漢方薬で心の病気は治せるの?

「精神科に行ってみたいけれども薬を飲まされるのが怖い。漢方薬で治せないか?」と思われる方がいらっしゃいます。確かにネットには、精神科の薬は長く飲まなくてはならない、副作用がある、などの記事がたくさん出ています。
こういった記事を読まれた方が、「何とか精神科の薬を飲まないで済まないだろうか」という思いで漢方薬を希望されるのでしょう。果たして漢方薬で心の病気は治せるのでしょうか?


ここでは心の病気は漢方薬で治せるか、というテーマで説明します。
そもそも漢方薬とはどのようなものでしょうか。漢方薬の原料は生薬(しょうやく)というもので、主に薬草を加工したものです。生薬とは、例えば、朝鮮ニンジンは疲労回復に効果がある、柴胡(さいこ)はうつ気分を改善させる、など古くから効能が知られて来ました。これらの生薬を複数組み合わせることで効果を調整したものが漢方薬です。継続して長く飲むことで自然治癒力を高め、体質改善の効果があります。





ただし漢方薬は症状を抑えるのが目的ではないために、症状を和らげるという観点からは効果が出るまでは遅く、効き目もマイルドです。
うつ病、パニック症、躁うつ病、統合失調症などの精神疾患は、しっかり症状を抑え込むことが必要です。症状を取ることで自然治癒の力が働き、病気が治っていきます。ですから、漢方薬は精神疾患の治療に向いていません。
しかし、漢方薬は精神科で使われないということではありません。検査しても異常はないけれども何か調子が悪い、ということを不定愁訴と呼びますが、漢方薬は不定愁訴によく効きます。特に自律神経失調症、心身症、軽いうつ病の体の症状などには効果があります。例えば、頭痛、めまい、肩こり、消化不良、体温調整不良、倦怠感、不眠などの症状を改善させることができます。
また、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)のように、精神科の薬による体重増加、むくみ、便秘などの副作用を改善させるために使われるものもあります。


精神科でよく使われる漢方薬を紹介しましょう。
1.抑肝散(よくかんさん)・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんちんぴはんげ)

神経が高ぶっており、怒りやすく、イライラ、不眠のある人に効果があります。気分安定薬のような作用があり、自閉症の子供や認知症のお年寄りのイライラにもよく使われています。
2.当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・加味逍遙散(かみしょうようさん)

虚弱体質の女性で、生理不順や更年期障害による自律神経失調のある人、特にうつ気分や体のコリや痛みがある人に効果があります。更年期の女性の自律神経失調症によく処方されています。
3.酸棗仁湯(さんそうにんとう)

心身の疲れによる不安、不眠がある人に効果があります。睡眠約を飲むのが怖いという不眠症の方によく処方されています。しかし、睡眠薬ほどの効果は期待できません。
4.補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・六君子湯(りっくんしとう)

疲労かたくする食欲不振があり、体力や気力がない人に効果があります。
5.加味帰脾湯(かみきひとう)

食欲不振で元気がなく、貧血、不安、不眠などがある人に効果があります。
6.柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこ・か・りゅうこつぼれいとう)

血圧が高く、比較的体力がある人で、ストレスが原因のイライラや不眠がある人に効果があります。
7.防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

やせ薬としてテレビのコマーシャルでもよく紹介されています。精神科の薬による体重増加、むくみ、便秘の改善に効果があります。
精神科の薬は脳の神経に働きかけて、症状を抑えることで神経の活動を整え、それによって自然治癒の力が働きます。精神疾患は症状をダラダラと放置しているとむしろ慢性化してしまいます。精神科の薬の副作用を気にされている方がいますが、「角を直して牛を殺す」ということわざがあるように、薬の副作用を恐れるあまりに、薬を飲まないで病気を慢性化させてしまうことは一番よくないことです。
漢方薬だけで精神疾患を治すことは難しいことです。しかし、漢方薬は自律神経失調症などの不定愁訴によく効くので、精神科の薬といっしょに使うことで力を発揮することがあります。漢方薬に詳しい精神科医もいますので気になる方は相談してみてください。

