自分から幸せを壊してしまう人
誰でも幸せになりたいと思うのは当たり前のことです。ですから、今回のテーマの「自分から幸せを壊してしまう」というと不思議に感じるかも知れません。
しかし、世の中には、大好きなパートナーや家族、友人を傷つけてしまい、大切な人間関係を自分から壊してしまうという人がいます。自分には幸せになる資格がないという思いが心の底にあり、幸せになることに不安を感じて、その前に自分から壊してしまったり、逃げてしまうのです。
一見矛盾したように見える心の動きですが、子供の頃に親から十分な愛情をもらえず、辛い経験してきたことが影響しています。このような人たちは永遠に幸せになることができないのでしょうか?
今回は、自分から幸せを壊してしまう人の特徴を紹介しましょう。
1 「どうせ私は幸せになれない」という思いが染みついている
子供の頃に親から愛情をもらえなかった人、家庭に居場所がなかった人、孤独や辛い思いをしてきた人、こうした人たちは、「生きていていいんだ」という自己肯定感が育たちません。
「どうせ私は幸せになれない」、「どうせまた辛い目に合う」といった人生への諦めの思いが心に染みついています。安心感がなく育ったため、いつも最悪のことが起きることを想定して生きています。人を心から信用できず、心配症です。
こういった人が幸せを感じるような状況になると、嬉しく思う以上に、「いつ壊れるのだろう?」という不安に襲われます。最悪のことを想定する癖が働いてしまうのです。そして、「この幸せは長続きしない」と思うと、むしろ居心地が悪くなります。
まるで、いつ爆発するか分からない時限爆弾の上に座っているような感じです。楽になるためには、先に進むのをやめるか、逃げるしかありません。
2 我慢のし過ぎで爆発する
親に甘えられず、いつも親の目を気にして生きてきた人は、周りに気を配る癖がついています。相手から嫌われないように、自分の感情を抑え込み、相手に合わせる生活をしてしまうのです。
しかし、我慢は無限にできません。溜まった不満は、怒りとなって爆発します。自暴自棄になって大切な関係を壊してしまう結果になります。
3 見捨てられ不安
普通は、人と仲良くなり、親しくなればなるほど、その関係に安心を感じるものです。ところが、子供の頃に、親や大切な人が突然いなくなる、もしくは裏切られる、といった経験をしている人は違います。
人と親しくなればなるほどに、「この人はいなくなってしまうのではないか?」「裏切られてしまうのではないか?」という不安感に襲われるようになります。これを「見捨てられ不安」と呼びます。
見捨てられ不安がある人は、できるだけ相手と同じ空間にいることを望み、近くにいない場合は、電話やラインで行動をつねに把握しようとします。また、傷つくことをわざと言ってみたり、振り回してみたり、相手の愛情が本物であるか試します。
相手としては、裏切ったわけでもないのに、束縛や意地悪をされているように感じて不愉快になります。不安を解消するための確認行為で、むしろ相手に苦痛を与え、ついには関係が壊れてしまうきっかけになります。
4 不安が高じて自暴自棄になる
見捨てられ不安のある人は、相手のちょっとした言動に、「自分は嫌われている」「迷惑に思われている」と被害妄想のように感じます。
不安のつよい人は、相手の冗談やつよい口調でさえも、拒絶されたと感じます。裏切られることには敏感に反応するため、どんな些細なことでも大切な関係が壊れてしまうサインと捉えてしまうのです。
不安が高じると、自暴自棄になり、お酒を大量に飲んだり、過食をする人もいます。怒りが相手に向けられると、まるで悪魔に取り憑かれたようになり、激怒したり、暴言や吐いたり、物を壊したり、よけい相手に不快な思いをさせる結果になります。
普段大人しい人がヤクザのように変身することもあり、変身していた時に言ったこと、やったことはあまり記憶にありません。これを解離症状と呼びます。見捨てられ不安に耐え切れず、まるで、自分がどこかへ飛んで行ってしまい、代わりに悪魔が体に入り込んで、幸せを壊してしまうのです。
いつも虚しさを抱えて、見捨てられ不安がつよく、解離症状で激しく相手や自分を傷つけてしまう場合は、境界型パーソナリティ症という病気と考えた方が良いでしょう。境界型パーソナリティ症の人は、脳の発達の偏りがあることが多く、生まれつき相手の気持ちを読み取る能力に問題があり、相手の言動に過敏です。
自分から幸せを壊してしまう人は、「誰も私のことを分かってくれない」が口癖です。周りとうまくやろうと一生懸命なのに、不安から空回りしてしまうのです。その上、複雑な心の中を言葉で伝えることも苦手です。
結局、周りを振り回してしまうのですが、「私の大事な人だからこそ、私のことを分かってもらいたい」というのが一番の本音なのです。
それでは、自分から幸せを壊してしまう人が、幸せになるためには、どうしたら良いのでしょうか?一番大切なことは、身近な人が、不幸な生い立ちからくる複雑な心の中を理解してあげることです。
また、自分からも、不安な気持ちを冷静に言葉で伝えるよう努力することも必要でしょう。そのためには、心理カウンセラーなどの専門職の人に手伝ってもらうのも手かも知れません。
複雑な心の状態を理解してもらうことで、生活に安心感を得られるようになれば、自分から幸せを壊すような言動は少しずつ減っていきます。
つらい時にやってはいけない6つの習慣
「思ったことがうまく行かない」、「心配事が解決しない」、「挫折して心が折れている」、このように心がつらい時、あなたはどのように過ごしますか?本音ではゆっくり休みたいのですが、「怠けているのが原因だ」と、よけいに自分を追い詰めてしまうことはないでしょうか?また、「ダメな人間だ」と落ち込んで、自分を責めていないでしょうか?
