2021.03.03

誰にも理解してもらえない夫婦間の悩み―カサンドラ症候群とは?②

カサンドラ症候群の奥さんの悩み…

前回、非協力的な夫に振り回されたり、夫婦での会話が上手くいかずにイライラや孤独感をつのらせてしまうなどなど…「社会性」「コミュニケーション」「想像性」の未熟さが特徴として挙げられるASD(自閉症スペクトラム)の特性を持つ夫との関係に悩んでいる妻の状態、「カサンドラ症候群」についてご紹介しました。
 
 今回はそのような特性を持つパートナーへのちょっとした対応のポイントをご紹介してきたいと思います。

特性①女性特有の何気ない会話が難しい

会話のポイントとして・・・

・やってほしいことは言葉にして伝える
・なぜこの話をしたのか、目的を明確にする。あるいは、目的や結論を先に述べて、夫の興味を引き付けてから話を始める
・共通の趣味を持ち、共通の話題をストックする
・妻と良い関係を築くことが「社会的な評価の向上」になることを示す

特性②妻の大変さを想像し理解することが苦手…

予め、役割分担を意識していく・・・

・夫に手伝ってほしいことは具体的な言葉にして伝える
・できれば、結婚するとき、子どもが生まれたときなど、生活に大きな変化があったときに、お互いの役割分担を決めてしまうとよい
・「何時から何時までは○○の時間」というようにスケジューリングする
・役割を書いた紙を目につくように壁に貼ってみる
・夫の得意な作業は夫の担当にしてしまう
・短時間で終わるような作業を任せる
・少しオーバーなくらい褒めたり、感謝の言葉をかける

一人で抱え込まずに相談してみる

簡単に対応ポイントを挙げさせていただきましたが、会話のひとつにも工夫が必要だったり、伝えるのにもエネルギーを使うなあ、大変だな・・・と感じた方もいらっしゃると思います。

日頃の夫婦間のコミュニケーションに疲れてしまっていることがあれば、一人で抱え込まずに話せそうな他者に相談してみましょう。そうすることで、客観的に気づけたり、ご自身のことを
必要以上に責め過ぎないことにつながるのではないでしょうか。
身近で話しやすい人にパートナーのことについて相談してみることもひとつですし、医師や専門家に聞いてみることももちろん
よいでしょう。
まずは一人で抱え込まないようにするといった気づきのきっかけなればと思いまず。
【発達障害の夫に振り回されないために カサンドラのお母さんの悩みを解決する本 
監修 宮尾益知  河出書房新社 】
2021.02.24

誰にも理解してもらえない夫婦間の悩み―カサンドラ症候群とは?①

●「カサンドラ症候群」って耳にしたことはありますか?

「カサンドラ症候群(カサンドラ)」とは、簡単に言えば、発達障害のパートナーとのコミュニケーションや情緒的な夫婦間の交流が上手くできずに悩んでいる妻の状態のことと言えます。

例えば、妻の具合が悪い時でも「ご飯はまだ?」など平気に言ってきたり・・・
夫婦の会話が続かなかったり、妻としては聴いてほしいグチなども聞いてくれず、温かい言葉もかけてくれない・・・
家計のことは極端にケチなのに趣味には衝動的にお金を使ってきたり、相談もなく高額な買い物をしてきたり、家族のことよりも自分のことを優先することが目立つ・・・
メイクや髪型を変わったのに気付かなかったり、夫婦らしい会話もなく、甘えたり甘えられることもなかったり、触れたり触れられることを喜ばない、などの夫婦生活の乏しさ・・・などなど
このように特にASD(自閉症スペクトラム)のなかでもアスペルガー症候群の特性があるパートナーとのコミュニケーションや情緒的な夫婦間の交流がうまくできずに悩む妻の状態を表している呼び方として、「カサンドラ症候群」というのがあります。
 周囲からは“真面目な旦那さん”と見られていることが多く、夫婦間での妻としての悩みや大変さが周囲には理解されづらく、妻としては孤独感を感じることも多いです。場合によっては、ストレスから抑うつ状態になってしまうこともあります。