頑張り過ぎないコツ

 頑張るとは、困難に負けずに我慢してやり抜くことです。それは、誰もが認めるすばらしいことです。学校ではその大切さを学び、漫画やアニメのくじけないヒーローに憧れて育ちます。
ところが現代社会では、頑張り過ぎて体調を壊してしまう人がたくさんいます。原因は自分のキャパを超えた仕事量や人間関係にあります。しかしそれを乗り越えなくては今の仕事を失う、出世はない、という理由で無視をしてしまうのです。
うつ病に代表されるように過労による病気は、自分のキャパを超えた頑張り過ぎによるものです。実は、頑張るには、「我を張る」というネガティブな意味もあるのです。悪い意味の頑張るにならないように、頑張り過ぎないように注意しましょう。

ここでは、頑張り過ぎないためのことわざや格言を7つ紹介します。
1.「無理をしないことも大切。むちゃをして体を壊せば何もかも台無し。ハリウッドスターに対して、皆さんは華やかできらびやかなイメージをお持ちでしょう。でも彼らは努力を惜しまないし、自己管理をしっかりしています。」戸田奈津子
頑張ることは、無理をすることではありません。頑張り過ぎとは、自分のキャパを超えて無理をしてしまうことです。無理をして健康を害しては元も子もありません。健康を管理するのも仕事のうちです。特に大切なことは、体調が悪い時は無理をせずに、積極的に休むことです。
2.「人生諦め(あきらめ)が肝心」 ことわざ
「諦める」という言葉の響きは、負けを認めるようなネガティブな印象があります。しかしその起源は仏教にあり、本来は、真理や道理を明らかにして、物事を見極めるというポジティブな意味でした。何も考えずに進むのではなく、このまま進んで良いのかを一度立ち止まってよく考えることなのです。やみくもに最後までやり遂げるのが良いわけではありません。中途半端も良しとしましょう。
3.「80%主義」 斎藤茂太
100%の力を出し尽くして働いて、やっとの思いで家に帰り寝ることしかできない、こういう生活は健康に良くありません。このような生活は、うつ病は過労死が起きやすいのです。家でゆっくり自分の時間を楽しむために、余力を残して帰りましょう。夜の時間は翌日の力を蓄える大切な時間です。仕事は100%でなく、80%の力でやるのがお勧めです。残りの20%は他のことのために取っておきましょう。
4.「疲れた時は休みたくなるんだ。そういう時は潔く休めばいい。怠けたい気持ちが湧き上がったら、無理してもいい仕事はできないよ。」
                     黒澤明
「疲れたな」、「体が痛い」、「嫌になってきた」など、仕事に集中できなくなったら、休んで欲しいという心と体のSOSです。仕事のキリが良いところまでやってしまおうと思わずに、疲れを感じたらまず休みましょう。無理をしてやることは効率が悪いことです。
5.「助けを求めることは恥ずかしいことではない」 桜井翔
問題が自分に解決できるかどうかを見極めることは大切なことです。できないと思ったら、いつまでも抱え込まないで助けを求めましょう。仕事でも同じです。できない仕事を自分一人で抱え込まないで、人に任せることも考えましょう。山のような大量の仕事を減らすには、協力することが最も効率が良いことです。
6.「偽りの自分を好かれるより、ありのままの自分で嫌われる方が良い。」          アンドレ・ジッド
言われたことを引き受けるのは、「はい」と言うだけで、その場は簡単です。しかし、気軽に引き受けて、後から後悔したことはないでしょうか。また評価を気にして、無理をして引き受けることもあるでしょう。結局良い結果を出せなくて迷惑をかけてしまう、このような結末にならないように、頼まれたその場で断ることも必要です。「できません」と言える勇気を持ちましょう。
7.「逃げるが勝ち」  ことわざ
勝ち目のない勝負はしないことです。まずは逃げて次に備えましょう。例えば、職場がどうも自分に合っていない、仕事内容が期待していたものと違うし、上司ともうまくいかない。そんな時は潔く辞めてしまうのも手かもしれません。
頑張ることの格言やことわざは山ほどありますが、頑張り過ぎないというものは意外とありません。なぜならネガティブな印象があるためです。しかし、今の時代に最も必要なのは心のゆとりです。頑張り過ぎないことは悪いことではありません。頑張り過ぎに注意して、無理のない生活を心がけましょう。