医学的・心理学的には、心がつらく弱っている時に、無理やり自分を奮い立たせるようなことはやるべきではありません。また、その逆に自分を責めてしまうことも良くありません。
むしろ、最も必要なことは、体と心を休め、誰かに助けを求めることです。自分はつよい人間だと過信して、元気な時にやっていた習慣をつらい時にやってしまうと、よけいに自分を苦しめ、害になってしまうことがあるのです。
今回は、つらい時についやりがちだけれども、本当はやってはいけない6つの習慣を紹介しましょう。
1 うまくいっている人と比べる
心がつらい時に、癒しを求めて手軽に見るのがSNSです。しかし、目につくのは、同年代でも輝いている人、活躍している人、成功している人の姿です。見れば見るほどに、いまの自分が情けなく感じてしまい、つらい気持ちがさらに悪化するでしょう。
しかし、あなたが画面で見ている成功者は、世の中の0.1%にも満たない極少数の人達なのです。自己顕示欲のために、広い交友関係や稼いだお金を自慢する人もたくさんいます。このような人たちと今の自分と比べても何の得もありません。また、この人たち中でどれだけが、数年後も同じように輝き続けていられるでしょうか?
つらい時は、うまく行っている人と比べるべきではありません。SNS断ちとまでは言いませんが、少なくとも自分の成功を自慢する人のサイトには近寄らないようにしましょう。
2 過去を振り返る
比べる対象は、過去の自分の場合もあります。「あの頃は楽しかった」、「あの頃に戻りたい」と、過去の自分の方が良かったと感じやすくなります。
つらい時は、過去の思い出が実際よりも良く見えてしまうものです。どんなに努力しても時間を戻すことはできません。過去の自分と今の自分を比べるのはやめましょう。
3 できないことに執着する
「年収を倍にする」「資格をとる」など、常に何かの目標を持って生活している人も多いことでしょう。しかし、目標を達成できずにつらい時は、目標を修正したり、諦めることも大切です。人生の最終的なゴールは幸せになることです。
目標とは、幸せになるためにその時々で一時的に設定していくものなのです。もし、実現させようとすることが苦痛になり、幸せにつながらないと分かったならば、すぐに修正するのが賢い生き方でしょう。いつまでも執着して、むしろ不幸になってしまうならば、それは本来の目標のもつ価値を失っています。
「諦めは心の養生(ようじょう)」ということわざをご存知でしょうか。失敗や運の悪さをいつまでも悔やまないで、諦めることで精神状態は自然に回復するという意味です。つらい時は、目標から一旦離れてみることが大切なのです。
4 わざと忙しくする
つらい時、そのことを考えないように、無理やり予定を入れて忙しくすることがあります。しかし、一息ついた時に思い出してしまい、疲れと重なると、余計に苦しくなってしまうことの方が多いでしょう。
つらい時は無理に忙しくせずに、ゆっくり休むか、好きなことをした方が良いのです。心には自然に治癒していく力が備わっています。体をいたわり、休ませてあげることで、心のつらさも自然と和らぐようになります。
5 思い切ったことをする
破産に追い込まれる人の中には、最終的に詐欺にあって全財産を失っている人が多いという調査結果があります。大きな損失をすると、あわてて埋め合わせしようとして、詐欺に引っかかってしまうのです。つらい時は、正常な思考が働きません。普段ならば騙されていると気づくような誘いも、理性が働かずにパっと飛びついてしまうことがあるのです。
つらい時には、そこから逃れるために思い切った行動をとりがちです。一発逆転を狙った大きな決断には慎重になりましょう。経験のないような新しい仕事や事業などにチャレンジすることも避けた方が良いかも知れません。特に大きなお金を動かすような決断は禁物です。
6 お酒を飲んでごまかす
お酒には、脳のドーパミン分泌を増やす力があり、不安がとれて気分が大きくなります。一時的ですが、お酒はつらいことから解放してくれるのです。
毎日の量をきちんと自分で管理できていれば良いのですが、それにばかりに頼っていると、量がどんどん増えて行くことがあります。気が付いたらアルコール依存症になっていた、ということがないように、お酒だけで気分をごまかすことは避けましょう。
心がつらい時こそ、自分を大切にしましょう。これ以上無理をしないで、心と体を休めることがお薦めです。信頼できる人がいるならば、助けを求めてみるのも手でしょう。
水に溺れた時は、あわててもがくよりも、むしろ体の力を抜くとスーッと自然に浮いてくるものです。つらい気持ちも同じです。何とかしようと無理をするよりも、時間が解決してくれてことがあるかも知れません。
失恋うつ病って?
失恋をしたり、パートナーに浮気をされたら、誰でも元気がなくなります。しかし、何カ月間も気持ちが沈んだままで、仕事などの日常生活に支障が出る場合、これはうつ病かも知れません。
「たかが失恋でうつ病になるなんて」と驚かれる人もいるかと思いますが、失恋や浮気をされた後の不調で精神科クリニックを受診する人はたくさんいます。特に女性に多く、思春期からあらゆる年代の人に見られます。
また、クリニックを受診しても、原因が失恋とは言い出しにくいので、担当医には仕事が忙しいとだけ訴える人がいます。そのために過労よるうつ病と診断されてしまうのですが、後から良く聞いてみると、うつ病の本当のきっかけは失恋だったというのです。
うつ病は、気分の落ち込み、気力の低下などの症状が2週間以上続くのが特徴です。失恋や浮気をされたことが引き金のうつ病の場合、いくつか特徴的な症状もあります。正式な病名ではありませんが、これをまとめて「失恋うつ病」と呼ぶことがあります。今回は、失恋うつ病のサインを紹介しましょう。
1 自分を責めてしまう
心から愛し、信じていた人から裏切られることは、喪失体験でもあり、トラウマにもなります。受け止め切れない思いは、怒りとなり心の中で渦を巻きます。怒りで相手を責められたら少しは楽なのですが、往々にして怒りの矛先は自分に向かいます。
