苦労が心の豊かさとして実るために必要なこと

世の中には、何をやってもうまく行く人と、それとは逆に、何をやってもうまく行かない人がいます。誰だって、何でもうまく行くようになりたいですが、残念ながら、人は生まれた時から平等ではありません。

才能を持って生まれる人、美人に生まれる人、お金持ちの家に生まれる人など、生まれた時から出発するところが違います。徒競走で例えると、ゴールの近くからスタートできる人から、遠いところからスタートしなくてはならない人がいるようなものです。スタート時点が違うので、同じ幸せを手に入れるためにも、楽できる人もいれば、苦労する人もでてくるでしょう。


苦労が多すぎれば、「なんでこんな酷い目に会うのだろう」、「こんな人生に価値はない」と、恨みになることもあります。しかし、人より苦労することは決してマイナスではありません。苦労は心の豊かさにつながります。苦労が、心の成長を促(うなが)して、その人の魅力として実ることがあるのです。


今回は、オーストリアの精神科医・フランクルの言葉を通して、苦労が心の豊かさとして実るために必要なことを紹介しましょう。


フランクルは、アウシュビッツ強制収容所に収監されながらも生還した人です。ガス室で処刑される不安、過酷な労働、兵士からの暴力、栄養失調、チフスの流行、寒さという、あらゆる地獄を経験しました。そうした極限の状況で、自分や収容所の人の心の動きを客観的に観察し、1946年に、「夜と霧」という本を発表しました。

そこには、絶望が人を滅ぼすこと、生きる目的をもつ人は、過酷な環境でも耐えられることが描かれています。現在、生きる意味に注目するフランクルの心理療法は、ロゴセラピーと呼ばれています。





1 希望がない苦労は、心に悪い影響がある

すべてを失い、抵抗もできない強制収容所の人の多くは、感情を失い、無反応、無気力になりました。辛いことでも、いつまでに終わると分かっていれば、我慢することができます。

収容所の人たちは、「クリスマスには解放されるだろう」と楽観的な希望を持ち、耐えていました。しかし、苦労がいつまで続くか分からなくなった時に、すべての希望を失います。実際には、クリスマスを過ぎても収容所の様子は変わりませんでした。

すると、それから数日の間に、処刑されたわけでもないのに大量の死者が出ました。直接の原因は、チフスであったり、栄養失調であったかも知れませんが、絶望によってたくさんの命が尽きてしまったのです。


人は、絶望によって滅びてしまいます。心が動かなくなるだけでなく、内臓の動きや免疫力も低下することによって、生命を維持することもできなくなります。希望がない苦労は、心に悪い影響しかありません。



2 苦労の意味を見つける

フランクルは、生き残って、収容所の体験を発表することを夢にもちました。極限の状況の人々の心理を研究し、それを将来に残すことを使命に感じたのです。このことを希望として、過酷な生活を耐え抜きました。


収容所の中には、自分のことよりも、他人を優先する人もたくさんいました。極限の状況でも、弱っている人を励ましたり、食べ物を分けて与える人もいて、フランクルも生きる力をもらったそうです。こうした人たちは、収容所生活に何か自分なりの意味を見出していたと言います。


苦労の中でも、何か自分なりの意味を見つけようとする人は、苦労が無駄になりません。苦労の意味は、その時は分からなくても、後から理解できることもあります。また、自分のためにというより、身近な人や世の中に役に立つことを使命として考える人は、苦労が心の成長につながると言うのが、フランクルの考えです。





3 名もなき人の生き方が偉大

ここで、うつ病で長年闘病中のAさんの話を紹介しましょう。

Aさんのお父さんは早くに亡くなり、年老いたお母さんと2人で生活しています。兄弟たちはそれぞれに家庭を持ち、今は遠いところに住んでいて、ほとんど会う機会もありません。Aさんは、何で自分だけ貧乏くじを引いてしまい、こんな苦労をしなくてはならないのか不満です。「若い頃から病気で何もできず、いまでも家族に迷惑ばかりかけている。そんな人生に意味などない。」と、いつも考えています。


