「親の資格」って?
児童相談所への虐待の相談件数は年々増えており、年間20万件を超えています。国の政策にも関わらず、未だに減る様子はありません。事件を起こした親は、「親の資格がない」と非難されて当然ですが、「親にも資格制度をつくった方がいいのではないか?」という声までも聞こえてきます。冗談のようですが、親からの冷たい仕打ちに耐えて来た人の中には、真面目にそう考える人もいるのです。
資格とは、その分野での知識や経験があり、願われた仕事をやり遂げる能力があることの証明です。人にとって重要な子育てに資格があるならば、どのような内容であるべきでしょうか?
今回は、親の資格について考えてみましょう。
1 親の資格を決めるのは子供
子供の頃に親から愛されず、親子の情的な関係を築けなかった人は、大人になってからも自分に自信をもてません。人を信頼することができないために、対人関係を良好に保つことが苦手で、社会に出てから苦労が絶えません。これを大人の愛着障害と呼んでいます。
また、子供の頃に虐待やネグレクトなどを受け続けると、トラウマを一生背負うようになり、積極的な生き方ができなくなります。これは複雑性PTSDと呼ばれています。
アダルトチルドレンと呼ばれる人たちは、親が暴力をふるったり、情緒が不安定であったために、子供時代に自分の気持ちをいつも封じ込めてきました。我慢する習慣は、心の根っ子に染みついていて、大人になっても自分の気持ちを素直に出せません。
このような恵まれない親子関係で育った人は、大人になって苦労を感じる度に、親への恨みが湧いて来ます。周りの人は親から普通に与えられたものを、自分は与えられなかったと苦しみ、自分の親には子供を育てる資格がなかったと感じるでしょう。
このように、産まれた子供が犠牲になって、親に資格がなかったことが分かります。結局、親の資格を審査できるのは子供です。
2 親の資格とは、子供の苦しい気持ちを理解できること
自分の親に資格がないという言う人は、親から暴力を振るわれた、家に居場所がなかった、お金で苦労した、などの苦しい体験をしてきました。こうした人たちの話を聞いていくと、辛い経験に共通してあることは、「親に苦しい気持ちを理解してもらえなかった」という点です。親は自分のことを優先して、子供のことを犠牲にしてきました。子供としては、親の犠牲になって、辛い思いをさせられたことを理解して欲しいのです。
こうして考えてみると、親の資格とは、子供の苦しい気持ちを理解できることと言えるでしょう。
3 親の資格の有無は、変わることがある
一つのケースを紹介しましょう。産後に病気になってしまい、子育てが十分にできなかったお母さんがいました。子供に何もしてあげられず、怒ってばかりでしたので、子供は成人すると「親の資格がない」と言い残して、サッサと家を出て行ってしまいました。
お母さんは、子育てができなかったことを後悔しましたが、病気でしたから仕方がありません。せめてもの謝罪の気持ちで、出て行った子供の口座に、毎月ささやかなお金を振り込み続けました。その後、子供は家庭をもち、子育ての難しさを知りました。徐々に親の苦労が理解できるようになり、お母さんに対する「親の資格がない」という気持ちはなくなったそうです。
このケースのように、「親の資格がない」と子供に突き放された親でも、あとから挽回して、それを撤回してもらうこともあります。これとは全く逆で、良いお母さんと言われた人が、遺産相続で子供と争い、年老いてから「親の資格がない」と言われることもあります。遺産を独り占めにしたために、子供から悪いレッテルを張られてしまったのです。
このように、親の資格がある、なしの審査は、子育ての期間だけでなく、一生続くと覚悟しなくてはならないのです。
4 親の資格は、内面的なもの
いつの時代も、「子供を東大に入れた」、「子供を有名なスポーツ選手にした」と、子育ての成功を本にしたり、講演をする母親がいます。世間はすばらしい親と讃えますが、数十年たって、その家族が絶縁しているということも良くある話です。
そもそも、人の成功は、親の育て方よりも、遺伝的に生まれ持った才能の影響が大きいと言われています。子供の成功は、親の手柄ではありません。
子供のためにと考えて、お金をかけて英才教育をしたものの、子供に恨まれてしまうこともあります。親の価値観が、そのまま子供の価値観と同じとは限らないからです。
親の資格として、子供にお金の不自由をさせない、よい教育を受けさせる、習い事をさせてあげる、といった表面的なことも大切ですが、それが本当に子供のためになっているのか、常に考えなくてはいけません。
一方的な親の価値観の押し付けの場合があるからです。貧しくても、子供の気持ちを理解できている親の方が子供に感謝されます。親の資格はあくまでも内面的なものです。
子供の苦しい気持ちを理解できることが、親になる資格と言いましたが、人の気持ちを理解する能力は、人によって異なります。ある程度生まれつき決まっている能力なので、できない人に「気持ちを分かれ」と言ってもできません。
しかし、子育てを通して、子供の気持ちを理解する力が少しずつ身についてくることもあります。分からないなら、分からないなりに、子供ために一生懸命努力を続けることが大切です。
「自分にはできない」と思ったら、人を頼ることもしましょう。子供の気持ちが分からないという人でも、つねに子供のために心を注ぐことができ、子供を優先して考えているならば、親の資格があると言えるのではないでしょうか。
無価値感が心に染みついてとれない人の6つの特徴
大失敗をした後、自分を責めてしまい、「自分は必要のない人間だ」と感じる人がいます。このように、自分に生きる価値がないと感じることを無価値感と呼びます。自己肯定感の真逆の感情です。大きな挫折や大切な人を失った時に一時的に感じることがありますが、健康な人ならば普段は感じることはありません。
無価値感は、うつ病の症状として現れることがあります。これは、思い込みや被害妄想に分類されるもので、病気になるまでは自分の価値について考えなかったような人が、「自分は罪深い」、「生きている価値がない」と自分を責めてしまう状態です。
ところが、うつ病とは診断できないのに、子供の頃からいつも「自分は必要がない、いらない存在だ」と考えてしまう人もいます。心の中には、つねに自分を否定する感情がうずまいていて、そのために生きづらさを感じている人です。無価値感が染みついてしまった原因は、子供の頃の否定された経験の積み重ねと考えられます。
死別や離婚で親を失った、親や学校の先生からいつも否定的な言葉をかけられてきた、クラスメートからいじめを受けてきた、こうした辛い体験の積み重ねから起きているのです。愛着障害とか複雑性PTSDという診断がつけられる場合もあります。
今回は、このように無価値感が心に染みついてとれない人の6つの特徴について説明しましょう。
1 人の役に立っていないと気がすまない
自分に生きる価値がないと感じているので、努力して人の役に立とうとします。人の役に立っていないと自分に価値を感じません。何かに役に立っている状況が続いていれば安心を感じますが、それができなくなると消えてなくなりたいと感じます。
無理をしてでも人に役に立とうとするので、うつ病や適応障害などの心の病気になりやすい傾向があります。病気になっていつものことができなくなると、自分の生きている意味を失い、自死を考えてしまうこともあるでしょう。
2 人の気持ちに敏感
自分に価値はないと思っているので、他人の評価が、そのまま自分の価値です。どう思われているか、いつも気になっています。人と会うと、よく思われようと気を遣い過ぎて疲れます。
3 うまく行っている人と比べて自分を責める
自分の価値に敏感なので、無意識に人と比べてしまいます。輝いている人、うまく行っている人と比べては、自分には価値がないことを責めます。SNSには成功を自慢する人が多いので、それを見るたびに気持ちが落ち込みます。
4 どうせ何をやってもうまく行かないと思う
よい仕事に出会ったり、人を好きになっても、どうせうまく行かないと思います。ですから、仕事でも恋愛でも積極的になれません。幸せを感じても、すぐに壊れると感じます。