「自分はダメな人間だ」と、心の中で自分を傷つけてしまうのです。自信を失い、人として価値がないとも感じてしまいます。
浮気をされた妻の場合、「浮気を許すのが良い妻である」という考えから、怒りを心の中に抑え込んでしまうことがあります。マイナスの感情が外へ出て行かずに、心の中でくすぶってしまい、これがうつ病の原因になります。
うつ病を治すためには、夫婦で話し合いの場を設けて、傷ついた心を夫に理解してもらい、心からの謝罪をしてもらう必要があります。
2 過去にとらわれる
「何でこうなったのだろう。」「あの時こうしておけばよかった。」と、頭の中はいつも後悔することを考えています。別れた相手と行った場所、見た映画、食事をした店など、いっしょに過ごした出来事を思い出して苦しくなります。
思い切って、相手に関するものをすべて処分したとしても、何かの機会に思い出して、不快な気持ちになります。別れた時の場面が何度もフラッシュバックすることもあります。
仕事を増やしたり、体を動かすなど、生活を忙しくして思い出さないように努力する人もいますが、それでも、仕事終わり、入浴中、眠る前など、フッと力を抜いた時には相手のことが浮かんできます。
3 人生にネガティブになる
今までの人生、そして未来までも、人生すべてに価値を失います。何のために生きて来たのか、何のために生きているのかが分からなくなるのです。心の視野が狭くなり、他の生き方を考えることができなくなります。
友人から、「新しい出会いがあるよ」と慰められても心に響きません。最悪の場合、将来に一切の希望が見つけられず、自分で命を絶つ人もいます。実は、20代女性の自殺の原因の1位は失恋うつ病なのです。
4 息苦しい、胸が痛い、涙がでる
胸が重く、息をしづらい感じがします。心臓が悪いのかと思い、内科で診てもらっても異常はないと言われます。何かのきっかけで過去を思い出して過呼吸発作を起こす人もいます。仕事中などに、突然涙が出る人もいます。
5 眠れない
寝ようとすると、別れた相手のことを考えてしまい、なかなか寝付けません。夢の中にも相手が出てくることがあります。特に、別れたはずの相手と仲良くしている夢を見ることが多くあります。慌てて目を覚まして、現実を悟ると苦しみがさらに増します。不眠症は、うつ病からの回復を遅らせます。2週間以上も十分に眠れない状況が続く場合は、病院を受診しましょう。
ただし、同じように別れた人が夢に出ても、相手が別の人とつきあっているようでしたら、むしろ、自分の気持ちに踏ん切り(ふんぎり)がついている証拠です。
6 食欲の問題
食欲が落ちて、食事の量が減ります。体重が減る人もいます。体力を失うことは、うつ病からの回復を遅らせてしまいます。不眠症と同様に、体重が何キロも減ってしまう場合は病院を受診しましょう。
逆に食べることで気持ちを発散して過食になる人もいます。過食が一時的なら良いのですが、体重が増えることを恐れて食べたものを吐くようになり、過食嘔吐が習慣になるケースもあります。これを摂食障害と呼びます。失恋をきっかけに摂食障害になってしまう人もいるのです。
失恋うつ病は、睡眠と食事がきちんととれていれば、少しずつ自然に改善し、半年以内に本来の自分を取り戻せます。しかし、つよいトラウマとなって、その後の人生に悪い影響を与えてしまうこともあります。
特に、一途に人に尽くす人、何よりも恋愛を優先する人、潔癖で完全主義の傾向がある人、などは失恋で大きなダメージを受けると言われています。
心には自然に回復する力があります。体のケガが、無理をしなければ自然に治るのと同じように、心にも自然治癒の力が働きます。そのためには安心感のある生活が必要です。
家族や友人の支えの中で無理をしないことが大切です。相手を忘れるために生活を忙しくするよりは、ゆっくり休養をとったり、マッサージを受けるなど、体を大切にするようにしましょう。焦ってすぐに次の恋愛に進むのも良くありません。十分に回復しないままに同じことを繰り返して、よけいに状態が悪くなるケースもあります。
2週間以上も不眠症や食欲不振が続く場合や、何か月たっても良くなる実感がない場合は、精神科を受診してみましょう。体の症状がない場合は、心理カウンセリングも効果があります。
愛着障害を乗り越えているサイン
心理学では親子の情的な絆を愛着と呼びます。ところが、子供の頃に、親との突然の別れがあったり、親から冷たい仕打ちを受け続けると、愛着が育たちません。
これは、心の成長にも影響を与えます。そのまま、誰からも助けがないままに大人になると、心はいつまでも傷つきやすく、自信を持てないままになります。これを大人の愛着障害と呼びます。
愛着障害の人は、低い自己肯定感、劣等感があり、人間関係の距離感が分からないことで辛い思いをします。特に、人間関係の作り方や保ち方が分からないために、社会に出てから様々なトラブルが起きてしまいます。
愛着障害を持つ人は、過去の出来事に振り回されているので、何か希望に向かっていく人生というより、過去の問題を乗り越えて行く人生です。良いパートナーに出会えてもけんかばかりしてしまう、人間関係で失敗して仕事のチャンスを逃してしまう、何をやっても自信が持てない、など、当たり前の幸せがつかめません。
友人や同僚とは、出発点が違うため、周りはどんどん先へ行ってしまうように感じます。また、「普通の人ができることができない」、「できないことを分かってもらえない」という悩みがいつもついて回ります。
しかし、いつまでもこのままではありません。ほとんどの人は、時間をかけながら少しずつ愛着の問題を乗り越えることができています。安心できる場所、親切な人との出会い、仕事で評価される喜び、子育て、ペットや植物を育てること、没頭できる趣味など、プラスになる出会いを通して、過去の問題は少しずつ癒されて行きます。
大人の愛着障害のゴールはどこにあるのでしょうか。今回は、愛着障害が改善されて、親に愛されてこなかったことを乗り越えられたサインを紹介しましょう。
1 過去を思い出しても動揺しない