先日、お母さんがケガで入院することになりました。Aさんの体調も良くなかったのですが、遠方の兄弟を頼ることもできず、入院の付き添いをしました。その時、お母さんの口から、「いつも近くにいてくれて、1番親孝行な子供だと思う。」と、感謝の言葉をもらいました。早くに夫をなくして、心細かったお母さんにとって、Aさんはいつも大きな存在だったと言うのです。


1番お母さんの役に立っていたのは、成功して立派に働いている兄弟たちでなく、病気で何もできない自分だったことを知って、Aさんは嬉しく思いました。自分の人生にも意味があったのだと感じ、気持ちが楽になったそうです。


良心的に生きている人は、気付かないうちに、必ず誰かの役に立っています。フランクルは、「名もなき人の生き方が偉大」と呼びました。何か大きなことを成功させて世の中に貢献する人たちは立派ですが、ささやかに暮らしている名もなき人たちの生き方にも、必ず意味があると言うのです。むしろ、良心を持っているひとりひとりが、世の中を良い方向に進ませているのであり、大きなことを成し遂げる人は、それを代表しているだけのことであるというのが、フランクルの考えです。


最後に、フランクルが残した名言を紹介しましょう。

どんな時も、人生には意味がある。
あなたを待っている「誰か」がいて、あなたを待っている「何か」がある。
そして、その「何か」や「誰か」のために、あなたにもできることがある。


辛い別れを経験したときに知っておきたい事

大切な人が亡くなった時は、さみしさや悲しみに襲われ、大変辛いものです。また、人だけでなく、犬や猫などの大切なペットとの別れも、同じくらいに辛いことです。最近では、災害や事故で、予期しない突然の別れを経験する人もいます。

しかし、亡くなった人やペットは戻ってきてくれません。長い間、気持ちのやり場もなく、さみしさや苦しみが続くことがあります。残された人は、辛い思いをどのように乗り越えたら良いのでしょうか?


今回は、辛い別れを経験した時に知っておきたいことを、5つにまとめてみました。





1 通常は2カ月くらいで自然に乗り越えられる

仲が良ければ良かっただけ、別れは辛くなります。辛いのは、お互いが深く結ばれていた証拠です。これは人としての自然な心の反応で、「死別反応」とか、「悲嘆反応」と呼ばれています。苦しい感情は、孤独感と喪失感が中心で、波がありますが、日を追うごとに徐々に弱くなって行きます。だいたい2カ月くらいで落ち着いてくるのが普通です。

大切な人が亡くなった直後は、理性で分かろうとしても、気持ちでは受け止められません。葬儀などを通して、少しずつ亡くなった現実を受け止めるようになります。最初は絶望から始まりますが、良い思い出をくれたことなど、肯定的な思いも入り混じるようになり、少しずつ心が整理されて行きます。

最終的に、亡くなった人を思い出す時には、さみしさよりも、懐かしさや感謝を感じるようになります。これは、亡くなった人との間に新しい関係が築き上げられたことであり、思い出の中で永遠の絆ができたのです。このような一連の気持ちの流れを、「喪の作業」と呼びます。



2 悲しみを1人で抱え込まない

葬儀などの儀式の場があると、親交のあった人たちが集まります。そこでは、亡くなった人を悼み、みんなで悲しみを共有します。このような習慣は、どこの民族にも宗教にも、古くからあります。単なる儀式として考えている人が多いのですが、悲しみをみんなで共有することは、実は、喪の作業のためにとても大切なことなのです。

悲しみを1人でため込むと、喪の作業が進まず、逃げ場を失った負の感情は、怒りや罪悪感となって、心や体を蝕むことがあります。これを「遅延性悲嘆」と呼んでいます。症状によっては、専門家による治療が必要になる場合もありますので、後で詳しく説明しましょう。

別れの悲しみは、1人でため込んではいけません。周りの人と死別の苦痛を共有することを通して、苦痛は軽くなっていきます。ですから、葬儀や法要は、単なる儀式ではなく、私たちの心のために、とても大切なイベントでもあるのです。



3 自分を責めるのは良くない

「酷いことを言ってしまった」、「もっと大切にしてあげていたら」など、後悔の気持ちが出てくるのも、自然な死別反応の一つです。ただし、遅延性悲嘆で説明したように、悲しみをため込み過ぎることで、自分を責める気持ちがつよくなることがあります。これは、喪の作業が進んでいないのかも知れません。