孤独の解消の仕方

 人間は一人で生きられるものではありません。どんなに優秀な人でも、社会の歯車の中に組み込まれているからこそ、その才能を発揮できるのであって、一人で生きているわけではありません。
社会、家庭、友人、などの人間関係が少なくなってくると、人は孤独を感じるようにできています。「一人ではいけない」という心のサインが孤独という感情なのです。
 孤独な時に私たちがよく行うのは、好きなものを食べたり、友人とお酒を飲みに行ったり、欲しかったものを買ったりと、食欲や物欲を満たしたり、SNSでつながりを求めたりすることです。私たちの周りには、手っ取り早い孤独解消法がたくさんあります。
 こうしたことは一時的に孤独を癒してくれますが、すぐに元の孤独に戻ってしまうことはないでしょうか。またよけい孤独になってしまうことはないでしょうか。





お腹がすいた時に、手っ取り早く手に入り、味の濃いジャンクフードばかり食べていると体を壊してしまいます。食べることは空腹の満足だけでなく、体の成長の力になり、健康を維持する目的があります。同じように、孤独だからと言って、その場限りの対応をしていると、心が病んだり、心の成長も期待できないでしょう。
お坊さんは、寺にこもる修行があります。仏教に限らず、どんな宗教にもあえて自分を孤独な状況に置くという修行があります。これは心身を痛みつけるのが目的ではありません。外からの刺激を絶ち、孤独の中から何か大きなものを感じ取り、心を成長させるために行うものです。悟る内容は宗教は人それぞれに違いますが、いくつかの共通点があります。
それは、世の中に見えない大きな生命の力、愛の力が働いていること、人はその中で自分が生かされている小さな存在であること、こうしたことを悟るために行うのです。
こうした体験をすると、心が成長し、些細なことでも不安やイライラしなくなり、人に優しくできるようになります。ですから孤独はそれほど悪いものではありません。うまく利用すれば、自分を見つめなおし人を成長させる機会となります。
ただし、私たちのような普通の人がこのような修行をすることは大変難しいことです。できるだけその場限りでない孤独の解消法を通して、少しでも自分を成長させることができたら良いかも知れません。

ここでは、このような意味のある孤独の解消法を5つ紹介します。
1.理解してくれる人に相談する

 人の心の中心には承認欲求と言うものがあります。理解されて、認めてもらって、生きている価値を感じるのです。世の中に誰か一人でも自分の苦労や苦しみを知ってくれている人がいれば孤独を感じません。
家族の中に理解者、相談者がいれば一番良いのですが、最も近くで生活している家族が心の距離の遠い存在であることも多いようです。信頼できる先輩や友人などに思い切って相談するのも良いかもしれません。周りにそういう人がいない場合は、カウンセリングを利用するのも手です。
2.人の喜ぶことをしてあげる

人間関係は待っていては始まりません。魅力のある人は、周りから人が寄ってくるのでしょうが、普通は自分から交流を始めることが必要です。まず、人を喜ばせることから始めましょう。
喜ばせることが、感謝となって返ってきて良いコミュニケーションが生まれます。家族や友人に誕生日のプレゼントをする、さみしい思いをしている人に連絡をしてみる、など簡単なことから始めてみましょう。
 プライドがある人は、なかなか自分から行動を起こせません。プライドの高い人ほど孤独をつくりやすいとも言われています。
3.自然にふれてみる

