2021.11.03

うつ病の入院

うつ病が長引いている人は、入院したら早く良くなるのでしょうか?何か入院するメリットはあるのでしょうか?しかし、精神病院と聞くと、鍵のかかる部屋に閉じ込められて薬をたくさん飲まされる、など怖いイメージをもたれる方も多いようです。
近所に精神病院があっても近寄りがたい雰囲気もあります。実際にうつ病の入院はどのような感じなのでしょうか?
基本的に、うつ病は通院で薬の治療が中心です。入院しても薬を中心とした治療は同じで、入院でなければ使えない薬も特にありません。例外として通電治療、磁気治療などを行う場合は入院が必要ですが、最近ではこれらの治療を通いで行う施設もあります。
薬の治療と併行して、うつ病は静養することがとても大切です。住み慣れた自宅でゆっくりするのが一番良いことです。しかし、自宅では仕事の連絡が来て休めない、小さなお子さんがいるのでゆっくり寝てられない、と言う人もいて、静養を期待して入院する人もいます。



ところが精神病院には他の患者さんがいるので余計落ち着けない場合が多いようです。大部屋では隣の人のいびきで眠られず、余分にお金を払って個室に入院できても、食事はホールでたくさんの患者さんといっしょですし、入浴も順番を守らなければいけません。せっかく入院したのに制約の多さによけいイライラしてすぐに退院するという人もいます。
うつ病の患者さんが一番多く入院するケースは、同居している家族と一時的に距離を置きたいという理由です。長い闘病生活から看病する家族にもストレスがたまり、些細なことから言い合いになり、患者さんは自分が家族の邪魔な存在ではないかと自分を責めてしまい病状が悪化してしまうことがあります。短期間でも家族から離れることで、お互いに気持ちを整理してリセットできます。
そのために気軽に入院を利用したいのですが、さきほどの理由でよけいに落ち着けないことが多いのです。どうしても入院する場合は、その前に病棟の見学ができるので、よく雰囲気を知ってから入院しましょう。精神病院よりも、総合病院の精神科の方が比較的軽症の患者さんが多いので落ち着いた雰囲気があります。どうしても相性のよい病院に巡り合えない場合は、ビジネスホテルに何泊するのも手です。
社会的にうつ病の患者さんが増えるようになり、2000年頃からうつ病専門の静養病室というものができてきました。広い個室でテレビ、パソコン、シャワーが完備はもちろん、中には高級ホテル並みのサービスで、フロア内にフィットネス、ジャグジー、図書館、映画室が備わっているところもあります。
ただし、治療費とは別に1日10000円以上の差額ベット代がかかります。通常のうつ病の治療費は1か月10万円くらいなので、合計で月に40万円以上がかかります。これでは庶民には縁遠い費用です。政治家や芸能人がスキャンダルを起こして、社会の目から逃げるための入院ではよく利用されているようです。
うつ病の治療は基本的に自宅でゆっくりしながら通院するのが良いのです。しかし、どうしても入院が必要な場合があります。だいたい次のような場合です。

まず、急性期の治療が必要な場合です。例えば、死にたい気持ちがつよくて誰かが管理していないと本当に自殺してしまう、食事ができないために体調が弱っていてこのままでは命の危険がある、不安や興奮で人に危害を加えてしまうようなケースです。
これらは命の危険があるために、時に本因の承諾なしに入院することもあります。本人の承諾のない入院には、家族の承諾で入院する医療保護入院、警察に保護されてから精神保険指定医によって入院が決められる措置入院の2種類があります。安全のために保健室という自由に出られない部屋に入ったり、意にそぐわない扱いをされた記憶だけが残っていて、入院が恨みになる人も多いようです。
医療保護や措置入院は好ましい入院の形ではありませんが、命を守るためにはやむをえない対応です。退院後にはよく家族で話し合い、入院中の嫌な思い出をよく聞いてあげて、辛かったことを慰めてあげましょう。
他にも昼夜逆転を治したい、孤独を改善したい、一人暮らしで介護してくれる人がいない、などの理由で入院する場合もあります。

精神病院には、急性期が得意なところ、療養が中心のところ、など、それぞれ特色があります、入院してから「こんなはずではなかった」とならないように見学をしてから入院をすることをお勧めします。短期間の静養だけならば、病院ではなくビジネスホテルなどを利用するのも良いでしょう。