自分を責める気持ちには、自分でブレーキをかけた方が良いのです。悲しむことは大切ですが、自分を責めることは、亡くなった人も喜ばないでしょう。





4 死別反応とうつ病は違うもの

死別で悲しみがつよい場合、うつ病になったのかと感じる場合があります。死別は、うつ病と大変似ている状態ですが、あくまでも正常な心の反応であり、症状は波のように上がり下がりしながら、最終的に2カ月くらいで自然におさまります。また、仕事が手につかなくなるなど、日常生活に大きな支障を起こすことはありません。

ただし、人によっては、悲しみが大きく長く続いてしまい、仕事ができなくなったり、ひきこもりになったりと、生活に支障が出るような場合があります。これを「複雑死別」と呼びます。症状だけを見る限り、うつ病と区別がつきません。自然に良くならずに、カウンセリングや精神科での治療が必要になるケースもあるので、注意が必要です。



5 治療が必要な複雑死別

複雑死別には次の4つのタイプがあります。

1つめは、「慢性悲嘆(まんせいひたん)」と呼ばれるもので、悲しみがいつまでも続いてしまうことです。生きていた時よりも慕う気持ちがつよくなったり、「何で先に死んでしまったんだ」という怒りの思いが湧いてくることもあります。
亡くなった人と親密であったり、依存的な関係であった場合に起こりやすく、孤独なために、喪の作業が進まないことも原因になります。特に1年以上続く場合は、専門家のもとで治療する必要があるでしょう。


2つめは、「肥大化悲嘆(ひだいかひたん)」と呼ばれるもので、激しい悲しみ・不安・孤独感などに襲われることです。この場合は、日常生活に大きな支障が出るので、専門家の治療が必要でしょう。突然の予期しない別れによって起きることが多く、ひきこもりになることがあります。


3つめは、最初に紹介しましたが、「遅延性悲嘆(ちえんせいひたん)」と呼ばれるもので、悲しみを心の底に押し込めることで、喪の作業が進んでいない状態です。「辛いはずなのに、悲しみが湧いて来ない」と感じ、心の中で怒りや罪悪感が渦巻いてイライラしたり、倦怠感、頭痛、胃痛、下痢、腰痛などの体の症状が現れることもあります。


4つめは、「外傷性死別(がいしょうせいしべつ)」と呼ばれるもので、災害・事故・犯罪により、突然の別れを経験することです。激しい悲しみや不安が長く続き、慢性悲嘆と肥大化悲嘆が合わさった症状を持ちます。
さらに、亡くなった状況がトラウマとなるため、不安と恐怖に繰り返し襲われ、亡くなった人との良い思い出は遮断されてしまいます。喪の作業が進まないため、自然に良くなっていく道が開きません。これも、専門家による治療が必要な状態です。


大切な人やペットとの別れがあった時は、人それぞれの感じ方、乗り越え方があり、死別反応という一言では片づけられない世界があります。ただし、悲しむことは悪いことではないこと、むしろ、一人で抱え込まずに、辛い気持ちはできるだけ表に出して、それを人と共有することが大切であることを知っていただきたいと思います。

もし、永遠の魂があるのでしたら、亡くなった人に感謝の思いを送ってあげることが、最も良い供養です。別れの気持ちが整理できたら、祈りを通して、感謝の気持ちを送るようにしたら良いと思います。亡くなった人は、心の中で永遠に生き続けることができるでしょう。もしかすると、あなたが亡くなった時、大切な人やペットと、天国で再会できるかも知れません。


いつも両親が喧嘩をする環境に育った人に現れる影響

人気韓流ドラマの「夫婦の世界」は、夫婦間の激しいバトルが描かれた作品でした。争ってばかりいる夫婦の間に挟まれた子供が、徐々に心を病んでいく姿も描かれています。

親のけんかばかりを見て育てば、子供の心が病むのは当然です。成績は下がり、情緒も不安定になり、不登校や非行などの問題が起こりやすくなるでしょう。大人になっても尾を引いてしまい、社会に出てから生きづらさを感じている人もいます。