5 自分の成功を認められない
仕事でそれなりの実績を積み上げた人であっても、自分の力で成功したとは思えません。たまたまうまく行っているだけと考えます。謙虚というわけではなく、自己評価が低すぎるのです。褒められても、嫌味に聞こえてしまうことがあります。ですから、新しい仕事を託されると、うまくできる自信がないために、不安で仕方ありません。
周りから実力を認められ、職場でよいポジションを与えられても、「実力がないのに周りを騙している」と感じる場合もあります。これを「インポスター症候群」と呼びます。「インポスター」とは詐欺師という意味です。
6 完全主義
柔軟な発想ができず、物事を白か黒で判断する傾向があります。そのために、よくない出来事があると、自分が原因であると感じ、徹底的に自分を追い込みます。よくない出来事が起きるたびに、自分には価値がないという考えが確信となるでしょう。この悪循環でいつまでも無価値感から抜け出せません。
うつ病の症状で無価値感を感じる場合は、薬の治療で改善されて行きます。しかし、子供の頃からずっと無価値感を感じている人は、愛着障害とか複雑性PTSDという病名がつけられて、確実な治療方法がありません。
最近はポジティブ心理学が流行しているので、物事をポジティブに考えれば解決するようなアドバイスを受けやすいのですが、無理やり自分に価値があると言い聞かせても変わりません。また、インポスター症候群のように、何か成功をして、人から認められたら改善されるものでもありません。努力して解決できるものではないのです。
それでは、どうしたら無価値感から抜け出せるのでしょうか?実は、変わろうとする努力ではなく、癒されることが必要なのです。自分を肯定する感情、すなわち「生きていていいんだ」と感じることは、誰でも生まれつき備わっているものです。
ところが、子供の頃に生きることを否定され続けたので、自分を肯定する感情は抑え込まれてしまいました。時間はかかりますが、生きることを楽しむことを通して、本来の自分を肯定する気持ちが少しずつよみがえってきます。信頼できる人と話ができる、ペットとふれあう、趣味に興じる、こうした日常の安らぎや楽しみを経験することで癒されていきます。特に信頼できる人との出会いは大切です。いっしょにいて安らげるパートナー、友人、カウンセラーの存在はとても大きい力となります。
うつ病の療養中で苦しい…具体的な場面と対処法
うつ病は、例え治療を始めたからと言ってもすぐに治る病気ではありません。かぜのように、1回病院で薬をもらったら終わりではないのです。最低、数か月間は通院しないと良くなりません。良くなる日もあれば、調子を崩す日もあり、全体としては、「3歩進んで2歩下がる」という感じで良くなっていきます。
しばらくは辛いことが続くため、調子が悪い時には、ネガティブになってしまうこともあるでしょう。また、うつ病の療養中に限って、「同期が出世した」、「友達が結婚した」など、周りがうまくいっているニュースが耳に入ってくるものです。
そうすると、世の中から自分だけ取り残されたような気持になってよけい不安になります。将来のこと、仕事のこと、お金のことなど、病気以外のことでも悩んでしまいます。
今回は、うつ病の療養中に具体的に苦しくなる状況を紹介し、その対処の仕方について説明しましょう。
1 心配や不安で押し潰されそうになる
一人でいると、将来のこと、仕事のこと、お金のことなど、ネガティブな考えが止まらなくなり、「このままではいけない!」と焦ってしまうことがあります。
答えの出ない問題が頭の中をグルグルとまわり、マイナス思考の底なし沼にズブズブとはまってしまうのです。こんな時は考えることにブレーキをかけなくてはいけません。しかし、人は、考えを止めようとすればするほど、考えてしまうもの。考えを止めるためには、体に意識を向けることがコツです。
まずは深呼吸。ゆっくり腹式呼吸をして、全身に酸素が行き届く感じに意識を集中してみるのです。ストレッチや体操など、体を動かすのも良いでしょう。日頃から、散歩、軽い運動、ヨガなどを習慣にしておくことをお勧めします。
何かおいしいものを食べて、意識を味覚に向けるのも手です。また、誰かに電話をしてみて、会話に集中してみるのも良いでしょう。何をしてもダメなら、思い切って早めに眠ってしまいましょう。
ただし、アルコールで考えを止めるのはお勧めではありません。アルコールが抜けたときによけい苦しくなったり、習慣になることもあります。
2 できない自分を責めてしまう
うつ病は、気力がなくなり、今までできた事ができなくなる病気です。できないのは当然なことです。しかし、何事も頑張って生きてきた人からすれば、これを怠けとか努力不足と感じます。そして、「ダメな人間だ」と自分を責めてしまい、ついには生きる価値がないという結論が出てくることもあるでしょう。
人生うまく行っている時は、「どうして生まれてきたのか」、「人生の目的は何か」と、哲学的なことを考えることはありません。自分を責め続け、「生きる価値のない、世の中に必要のない人間だ」と、哲学的になってしまうのは、うつ病の症状です。
できないことは、努力不足とか、怠けではありません。むしろ、病気が良くなってくると、何かできそうな感じが出てくるので、できないことに焦りを感じます。病気であることを再認識しましょう。
理屈では分かっても、それでも自分を責めてしまう場合は、不安や心配でパニックになる場合で説明したように、意識を体に向けるようにして、自分の価値については考えないことが大切です。そもそも自分にどのような価値があるかは、誰にも分からないことです。
3 消えてなくなりたい
自分を責め続けていると、消えたい気持ちが衝動的に来ることがあります。これは、自殺につながる大変危険な症状です。一人で抱え込まずに、誰かに助けを求める連絡をしましょう。
4 ヒマなのに、何をしたら良いのか分からない
うつ病が良くなってくると、仕事を休んでいる場合、時間を持て余してしまうことがあります。「ヒマなのに、何をしたら良いのか分からない」「朝起きて、今日も1日やることがない」と感じるのです。
仕事で忙しい人が聞いたら、幸せな悩みと勘違いされますが、うつ病の人は、「時間があるならば、何か建設的なことをしなくてはならない」という強迫観念をもっていることが多く、やるべきことができない状況をこのように表現することがあります。実際には、「できないのに、時間だけがある」という意味なのです。
そもそも何もできないのですから、「病気だから仕方ない」と開き直るしかありません。とりあえず好きなことをして1日を過ごしましょう。ゲームでも、動画を見るのでも、何でも良いのです。建設的なことは何もできなかったと後悔する必要はありません。こうした1日の過ごし方でもうつ病は回復していきます。
5 友人に病気を言えない
うつ病のために人付き合いをしなくなると、友人から付き合いが悪くなったと誤解されることがあります。うつ病を説明しても、心配してもらうどころか、「そんなの気の持ちようだよ」と、病気であることを認めてもらえず、傷ついてしまうことも良くあることです。
病気のことを伝える場合は、分かってもらえる人にだけに伝えるようにしましょう。病気と理解しない友人は、本当の友人ではないのかも知れません。
うつ病は、無理をして頑張ってきた人ほどなりやすい病気です。しかし、病気は頑張って治すものではありません。むしろ、「病気だから仕方ない」とあきらめて、「何もできないことが当たり前」と開き直ることが大切です。薬の力を信じて、自然な回復を待ちましょう。
未来のことはできるだけ考えないことです。また、元気だった頃と今の状況を比べず、むしろ最悪だった時と比べて、「先月より良くなっている」、「去年より良くなっている」と長い間隔で症状をとらえるようにしましょう。
また、お金のこと、仕事のことなどの具体的な心配事は、自分だけで抱え込まずに病院の医師やケースワーカーなど、病気をよく知っている人に気軽に相談してみましょう。
心の不調をどこに相談しますか?