インスタ映えの目的で話題のパワースポット巡りをしたところ、「実際に見えないパワーを感じた」という人も多いようです。自然の中には生命の力が宿っています。公園などの自然の中で、ゆっくり深呼吸をしながら、時間が過ぎるのを忘れてしばらくたたずんでみるのも良いでしょう。余裕があれば、家で生き物を飼ったり、植物を育てるのも良いかもしれません。
4.職場以外の所属をつくる

 職場は、利益を目的とする集まりです。会社が儲かることが活動の中止なため、人を才能や実績だけで評価し、仲間同士での競争があります。こうしたところに長く所属することおは心をすり減らしてしまいます。
 しかし、趣味を中心とした集まりは、利害のない人間関係であり、生きがいを感じる居心地のよい場所となる可能性があります。職場の集まりだけでなく、趣味を中心とした集まりにも参加できたら良いでしょう。
5.運動をする

日頃デスクワークばかりで運動不足となり、そのストレスから孤独感がきているかも知れません。心と体には相関関係があります。体を動かすことは、心も開放的にします。かといってスポーツジムに行って激しい運動をする必要はありません。心をスッキリさせることには、週に4日程度、1回に20分程度の早歩きで十分です。このようなウォーキングはうつ病や認知症を予防する効果があることが証明されています。
最後ですが、いつも孤独で苦しい場合は、もしかしてうつ病の症状かも知れません。人の中にいても疎外感を感じて、孤独であるというのもうつ病の症状です。
孤独で不眠や食欲が落ちるなど、日常生活にも支障が出てしまう場合もあります。このような場合はうつ病の可能性があるので精神科を受診することをお勧めします。

アダルトチルドレンとヤングケアラー、親と縁を切りたい人

 アダルトチルドレンとは、「アダルトチルドレン・オブ・アルコホーリクス」を略したもので、日本語に訳すと「アルコール依存症の家庭に産まれた人」という意味です。
アメリカには日本と比べものにならない数のアルコール依存症の問題があり、1970年代のアメリカでは、アルコール依存症の家族の研究が盛んに行われました。
アルコール依存症の家庭の子供は、いつ親が酒を飲んで暴れ出すか分からない不安の中にあり、つねに緊張が抜けず、感情を抑え込まれた生活を送りました。そのために、大人になっても自分の感情が出せなくなり、自分を責め、自尊心が低く、生きづらさを感じていることがわかりました。
 
 
 
 
 
 
 その後、この現象は薬物依存、ギャンブル、ワーカホリック、暴力で虐待された家庭に育った人に共通にみられることが知られるようになりました。このような親の都合で子供が抑圧されている過程を機能不全家族と呼ぶようになりました。
 アダルトチルドレンの考え方は、日本には1989年に入り、当時の20代から40代の人たちに受け入れられました。書かれた本はベストセラーになり、テレビでは何度も特集が組まれました。アダルトチルドレンを治療するという施設には行列ができたくらいです。
なぜここまで受け入れられたかと言うと、この世代の多くの人が厳しく仕事中毒の父、子供に学歴をつけることを目的にした良妻賢母の母、という昭和の高度成長期の家庭に育っていたからです。日本ではこのような家庭も機能不全家族ととらえました。
アダルトチルドレンの考え方は、自分の生きづらさは自分のせいでなく、家庭が機能不全家族だったから仕方ない、自分をせめずに人生を先に進もうという、新しい自分をつかむための心の啓発として大きな役割を果たしました。
 しかし、残念ながら親を責め続けて許せないまま、恨みに囚われて人生を先に進めなくなってしまう人も多く現れました。また、アダルトチルドレンの意味が拡大解釈されて内容が曖昧となり、心理学や精神医学などの学術の分野からは扱われなくなりました。現在は当時と家庭のあり方が変化したこともあり、一時のブームが去ったという印象です。
最近アダルトチルドレンと似ているヤングケアラーという言葉がメディアでよく取り上げられます。ヤングケアラーは親の病気のために家事や介護を強要される子供を言います。彼らの中には、親の心配ばかりして全く甘えられず、本音を言ったら親に嫌われる不安から、親の顔色だけを見て育った人もいます。
こうした人は心を病み、大人になっても自分の気持ちを抑えたり、悪いことがあると自分をせめる癖がついてしまいます。つねに緊張感や絶望感があり人生を楽しめません。このような心を病んだヤングケアラーもアダルトチルドレンと呼べるでしょう。
 アダルトチルドレンやヤングケアラーで苦しんでいる人たちは、子供の頃に親から無償の愛情を受けられず、親の事情に振り回され、親の要求を満たさない限り親に認めてもらえなかった苦しみを味わった人たちです。
 