しかし、世の中にけんかをしたことのない夫婦はいません。どんなに仲の良い夫婦であっても、意見の違いが出るのは当然です。ですから、すべての夫婦げんかが、子供の心に悪い影響を与えるわけではありません。アンケート調査によると、頻繁に夫婦げんかを目撃した子供の80%は、自分が大人になったら子供の前では夫婦げんかはしないと言っています。親が反面教師になってくれるのです。


それでは、子供の心に悪い影響を与える夫婦げんかとは、どのようなものでしょうか?それは、殴るけるの暴力、大声で相手を罵倒する、無視する、家出をする、奴隷のように服従させる、といった内容が含まれるものです。親の暴力や罵声が、自分に向けられたように感じてしまうことが原因です。また、けんかをしていた期間や、けんかの後に子供の心をフォローできたかどうかも影響があります。


親のけんかを目撃してきたことが、心のトラウマとなり、大人になっても残るケースもあります。これを複雑性PTSDと呼んでいます。子供の頃の辛かった経験が、大人になってからの自分の評価や人間関係に悪い影響を与えてしまうのです。今回は、親のけんかがトラウマとなっている人が、大人になってからどのような生きづらさを経験するのかを5つ紹介しましょう。





1 人生に悲観的

家庭の一番大切な役割は団らんです。ところが、夫婦がいつも怒鳴りあっている、無視しあっている家庭には、安らぎはありません。いつも緊張感があり、居心地の悪い家庭です。そこでは、良い親子関係も築けませんから、子供の心も育まれません。

また、子供には、親がなぜけんかをするかが理解できないので、原因が自分にあると感じる場合があります。自分がいるから争いごとが絶えないと勘違いして、自分を責めてしまうのです。

このような家庭状況で育つと、子供の心の中に、「自分は生きる価値がある」、「生きていて良い存在である」という自己肯定感が育ちません。大人になっても、「生きている意味が分からない」、「自分は必要のない人間である」といった思いに苦しむようになります。自分の人生に希望を見出すことができないのです。



2 感情のコントロールが苦手

長い期間にわたり、親の暴力や罵声を目撃した子供は、実際に虐待を受けた子供と同じようなダメージがあると言われています。調査によると、脳の発達にも影響を与え、認知機能全般が低下することが分かってきました。大人になってからの社会生活で特に問題となることは、感情のコントロールがうまくできなくなるケースです。親と同じように、自分の思い通りにならない状況で、感情を爆発させてしまうことがあります。





3 人と信頼関係を築けない

親子関係は、大人になってからの対人関係の取り方に大きな影響を与えます。親がけんかばかりしていると、親子の情的なつながりが築けません。そのために、大人になっても対人関係の距離感が分からなく、人とうまく話せなかったり、人と衝突することが多くなります。

また、子供は親の対人関係のパターンを見て学びます。親が、自分の意見が通らないと怒る、無視する、という対人関係のパターンをとっていると、それを無意識のうちに学んでいる子供もいます。気に入らなければ、相手を攻撃する、無視するという手段を使うようになるのです。コミュニケーションは、感情を抑えながら、言葉を介してやりとりするのが基本です。それができないために、人との信頼関係を築きにくくなります。



4 結婚生活に不安

先ほども言いましたが、ほとんどの子供は、けんかばかりする親の姿を反面教師として学びます。育った家庭に安らぎがなかったので、自分は平和な家庭を作ろうと必死に努力するようになるのです。

中には、いつまでも結婚というものに希望を持てない人もいます。自分が結婚しても、親と同じことになるのではないかと、家庭を持つことが不安になります。結婚することで幸せになるというイメージが湧きません。



5 心の病気になりやすい

親のけんかばかりを見ていると、子供の情緒は不安定になり、医師に診察してもらったところ、注意欠如多動症と診断されることもあります。思春期になると、さみしさを埋めるために、過食嘔吐などの摂食障害、自傷行為、さまざまな依存症が起こりやすくなるでしょう。こうした思春期に発病した精神疾患は、大人になっても尾を引きます。
 
