疲れの蓄積で脳や心臓の血管に問題が起きてしまうことが原因なのです。


過労死は1970年代から社会問題となり、調査の結果、月に80時間以上の残業によって起こりやすいことが判明しています。これは、月に20日間働くとなると、1日4時間以上の残業が過労死ラインということです。


もちろん、それ以下の残業ならば起きないということではありません。疲れ過ぎてしまうことが引き金なのです。その後労働時間の制限が法律で設けられ、過労死は減少の傾向にありますが、完全になくなったわけではありません。



2 事故・事件

疲れは脳の働きを低下させます。仕事の効率が下がり、聞き間違い、読み間違い、作業ミスも起こりやすくなります。暗示にもかかりやすいため、詐欺の被害を受けやすい状態でもあります。また、判断ミスから事故や事件につながることもあるでしょう。


例えば、医療事故は偶然起きることではありません。医療者の疲れの蓄積から集中力の低下が起こり、判断ミスから患者さんを傷つける結果となります。そのため、医療現場では事故防止のためのHALT法(ホルトほう)というものがあります。


HALT(ホルト)とは、「Hungry・空腹」、「Anger・イライラ」、「Late・慌ただしさ」、「Tired・疲れ」の頭文字をとったものです。この4つのどれかがあると判断ミスが起こりやすく、事故を誘発してしまう確率が上がります。医療に限らず、運転手など判断ミスが事故につながりやすい仕事をしている人は常にHALTを意識しましょう。



3 不眠症

疲れをとる1番の方法は睡眠です。ところが、疲れ過ぎると脳は覚醒状態となり、眠ることができなくなります。疲れを取るための最大の手段が使えなくなり、いつまでも疲れから解放されないという泥沼にはまってしまうのです。


日本人の睡眠時間は世界でもトップくらすに睡眠時間が短いと言われています。睡眠の世界的調査では、世界平均が約8時間30分くらいに対して、日本人の平均睡眠時間7時間20分くらいで、1時間以上も少ないと言われています。


睡眠が取れないと言うのは大変危険な状態です。万が一このようなことが起きたならば、睡眠薬をつかって眠ることも考えましょう。




4 うつ病

疲れの蓄積はうつ病になるリスクを高めます。特に、不眠症を放置しているとうつ病の発症につながります。最近の研究では、脳神経を使いすぎることから、神経細胞が活性酸素で破壊されてしまい、それが十分に修復されないことからうつ病が起こるとも考えられています。


うつ病の症状と疲れには境界線が引けないところもありますが、いくら休んでも2週間以上疲れがとれないならばうつ病の可能性があります。疲れの症状だけでなく、気分の落ち込み、物事に楽しめなくなる、過去の嫌なことばかり思い出す、といった症状がある場合はうつ病を疑いましょう。



5 自殺

1980年代、働きすぎによる自殺の問題が起こりました。疲れの蓄積からうつ状態となり、衝動的に命を絶つ人が増えたのです。これを過労自殺と呼びました。


過労自殺の原因は、過労死のような労働時間の問題だけでなく、ハラスメントなどの人間関係の影響も大きいことが分かっています。ハラスメント対策やストレスチェックが法律で定められるようになりましたが、過労自殺はいまも続いています。あまりにも疲れすぎると正常な判断を失ってしまいます。



以上、疲れ過ぎると起きてしまう危険なことを紹介しました。


バブル期の1980年代、「24時間働けますか?」という栄養ドリンクのコマーシャルが流行りました。「栄養ドリンクを飲んででも休まず頑張ろう」という意味で、当時を象徴するようなキャッチコピーです。


いまとなっては「ブラック」と笑い話にされる内容ですが、無理をしてでも会社のために犠牲になり、過労死や過労自殺が社会問題になった時代がありました。


今でもこの風潮が完全に消えたわけではありません。また、「みんなががんばっているのに自分は休んでいる場合ではない」と考えて、つい無理をしてしまう人もいます。しかし、自分の健康は自分で守るしかありません。疲れは自分の責任で解消させなくてはならないのです。


そして、疲れをとる最も大切なことは十分な睡眠です。万が一、「眠れない」、「うつ病かな?」という時は早めに精神科を受診しましょう。