みなさんは、心の悩みがあった時にどこに相談しますか?身近な家族や友人が相談にのってくれたら一番ですが、専門家を訪ねなくてはならないケースもあります。
例えば、心配が頭から離れないという悩みではどうでしょうか?心配ということだけなら、心理カウンセラーが窓口になりますが、心配で眠れない、食事が喉を通らないとなると、心の病気の可能性があるので、精神科を訪ねた方がよいでしょう。交際相手と結婚するべきかという心配であれば、有名な占い師に相談する人もいるかもしれません。
こんな感じで、心の悩みの相談は、その内容によって相手をよく選ぶべきです。今回は、専門的な相談の場所として、占い、宗教、心理カウンセラー、精神科のそれぞれの特徴を説明しましょう。
1 占い:人生の選択の相談
現代は占いブームです。政治家、実業家などの大きな事業にたずさわる人にも、占い師にアドバイスをもらうことがあります。占いは、長い歴史の中で、経験の積み重ねながら築かれたものです。決して科学で否定できるものではありません。
占いには様々な種類がありますが、その人の生まれもった性格、運勢をみていきます。その価値は、当たる当たらないの問題でなく、人生の道しるべとなって、人を幸せに導くものです。ただし、人は自分で考えて行動し成長します。
自分で決めなくてはならないところまでカリスマ占い師に決めてもらっていたら、自分で物事を考えなくなり、心の成長もありません。運勢は100%決められているのでなく、自分で切り開く部分もあります。最後は自分で選択をしましょう。
2 宗教:生きる目的や価値の相談
見えない神仏との関係を説くものが宗教です。そこから生きる目的や価値を知ることができます。中世の時代は、悩み相談といえば教会や寺に行きました。現在では、伝統的な宗教は儀式が中心となってしまい、初詣や葬式でお世話になるくらいになりました。
歴史を見ていくと、伝統的な宗教の人気がなくなると、必ず新しい宗派が生まれてきます。現代では、伝統的な宗教に代わって、たくさんの新宗教が悩みの相談役を担うようになりました。
新宗教には、必ずカリスマ的な指導者がいます。神仏を信仰することが、いつのまにか指導者を信仰しているという危険性もあります。カリスマと言えども、神仏と私たちの橋渡し役です。相談をしたとしても、最終的には自分の良心に従い、自分で物事を決めるようにしましょう。
また、宗教には病気治しがあります。聖書には、イエス・キリストが脳卒中、ライ病などを治した記録があり、フランスのルルドの泉には、聖母マリアの力で病気が治る奇跡が起こると言われており、いまでも巡礼者が絶えません。イタリアのカソリック教会ではエクソシストが行われています。
こうした宗教による病気治しには本当に効果があるのでしょうか?歴史的にも何度も調査が行われていますが、奇跡と言えるような報告があるのも事実です。しかし、すべてのケースで確実に起きるものではありません。心の病気にはまず精神科を受診しましょう。
むしろ、統合失調症の人に除霊などの宗教的な治療を施すと、幻覚や妄想が悪くなるので注意が必要です。カソリック教会のエクソシストに関しても、精神科医で統合失調症でないことが診断されない限り受けることはできません。
3 心理カウンセリング:心の悩みの相談
カウンセリングとは、そもそも「相談」「助言」という意味でした。起源はユダヤ教やキリスト教にあります。しかし、人の心の苦しみを解くためには、助言よりも話をよく聞いてあげることが大切であると理解されるようになり、現在の心理カウンセリングのスタイルが生まれました。
意見を挟まずに聞いてもらえることから信頼が生まれ、心に寄り添ってもらうことができます。そこから自分で悩みを解決する力が育ち、心の成長にもつながります。
注意しなくてはいけないことは、健康的な範囲の心理を扱うのが心理カウンセリングで、病的な心理を扱うのは精神科です。心理カウンセリングは心の病気を治す場所でありません。
4 精神科:心の病気の相談
心の病気を治すのが精神科です。悩みや心配事でも、日常生活に支障が出るような場合ならば病気と考えるべきです。心理カウンセラーでなく精神科を受診しましょう。
ただし、保険診療で診察時間に制限があるため、精神科医は、脳の働きを調整する薬の治療が中心です。心の病気の根っ子にある悩みに関しては、共感してもらえないこともあります。そのような場合は、心理カウンセラーなどに治療を補ってもらう必要があるかも知れません。
また、悲観的になって、これまでの生き方に価値を見出せなくなり、人生の目的を深刻に求める場合、うつ病の症状である可能性もあります。こうした場合の最初の相談場所は宗教ではなく、まず精神科を受診する必要があるでしょう。
心の悩みで長年、占いや宗教、そしてカウンセリングを訪ねて解決できず、精神科でうつ病の薬を飲んだら悩みがなくなった人、それとは逆に精神科でなかなか治らなかった不安症が、信頼できる恋人に相談したら薬がいらなくなった人など、実際にいろいろなケースがあります。心の悩みに、正しい答えを導いてくれる場所や人に出会えることはとても大切なことです。そして、相手を信頼できるということが最も重要です。
心の病気と脳の関係
心の病気を治すのに、カウンセリングと聞くと納得しますが、薬というと抵抗がある人もいます。「何で見えない心の治療に物質である薬をつかうのだろう?」と疑問に感じるのです。また、心に影響を与える物質と言えば、麻薬やアルコールを連想する人も多く、「辛いことを薬で誤魔化している」と勘違いしている人もいます。
脳と心には密接な関係がありますが、まだ十分に解明されていません。脳の働きが心をつくっているという考えを唯物論と呼びます。また、脳と心は別の存在で、お互いに影響しあっているという考えを心身二元論と呼んでいます。
日本人のほとんどは唯物論を信じていて、唯物論の脳科学者もたくさんいますが、実際には証明されていません。しかし、唯物論にしても、心身二元論にしても、脳の働きと心の動きには相関関係があることは事実です。脳の働きに異常がみられると、心も不安定になります。
脳の働きで重要な役割を果たしているのが、神経伝達物質と呼ばれる物質です。およそ20種類の神経伝達物質が、脳の中でバランスよく分泌されることで脳の活動が維持され、心の安定も保たれています。
これらの分泌のバランスが悪くなると、心も不安定になり、ついには心の病気になります。ですから、薬を使って神経伝達物質のバランスを整えると、心の病気も回復に向かうのです。
それでは、どのような神経伝達物質があり、心の病気に関係しているのでしょうか?今回は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、GABA(ギャバ)という、心の病気に関係する代表的な4つの物質について説明しましょう。
1 セロトニン・心の安定
セロトニンは、他の神経伝達物質の分泌を調整することで、脳の働きのバランスを保ち、心を安定させる役割があります。そのため「幸せ物質」とも言われています。
ストレス、心配事、緊張が長く続くと、セロトニンの分泌が少なくなります。すると脳のほぼすべての機能は低下し、心の安定が崩れます。不安や焦りが出てきたり、自律神経失調になり体調も悪くなります。