●ASD(自閉症スペクトラム)の特性について

その特性は「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「こだわり行動」という3つの特性があります。
 「社会性の障害」のために、他人に対して関心を持ったり、仲間意識を感じることがあまりなく、仲間や職場、家庭のルールよりも自分のルールを優先してしまいます。そもそも、“人に合わせる”という発想がないと言えます。また、その場の状況を的確に掴み、融通を効かせて行動するといったことも苦手であるため、奥さんが忙しくしているのに、手伝うこともしないので、奥さんのことをイラ立たせてしまっていることもあります。本人には悪気はありません。
 「コミュニケーションの障害」とは、自分の興味のあることだけを一方的に話し、相手の言うことには一切耳を傾けないなど相互的なやりとりが苦手であること意味しています。また、相手の表情や反応を読み取ることも上手ではないため、話している相手が笑っているのか、怒っているのか、困っているのかが、分からない人もいます。
 「こだわり行動」というのは、興味や活動の限定のことで、自分が好きなこと、興味があること、自分が決めたルールに強いこだわりを持っています。融通がきかないことから、周囲からすればやりにくさを感じてしまい、人間関係を築くのがむずかしい要因となっています。
このような「一方的な会話」「自分の都合優先」「融通のきかなさ」などから
他者とのほどよい人間関係や夫婦関係を構築し、長続きさせることが苦手と言えます。
 次回以降の機会にはそんなパートナーへの対応や工夫についてお伝え出来たらと思います。
【参考文献】発達障害の夫に振り回されないために カサンドラのお母さんの悩みを解決する本 
監修 宮尾益知  河出書房新社
2021.02.15

統合失調症の3つの時期

統合失調症をご存知でしょうか?

統合失調症を含むこころの病気の治療では、「リカバリー」という考え方が注目されています。リカバリーには「回復」「改善」「取り戻すこと」という意味があります。単に「症状がなくなることを目指す」という一元的な見方ではなく、周囲のサポートを受け、薬を使いながら、自分らしく生活できることを目指すということを表しています。リカバリーが注目されたのは「自分らしく生きる」ということが、こころの病気がある人やその家族にとっては、とても難しいという現状があるからです。これは統合失調症に対して誤解されている部分が多いことが一つの要因です。

今回は統合失調症の3つの時期の症状についてお話します。
統合失調症は慢性の病気です。回復への道はゆるやかで個人差が大きいうえに、病気の時期によって、症状がかなり異なります。そのため、本人がつらいこと、家族が困ることは時期によって変わります。
発症直後、神経の興奮が激しい時期です。精神的に興奮しやすかったり、落ち着きなく動き回ったりします。幻覚や幻聴、妄想などの症状が現れます。

多くの場合、発症の前に不眠などの前兆があります。周囲の人は「なんとなくおかしい」と思っていたところ発症し、驚いてしまいます。
●幻覚や妄想に悩まされます。
自分の中から様々な声が聞こえ、行動を監視されたり、命令されたりするなどの症状がみられます(幻覚・幻聴)。「死んでしまえ」など自分を脅かす内容の声が多く、実際に痛みを感じる場合もあります。また、「やくざに狙われている」「悪の組織が自分を監視している」などの思い込みが生じることもあります(妄想)。身の回りの些細なことを、すべて自分に関係があることと解釈し、不安を強めてしまいます。

●否定的な内容の妄想が多く、強い不安にさいなまれます。
妄想は本人にとっては非常に現実的であるため、不安もそれだけ強いものです。妄想を自分でそんなはずはないと否定することも難しく、消えることはありません。

●周囲が症状を理解せず、孤独を感じる
発症直後は、家族も病気の知識がありません。そのため、苦しさや不安を分かってもらえない、自分にとっての現実を否定されるなど、孤独を感じる場合があります。
●何がなんだか分からない
症状が身体の不調として現れないため、初期には周囲の人が「病気」とは思わない場合もあります。本人の様子がいつもとは違うことは分かりますが、言動があまりにも突飛なので、つい否定したり、説得したりしてしまいます。

●突然の症状にどう対処していいか分からない
「なんとなくおかしい」とは感じていたものの、突然の症状に家族は戸惑います。その戸惑いから「そんなことあるわけないでしょう」「馬鹿な事いわないで」と否定したり、「気の持ちようだ」「しっかりしなさい」と説得したりする場合も少なくありません。

●予期せぬ事態に恐れを抱く
「なぜこんなことに」「あれがいけなかったのではないか」と思い悩みます。
休息にエネルギー不足に陥り、回復には時間がかかります。幻覚や妄想などの症状は治まりますが、元気が全くなくなってしまいます。
●つらくて何をする気も起きません。
「やらない」のではなく「できない」状態です。感情の起伏が乏しく、口数が少なくなり、外出しようとしません。疲れやすく、本人もなぜこんなにも動くことができないのか歯がゆさを感じます。