 
 成人して経済的に自立することで、一時的に親の束縛から逃げ出すことができます。形としては親と縁を切ることはできますが、何か辛いことがある度に親の顔が浮かんで許せない気持ちになります。いつまでたっても親への恨みがとれず、それが心の成長を妨げて人生を先に進めないでいます。
低い自尊心と恨みの感情は悪い循環をつくり、心の傷が癒されるどころかさらに心が病んでしまいます。一言でも「悪い親ですまなかった」と謝ってもらえれば救われるのに、思い切って連絡しても、以前と変わらない親の様子によけい辛い思いになります。
この悪い循環を抜けるためには特効薬はありません。やはり親には期待せずに距離を取り続けた方がよく、むしろ信頼できる人との出会いを積み重ねていく方がよいでしょう。友人、恋人、なかなか良い出会いがなければ心理カウンセラーに相談するのも良いかもしれません。こうした利害関係のない良い人間関係が唯一傷ついた心を癒してくれる方法ではないでしょうか。
 精神科医の夏苅郁子さんは、統合失調症の母、暴力をふるう父の家庭に育ちました。幼少期、自分勝手な父は留守がちで、病気の母と2人だけの孤立した生活を送りました。妄想で狂って暴れる母とそれを殴る父の姿が忘れられないと言います。病気の母親は離婚し追い出され、父と生活をすることになります。
。学校の成績が良く医学部に進学しましたが、リストカット、摂食障害、薬物依存になり、精神科を通院するようになります。低い自尊心と絶望感に囚われ、2度の自殺未遂をしたそうです。心の中には常に両親の姿が恐怖や怒りとして残っていたそうです。
しかし、よき理解者である夫や、統合失調症の母を持つ同じ境遇の漫画家中村ユキさんとの出会いを通じ、両親を理解し許すために自分の過去と向き合うようになります。そうせざるを得なかった両親を理解する中で自分自身の心も解放され成長していくことを語っています。現在は児童精神科の診療とともにヤングケアラーの啓蒙活動をして活躍されています。
夏苅さんのように、親に愛してもらえなかった恨みは、親と縁を切って終わらせてはいけないのかも知れません。信頼できる人との出会いを通じ、心に少しでも余裕が出たら、親の不完全さを受け入れて、いつか親を許すことが必要なのかも知れません。

人格障害って何? 境界性について

精神病とまでは言えませんが、考え方や言動が変わっていて、社会に溶け込めずに困っているという状態を人格障害、もしくはパーソナリティ障害と呼びます。変わっているといっても個性的の域をこえており、異常性格とか病的性格とも言われるものです。以前は精神病質、サイコパスと呼ばれていました。
考え方や言動が偏っているといっても、どこまでが正常でどこからが障害なのかは明確なラインはありません。社会と歯車が合わず、本人も周囲も困っている場合に診断がつけられます。明らかに人格障害と思われるハリウッドセレブなどの有名人もいるように、障害があってもうまく社会に適応していることもあります。
人格障害は大きく3つのタイプに分類されます。