過去の親子関係が清算されていないと、親のことを思い出すたびに、憎しみや悲しみが湧いてきて、語り出すと感情的になります。しかし、心には、心の傷を修復する力、悪い思い出を解毒する力が自然に備わっています。
安心、楽しみ、喜びがあると、毒のような過去の思い出は解毒されて、苦しみの伴わない思い出になります。そうなると、親のことを思い出しても動揺しなくなり、浮かんでも来なくなります。
2 過去の辛かったことを冷静に語れる
辛い過去の出来事は、人に知られたくありません。生い立ちを聞かれても、本当のことは言えずに隠してしまいます。
「どうせ分かってもらえない」「恥ずかしい」、「変に思われるだろう」といった思いが、過去の出来事を言葉にすることを邪魔します。また、理解してくれる人に話し始めても、冷静に話せず感情的になってしまい、まるで親に向かって文句を言っているような口調になってしまいます。
しかし、過去の出来事が心の中で解毒されていると、動揺せずに言葉に出して話せるようになります。例えば、友人やカウンセラーに過去のことを聞かれて、自分の経験を自然に話せていたら、それはすでに親子の関係が清算されているサインです。
3 親を理想化していない
愛着の問題は、親が拒絶的な場合に起こると考えがちですが、過保護や過干渉の場合も起こります。過保護や過干渉とは、親は子供のことが心配だと言いながら、実際は、自分の理想を子供に押し付けているだけの場合が多いのです。
親は、子供が自分の思い通りになる場合だけに愛情を注ぐことをするため、そこには本来の愛着は築かれません。子供は、いくつになっても親と反対の意見を言えず、親子関係は支配的な上下関係になっていることがあります。
ところが、このような状況で育った子供の中には、「自分の親はすばらしい親だ」と親を理想化していることも多いのです。
しかし、人はいつまでも親に守られて生きていけないので、このような親子関係は永遠に続きません。挫折体験や、友人やパートナーからよい影響を受けることを通して、親の間違いに気づく時が必ず来ます。
その後、「親も同じ悩みや弱さをもつ人間だ」と感じられるようになれたら良いでしょう。これも、愛着の問題を乗り越えたサインの1つです。
4 信頼できる人がいる
大人の愛着障害で大きな問題の1つは、人を心から信頼できないことです。親しくしてくれる人がいると、「いつ裏切られるのだろう」と疑いをもって見てしまいます。
親しくなればなるほど、疑いの思いは大きくなるという矛盾の中にいます。本当に信頼してもよいのか、わざと嫌われるようなことをして、相手を試すこともあります。
しかし、例え1人でも信頼できる人ができたならば、または、いっしょにいて安心できるような人ができたならば、愛着の問題を乗り越えて来たということです。
家族でも、友人でも、カウンセラーでも、世の中に1人でも良いので、疑うことなく何でも話せる人がいるならば、辛かった過去を乗り越えたサインなのです。
恨みをなくすための3つの方法
なかなか忘れられない悪い思い出はありませんか?忘れたくても自然と浮かんできて、何をしても気持ちを紛らわすことができない思い出です。
特に、信じていた人や職場に裏切られた思い出は、つよい恨みとなって心に残ります。親や親友などに対して、信じ愛し、期待していたのに、裏切られた時の辛さは心に深く刻まれるのです。この気持ちを解消するにはどうしたら良いのでしょうか?
復讐が唯一の解消法と考える人がいます。辛ければ辛いほどに「思い知らせてやりたい」と感じるのは当然なことです。それだけでなく、復讐すれば他の犠牲者も救うことができるので復讐は正当化されます。
しかし、時間が経つにつれて、復讐するべきでないという心も湧いて来るのが自然です。復讐は本質的な解決方法ではなく、復讐すれば、こちらも憎い相手と同じレベルの低い人間に落ちてしまうことに気づくからです。
それよりも、恨みの感情から解放されて、より良い人生を生きたいと思うようになります。結局、相手を許すようになることが、自分を苦しみから解放する最善の方法であることに気づくようになるのです。
16世紀イギリスの哲学者・フランシス・ベーコンは、「復讐する時、恨みの相手と同じレベルである。しかし、許す時、恨みの相手よりも上にある。」と言いました。しかし、頭では、許すことがより良いことである分かっていても、気持ちは納得しません。
恨みや怒りを無理やり心の底に押し込んでしまうと、心や体がおかしくなることがあります。結局、恨みの気持ちは、心の外に出しても報われないし、中に押し込んでも苦しくなる、とても厄介な存在なのです。
では、このような恨みや怒りを自然に解消するためには、どうしたら良いのでしょうか?今回は、悪い思い出を消して、恨みをなくすための3つの方法を紹介しましょう。
1 人に話す
気持ちを言葉にすることは、心に溜まっている悪い感情を外に出す効果があります。これを心理学では「カタルシス」と呼びます。同じ体験をもつ人と話し合ったり、カウンセラーなどの理解してくれる人に話すことで、悪い思い出や恨みの感情を薄めることができます。
2 今の生活に集中する
人間の脳は、コンピューターのように一字一句正確に記憶しません。感情に左右され、無意識のうちに記憶が書き換えられることがあります。これは脳がコンピューターよりも劣っているという意味ではありません。
脳は自分を守るために、記憶を都合よく書き換える作業ができるのです。心が安定していると、悪い記憶は少しずつ消去されていき、害がなくなります。大きなトラウマを受けても、その後に安心できる生活を送っていれば、トラウマは自然に消えていきます。いまの生活に満足していると、悪い思い出は自然に書き換えられ、恨みも消えていくのです。脳はコンピューターよりもはるかに優秀です。
ところが、心が不安定で過去に執着してばかりいると、悪い記憶は余分なものまで付け足されて、もっと悪い記憶に更新されてしまうことがあります。なかったことがあったことと記憶され、恨みの気持ちが高まってしまうこともあるのです。過去にとらわれてばかりいると、悪い思い出はもっと悪いものになってしまいます。