うつ病、パニック症、不安症、強迫症、過食症は、セロトニン不足で起こります。それ以外のほとんどの心の病気も、このセロトニン不足が関わっています。
セロトニンを増やすためには、SSRI(エスエスアールアイ)という薬がよく効きます。SSRIには、レクサプロ、ジェイゾロフト、パキシルなどの種類があり、うつ病、パニック症、不安症、強迫症、過食症に広く使われています。
日常生活で、セロトニン不足を解消するためには、まず十分な睡眠です。それから、規則正しい生活、バランスのよい食事、運動、日光に当たることも大切です。瞑想やヨガにもセロトニンを増やす効果があります。瞑想と聞くと宗教的なものをイメージする人も多いと思いますが、最近では、宗教的な要素をはずし、リラックス健康法としてのマインドフルネスが広まっています。
脳は特殊な膜に包まれているので、セロトニンが含まれているものを食べても脳には届きません。トリプトファンというアミノ酸を原料にして、脳の中だけで作られています。ですから、トリプトファンの含まれている豆類、肉、魚などを多めに食べるのがよいでしょう。
2 ドーパミン・喜び
ドーパミンは、喜びを感じる物質です。「快楽物質」と呼ばれており、脳を興奮させる作用があります。麻薬やアルコールは、ドーパミンを増やすことで気分がよくなります。甘い物、買い物、ゲームやギャンブルなどで気分がよくなるのもドーパミンが増えるからです。ただし、増えすぎると躁状態になったり、幻覚や妄想を感じる人もいます。
統合失調症や双極性障害の躁状態は、ドーパミンの分泌が増え過ぎた病気です。治療には、ドーパミンを減らすための、リスパダール、エビリファイ、ジプレキサなどの抗精神病薬が使われます。
3 ノルアドレナリン・やる気
ドーパミンは代謝されて、ノルアドレナリンという物質に変わります。これは、集中力を高め、脳のパフォーマンスを高めますので、やる気を出す物質です。交感神経を興奮させて、闘うモードにしてくれます。ただし、ノルアドレナリンが分泌され過ぎると、怒り、恐怖、パニック発作につながることがあります。
うつ病やADHDの人に、集中力の問題が出ることがあります。これは、ノルアドレナリン不足があると考えられており、ノルアドレナリンを増やす薬が使われることがあります。
4 GABA(ギャバ)・心を落ち着かせる
GABAは、サプリやチョコレートの名前で聞いたことがあるかも知れません。脳の興奮状態を抑えてくれる神経伝達物質です。これが多く分泌されることで、不安や焦りをなくし、気分を楽にしてくれます。自律神経を整え、血圧を下げるなどの働きもしてくれるのです。抗不安薬や睡眠薬は、このGABAを増やす作用があります。
セロトニンのところでも説明しましたが、脳は特殊な膜に包まれているので、サプリのGABAを食べても直接脳には届きません。ただし、食べたGABAは、腸の神経と反応し、それが脳に伝わり、脳のGABAを増やすように働きかけてくれます。
私たちは、気持ちが辛い時、アルコールを飲んだり、甘い物を食べたり、買い物をしたり、ゲームをしたりと、生活に刺激を求めます。これは一時的にドーパミンを増やして、快楽で辛い気持ちを解消しようとしているのです。
しかし、快楽による解消法だけでは、いつの間にか脳の物質のバランスが崩れてしまい、むしろ心の安定は崩れてしまいます。それどころか心の病気になる可能性もあるのです。麻薬の例をあげると分かりやすいと思います。麻薬は、ドーパミンを大量に増やして快楽を感じられますが、何度も使っていると、脳の物質のバランスが崩れ、いつのまにか依存症になったり、人格も崩れてしまうのです。
また、精神科の薬を麻薬と同じと考える人もいますが、麻薬のように快楽物質を無理やり増やすものではありません。今回説明したように、神経伝達物質の過不足を調整するために用いられるもので、医師の指導のもとで安全に服用できます。
心を安定させるためには、何よりも、セロトニンを増やすような生活を送ることが大切です。セロトニンのところでも説明したように、具体的には、十分な睡眠、規則正しい生活、バランスの良い食事、日光に当たる、運動をすることです。瞑想やヨガもおすすめです。
親に甘えられなかった人の4つのタイプ
子供の頃の親子関係は、大人になってからの人間関係に影響を与えます。例えば、父親がお酒を飲んで母親に暴言を吐くような家庭では、毎晩の修羅場を避けるために、子供は親に甘えることをしなくなります。グレたり心の病気になる場合もありますが、心の優しい子供は親の機嫌をとるために努力をします。親の言うことには絶対に服従する、積極的に親の機嫌をとるなど、さまざまな役割を演じるようになるのです。
このようにして子供の頃に身についた処世術は、大人になっても続き、友人やパートナーにも同じようなふるまいをするようになります。
親がアルコール依存の場合だけでなく、何らかのもめ事がある家庭に育った子供は、甘えたいのを我慢しながら、家庭を壊わさないような独特な人間関係のパターンを学んでしまいます。
このような親に甘えられなかった人をアダルトチルドレンと呼びます。正確には「アダルトチルドレン・オブ・アルコホーリクス」と言い、日本語に訳すと「アルコール依存症の家庭に育った人」という意味です。
心理学者のブラックによると、大人になってからの人間関係のとり方で、アダルトチルドレンは4つのタイプに分けられると考えられています。そして、それぞれに違った生きづらさを感じています。今回は、親に甘えられなかった人が、どのような大人になるのか、4つのタイプを紹介しましょう。
1 責任を背負い込む人
親を頼ることができなかったので、何でも一人でやってきた人です。よい成績をとるなど、子供なりに結果を出して親を慰めてきました。大人になっても責任感がつよく、完全主義のため、仕事で成功して周りからは評価を受けます。
「しっかりした子供」と呼ばれていましたが、実際はかなり無理をしてきているので、情が育っていません。人を心から信用できず、気持ちを伝えるのが苦手です。相手の気持ちを理解できず、思いやりに欠けるところもあります。仕事でも家庭でも、自分のやり方を押し付けようとします。よい理解者と出会わない限り孤独な人です。
2 順応者
情緒不安定な親に合わせて生きてきた人です。親のペースに合わせることが最優先で、自分の気持ちを押し殺して子供時代を過ごしました。大人になっても、全体に合わせようとする生き方は変わらず、職場でも家庭でも、「良い人」「適応力がある」と評価されます。
実際には、自分で納得して周りに合わせている訳ではないので、自分の意見や責任感はありません。自分を主張する自信がなく、いつも孤独や寂しさを感じています。家庭をつくっても、パートナーとは心の距離を置いて、自分の主張をしません。
3 なだめ役
両親がけんかをしたり、巻き添えになって怒られないように、親の気持ちに先回りして、機嫌をとり続けてきた人です。大人になっても場の空気に敏感で、職場でも家庭でも犠牲を払って平和を保とうとします。暖かく世話好きな人で、医療・福祉・教育・心理関係の仕事を選ぶことがあります。