●何を見ても心が動きません。
体力も気力も充実せず、寝てばかりいることが珍しくありません。薬による鎮静作用が効きすぎている場合もあり、ものごとに集中したり、自分から進んで何かをすることが難しい状態です。
●もどかしく感じます
急性期を超え、症状は落ち着いたにも関わらず、元気がなくボーっとしたり、寝てばかりいる状態にもどかしく思います。「外に出てみたら?」と励ましたり、「家事くらいしなさい」「ずっと寝てないで早く起きなさい」と説得したりと期待を向けてしまいやすくなります。

●先行きを不安に感じますそれでも少しずつでも元の生活に戻る気配が見られないと、家族は不安を感じます。「まだできないのか」「まだ無理なのか」と嘆きやすくなります。


●元気のない本人にどう接していいか分からないと悩みます。
ちょっと落ち着いてきたし、少しくらい何かさせた方がいいのではないかと周囲は思いやすくなります。しかし、当事者は身支度すら非常に苦しいなど、普段できていたことができなくなっていることのギャップに、家族は戸惑いを感じます。
ゆっくり体を休めていると、少しずつエネルギーが溜まってきて、体や心が動き出します。活動範囲が広がり、出来ることが増えてきます。この時期に入ってきても、回復のペースはとてもゆっくりです。それが家族にも歯がゆく感じられるかもしれません。
●焦りが強くなります。
かつての自分の「当たり前」ができなくなっているので、とても苦しく、焦りを感じています。いい年齢や経歴を持っていれば、「いい年下大人が…」「家事くらいしないと」「働かないと」「大学まで出たのに」と自分を追い込んだり、「気持ちが重くて、やりたいことができない」「仕事が好きで頑張ってきたのに戻る自信がない」と以前の自分ならできたことに苦しさを感じます。

●思うようには回復しないことに腹を立てることがあります。
やらなければいけないことは分かるので、焦りを感じて動こうとしますが、上手く動かない自分自身に腹立たしく思うことがあります。また、何とか頑張って外に出たとしても、失敗してしたり、怒られたりすると、それが自信喪失に繋がることもあります。

●周囲の期待がプレッシャーになることがあります。
回復にはそれぞれペースがありますし、自分がしたいことと家族がしてほしいことの間にもギャップがあることがあり、急かされると辛くなります。復職、復学には、体力的にも、能力的にも、自分がどこまでできるのか分からず、不安を感じます。
●回復のスピードに期待しすぎてしまいます。
当事者にとっては、ようやく少し元気になってこれたところですが、家族にとっては「今なら行ける」という期待になり、励ましたり、気晴らしに誘ったりすることもあります。しかし、当事者には「しょせん、わかってもらえない」「理解していない」と受け取られてしまうこともあります。

●思ったより回復が進まないと失望や戸惑いを感じます。
回復期に入ったはずなのに、思ったよりも回復が進んでいないと焦りを感じます。
病気を持っている人自身も、偏見や理解不足だと「自分はもうだめだ」と悲観してしまうことがあります。しかし、慢性の病気や障害を持っていても、工夫を重ね、サポートを受けることを通して、社会の中でのびのび生きていくことができます。これが最初にお話した「リカバリー」の考え方です。統合失調症の人の中には、「今は親がいるから安心だけど、青やいなくなったあとを考えると自信がない」という人もいます。将来への不安を感じながら過ごしている人が多いことが伺えます。仲間や支援者とこのような点についても話しながら、具体的な解決策を一緒に探していきましょう。
参考文献:伊藤順一郎・NPO法人地域精神保健福祉機構(2010)「統合失調症の人の気持ちが分かる本」講談社
2021.02.08

死(喪失)を受け入れるプロセス

私たちは誰しも必ず「死」を経験します。
しかし「死」を迎えるのが突然の人もいれば、病気や老えを通して「死」を少しずつ感じていく人もおり、経験の仕方はさまざまです。精神科医のキューブラ―という医師は「死」について関心を持ち『死ぬ瞬間』という著書も書いています。今回は、キューブラ―が唱えた「死の受容過程」についてご紹介します。
キューブラ―はシカゴ大学で200人以上の終末期の患者と面接を行い、録音、分析をし、「死の受容過程」を発表しました。人が死を先刻されてから受け入れるまでには、5段階のプロセスを経験すると言われています。
自分の生が残りわずかである宣告を受けると、あまりの衝撃に「いや、そんなはずはない」「何かの間違いに違いない」とその事実を否定します。

