愛着障害回避型

孤独なのに人と深く関われない・回避型愛着スタイルのサイン


孤独なのに人と深く関われないのは理由があります。


子供時代は心の土台をつくる大切な時期です。心は愛情を受けることで育まれます。ところが親から注がれる愛情が足りなかったら、自分を肯定できず、いつも孤独を抱えるような大人になってしまうでしょう。


ずっと取れない孤独感は、人間関係、仕事、健康など、人生のあらゆる場面に影響を与え、生きづらさとなります。これは大人の愛着障害と呼ばれるものです。


特に、心の中心に「私は愛される価値がない」、「人は信頼できない」という思いがある人は、他人と親しくなることが不安であり、人と深く関わらない生き方をするようになるでしょう。


孤独で辛いのに、無意識のうちに人との関わりを避けるという矛盾した生き方です。このような矛盾した対人関係を「回避型愛着スタイル」と呼びます。


今回は、回避型愛着スタイルを持つ人の生活、仕事の特徴を紹介しましょう。当てはまる人は、この愛着スタイルが生きづらさの原因であることに気づいていただけたら幸いです。




1 ハリネズミのような対人関係

基本的に無表情で、自分の心の内を表に出そうとしません。言葉数も少なく、素っ気ない態度をとる傾向があります。「私には誰も必要ない」といったような、人を寄せ付けない雰囲気ですが、本音は全く逆で、孤独に苦しんでいます。まるで、トゲトゲの鎧を着ている弱ったハリネズミのようです。


これは、子供の頃に親が安心できる存在でなかったこと、親に傷つけられてきたことが根っ子にあります。また、学校でいじめを受けた経験も影響している場合もあります。


人と情緒的な関係を築けなかったために、深い人間関係を築くことに不安を感じているのです。心の中心には、「人は信頼できない」という思いがあり、人と関わって辛い思いをするならば、孤独の方がましと感じています。



2 蛙化現象

異性と関係が深まり、相手が本気で愛情を示し始めると、途端に距離をとるようになります。デートの後に連絡を絶ったり、急に冷たい態度を取ったりすることもあるでしょう。最近では、このことを「蛙化現象」と呼ぶことがあります。


親密になると、相手の些細な欠点にばかり目が行くようになり、その人に価値がないことを合理化します。そして、別れても仕方なかったと自分に言い聞かせます。これは、相手を失うことの痛みや、親密さの恐怖から逃げるために、無意識に行っている心の自己防衛です。


回避型愛着スタイルを持つ人にとっての親密さとは、心を傷つけられる不安であり、自由を奪われる不安です。子供の頃の辛い経験から、人と親密になると「危ないぞ」という心の警報が鳴り響くようになっています。



3 白馬の王子症候群

恋愛関係では蛙化現象とともに、現実離れした理想のパートナーを求める傾向があります。「いつか私には、白馬に乗った王子様のような理想のパートナーが現れる」という夢から離れられません。また、過去の恋人を理想化してしまい、実際はそうでなかったのに「あの人は素晴らしかった」と執着することもあるでしょう。


これらのことは、目の前の現実的な関係から逃げるために、架空のパートナーを自分で作り出している現象です。架空のパートナーならば、危害を与えて来ないからです。これを「白馬の王子症候群」と呼ぶことがあります。





4 仕事は自己完結

職場では、チームワークを避けて、単独で完結する仕事やプロジェクトを選びがちです。「私は一人で何でもできる」と理由付けをしている人も多いのですが、実は、「人を信じてはいけない」という無意識が反映されています。


子供の頃に助けを求めても解決されなかった経験から、「期待すれば裏切られる」という思いが染みついているのが原因です。その結果、人に頼ることやできない自分を見せることは、避けなくてはならない最重要事項になりました。これは自立心でなく、過剰な独立心とも言えるでしょう。


困難な課題に直面しても誰にも相談せず、一人で抱え込みがちです。新しいスキルや視点を学ぶ機会を逃してしまうだけでなく、ストレスを抱えて心の病気にもなってしまいます。



5 健康

人と話すことはストレスを軽減し、健康のために良いものです。ところが、回避型愛着スタイルを持つ人にとっては、逆に会話がストレスになることがあります。子供の頃に大人から感情を受けとめてもらった経験がないことが原因です。


このように心の状態を言葉で表現することが苦手で、情緒的なつながりを持てない事を失感情症とも呼びます。溜まったストレスは言葉にならないために解消されず、体の不調として現れます。ストレスを溜めやすく、倦怠感、頭痛、肩こり、腰痛などの不定愁訴を感じやすくなるのです。



以上、回避型愛着スタイルについて説明しました。


回避型愛着スタイルは現代の若者の30%くらいに見られるという報告があります。辛辣な現代社会を傷つかずに生き抜くための生きる知恵という見方もできるでしょう。


中には、自閉スペクトラム症・ASDと診断されている人もいますが、それなりのコミュニケーション能力がある人は回避型愛着スタイルである可能性もあります。


回避型愛着スタイルは一生固定したものでなく、意識的に努力することで少しずつ変えていくことも可能です。まず知っていただきたいのは、子供の頃からの人間不信が横たわっていることです。


世の中には信頼できる人、頼れる人も存在しますが、この時に身に着けた「人を信じてはいけない」というルールを全ての人に当てはめてしまっているのです。ですから、「この人なら信頼できそう」と感じる人に出会った時や、いつも暖かく付き合ってくれる人がいるならば、少しずつ心を開く努力が必要です。


人と離れたくなった時は、「これがいつもの自分」と割り切らずに、なぜ自分がそうするのかを考えてみることも大切です。大きな根拠もなく、「この人は信頼できない」と判断しているのかも知れません。


また、悩み事やたくさんの仕事を一人で抱え込んでイライラする時は、周りの人に少しずつ助けを求めることもしてみましょう。そこで良い体験を重ねれば、いつかトゲトゲの鎧を脱ぐことができるでしょう。