しかし、自分の気持ちに余裕がない時でも、相手を援助し過ぎて燃え尽きてしまうことがあります。また、援助のやり過ぎは、相手の自立を妨げてしまうこともあるでしょう。常に世話が必要な心に問題のある人に引き寄せられる傾向もあり、パートナーにもそのような人を選びやすいと言われています。
4 犠牲者
親が暴力を振るう、いつも夫婦げんかをしているなど、家庭に居場所がないために、家出や非行に走る人です。逃げ出すことができずに心の病気になってしまう人もいます。
実際の問題は親にあるのに、その身代わりになっているので、犠牲者とかスケープゴートと呼ばれています。早すぎる結婚や出産をしたり、アルコール依存、薬物依存、摂食障害などの問題が起きることがあります。
親に甘えられなかったと感じている人は、4つの中のどれかに当てはまったでしょうか?タイプは1つでなく、いくつかが重なることもあります。自分の人間関係のパターンを知ることは、生きづらさを解消するために大切なことです。最後に、それぞれのタイプごとに生きづらさを解消するヒントを紹介しましょう。
責任を背負い込む人に当てはまる場合は、責任の背負い過ぎに注意です。何かの依頼が来てもすぐに返事をせずに、何のためにやるのかを考えるようにしましょう。気持ちよくできないことは断る勇気を持つべきです。また、何でも自分一人でやろうとする傾向があるので、人を信じて任せてみることも大切です。
責任を背負い込む人は、知らないうちに自分のやり方を人に押し付けていることがあります。コミュニケーションを大切にして、相手の立場にたって物事を考えるようにしましょう。物事を効率優先、結果優先に考えがちですが、無駄と思えることに時間やお金を使うことも人生には必要なものです。
順応者に当てはまる人は、我慢のし過ぎに注意です。思っていることを言葉で出して相手に伝えるように努力してみましょう。心から楽しめるような本当にやりたいことを探すことも大切です。
なだめ役に当てはまる人は、相手に尽くし過ぎることに注意です。人を助けることはとても良い事ですが、これ以上やると自分が燃え尽きたり、相手をダメにしてしまうという境界線があります。いつもその境界線を考えるようにしましょう。そのような意味で、医療・福祉・教育・心理の仕事に就いて、正しい奉仕活動のやり方を学ぶことはよいことです。
犠牲者に当てはまる場合は、第三者の助けが必要かも知れません。今現在、何かの問題を抱えているならば、医療機関などの専門家に相談してみましょう。
心が壊れそうな時に起きること・心と体が離れてしまう病気
人は、受け止め切れないほどショッキングな出来事があると、どうなるのでしょうか?体を置いたまま、心だけがその場から逃げ出してしまうことがあります。
私たちの心は、普段は体に束縛されていますが、非常事態に勝手に体から離れてしまうことがあります。心が体や現実から離れてしまうことを心理学では解離と呼んでいます。
実は、軽い程度の解離ならば、日常ふつうに起きている現象です。例えば、スマホの動画に没頭して、周りの出来事に気づかないことがあります。体を現実世界に置いたまま、心は動画の世界にいるのです。
他にも、電車に乗って考え事をしていると、いくつかの駅を通ったことを思い出せないことはありませんか?これは物忘れでなく、駅を通り過ぎる時に心が体から離れていたために、景色やアナウンスを感じていなかったのです。解離している間、体はロボットのように自動運転モードになっていますが、何かあるとすぐに心は戻ってくることができます。
解離は、自分を守るための心の大切な働きです。子供が親から虐待を受けた時、苦しみや痛みを感じないように、心がイメージの世界に逃げ込むことがあります。そのおかげで、親からの罵声や、打たれた痛みは、実際よりも遠のいて感じられます。虐待が始まると感じたら、自分の意志で解離する子供もいます。
解離している間、心の抜けた体はボーとして反応がなくなっていることもあれば、泣きわめいていることもあります。
また、孤独な子供が、イメージの世界で友達をつくることがあります。これは、「イマジナリーコンパニオン」とか「イマジナリーフレンド」と呼ばれており、現実にはいない空想の友達と話したり、遊ぶことができるのです。
子供の頃にこのような体験を何度もしていると、大人になっても、些細なことで解離しやすくなります。否定される、気に入らないことがある、お腹がすく、体調が悪い、こうしたことがスイッチとなって、解離してしまうことがあります。中には、自分でスイッチを入れて、解離できるようになる人もいます。霊能者とかスピリテュアルと呼ばれる人たちです。
ただし、解離が予期しない時に起きたり、いつまでも心が戻って来ないこともあります。こうなると日常生活に大きな支障が出るでしょう。これは解離症という病気です。
解離症は珍しい病気ではありませんが、どこに相談したら良いかを悩んでいる人もたくさんいます。解離症にはいくつかの種類がありますので、それぞれについて説明しましょう。
1 離人症、現実感消失症
心が体や現実から離れてしまうと、具体的には次のように感じます。「自分の体が自分でない」「外から自分を眺めている」「ずっと霧がかかっている感じ」、「まわりの人がロボットのように無機質に見える」「時間が過ぎる感覚がおかしい」。このような状態で生活に支障が出ることを、離人症または現実感消失症と呼んでいます。
これは、短時間のものを含めれば、20パーセントの人が経験したことがあるというデータもあるくらい、心の病気の中では多いものです。また、うつ病や不安症などの精神疾患の症状として見られることもあります。
残念ながら専門的な治療方法はありませんが、心配事がなくなり、生活が安定すると自然に良くなります。他の精神疾患の症状である場合は、元の病気が良くなることで同時に改善されます。
2 解離性憤怒
普段は優しくて大人しいのに、些細なことでキレて別人のようになる人は、解離の可能性があります。暴言を吐いて怒っている間、本当の自分は背後からボーとその姿を眺めているだけです。
解離がおさまっても、とんでもないことを言って騒いでいたことをよく憶えていません。これを解離性憤怒と呼んでいます。抑え込まれていた怒りの感情に体を乗っ取られてしまうのです。
怒って相手を傷つけているのに、自分自身はそれを憶えていないのですから、人間関係のトラブルになります。あんなに怒っていたのに、いつも通りに付き合おうとしたり、自分は怒っていないと主張するので、信用できない人とレッテルを貼られてしまいます。
これは、境界型パーソナリティ症の人にもよく見られる症状で、人から拒絶されたり、見捨てられるような状況が解離のスイッチになります。
解離性憤怒は、怒りをコントロールするというよりも、解離しないようになることが大切です。治療としては、情緒が不安定だとスイッチが入りやすいので、普段の気分を安定させることが目標になります。
また、何が解離のスイッチとなりやすいのか、自分も周りの人もよく理解することが必要です。そのような状況を避けるようにしましょう。
3 解離性健忘
解離により、その間の出来事を記憶していないことを解離性健忘と呼びます。例えば、何かショッキングな出来事から解離してしまい、東京で行方不明になった人が、1週間後に九州で発見された、といった感じです。どうやって九州まで行ったのか、その間どのように過ごしたのかを憶えていません。中には、数年間の自分の記憶を思い出せない人もいます。
