人格障害って何? 境界性について

精神病とまでは言えませんが、考え方や言動が変わっていて、社会に溶け込めずに困っているという状態を人格障害、もしくはパーソナリティ障害と呼びます。変わっているといっても個性的の域をこえており、異常性格とか病的性格とも言われるものです。以前は精神病質、サイコパスと呼ばれていました。
考え方や言動が偏っているといっても、どこまでが正常でどこからが障害なのかは明確なラインはありません。社会と歯車が合わず、本人も周囲も困っている場合に診断がつけられます。明らかに人格障害と思われるハリウッドセレブなどの有名人もいるように、障害があってもうまく社会に適応していることもあります。
人格障害は大きく3つのタイプに分類されます。

(A)猜疑心がつよく人との関わりをもとうとしないタイプ。妄想性人格障害などがあります。

(B)自己中心的で感情のコントロールがつかないタイプ。言動や暴力で相手を傷つけたり、社会で問題を起こすことが多くあります。犯罪行為に至ることもあります。

(C)こだわりがつよく、依存的で心配性のタイプ。引きこもりになるケースが多いです。回避性人格障害、依存性人格障害などがあります。
人格障害の中でも私たちの身近で問題となるのが、境界性人格障害というものです。これは、ボーダーラインパーソナリティ障害とも呼ばれており、(B)に分類されます。いつも虚しさがあり、見捨てられてしまうのではないか不安感をもっています。見捨てられそうになると、なりふり構わず暴力や自殺未遂などで狂ったように相手の気を引きます。怒りのコントロールがつけられません。精神病的な妄想の症状がある人もいます。
家族や恋人が境界性人格障害であると、生活が振り回されることが多く、その対応に大変苦労することがあります。そのために人格障害の中では最も関心を持たれるものです。
ここでは境界性人格障害について説明します。
1970年代にはアメリカで境界性人格障害の患者数が増え、精神分析的な研究が盛んに行われました。発病と幼児期の虐待やトラウマとの関連性が指摘され、このような神経症的な要素と、精神病的な症状もあることから、神経症と精神病の境界線上にある疾患と考えられました。そこで「境界性」と命名されました。そして治療には専門家による精神分析治療が必要であると考えられました。
しかし、1990年代から精神疾患を脳科学の観点から研究する傾向が主流となりました。特に大人の発達障害の研究が進む中、境界性人格障害と診断されている人たちは注意欠如多動性障害(ADHD)などの発達障害ではないかという意見も出るようになりました。幼児期の体験などの心理的な問題以上に、脳の一部が生まれつき十分に機能していないために人格障害がおこるのではないか、という考え方です。
これは、画期的な発想の転換でした。なぜなら過去の心の傷が人格障害の原因ならば、それを治すためには専門的な精神分析的治療が必要となります。その上、結局は親のせいで病気になった、という発想になりがちで、親が責め立てられて状況がよけい悪化することもしばしばありました。
しかし、生まれつきの脳の問題であるとなると、治すという観点よりも、障害をもちながらどう社会に適応するかを考えればよいことになります。例えば、気分の変動が激しく、すぐに怒ってしまう場合は、それを抑える薬を服用してみる、生活が不規則になったら、入院して生活を整える、など症状に応じた対症療法が有効になります。
次に家族や恋人の対応の仕方です

変わった言動が単なるまがままでなく、障害であるとこを前提として対応してあげることがポイントです。そうすれば自然に大切にしてあげようと思えますし、いい加減な対応をしなくなります。どうせわがままだからと思って、いい加減な対応をすることで、怒りのスイッチを押してしまうことが多いのです。
万が一怒らせてしまった場合は、相手の怒りに巻き込まれず、こちらも怒らずに冷静に対応することです。こちらに非がある場合は冷静に謝罪することも必要です。
ただし、暴力、お金の使いすぎ、自傷などの自己破壊的な行動については、話し合って制限を儲けることが必要です。暴力の場合は、警察や役所のDV相談センターなどの公的機関に関わってもらうことも必要です。
境界性人格障害は、虐待などの過去のトラウマが関わっているケースもありますが、それ以上に脳機能の障害の影響がつよいと考えられるになりました。そのために最近では境界性人格障害という診断名をつけられることは少なくなり、ADHDとか双極性障害と診断がつけられることが多いようです。
診断名はどちらにしても、わがままな人として見下すのではなく、障害と考えて対応することが必要でしょう。
他の人格障害についても同様に、アスペルガー障害などの発達障害があることが知られるようになっています。どの人格障害も残念ながら治すことは難しいのが現状です。しかし怒り、不安、こだわりなどの症状を抑える薬もあり、こうしたものを利用しながら社会への適応を考えてあげることが必要でしょう。