「幸福に生きることが最高の復讐である。」というスペインのことわざがあります。脳の仕組みから考えると、幸せに向かって今を大切に生きていくことが、悪い思い出を消すための最善の方法なのです。
3 恨みを社会に役立つ方向に向ける
親から虐待された人が、親を恨むのは当然のことです。しかし、自分以外の子供たちには、同じような辛い思いを経験させたくないと感じて、大人になってから子供たちを守るボランティアに参加する人もいます。
親を恨む気持ちを、子供を守るためのエネルギーに変えているのです。大切な家族を交通事故で亡くしても、加害者を恨む気持ちをエネルギーに変えて、交通事故撲滅のための運動をしている人もいます。これらは、恨みや怒りのエネルギーを、社会に役立つ方向に向けて発散させているのです。社会貢献が人から喜ばれると、そこに自分の新しい価値をみつけることができます。また、そこから新しい出会いも生まれるでしょう。生活には充実感が生まれ、心の成長も期待できます。
このように、辛い気持ちを社会に貢献するエネルギーに転換することを、心理学では「昇華」と呼んでいます。長い時間と大変なエネルギーが必要なことですが、辛い気持ちから解放されるための理想的な方法と考えられています。
いまを大切に生きていると、過去の辛い思い出は、自然に毒が薄まり、心の中にあっても受け入れられるレベルになります。人によっては、加害者の立場に共感できるようにもなるでしょう。例えば、親に辛い思いをさせられたのならば、「親自身も子供の頃に酷い目に合っていた」「親は精神的な障害を抱えていた」と、親の仕打ちを自分なりに理解できるようになります。
悪い思い出を受け入れるまでには、大きな愛情やエネルギーが必要なことです。恨みがつよいほどに時間もかかります。しかし、そこに到達できたら、大きな満足や解放感を手に入れることができます。これは人として大きく成長した証拠でもあります。誰からも褒められることはありませんが、人生の大きな試練を乗り越えたと誇ることができるでしょう。
ただし、実際に人を傷つけようとしたり、物を壊したり、恨みの気持ちが自分で制御できないくらいつよい場合は、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神疾患の可能性も考えられます。このような場合は、精神科に相談してみましょう。
子供の頃のトラウマがまだ完全に癒えていない6つのサイン
子供の頃に、親からひどい仕打ちを受けたり、学校でいじめを受けると、心に傷跡が残ります。これをトラウマと呼びます。軽い場合は、時間と共に自然に癒されますが、重症な場合はすぐには消えません。親やクラスメートからの、深刻な暴力、否定、無視が長い期間にわたって続いた場合、大人になってもトラウマが残ることがあります。
子供の頃に大きなケガを負うと、大人になっても何かのきっかけで痛みが走るように、トラウマも生活の様々な場面で生きづらさとして現れることがあります。自分では、もう辛いことはお別れできたと思っていても、トラウマが治りきっていないことがあるのです。
そこで今回は、子供の頃のトラウマがまだ完全に癒えていないサインを6つ紹介します。
1 自己評価が低い
「自分は生まれて来なければ良かった」と感じており、生きていることに罪悪感を持っています。人の好意にも心を開けません。人前で自分を出すことができず、目立つことを避けてしまいます。「どうせダメだから」と新しいことにチャレンジできません。
2 孤独
人への恐怖、不安、怒りが残っており、基本的に人を信頼できません。人と接しているとイライラや怒りを感じることが多く、人づき合いが苦手です。人との関りを避けてしまい、いつも孤独を感じています。
3 現実感がない
現実がぼんやりして、目が覚めていても夢の中にいるようです。自分と現実に壁があると表現する人もいます。また、心と体が離れてしまい、自分を外から見ていることもあります。これを離人感と呼び、時間がすすむのを遅く感じる人もいます。
4 集中できない
親の機嫌を気にして子供時代を過ごしていると、脳が周囲の状況にすぐに反応できるように、常に警戒している覚醒状態となります。すると、眠りは浅くなり、ちょっとした物音で目が覚めてしまいます。日中は頭にモヤがかかったようになり、集中できません。これを脳に霧がかかっているという意味で「ブレイン・フォグ」と呼びます。
5 自己破壊行為
ベトナム戦争を描いたアカデミー賞作品の「ディア・ハンター」では、戦争でトラウマを受け、ロシアンルーレットというデス・ゲームに参加し続ける男性の姿が描かれます。トラウマがあると、アルコールや薬物の乱用、ギャンブル、自傷行為、危険な性関係などの自己破壊的な行為で自分の気持ちを紛らわそうとする場合があります。なぜこのような危険に自分から飛び込むのか、自分でも説明できません。いつのまにか依存的になり、常習となることがあります。
6 うつ病やパニック症になりやすい
学生時代のいじめの被害で、うつ病やパニック症になるリスクが1.5倍に増えるというデータがあります。トラウマが残っていると社会と歯車が合いません。それがストレスとなり精神疾患を発症しやすいのです。精神科に通院するようになり、そこでトラウマがあることを指摘され、初めて自覚できるケースもあります。
トラウマは、安心できる場所で安心できる人に、トラウマを受けた状況を話すことで少しずつ癒されて行きます。相手は治療者に限らず、家族でも良いし、恋人や親しい友人でもかまいません。相手に共感してもらうことで、トラウマは解消されて行きます。ただし、無理は禁物です。安心した状況で再体験できることがポイントです。
また、不安感・不眠がつよい場合、うつ病やパニック症を合併した場合は、精神科で薬の治療を受けましょう。薬の力で体調や気分が良くなることで、トラウマが解消されやすくなります。また、医療機関での安心できる人間関係が、トラウマを解消するために役立ってくれます。
勉強はできるのに、仕事ができない?