4 解離性同一症
心が留守になっている間、体が別の人格に乗っ取られてしまうことを解離性同一症と呼びます。いわゆる多重人格です。映画やアニメにあるように、乗っ取る人格は「私は別人格の○○である!」と名乗るようなことはしません。
傍から見ていると、いつもの雰囲気と違う印象を受ける程度です。後から本人に聞いてみると、自分は後ろにいて、ボーと眺めていたとか、憶えていないと主張します。解離性同一症は、極めて稀な病気です。
精神医学や心理学では、子供の頃に虐待を受けると、苦痛を引き受ける新しい人格が生まれると考えています。そして、体の中に何人かの人格がいっしょにいて、出たり入ったり交代をすると言うのです。この考え方の根拠になっているのは、1970年代に発表された、アメリカのシビルという女性の証言です。
シビルは親から虐待を受け、その度に新しい人格が生まれ、最終的に16人の人格を持つようになりました。この自伝的な内容は本や映画になり、社会に大きな影響を与えました。しかし、2011年にシビルの証言は嘘であったことが暴露されています。精神分析家とジャーナリストもグルになり、話題性を狙って話を捏造していたのです。
このように、体を乗っ取る人格がなぜ存在するのかは未だに解明されていません。東洋には、昔から憑依という考え方があります。死者の霊が、解離で心の抜けた体に取り憑くというものです。現在でも、霊を取り除くための除霊の儀式は世界中で行われています。
例えば、イタリアでは、精神科医が精神病でないと診断された場合、カソリック教会でエクソシストにより除霊を受けることができます。エクソシストは映画やアニメだけのことではないのです。
解離症について説明しました。解離症は、心と体のつながり、もしくは心と現実のつながりが悪いことで起こりやすくなります。ですから、それぞれのつながりを深めることが治療になります。
心と体のつながりを良くするためには、まずは体を健康に保つことをしましょう。健康な体を通して、心に良い感覚を感じてもらえるようになれば、心と体はつよくつながるようになります。
また、現実が辛く、生活に安心感がないから、心はどこかへ逃げ出したくなります。心と現実のつながりを良くするためには、辛いことを減らして、楽しいことを増やして行くことが必要です。安心感のある生活が、心と現実のつながりを安定させてくれるのです。
ひきこもりの3つの原因
コロナ禍が明けた2023年、内閣府の発表によると、日本には146万人の引きこもりの人がいます。これは日本の人口のおよそ1%に当たり、男性が女性の4倍です。ひきこもりは、不登校や退職から始まることが多いのですが、特にコロナ禍での失業をきっかけにひきこもりになった人は、全体の20%もいます。
ひきこもりとは、半年以上毎日を家で過ごし、社会との接点がなく家族とだけ交流があることを言います。1日中部屋から出ない人もいれば、コンビニやスーパーへの買い物などをしている人もいます。ただし、病気のために自宅療養している人は、ひきこもりとは言いません。
ひきこもりは、40才以上の中高年の人が半数以上を占めており、80代の年老いた親が、50代の子供の面倒をみているという家庭もあります。これを8050問題と呼んでおり、社会問題として取り上げられています。このように年齢を問わず、たくさんの人がひきこもるのには何か理由があるのでしょうか?
今回は、ひきこもりの3つの原因について説明しましょう。
1 心が傷ついたまま戻らない
ひきこもりは、ある日突然起こるものではありません。否定されてばかり、苦労ばかりで実りがない、馬鹿にされる、仲間外れ、いじめ、こうした辛い仕事や学校生活を無理して続けているうちに、生きるエネルギーが徐々に枯れていきます。
ついに心が燃え尽きて、長い休みをとったことが引き金になり社会に戻れなくなるのです。そして、回復できないまま、半年、1年と時間だけが過ぎて行きます。ひきこもりの半数くらいが、このような燃え尽きによるものと考えられています。
限界まで我慢している状況で、一旦休みをもらうと緊張の糸が切れて、立ち上がれなくなるのです。コロナ禍でひきこもりの人が増えたのも、ずっと我慢して働いていた人が退職や在宅となり、そこから次へ進む気力を失ったのが原因と考えられます。こうした背景に、長年続いた不況により、日本には職場環境の悪い会社がたいへん多いことがあるでしょう。いわゆるブラック企業です。
それでは、しばらく休んだら、ひきこもりをやめて次へ進めばよいかと思えるのですが、そう簡単に行きません。傷ついた心を回復させ、失った自己肯定感を取り戻さなくては社会に戻ることはできません。
ところが、癒されなくてはならない心をもっているのに、社会からは「負け組」「逃げている」と呼ばれ、家族からは「いつまで休んでいるの?」「他の人たちは頑張っているよ」「恥ずかしいから近所の人に見られないようにして」と大切にされず、癒されることはありません。
せめて、家族から、「頑張ったのだから、しばらくゆっくりしていたらいいよ」と労いの言葉があれば違うのでしょうが、そうでないことの方が多いのです。ひきこもりを好きでやっている人はいません。このままではいけないと一番焦っているのは本人です。しかし、ひきこもっている家庭の中に、傷ついた心を回復させられる力がないため、心は枯れたままで先へ進む力が湧いてこないのです。
このように、ひきこもりの大きな原因として、ブラック企業が多いこと、そして、家庭や社会に傷ついた人を癒す力がないことがあります。例えば、マラソン選手がすべての力を出し切って、ゴールをすると倒れこんでしまいます。
そこで、コーチから水分や労いももらえず、「すぐにまた同じコースを走ってこい!」と言われても、心も体も動きません。ゴールに倒れてジッとしているしか手がないのです。
2 大人の発達障害やパーソナリティ症がある
発達障害とパーソナリティ症は生まれつきの要素がつよい障害で、症状が軽い場合は、自分でも周りも気づくことなく過ごします。発達障害とは、脳の発達の偏りのために、相手の気持ちや場の空気を読み取る力に劣っていたり、物事へのこだわりがあります。
パーソナリティ症は、社会と関りをもとうとしない、極端に依存的などといった性格の偏りがあるものです。どちらも、人付き合いやグループの活動がうまくできません。生まれつきのものなので、自分の努力では改善できず、我慢しながら学校や職場の生活を送るしかありません。
我慢の限界のタイミングで長い休みがあったり、仕事を辞めたりといったきっかけがあると、そのままひきこもりになることがあります。「自分はダメな人間だ」「社会に必要ない人間だ」と自信を失っており、努力しても同じ苦しみを味わうことが分かっているので、再び社会に出ていく力は湧いて来ません。
このように、発達障害やパーソナリティ症があることに気づかないまま、社会に適応できずに挫折してひきこもりになるケースは、全体の40%以上と考えられています。
3 未治療の心の病気がある
心の病気は、自分も周りも気づかないうちに発症することがあります。病気の症状でひきこもっているのに、それに気づかずにいるケースは全体の20%と言われています。
ひきこもりを起こす心の病気には次のようなものがあります。