患者本人は「何か道があるはずだ」と考えますが、周囲は医師の宣告を受け入れ、死の事実を否定する患者を「死を受け入れられていない」と認識するため、考え方が食い違います。周囲は患者にどう接して良いか分からなくなってしまい、会いに来る人や時間が減っていきます。次第に、患者と周囲には距離ができ、患者は孤立していきます。
生が残りわずかという事実を否認しても変わらないので、否認の維持が難しくなってきます。そうすると、「なぜ自分がこんな目に合わなければいけないのか」「なぜあの人は生きているのに自分だけがこうなるのか」と怒りを示すようになります。

看護師や見舞いに来てくれた人に対して羨ましさがあり「まだ生きていられていいね」と皮肉っぽいことを言ったり、「なぜ自分はこんなに苦しんでいるのに、笑っていられるのか」という思いを抱いたりすることがあります。

地位や立場がある人は、これまで築き上げたお金や労力に関係なく、医師の指示のもと今まで通りの生活を送ることが難しくなるので、そのことにも腹を立てることがあります。

怒りは、ますます患者を孤立化させていきます。
信仰のありなしに関わらず、神様に取り引きを持ちかけようとします。「これからはもっといい行いをするから、長く生きられるようにしてください」と願うのです。

この段階は一番短い段階であると言われています。
取り引きをしても、体の悪化を止めることができず、毎日治療を続ける日々に抑うつ感や悲壮感を抱きます。心も体も元気ではなくなってきて、今までよりも静かに過ごすようになります。落ち着くとこれまで頭で理解してた死を受け入れられるようになります。

また、体の健康や仕事など失ったものとマイホームの断念や孫の顔を見られないというこれから失うものに対しても、抑うつ感を抱くようになります。

この段階に入ると、「自分の人生にはどんな意味があったのだろうか」と生の意味を問うようになります。
死と向き合う十分な時間と周りの助けの中で、死は誰しも訪れる自然なことだと受け入れるようになります。否定も怒りも抑うつもなく、かといって幸福というわけでもなく、静かな平穏が訪れます。


死の受容過程は必ずしもすべての段階を通るとは限りません。否定はするけれど、怒りにならずに受容していく人もいます。死は「生の喪失」ですから、死の受容だけでなく、恋人の喪失(失恋)、家族の喪失などが、このプロセスに当てはまる場合もあります。
2021.02.05

相手を怒らせない方法を考える

これまで「怒り」について見つめていきました。ここで一度相手を「怒らせない方法」についても考えて見たいと思います。
怒られてしまうと、売り言葉に買い言葉でついついこちらも怒りが湧いてしまいます。こちらが怒りを示すと、相手もさらにヒートアップして収拾がつかないということもあります。そもそも相手を怒らせないようにする方法はないでしょうか?
①「でも」「だって」タイプ
言い訳がましい話し方は、相手の怒りに火をつけやすいです。特に「でも」「だって」など反論の接続詞を会話の中で多用すると、相手はそのたびにカチンときて、頭に血がのぼることが多くなります。

②上から目線タイプ
「○○してやる」「せっかく○○してやったのに」といったニュアンスで、上から目線でモノを言う人も相手を怒らせやすくなります。相手からすれば「いったいお前は何様なんだ」という気持ちになってしまうからです。また、専門用語を多用したり、知識をひけらかしたりすることも気をつけましょう。

③KYタイプ
場の空気や話の流れを読まずに「え?今なぜその発言をするの?」という話し方をする人、また、こちらが話している最中なのに平気な顔で割り込んでくる人は、相手を怒らせやすい傾向があります。なかなか話が通じないという相手のイラつきが怒りに結び着くのです。

④たらい回しタイプ
「部署から部署へ」「人から人へ」と何か所もたらいまわしにされたら、「いい加減にしてくれ」と言いたくなるものです。また、無駄に長く待たせることもよくありません。相手の話をろくに聞かないで事務的に電話を他に回したり、上司の許可をとるのに相手を長く待たせたりといった対応をしないように注意しましょう。

⑤支離滅裂タイプ
話を論理的にまとめようとすることなく、思いついたままとりとめのない話し方をするタイプです。支離滅裂で一貫性がなく、話が二転三転することもあります。このタイプは相手の話に耳を傾けることも苦手で、自分勝手に好きなことを話すので、聞く側は疲れてしまいします。