勉強ができる人は、何事もうまくこなせる印象があります。ところが、学校では成績優秀だったのに、会社に入ると仕事ができない人がいます。勉強の成績とは、脳の一部分の能力が反映されているだけで、脳の能力のすべてを反映しているわけではありません。仕事をこなすためには、勉強以外の脳の能力も重要なのです。
脳の知的な能力は大きく4つに分けられます。そのうちの1つである「言語理解」という能力が、勉強の成績と関係しています。他の3つの能力のどれかに問題があると、勉強ができるのに仕事ができない人になってしまうのです。
例えば、耳から聞いたことを一時的に記憶しておいて、それをもとに思考する「ワーキングメモリー」という能力があります。この「ワーキングメモリー」が劣っていると、上司から機械の使い方を何度聞いても、理解できないということが起きてしまいます。実際に、有名大学を卒業しているのに、スーパーのレジ打ちができない人もいるのです。
実は、このようなアンバランスな脳があることが分かってきたのは、最近30年くらいのことです。それまで発達障害と言えば、脳の能力が全体的に遅れてしまったものと考えられていました。
ところが、学校の勉強はできても、他の脳の能力の発達が遅れてしまい、最終的にアンバランスな脳になっている発達障害も知られるようになりました。これらは、大人になって気づかれることから「大人の発達障害」とも呼ばれています。学校では優秀な成績だったのに、職場では仕事ができない人は、大人の発達障害がある可能性があるのです。
それでは、大人の発達障害では、どのような仕事の内容ができないのでしょうか。職場でうまくいかない状況を具体的に紹介しましょう。
1 報告・連絡・相談ができない
職場は共同作業ですから、メンバー同士のコミュニケーションはとても大切なことです。職場でまず教えられることは、上司に「報告・連絡・相談」をすることです。略して「ほう・れん・そう」とも言います。
ところが、発達障害の人は、人の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを伝えることに問題があるため、「ほう・れん・そう」が苦手です。マイペースで仕事をしているため、上司からは、協調性がないとか、自分勝手と誤解されます。逆に、臨機応変な対応ができないので、何でもかんでも「ほう・れん・そう」してしまい、上司に呆れられてしまうこともあります。
2 会話が苦手
発達障害の人は、会話の仕方に特徴があります。人の話を聞かない、自分のことだけを一方的に話す人がいます。空気を読むのが苦手で、その上思ったことをそのまま口に出してしまうので、会議でとんでもない発言をすることもあります。目上の人への挨拶の仕方や敬語の使い方がおかしいために、変な目で見られることもあるでしょう。
3 小さなミスが多い
集中力に問題があり、何度注意されても同じミスを繰り返す人がいます。事務作業や単純作業が苦手、作業のスピードが極端に遅いこともあります。ただし、発達障害の中でも自閉症スペクトラム障害・ASDの人は、細かい数字を扱うなどの繊細な作業が得意です。
4 マネージメントができない
決められたことをやるのは得意ですが、自分から仕事を作り出したり、部下にリーダーシップをとることが苦手です。全体を見通す力に欠けていて、興味のあることから手をつけようとする傾向があり、仕事の優先順位をつけられません。一つのことをやっていると、他のことが意識から外れてしまうため、複数の仕事を同時に進行できないことがあります。
5 感情のコントロールができない
人の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを伝えることが苦手なため、感情をため込んで、突然爆発することがあります。普段から落ち着きがなく、喜怒哀楽の波が大きい人もいます。
また、感情に振り回されて、物事を冷静に判断できないことがあり、うまく行かない時には、「上司のせいだ」、「親のせいだ」と他人のせいにする傾向もみられます。感情的に他人に文句を言うことが多いのに、それを自分がされると敏感に反応するため、身勝手な人と誤解されることもあります。
6 孤立する
コミュニケーションの問題、感情のコントロールの問題があるために、周りの人と馴染めません。周りからは、気が利かない人だ、自分勝手な人と誤解されます。自分としては精一杯頑張っているつもりなのに、それを分かってもらえません。そこから職場で孤立してしまいます。
7 体調を壊しやすい
ストレスが体調に出やすく、仕事を休みがちです。自分で体調の変化を予測できないので、「明日は行きます」と言っておきながら、突然休んでしまうことがあります。そうなると、上司からは、虚言癖(きょげんへき)があると誤解されてしまいます。また、仕事に大きな穴を開けても、平気な顔で出社するので、周りからの評判も悪くなります。
職場でこうした問題がある場合は、大人の発達障害の可能性があります。小さなトラブルはあるけれども、仲間で助け合いながら楽しく働けるならば良いのですが、問題が大きくなる場合は、精神科で診断を受けましょう。
大人の発達障害には、自閉症スペクトラム障害・ASDや注意欠如多動症・ADHDなどの種類があります。ASDとADHDの両方が合併していることも多いので、診断がつけにくいこともあります。治療としては、発達障害そのものを治す薬はありませんが、症状を抑える薬があります。また、問題が出ているのは、いまの職場が自分の特性に合っていないことが原因かも知れません。診断を通して自分の特性を知り、それに合った仕事を選ぶことも大切なことです。
表情に隠される心の病気
心の状態は表情や目つきに現れます。健康な人は、喜怒哀楽に応じてさまざまな表情をしますが、心の病気になると、不安定な心の状態が表情にも現れます。
精神科医や心理カウンセラーが相手の心の読み取るためには話を聞くだけではありません。相手の表情も大きな情報源になっています。
心の病気は自分で気づけないことがあります。早めに治療すれば、早く良くなるにも関わらず、治療のタイミングを逃している人がたくさんいます。周りの人が気づいてあげることも大切なのです。
言葉でSOSを言わなくても、いつもと違う表情や目つきから、その人に何らかの心の病気があることに気づくことができます。気づいた人から、「いつもと違うよ、何か辛いことがあるの?」と、優しく声をかけてあげられたら、治療のきっかけにつながるかも知れません。
今回は、人の表情や目つきにどのような心の病気が隠されているかを紹介しましょう。
1 無表情
無表情になるのは、心の喜怒哀楽の動きがなくなっている証拠です。うつ病の人によく見られる症状です。
ただし、子供の頃からずっと表情に乏しい人は、自閉症スペクトラム障害・ASDの可能性があります。
無表情でも蝋人形のように全く表情が動かない場合は、重度のうつ病、統合失調症、パーキンソン病が考えられます。
統合失調症の場合は、飲んでいる抗精神病薬の影響で無表情になることもあります。
2 怒った表情