・心身症:子供のひきこもりの原因になる代表的なものです。頭が痛い、腹が痛い、朝が起きられない、と訴え、小児科や内科で検査をしても異常がみつかりません。原因不明の痛みや自律神経失調などがみられる病気です。
・社交不安症:周りから変な目で見られているという不安や緊張から、人前に出られなくなる病気です。以前は対人恐怖症と呼ばれていました。
・強迫症:強迫症の中でも、口臭、便臭、腋臭(わきが)など、自分の臭いが人に迷惑をかけると思い込んでしまうことを自己臭症(じこしゅうしょう)と呼んでいます。自己臭症はひきこもりの原因になりやすい病気です。
・醜形恐怖症(しゅうけいきょうふしょう):自分の姿が醜いと思い込み、人に見られたくないために外に出なくなる病気です。何度も美容整形を受ける人もいます。
・統合失調症:人に監視されている、悪口を言われている、というような被害妄想により
外へ出ることが不安になる病気です。
これらの病気は、薬の治療で回復することができます。病気がよくなると、ひきこもりも改善されて行きます。ところが、長い間病気があることに気づかなかったり、本人もこれ以上傷つくのが嫌で治療を希望しないこともあり、ひきこもりが長く続いてしまうことがあります。
人がひきこもるのには必ず理由があります。決して怠けているわけではなく、好きでひきこもっている訳ではありません。どうして良いか分からずに一番苦しんでいるのは本人です。力ずくで家から連れ出そうとしてもよい結果はえられません。
保健所や病院に相談窓口があります。ひきこもりの背後に、発達障害、パーソナリティ症、心の病気が隠れていることも大変多いので、早めに専門機関に相談しましょう。
子供を愛せない母親の5つのタイプ
犬や猫のような動物でも、自分のことよりも子供の食べ物を優先します。誰に習ったわけでもないのに、母性を持っているのです。母性とは、生まれつき遺伝子に組み込まれている子供を守り育てようとする本能です。代々子孫に伝えられ、自然に子供を愛おしく感じるようになっているのです。人も同じはずです。
ところが、いつになっても虐待やネグレクトの事件のニュースが絶えません。世の中には、自分の子供を愛せない人がたくさんいるのです。本来、生まれながらに母性が備わっているはずなのに、なぜ子供を愛せない人がいるのでしょうか?
今回は、母親が子供を愛せない5つの理由を紹介しましょう。
1 自分も愛されてこなかった
本来、親の愛とは無条件の愛です。「容姿が可愛いから愛する」「障害があるから愛せない」でなく、子供の存在は無条件に受け止められるものです。子供がそこにいるから愛するのであって、理由はありません。
このような愛があるから、親は子供のために犠牲になることができます。自分は満足に食べられなくても、子供が満腹ならば幸せな気持ちになれます。自分は辛くても、子供が幸せならば心が満たされるのです。
親子の情関係を愛着関係と呼びます。愛着関係の根っ子に、無条件の親の愛があることで子供の心は育まれます。もちろん、完璧な親はいないし、親の愛も完璧なものではありません。しかし、その片鱗でもあれば、子供が成長する力となります。
親から愛されず、十分な愛着関係を経験していないと、母性も育ちません。母性が未熟なまま母親になると、子供が子供を育てるような状態になります。姿は親子ですが、心は兄弟のような関係になるのです。お互いで利害が生じると、子供に譲ることをせずにライバルになったり、邪魔になったりして、争いに発展することがあります。
また、愛着の問題がある人は、完全主義の傾向があります。そのために、子供をありのままに愛することができず、自分の理想や夢を押し付けようとします。塾、スポーツ、芸術と習い事をさせて、それができることで子供を愛そうとするのです。「習い事は、子供の将来のためにやらせている」と言いますが、実は自分のためにやっています。
何かができて、自分が気に入ったら愛するという条件付きの愛情です。万が一、子供に才能がなく、習い事が身につかない場合は愛せません。例えば、「良い学校に入らないからダメな奴だ」と見捨ててしまうこともあります。兄弟で、できる子とできない子の差がでた場合は、できる子は大切にして、できない子は相手にしません。兄弟を差別してしまうのです。
誤解があってはいけないのですが、親に愛されなかった人は、子供を育ててはいけないという意味ではありません。愛を注いでくれて、よい愛着関係を築けるのは親に限りません。パートナーや友人、ペットからも愛を受け取ることができます。また、子育てを通して、子供から癒されて、愛着が育まれる人もいます。親に愛されなくても、自分の子供とはよい愛着関係を築ける人はたくさんいるのです。
2 夫婦の関係が悪い
夫婦関係が悪くなると、子供を愛せなくなることがあります。子供の姿や言動が、嫌いな夫に似ていることから、子供に夫を感じてしまいます。夫への憎しみが、子供へ移ってしまうのです。特に、夫の裏切りや浮気が原因の場合によく見られます。
また、再婚して新しい夫ができると、前の夫との子供を愛せなくなることもあります。やはり、子供の背後に前の夫を感じてしまうためです。
3 産後うつ病で子供を愛せない
女性は、妊娠出産で情緒が不安定になることがありますが、出産後3週間以上もうつ状態が続く場合を産後うつ病と呼びます。気持ちの落ち込み、気力が出ない、体調の悪さといったうつ病の症状と共に、子供を可愛いと思えないのが特徴です。周りの人は出産を喜んでいるのに、自分だけは「何で産んでしまったのだろう」と後悔し、子供を愛せない自分を母親失格と感じます。
抗うつ薬の治療で良くなっていきますが、子育てをしながらの治療でもあり、回復までに時間はかかります。子供の存在を邪魔に感じたり、思い通りにならないと感情的に怒ってしまい、そういう自分が情けなく、自己嫌悪に陥る場合があります。
「子供の頃、母親は何もしないでずっと寝ていた。」という記憶のある人は、母親が産後うつ病であった可能性が考えられるでしょう。
4 精神病で子供を愛せない
出産に伴う心の病気は産後うつ病だけではありません。双極性障害や統合失調症といった精神病になるケースもあります。また、精神病をもっていた女性が、出産を通じて病気が再発することもあります。
精神病の母親は、自分のことで精一杯になり、子供を愛する余裕がありません。また、症状から子供に無関心になるケースもあれば、愛情にムラがあり、可愛がっていたかと思うと突然怒り出すこともあります。周りの家族がサポートできれば良いのですが、そうでない場合は虐待やネグレクトに発展することもあります。
5 発達障害で子供を愛せない
病気ではありませんが、生まれつきの脳の発達の偏りにより、対人関係をうまく築けない人がいます。人の気持ちを読み取れない、場の空気を読み取れない、感情をコントロールできないといった問題が起きるためです。これを発達障害と呼びます。普通は子供の頃に気づかれるものですが、軽い場合は、自分も周りも障害に気づけません。
発達障害の母親は、子供が嫌いなわけではありませんが、子供の気持ちに共感するのが苦手です。自分の考えを押しつけたり、嫌がることを無理にやらせたり、それでいて自分の楽しみを優先して、子供の心を傷つけます。