⑥マニュアルタイプ
「規則なので」「決まりなので」とそれだけで対応する場合には、相手に怒りを抱かせる場合があります。確かにルールや現実的に思い通りにできないこともありますが、気持ちがこもってないように感じさせると、冷たいという印象を相手に与え、そこから怒りや不満に繋がりかねません。

6つのタイプはどれも一方通行で相手のことを考えていないことが特徴です。自分は大丈夫だろうかと不安になるような人は、相手のことをよく考えている人です。これ以上気を遣いすぎる必要はありません。信頼できる人に、自分の言動について気になったことはないかと聞いてみることも良いでしょう。
ただ謝罪の言葉を並べただけでは、逆に悪い印象を与えかねません。ここでは4つのスキルを紹介します。

はっきりとお詫びの言葉を述べる
まず大切なことは、言葉と態度にできるだけ誠意を込めて、はっきりとお詫びを述べることです。自分が間違っていた場合にはまずお詫びすることが大切です。ここでなぜそうしてしまったのか理由を先に述べると、言い訳をしているように聞こえてしまいます。

「責任逃れ」のイメージを持たれないようにする
「自分だけが悪いわけじゃないのに」「責任を取らされるのは嫌だ」という思いがあると、気持ちの迷いが言葉や表情に表れてしまいます。そうすると、相手から責任逃れや言い訳のようなマイナスがイメージがついてしまうことがあります。経緯をきちんと説明することは必要ですが、その際にも責任逃れや言い訳と受け取られないように気をつけましょう。

相手の話にはとことん耳を傾ける
謝罪を受ける相手側にも言いたいことがあるはずです。その話を聞いてあげることは、尾を引かないために非常に大切なことです。下手に口を挟まず、よくうなずきながら、共感し、謝ってほしそうな時には謝るようにします。

謝るだけでなく対応策を提案する
謝っただけで相手が満足することもあれば、そうもいかないこともあります。謝罪したあとは「次から~に気をつけます」と自分にできる改善点を話したり、「~のように対応させて頂きます」と今からできる解決策を提案したりすることが必要な場合もあります。

相手に誠意が伝わるということが一番重要です。必ずしも自分が悪いわけではないのに謝らなければならない場面もあるかもしれませんが、結果的に自分を守ることに繋がることもあります。よりよい関係を築くことができるように願っています。
参考文献:伊藤拓(2020)「精神科医が教える後悔しない怒り方」ダイヤモンド社
2021.02.03

「怒り」について見つめてみる②

怒りも大切な感情

前回は怒りという感情は抱いてはいけないといった悪い感情ということではなく、人間にとって必要不可欠な感情であり、うまくコントロールしながら付き合っていくことの大切さについて触れさせていただきました。

怒りへの対処3つの基本

今回はまず、最初に怒り自体にうまく対処していくための「3つの基本」をはじめにお伝えします。
さっそくですが、「3つの基本」とは衝動的にならないためにも『①口を閉じて沈黙を維持する』→『②冷静になって怒りのタイプやパターンを分析する』→『②怒りをコントロールするための行動を起こす』というこの3点になります。そもそも、怒りを扱っていくことの基本にはこの3点を挙げることができます。

怒りの消火方法について

『③怒りをコントロールするための行動を起こす』という、“自分なりの怒りの消火方法”を持っておくことが望ましいですし、ぜひとも知りたいことでもありますよね・・・。
今回は、イライラしてしまったときの自分なりの消火方法につながるような、“冷静さを取り戻す手軽な方法”をピックアップしてご紹介していきたいと思います。
◎空を見上げる
◎数を唱える、おまじないじみたことを唱える
◎とりあえず、その場を立ち去る
◎気持ちが落ち着くものを見たり聴いたりする
◎甘いものをひと口食べる
といったものがあるんです。「意外とこんなことで?」と思うものもあるでしょうし、その場ですぐ取り入れやすいものを今回紹介させていただきました。

まずは冷静さを取り戻すことを意識

日常生活で避けて誰しも感じることのある怒り、衝動的に怒ってしまった場合には、自分に対して自己嫌悪も感じてしまうこともあるかと思います。怒りを我慢するというよりも、イライラしたときに、ヒートアップさせないためにまずは手軽に取り入れやすい冷静さを取り戻す方法を試していくこともよいかと思い、今回ご紹介させていだきました。
今後またの機会には、怒りについて、もっと掘り下げてご紹介させていただけたらと思います。