(A)猜疑心がつよく人との関わりをもとうとしないタイプ。妄想性人格障害などがあります。

(B)自己中心的で感情のコントロールがつかないタイプ。言動や暴力で相手を傷つけたり、社会で問題を起こすことが多くあります。犯罪行為に至ることもあります。

(C)こだわりがつよく、依存的で心配性のタイプ。引きこもりになるケースが多いです。回避性人格障害、依存性人格障害などがあります。
人格障害の中でも私たちの身近で問題となるのが、境界性人格障害というものです。これは、ボーダーラインパーソナリティ障害とも呼ばれており、(B)に分類されます。いつも虚しさがあり、見捨てられてしまうのではないか不安感をもっています。見捨てられそうになると、なりふり構わず暴力や自殺未遂などで狂ったように相手の気を引きます。怒りのコントロールがつけられません。精神病的な妄想の症状がある人もいます。
家族や恋人が境界性人格障害であると、生活が振り回されることが多く、その対応に大変苦労することがあります。そのために人格障害の中では最も関心を持たれるものです。
ここでは境界性人格障害について説明します。
1970年代にはアメリカで境界性人格障害の患者数が増え、精神分析的な研究が盛んに行われました。発病と幼児期の虐待やトラウマとの関連性が指摘され、このような神経症的な要素と、精神病的な症状もあることから、神経症と精神病の境界線上にある疾患と考えられました。そこで「境界性」と命名されました。そして治療には専門家による精神分析治療が必要であると考えられました。
しかし、1990年代から精神疾患を脳科学の観点から研究する傾向が主流となりました。特に大人の発達障害の研究が進む中、境界性人格障害と診断されている人たちは注意欠如多動性障害(ADHD)などの発達障害ではないかという意見も出るようになりました。幼児期の体験などの心理的な問題以上に、脳の一部が生まれつき十分に機能していないために人格障害がおこるのではないか、という考え方です。
これは、画期的な発想の転換でした。なぜなら過去の心の傷が人格障害の原因ならば、それを治すためには専門的な精神分析的治療が必要となります。その上、結局は親のせいで病気になった、という発想になりがちで、親が責め立てられて状況がよけい悪化することもしばしばありました。
しかし、生まれつきの脳の問題であるとなると、治すという観点よりも、障害をもちながらどう社会に適応するかを考えればよいことになります。例えば、気分の変動が激しく、すぐに怒ってしまう場合は、それを抑える薬を服用してみる、生活が不規則になったら、入院して生活を整える、など症状に応じた対症療法が有効になります。
次に家族や恋人の対応の仕方です

変わった言動が単なるまがままでなく、障害であるとこを前提として対応してあげることがポイントです。そうすれば自然に大切にしてあげようと思えますし、いい加減な対応をしなくなります。どうせわがままだからと思って、いい加減な対応をすることで、怒りのスイッチを押してしまうことが多いのです。
万が一怒らせてしまった場合は、相手の怒りに巻き込まれず、こちらも怒らずに冷静に対応することです。こちらに非がある場合は冷静に謝罪することも必要です。
ただし、暴力、お金の使いすぎ、自傷などの自己破壊的な行動については、話し合って制限を儲けることが必要です。暴力の場合は、警察や役所のDV相談センターなどの公的機関に関わってもらうことも必要です。
境界性人格障害は、虐待などの過去のトラウマが関わっているケースもありますが、それ以上に脳機能の障害の影響がつよいと考えられるになりました。そのために最近では境界性人格障害という診断名をつけられることは少なくなり、ADHDとか双極性障害と診断がつけられることが多いようです。
診断名はどちらにしても、わがままな人として見下すのではなく、障害と考えて対応することが必要でしょう。
他の人格障害についても同様に、アスペルガー障害などの発達障害があることが知られるようになっています。どの人格障害も残念ながら治すことは難しいのが現状です。しかし怒り、不安、こだわりなどの症状を抑える薬もあり、こうしたものを利用しながら社会への適応を考えてあげることが必要でしょう。

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