また、気分にムラがあり、些細なことで子供に激怒することもあります。子供は傷ついているのに、本人は悪いことしていると感じません。いわゆる毒親と呼ばれる人には、このような発達障害がみられることが多いのです。
本来、母親は子供を愛せるようにできているのですから、子供を愛せないことには必ず理由があります。今回紹介したような内容がいくつか重なっている場合もあるでしょう。
もし、あなたが子供を愛せない母親である場合は、一人で抱え込まないで、早めに心理相談や医療機関に助けを求めましょう。完全に良くすることは難しいのですが、相談することや、薬を飲むことで少しずつ改善されることがあります。
すでに子供の心を傷つけてしまった場合は、子供に謝りましょう。親にも事情があったからと開き直るのでなく、自分が傷つけてしまった事実を素直に認め、心から謝るべきです。「黙っていても、いつか子供は分かってくれる」と期待するべきではありません。自分の言葉で、謝罪の気持ちを直接伝えましょう。
また、あなたが母親から愛された経験がなく、それが苦しみや恨みになっているならば、その理由を知ることは大切なことと思います。それを知ったからと言って、恨みを解くことはできないかも知れません。しかし、母親の冷たい仕打ちに事情があったことが分かれば、自分を責める気持ちに関しては少し楽になるかも知れません。
親に愛されなかった人の7つの生きづらさ
子供の頃に親から愛されることは、その後の人生を左右するとても大切なことです。子供と母親は、生まれるまでへその緒でつながれていますが、産まれた後も、愛情という絆でつながれています。
親子の絆を心理学では愛着と呼び、見えないへその緒のようなものです。へその緒は子供に栄養を与えてくれて、愛着は安心感を与えてくれます。これは心の成長のためにとても大切なことです。
愛着の大切さは、1990年代のルーマニア孤児たちの調査で証明されています。1960年から80年代にかけてのルーマニアは、共産主義のチャウシェスクという独裁者に支配されていました。チャウシェスクは、国を繁栄させるために、子供をたくさん産むことを国民に義務づけました。
ところが、貧困のために、親たちは子供を産んでも育てることができず、たくさんの子供たちが孤児院に送られることになったのです。孤児たちは、物のように扱われ、虐待やネグレクトが当たり前のように行われました。
1989年に共産党政権が崩壊して、ルーマニア孤児たちの悲惨な状況が世界に知られるようになります。世界中から支援の手が届き、たくさんの孤児たちが海外の里親に引き取られました。
しかし、孤児たちは愛着の問題を抱えていたため、里親のもとでの新しい生活に馴染むことができませんでした。大人になった現在でも心の問題を抱えている人もいます。子供の頃に親から愛されなかったことが、どれだけ悲しい結果を生んでしまうかが証明されたのです。
それでは、子供の頃に愛着をもてなかった人は、どのような心の問題を抱えてしまうのでしょうか?今回は、親に愛されなかった人の7つの生きづらさについて説明しましょう。
1 生きることに不安
愛着は、親とつながっている安心感とも言えます。何か辛いことがあっても、親とのつながりがあるので、そこに逃げ帰ることができます。知らない町に行っても、スマホを持っていれば、誰かにつながっているので安心です。これと同じで、子供は愛着という見えないつながりがあれば、新しいことに安心してチャレンジすることができます。
ところが愛着がなければ、いつも不安です。スマホをもたずに、外国をさまよっているような感じです。何をするにも手探りで怯えています。このような子供時代を送れば、大人になっても、いつも不安がついて回る人生になります。
2 自己肯定感が低い
何事も不安ですから、「生きる価値がある」「生きていていいんだ」という実感が育ちません。大人になっても自己肯定感が低く、何をするにも自信をもてません。「どうせダメになる」「どうせ嫌われる」という思いが心に染みついています。大人になってから何か成功する体験をしたり、高いスキルを身に着けても、本当の自信につながりません。
例えば、世界的に有名なアーチストが、酒や麻薬に溺れたり、事件を起こしたりと破壊的な人生を送ることがあります。世界中を驚かせるようなパフォーマンスをしても、自己肯定感が低いのです。子供の頃に愛着を経験できなかったためにそうなってしまうのです。
3 人を信じられない
愛着とは、信頼関係と言いかえることができます。親子の信頼関係を経験していなければ、他人を信じることができません。「いつかこの人は裏切るに違いない」という考えがついて回ります。付き合いの基本は、相手を信じるところから始まりますから、それができないために人間関係で悩むことになります。
4 人を敵か味方かに分ける
心にゆとりをもてなかったために、物事の考え方も柔軟性がありません。何事も白黒つけようとして、「適当に」ができません。心の健康な人は、嫌いな人が相手でもうまく距離をとりながら、適当に付き合うことができますが、それができません。
人を敵味方で分けようとして、少しでも否定されると敵と判断します。敵と感じたら心を閉ざしてしまい、適当に付き合うことができません。
5 人間関係の距離感が分からない
見捨てられるのが不安で、ずっと相手の世話をやいて離れようとしない人、人と関わることが恐怖なために、常に一人でいる人など、極端な人間関係をとります。
また、見捨てられないように相手にしがみつき、ちょっとした相手の言動で恐怖を感じて心を閉ざしてしまう、というような両極端の行動を繰り返す人もいます。
6 体が弱い
愛着をもてなかった人は、自律神経系や免疫系などの発達に問題が起きることがあります。大人になっても、環境の変化ですぐに体調を崩したり、ストレスや病気などへの抵抗力が弱いことがあります。いわゆる、体が弱いと言われる人です。
7 心の病気になりやすい
生きていく自信をもてず、人間関係でいつも心をすり減らしているため、うつ病などの心の病気になりやすい傾向があります。うつ病の治療を始めても、薬が効きにくかったり、回復が遅かったりします。根っ子に愛着の問題による生きづらさが横たわっているため、治療がこじれてしまうことがあるのです。
へその緒は、産まれるとなくなってしまいます。体の成長が足りないからと言っても、もう一度へその緒から栄養をもらうことはできません。しかし、心のへその緒である愛着は、いくつになってもつくり直すことが可能です。なぜなら、愛着をつくる相手は産みの親とは限らないからです。
パートナー、親戚、友人、子供、ペットと、つながりをもてる相手がいれば、いくつになっても愛着ができます。宗教における神仏とのつながりや、瞑想で感じるような自然のパワーとのつながりも愛着の1つです。そこに絆ができて、安心を感じることができれば、心は癒されて育まれます。安心できる場所には見えない愛情が注がれているのです。このような体験が深まれば、親に愛されなかった生きづらさは少しずつ解消できるようになるでしょう。
また、うつ病などの心の病気になった時、回復が遅くなると説明しましたが、療養生活でゆっくり安心できる時間を過ごしたり、医療スタッフとよい関係が築けると、長年抱えていた愛着の問題が解決するケースもあります。