参考文献

『精神科医が教える後悔しない怒り方』伊藤 拓 ダイヤモンド社
2021.01.29

赤ちゃんの愛着が示す成長記録

対人関係は赤ちゃんから始まります。赤ちゃんにとって養育者は初めて対する人です。養育者との関係が大人になってからの愛着関係を左右するとも言われています。愛着関係について研究した心理学者はボウルビー(Bowlby)が有名です。今回はボウルビーが研究した愛着理論についてご紹介します。
ボウルビーの愛着理論は、1950年代~60年代にかけて発表されました。その後の研究では、ボウルビーの愛着理論を発展、精緻化させていきました。ボウルビーとは、愛着とは「特定の対象との情緒的な結びつきを指し、乳幼児が母親との情緒的な相互作用を通して形成される、母親と確固たる絆である」と言われています。これは母親に限らず、養育者が父親や祖父母である場合にはそれが当てはまります。
子どもは生後数カ月で養育者へ愛着行動を行います。これは養育者と愛着を形成する過程として重要な行動です。この愛着行動に対して養育者がいかに対応するかも愛着の形成に関わります。
発信行
発信行動とは、子どもが養育者の注意を引こうとする行動です。子どもは泣いたり、笑ったり、声を出したりしながら、養育者が側に来るようにします。

定位行動
定位行動とは、子どもが養育者を探す行動です。子どもは養育者を見つけると、側に寄るように後追いをします。赤ちゃんであっても、養育者の動きを目で追ったり、声がする方を見たりして愛着関係を築こうとします。

能動的身体接触行動
能動的身体接触行動とは、親に触れていようとする行動です。子どもは親の腕に登ったり、手を掴んだり、足に絡みついたりと親と触れ合おうとします。

この頃の子どもにはよく反応してあげることが大切です。愛着を形成しようとする時期のため、しつけをするのではなく、子どもに合わせて反応してあげることが求められます。しつけをする、厳しくするということは、愛着が安定してからです。
次に愛着の発達段階についてご紹介します。人が乳児、幼児、学童、青年…と成長していくように、愛着という観点からも発達があります。

1段階 人物を特定しない働きかけ
特定の人ではなく、周囲にいる大人に関心を持ち働きかける段階です。定位行動(凝視)や発信行動(泣く・笑う・喃語を話す)を表します。

2段階 特定の人物に対する働きかけ
養育者といった特定の人に働きかける段階です。つまり、養育者と他の人の区別が着くようになったことを意味します。養育者に対して定位行動(追視・後追い)や発信行動を示します。しかし、養育者がいないことに対して泣くという行動はまだ見られません。

3段階 愛着の形成
この段階になると、子どもの養育者と他との見分けは明確になっています。養育者を安全基地として、養育者の側にいたがり定位行動や能動的身体接触行動(しがみつく)を示します。

4段階 養育者から離れることが出来る
養育者といった特定の人物がいなくても、安定して過ごせるようになる段階です。養育者を安全基地をしながらも、目の前に養育者はいなくても、養育者がいるから大丈夫だと感じることができ、養育者から離れても行動できるようになります。
2021.01.22

自分の思考の癖を知る

私たちは毎日様々な出来事に遭遇します。そして、その出来事に対して私たちは瞬時に思考がよぎります。

例えば、職場の同僚や学校の友人があなたの前から歩いてくる姿が見えたので、あなたは笑顔で手を振りました。しかし、相手は無反応で通りすぎてしまいました。
そのとき「無視された!!」「嫌われているのかもしれない」など瞬時に浮かんでくる考えが必ずあります。それを心理用語で『自動思考』と言います。『自動思考』は考え方や捉え方のクセと言われるように無意識に湧いてくるものです。考え方や捉え方が、自分を追い込むようなクセを持っていると、落ち込みやくなったり、塞ぎ込みやすくなったりします。これを『認知の歪み』と言います。