機嫌が悪く、怒っているような表情は、うつ病の人に見られます。本当は休みたいのに無理をしている気持ちが現れています。
また、目が吊り上がり、まるで般若のお面のような表情になっているのは、境界型パーソナリティ症、双極性障害の躁状態、統合失調症に見られます。心の中で怒りや恨みが渦巻いている状況です。
3 生気(せいき)がなく暗い表情
うつ気分がある人の表情は暗く、疲れている印象を受けます。うつ気分は、うつ病、不安症、双極性障害、統合失調症など多くの精神疾患にある症状です。暗い表情は心の病気全般に見られます。
4 不安げな表情
暗い表情と似ていますが、表情は強張り(こわばり)、眼球の動きが落ち着きません。目が泳いでいるとも表現されます。
これは、不安と緊張を表わしていて、社交不安症の人によく見られます。また、うつ病や統合失調症などの他の精神疾患でも見られることがあります。
5 作り笑い
作り笑いは、軽症のうつ病の人によく見られます。共感していないのに、周りに合わせようとして無理やり表情を作っているのです。
笑顔が途切れた一瞬、本来の辛そうな表情に戻ることがあります。会話の途中で見られるその表情の差に「あれ、怒らせてしまったのかな?」と思ってしまいますが、そうではなく、本来の表情に戻っただけなのです。
医学用語ではありませんが、「微笑みうつ病」という言葉があります。軽症のうつ病の人が、自分の心の変化を認めたくないために、無理やり笑顔をつくって生活することを表わした言葉です。
自分が弱っていること、周りとうまく合わせられないことを知られたくないため、自分の素直な心の状態に笑顔でふたをしているのです。
6 顔が浮腫(むく)んでいる
過食嘔吐をする摂食障害では、唾液腺の炎症や栄養の偏りから顔に浮腫みが出やすくなります。
アルコール依存症の人も、アルコールの影響で顔の浮腫みが出ます。また、睡眠薬など精神科の薬の副作用で利尿作用が抑えられて、やはり顔が浮腫む場合もあります。
7 目がすわっている
すわった目つきと言うのは、一点を見つめるように眼球が動かない状態のことを言います。これは、感情が固まり、喜怒哀楽がなくなっているサインです。
重度のうつ病や統合失調症で見られます。また、トランス状態やせん妄などの特殊な意識状態でも見られます。催眠術にかかっている人の目つきも良い例でしょう。
8 目に輝きがない
元気がない人の目つきを、「目に輝きない」、「死んだような目つき」と表現されることがありますが、実際に目の輝き方が変わっているのではありません。
表情に乏しく、眼球の動きがあまりないために、目から生気が伝わって来ないのです。目に輝きがないのは、生気に乏しい状態です。うつ病によく見られます。
9 ギラギラした怖い目つき
相手に貪欲な印象を与えるような目つきのことです。目の輝き方が変わっているのではなく、相手から何かを奪い取ろうとするような目的があり、表情は豊かですが、眼球の動きがあまりありません。
何かを要求しているような圧迫感を与えます。双極性障害の躁状態、ADHD、薬物依存などに見られることがあります。
10 目を合わせない
自閉症スペクトラム障害・ASDの人は、会話の時に目を合わせません。目を伏せていたり、横を向いていたり、目をつぶって会話する人もいます。
ASDの人は、コミュニケーションの障害があるため、言葉の情報だけを頼りにして、相手の目や顔の表情から情報を手に入れることをしないのです。
マナーとして、会話の時に相手の目を見るように意識することで、少しずつ改善させることができます。
「目は心の鏡」ともいいます。言葉には発しないけれども、表情や目つきから伝わってくるメッセージがあります。
もし身近な人の表情からSOSのサインを感じた時、何か心の病気を患っているのかも知れません。そのような時は、本音を聞いてあげて、専門家の助けが必要と感じたら、精神科や心理カウンセリングに行くことを勧めてあげましょう。
人間関係に気を遣い過ぎて疲れてしまう6つのタイプ
毎日の職場で、同僚や上司の顔色ばかり気になってしまう人がいます。仕事終わりには、仕事の内容よりも人間関係で疲れてしまいます。疲れすぎて体調を崩してしまい、翌日の仕事に支障が出ることもあります。
もっとリラックスして働きたいのが本音なのに、自然と人に気を遣い過ぎてしまうのです。
家に帰ってからも、自分が言ったこと、相手から言われたことをグルグル考えてしまい、「あれはどういう意味だったのだろう」、「私をどう思っているのだろう」と眠れなくなることもあります。
もともと人の好き嫌いがある方で、苦手と感じると、拒絶反応が出てしまいます。無理して会うと胃が痛くなったり、蕁麻疹が出たりします。
特に感情的で怒りっぽい人、無口で何を考えているか分からない人、裏表がある人、などが苦手です。
自分ではやめたくても、人間関係に気を遣い過ぎてしまう人には、いくつかのタイプがあります。今回は6つのタイプを紹介しましょう。
1 HSP
気疲れしやすい人の代表といえばHSPです。HSPとは、ハイリー・センシティブ・パーソンの略で、生まれつき感覚が敏感な人の性格を指す心理学の用語です。「繊細さん」とも呼ばれることがあります。
音や光などの物理的な刺激に敏感で、それだけでなく相手の表情、態度、雰囲気、なども敏感に察知してしまいます。相手の気持ちに反応し過ぎたり、共感し過ぎて疲れてしまいます。
2 アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害・ASD
自閉症スペクトラム障害・ASDとは、相手の気持ちを理解する能力に劣る生まれつきの障害です。
やはり、音や光などの物理的な刺激に敏感ですが、人の表情や態度から気持ちを察することが苦手で、人の気持ちを間違って理解してしまうことがあります。
相手の気持ちを理解できないまま、自分の意見も主張できず、不快な気分を我慢し過ぎて疲れてしまいます。時に我慢しきれずに感情が爆発してパニックを起こすことがあります。
3 大人の愛着障害、複雑性PTSD
子供の頃に親がいなくなる、虐待を受ける、学校でいじめなどを受けるなど、大切な人を失う体験や拒絶される体験をすると心にトラウマが残ります。トラウマがあると、物事を歪んで感じ取ってしまうことがあります。
「大切な人はいなくなる」「自分は嫌われれている」といった思い込みのフィルター越しに人を見るようになってしまうのです。
特に仲が良くなるとこのフィルターが働くようになり、嫌われないように相手の気持ちに敏感になり、気を遣い過ぎてしまいます。
4 失感情症
ストレスが、気持ちでなく体に出やすい人の性格を失感情症と言います。ストレスで不快な感情が湧いても、それが何かを言葉で自覚できません。対人関係の疲れを自覚できないまま過ごし、倦怠感、頭痛、胃腸障害などの体の症状で出てしまいます。
間脳と前頭葉をつなぐ神経系に生まれつきの障害があるとも考えられています。自閉症スペクトラム障害・ASDの人の性格にも多く認められます。
5 社交不安症
「自分は変に思われていないか」と不安に思う病気です。発表や会食などの集団の場面で、相手の目を気にし過ぎて疲れてしまいます。