リストカット 家族や友人の方に知ってほしいこと

自分の周りにリストカットをされている人はいますか?
リストカットをしている人を救うには周りの人の支えが大変重要です。

支えとなるためにも、是非今回の文章を読んでいただけると幸いでございます。



リストカットのように自分を傷つける行為を自傷行為と呼びます。自傷行為には、髪の毛を抜いてしまう抜毛症(ばつもうしょう)、皮膚をひっかく、皮膚を焼く、頭やこぶしを壁に打ち付ける、などがあります。また間接的に自分を傷つける行為も自傷行為として考える場合もあります。
過食嘔吐、全身のタトゥーやピアスの穴開け、薬物乱用、相手を選ばない性的交渉などがあげられます。リストカットと平行して、これらの間接的に自分を傷つける行為をしていることがあります。
自傷行為を自殺ととらえる方も多いと思いますが、とても死にたい気持ちを伴うものの全く異なるものです。自殺は命を絶つ目的で行いますが、自傷行為は体を傷つけたい衝動にかられて行ってしまうのです。
むしろ、辛い人生を生きていくための気持ちの逃げ場のようなものです。癖のように無意識にやってしまうこともあります。

ただし、自殺と違うと言っても、リストカットで手首の深いところにある動脈を切ってしまう場合は死に至ることもあります。死ぬわけでないからと安心するのは禁物です。
動物にも自傷行為がみられます。閉じ込められたペットや養殖の動物が自分の手足や尻尾を咬んだり、毛をむしったりすることがあります。これは動物たちが命を絶つためにやっていることでなく、不快な空間に閉じ込められ、怒りや絶望などの負の感情のやり場がなく起きてしまう行動なのです。
これには脳の中のセロトニンという物質が関係しているという研究もあります。人間も同じです。自分で処理することのできない負の感情が蓄積していくと、衝動的に自分を傷つけてしまうことがあるのです。
リストカットの心理的な背景には次のようなことがあります。

1.家族や恋人から虐待を受けている。孤立している。
2.学校や職場でストレスが多い。過度の競争の中にいる。いじめやハラスメントを受けている。
3.失恋、家族の死などの喪失体験。
4.受験や就職の失敗などの挫折体験。
5.自傷行為を肯定するような映画やドラマを見ている。アンジェリーナ・ジョリーやレディー・ガガなどのハリウッドセレブが過去の自傷体験を語っており、こうしたメディアの影響を受けている。
リストカットをする人に、なぜそうするのかを質問すると、様々な答えが返ってきます。
「血をみると生きている実感がする」「傷の痛みで辛いことが忘れられる」などがあります。また、よく憶えていないとか、血が流れるのをテレビの画面を見るようにボーっと見ている、という人もいます。リストカットをする半分以上の人が痛みを感じていないという報告もあります。なぜリストカットをしてしまうか、本人にとっては説明がつかないことが多いのです。
リストカットをする人は、気持ちを言葉にすることが苦手です。何が辛くて、自分を傷つけてしまうのか、それを質問しても明確な回答が得られないことが多いのです。また思い込みがつよかったり、感情のコントロールが苦手な人もいて、辛い気持ちをうまく解消することが不得意であったりします。
中高校生のリストカットの場合は、成長することで、苦しい気持ちを客観的に捉えられるようになり、それを言葉で表現したり、他の安全な方法で解消できるようになることでリストカットは減っていきます。
それでは、家族や友人にリストカットをしている人がいる場合にどうしたらよいでしょうか?
まず、リストカットを無意識のSOSと考えるべきでしょう。ここで誤解してもらいたくないことは、リストカットは周囲にアピールするためにわざとやっているわけではないことです。気持ちの逃げ場として仕方なくやってしまうことですから、叱ったり、無理にやめさせようとすることは逆効果です。
また、「何が辛いの!」と感情的になって追及しても明確な答えが出てくるとは限りません。自分を客観的に見る力や自分に気持ちを言葉にする力が不足している場合が多いのです。暖かく見守りながら、苦しい原因を周りが推測して取り除いてあげることが必要です。
リストカットの治療には心理療法が向いているので、カウンセリングを受けるのがよいでしょう。カウンセリングでは家族関係を見直したり、苦しい気持ちを言葉で表現することを手伝ってくれたり、リストカット以外の気持ちの解消法を探すような治療を行ってくれるでしょう。
しかし、本人に治療に消極的なことが多く、家族だけがカウンセリングを受けるケースが多いようです。
死にたい気持ちが非常につよく他の自殺方法も試みるような重症の場合や、背後にうつ病、躁うつ病、統合失調症などの精神疾患があると思われる場合は精神科での薬物治療が必要となります。
また、形成外科ではリストカット痕を消してくれるレーザー治療や植皮手術を受けられます。
リストカットは自殺行為と違います。命を終わらせようとしているのでなく、むしろ生きていくために無意識にやってしまう行為です。何が辛いのか、そこを理解してあげることが大切です。

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