『認知の歪み』の代表例
◇白黒思考:物事をすべて白か黒かに分ける極端な思考です。
◇悲観的な思考:先行きに未来がないと考える思考です。
◇べき思考:~しなければならない、~すべきと考える思考です。
◇過剰な一般化:一度や二度同じことが起こったが、いつも同じようなシチュエーションが起こると考えます。「いつも」「絶対」「すべて」「決して」という言葉が目立ちます。
◇過大評価・過小評価:少しでも良くないことがあると、それを大げさにとらえたり、それを持って最悪の事態を考えたりすることです。また、良かったことは、大したことはないと考えます。
私たちは無意識に湧いてくる『事実とは異なるかもしれない』捉え方に、自分を否定したり、落ち込んだりしていることがあります。最初にあげた例です。同僚や友人が手を振り返してくれなかったことは『事実』ですが、「相手が無視をした」「相手から嫌われている」ことは『事実とは異なるかもしれません』。あなたの存在に気が付かなかったのかもしれません。別の人に手を振っていると勘違いしたのかもしれません。いや、絶対にそれはあり得ないと思うでしょうか?あんなに分かりやすく目を見て手を振ったのに、気づかないはずないし、後ろの人だと思うわけがないと思うかもしれませんが、意外とそういう場合も多くあります。相手に確認をとっていない限りは「絶対」ということはあり得ないのです。

この認知の歪みから解放されるには、どのようにしたら良いでしょうか?初めに説明したように思考のクセになっているので、無意識に浮かんでくるものです。しかし、自分にクセがあることに気づくだけで、その思考が浮かんだとしてもそれに捉われることなく切り替えることができたり、だんだんとクセに変化が出てきたことを感じたりするようになります。
思考のクセに気づくには、事実と思考が混ざらないように分けることがポイントです。事実はあくまで客観的に誰から見ても実際に起きたこと、思考は主観的にそれに対して湧いてきた率直な思いとして区切って考えます。そして、自分の思考が今回あげた「認知の歪み」に当てはまっていたり、ある傾向に置かれていたりすることに気がつけば、思考が湧いてきても『それは事実とは異なるかもしれない』と考えることができるので、思考に捉われることは少なくなるはずです。紙に書いても自分で見つけることが難しい場合には、カウンセリングを受けたり、周りの人に聞いてみたりしてもいいかもしれません。
2021.01.20

「怒り」について見つめてみる①

誰しも感じる「怒り」

誰しもが日常生活で感じる感情、「怒り」その扱いは大人になっても難しいものです。我慢のしすぎ、溜まりに溜まった怒りはどんどん膨らみ、それを抱えたままの状態はなかなか大変なことです・・・
本日は「怒り」について見つめる機会とし、次回以降では、どのように付き合っていくか、対処についてお伝えしていこうと思います!

「怒り」の感情も大切

怒りの感情は、“警報ブザー”とも言うことができます。
警報ブザーが鳴らされるのは、自分の身が「危険にさらされたとき」です。
つまり、ストレス状況に陥ったときにブザーが鳴らされて、「怒り」が湧き起こります。
 怒りの感情は、危機が迫った際に自分の身を守り、ごく自然に湧き上がってくるものであり、“怒りは生きていく上で欠かせない感情”です。
だから無理に抑えたり、避けたりするのではなく、扱い方を心得ていくという視点が大切であったりします。

怒りを無理に抑え込んでしまうと…

怒りの感情が湧くことによって、血圧、心拍の上昇など血管、脳、心臓などに急激な影響を与えることになります。怒りを吐き出すなどして解消することができれば、平常に戻りますが、怒りを無理に抑え込んでしまえば、血管、脳、心臓に負担のかかる状態を長引かせることになってしまいます。

怒りのメカニズム

怒りの感情は『扁桃体』の興奮によって生じ、扁桃体の興奮を抑えるのが『前頭葉』と言われています。扁桃体において怒りの感情が爆発しそうになった時に、その感情をこらえて事を荒立てずに済ませることができるのは前頭葉が理性的な判断や分別のある判断を下して冷静にコントロールしているためです。
そのため、怒りの感情を上手くコントロールするには、前頭葉の機能を維持しし、理性的な判断、分別ある判断を下すはたらきを衰えさせないようにする必要があります。
 しかし、加齢による前頭葉機能の衰えにより、感情抑制機能が低下すると言われています。そのため、日頃から脳をよく使うことも大事と言えるでしょう。
 また、怒りやすさについては、脳内物質のセロトニン量や、食生活(たんぱく質が少なく、糖質が過剰に多いなど)、もちろんこれまで育ってきた環境など、様々に関係しています。

怒りについて

今回は、怒りとは人間が生きる上で必要不可欠な感情であることと、抑え込みすぎた場合に生じる体への悪影響、怒りのメカニズムについてご紹介しました。次回以降は怒りへの対処などについてご紹介していこうと思います。
参考文献:『精神科医が教える後悔しない怒り方』伊藤 拓 ダイヤモンド社
2021.01.18

不快を解消する心のはたらき

想像してみてください。
大きな仕事を無事に終えた自分へのご褒美に、いつも横目に見ていた高級なケーキを奮発して購入したとします。嬉しい気持ちで家に持ち帰りケーキを食べてみると、そのケーキは期待したような美味しいケーキではありませんでした。この時、あなたはケーキの美味しさをどのように判断するでしょうか?