病状が悪くなると、1対1の場面でも、相手の思いが気になるようになります。こんなに辛い思いをするなら人と会わない生活がいい、と引きこもりになるケースもあります。
薬の治療に効果がありますので、精神科を受診しましょう。
6 スピリチュアルな人
心理学や精神医学のカテゴリーではありませんが、霊的な世界を信じ、勘がするどく、直観で生きている人です。
物事を理性的に考えることが得意ではありません。にわかには信じ難いがたいですが、話していないのに相手の考えていることが分かることがあります。
極端な例では、腹が痛い人に合うと、同じく腹が痛くなるという現象もあります。相手の思いがストレートに心に飛び込んできて、それを制御できないので疲れてしまいます。幽霊や妖精を見たり、その声を聞くこともあります。
HSPの中でもさらに感受性がつよい人と言えるかも知れません。過敏すぎて生活に支障が出る場合、精神科では解離性障害と診断されることがあります。
人に気を遣い過ぎてしまう人のタイプを6つ紹介しました。社交不安症のように治療で改善するものもありますが、性格の傾向の場合は大きく変えることができません。
そもそも、「気を遣う」とは、相手に気持ちよく過ごしてもらうために、相手の立場にたって配慮することです。結果的に、相手の気分が良くなれば良いわけです。
ところが相手の気持ちを読み取れない場合や、相手の要求が伝わり過ぎてしまう場合は疲れてしまうのです。相手に気持ち良く過ごしてもらおうと思いながら、自分が不愉快な気持ちになってしまっては何の意味がありません。
このような場合は、その人と少し距離を置いてみることが必要でしょう。その人によって心が乱されるならば、むしろできるだけ関わらないようにするのが賢明な方法です。
「君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)」ということわざがあります。君子とは、古代中国の学識をもった地位の高い人の意味です。
「賢い人は自ら危ないところには近寄らない」という意味ですが、「自分の身を守るのは、自分の行動である」という意味合いもあります。相手のことを思いやり、気を遣うことは礼儀として大切なことです。
ただし、気を遣い過ぎて自分が壊れてしまうことないように、自分の気持ちを大切にしましょう。
難治性のうつ病とは
うつ病で、十分な薬の治療を2年以上行っても良くならない場合を、難治性(なんじせい)うつ病とか慢性うつ病と呼びます。
薬の治療はうつ病の人の7割に効果があります。薬で良くならない場合には、通電治療や磁気治療などの特殊な治療を行うと、さらに1割くらいの人に効果があります。しかし、残りの2割くらいの人は治療にも関わらず、症状が改善されずに難治性になります。現在でもかなり多くの人が難治性うつ病に苦しめられているのです。
今回は、難治性うつ病について説明しましょう。
1 薬を飲んで発病前と同じ生活が送れていれば難治性ではない
薬を飲んでいれば、仕事ができて日常生活が送れているならば難治性ではありません。
難治性とは、薬を飲んでも、発病前の生活に戻れない人を指します。「薬を飲むのをやめるまでは治ったことにならない」と考える人もいますが、抗うつ薬などの精神科の薬は長い期間でも服用できるので、焦らずゆっくり薬を減らしていけば良いのです。同じ薬で状態が安定しているなら薬への依存は心配ありません。
ただし、薬を減らすためには生活の見直しが必要です。現代社会において、ほとんどの病気の原因は自分の心身のキャパを越えた生活にあります。さらに、お酒やたばこなどの嗜好品の取り過ぎ、運動不足、不規則な生活も良くありません。背伸びをしなくては生きていけない時代ですが、病気をきっかけに無理のし過ぎを少しずつ改善させていきましょう。
10年、20年と薬を飲んでいても、現役を引退して薬をやめた人、ローンを返済できて薬をやめた人、よいパートナーと出会って薬をやめた人、など、生活が改善されて薬が必要なくなった人はたくさんいます。長く飲んでいても、薬はやめることができるのです。
2 治りにくいうつ病がある
現在のうつ病の診断の方法は、発病の原因は考慮せず、いくつかの症状がある場合をうつ病と呼ぶことになっています。例えば、ストレスが原因でうつ症状が出た人も、生まれつきの発達障害が原因でうつ症状が出た人も、出産後のホルモンバランスの影響でうつ症状が出た人も、同じうつ病と診断されます。
ですから、うつ病は一つの病気というよりも、いくつかの病気をまとめた症候群のようなものです。発達障害が基礎にあったり、産後うつ病などは長期化しやすいと言われています。同じうつ病でも、治りやすい場合と治りにくい場合があるのです。
また、難治性の大きな原因の一つに、生きることへの絶望があります。大切な人や物を失う、信頼していた人から裏切られる、大きな事故や事件に合う、など避けがたい不幸が重なり、生きていくエネルギーがなくなってしまうのです。絶望感からうつ病になり、うつ病がまた絶望感をつくり、そのサイクルから抜け出せなくなってしまいます。
こうした場合、「希望を持ちましょう」と言われても、そんなに簡単に楽観的になれません。時間が問題を解決してくれるのを待つしかない場合もあります。
3 難治性の人はどうなるか?
ずっと寝たきりで一生を過ごすようなことはありません。障害年金や生活保護などの経済的な援助を受けて、少しずつ改善していく人が多いようです。見た目は元気がないだけで普通なために、福祉の援助を受けていることを負債に感じる人もいますが、うつ病は脳の機能が弱ってしまう病気です。決して怠けているのではありません。公的な援助を受けながらゆっくり回復を持ちましょう。
うつ病はまだ十分に解明されていない病気ですから、予期していなかった何かのきっかけで良くなることがたくさんあります。10年近くほとんど寝たきりに近い状態でも、家族関係に変化が起きて良くなること、病院を変えて新しい主治医との相性で良くなること、簡単な仕事を少しずつ手伝って良くなること、など色々なケースがあります。
4 難治性うつ病の治療は進歩している
20年くらいから前から難治性うつ病が注目されるようになり、その治療も少しずつ進んでいます。以前は医療側に問題があったのも事実です。治らないからと言って、同じような薬を重ねて処方する多剤投与がありました。
また、双極性障害Ⅱ型を難治性うつ病と診断してしまい、治療がこじれることもありました。こうした医原性の問題は、現在では解決されつつあります。また、難治性うつ病に有効な薬の使い方も工夫されており、治療は日々進歩しています。
5 とりあえず好きなこと・楽しいことからやってみましょう
病気のことばかりを考えることは良くありません。病気を早く治そうと焦らずに、むしろ病気から意識を離すようにしましょう。そのためには、気軽にできる楽しいこと、好きなことから始めましょう。音楽、ゲーム、ペットを飼う、物作り、スポーツなど、少しでも「生きていて良かったな」と感じられることに出会えたら良いでしょう。