「このケーキは美味しくなかった」「高級なケーキでもこんなものか」と考えるでしょうか?「高級なケーキはいつもとは違うな」「美味しい!!」と思うでしょうか?
この場合、意外と多くの人が「美味しい」と判断します。それは、本当は自分のご褒美として購入した高級なケーキを「美味しくない」と判断してしまった場合、自分にご褒美をあげられていないことと、高額のお金を無駄にしたという側面から『不快感』を抱くことになるからです。したがって、ケーキを「美味しい」と認識することで、この『不快感』を解消しようとする心のはたらきが生じます。
自分の考えと行動が矛盾したときに感じる不快を解消するため、考えを変更することにより行動を正当化することを「認知的不協和理論」と言います。
認知的不協和理論は私たちの心のはたらきとしてよく見られます。いくつか例をあげてみます。

エピソード1:喫煙

煙草を吸うAさんは、煙草に肺がんのリスクがあることも知っています。しかし、Aさんは喫煙をやめません。この時、Aさんにはどのような心の動きが働いているのでしょうか?

「肺がんのリスクがある」ことを知りながら「喫煙をしている」Aさんは、自身の中に矛盾が生じている状態です。ここでAさんが「禁煙」することを誓ったならば、「肺がんのリスクがあるので禁煙をする」となり矛盾は消えます。しかし、禁煙を選択することは簡単ではありません。なぜならば、喫煙の多くがニコチン依存が強い傾向にあるからです。したがって、「喫煙」から「禁煙」に変えるよりも「肺がんのリスクがある」という認知をやわらげた方が楽だということになります。「肺がんのリスクはあるけれど、リラックス効果があり仕事に集中できるから喫煙をしよう」など理由を付け加えることで、肺がん死亡への恐怖が低減されます。ほかにも「喫煙している人でも長寿の人はいる」「交通事故で死亡する確率の方が高いし」と言った理由をつけることもあります。
エピソード2:ダイエット

ダイエットをしているBさんは、甘いスイーツが大好きです。Bさんはダイエットと甘いスイーツに対して、どのように心の動きを働かせるでしょうか?

ダイエットに真剣に取り組んでいるBさんでも、好きなスイーツを断つということは簡単ではありません。「ダイエットする」ことと「スイーツ」を食べることは矛盾が生じます。「ダイエット中なのでスイーツを食べない」とすることができれば矛盾は解消されます。しかし、スイーツを食べないということは苦痛を伴い難しいことです。そこで「スイーツ以外は量を減らす」という考え方に変わります。「ダイエット中なのでスイーツ以外は量を減らそう」と考えたBさんは無事に不快感を解消することができました。
エピソード3:災害

災害からの避難も認知的不協和理論が影響していると言われています。東日本大震災では、地震により津波が迫っていたにも関わらず、逃げようとしなかった人が一定数いたことは有名な話かもしれません。大きな地震があると「災害に対する恐怖」と「非難する大変さ、面倒さ」が湧いてきます。「災害に対する恐怖」から「逃げる」ことを選択出来たらいいのですが、「逃げる」ということはそれほど大きな災害であると認識しなければならないので「恐怖」がより大きくなります。そこで「逃げない」ために「津波はこない」「危険ではない」ということにしてしまうことが研究で明らかとなっています。
認知的不協和理論は人間に備わっている心の働きで、これ自体が良い悪いというものではありません。私たちが不快感を抱え続けることは、様々なストレスや行動の制限に繋がります。体が自然と体の健康を守るように作られているように、心にもより快適に過ごせるような働きがあります。しかし、この認知的不協和理論により、思わぬ落とし穴があることもエピソードを通して理解して頂けたのではないでしょうか。この理論をもとに客観的に自身を見つめたときに、その落とし穴に気づけるかもしれません。
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【参考文献】
レオン・フェスティンガー 著, 末永俊郎 監訳(1965),『認知的不協和の理論 社会心理学序説』, 誠信書房.
佐藤太一・河野達仁・越村俊一・山浦一保・今村文彦(2013),「心理的作用を考慮した津波避難開始における意思決定モデルの開発」, 土木学会論文集D3(土木計画学), 69巻2号, pp. 64-80.