また、社会に出てから、人間関係を中心に生きづらさを感じることから、うつ病を発症する人もいます。


人にはそれぞれの個性がありますから、考え方もそれぞれに異なります。どんなに仲が良い関係でも、意見が異なることが起きるのは当然です。そんな時、理性を働かせて一生懸命に話し合い、お互いに納得して一致するところに発展があります。全く反対のように聞こえる他人の意見でも、よく話し合って行くと、自分の考えをレベルアップさせてくれる内容であったりします。ですから、意見の違いでもめることは悪いことではありません。  

これに反して、子供の心に悪い影響を与える夫婦げんかとは、相手の意見に一切耳を傾けず、腕力や言葉の暴力を使って、強制的に意見を受け入れさせようとする行為です。感情を爆発させ、腕力や暴言を武器に相手を傷つける戦争のようなものです。そうではなく、相手を理解しながら、同時に言葉やスキンシップで自分の気持ちを伝えることが、本来の対人関係のあるべき姿でしょう。

親のけんかで心を傷ついた人は、親の乱暴な対人関係の取り方を目撃して傷ついてきました。ですから、相手を思いやり、言葉を使ったコミュニケーションができる人との付き合いを通して癒されていきます。言葉や腕力を武器にするのでなく、言葉をつかって人を理解し、優しさを伝えられる人との交流が大切なのです。世の中には、このような対人関係をとることのできる人もたくさんいます。こうした人との出会いを大切にして、長く交流することに意識を向けてみましょう。

しかし、出会いは運ですから、なかなか良い出会いに巡り合えないこともあるでしょう。このような場合は、心理カウンセラーのもとを訪ねてみるのも良いかも知れません。

トラウマは、自分の努力でどうにかなるものではありません。親子関係で傷ついてきた心は、良い人間関係を通して癒されることが必要なのです。


気分変調症ってどんな病気?

うつ病は、元気に生活していた人が、気分が落ち込むようになり、生活に支障が出てしまう病気です。ところが、いつ発病したか記憶になく、物心ついた頃からずっと気分が落ち込み、自分は必要のない人間であると思い続ける病気があります。

これはうつ病とは違い、「気分変調症」・「持続性抑うつ症」という病気です。子供や学生の頃に発病することから、「子供の頃からずっと死にたかった」と訴える人もいます。


軽いうつ病と同じような症状ですが、学校や職場には行けるので、病気というよりも性格と考えている人もいます。昔は、「抑うつ性人格」と呼ばれていた時代もありました。

軽いうつ病の症状が、2年以上続いている場合に診断がつけられます。実際に病名をつけられる場合は、気分変調症と言う言葉よりも、分かりやすいので、うつ病と言われることが多いかも知れません。しかし、正確には、うつ病とは近いものでも、違う病気として分類されています。


実は、とても多い病気で、人口の5%に見られるという調査結果もあります。ところが、性格の問題と考えてしまい、辛くても治療をしない人がたくさんいます。

今回は、気分変調症とはどのような病気か説明しましょう。





1 子供の頃から死にたかった

「気分変調」という言葉は、そもそも不機嫌という意味から来ています。周りの人からは、病気というよりも、いつも機嫌が悪い人とか、無気力な人に見られます。いっしょに生活している家族から、「暗い」、「不愛想だ」、「元気を出しなさい」と叱られることもあるでしょう。

学校や職場には行けますが、「気づいた時からずっと落ち込んでいる」と訴え、自分には生きる価値がないと考えています。いつも元気がなく、何かに熱中することもありません。

繊細で、周りの人の言動に敏感に反応することもあり、感情的になります。そのために、学校や職場でトラブルを起こしたり、ひきこもりになることもあります。

「子供の頃から死にたかった」というように、子供や学生の頃に発症し、大人になっても同じ状態がずっと続きます。自然に良くなることもありますが、治療をしないで、一生涯そのままの人もいるでしょう。



2 病気と気づくまでに10年くらいかかる

若い頃から病気の中にいるために、元気がないのが病気であるとは、自分も周りも気づきません。病気と気づいて受診するまでに、10年くらいかかる人が多いと言われています。原因が分からずにひきこもりになっている人の中には、気分変調症の人がたくさん含まれているとも考えられています。



3 子供の頃に失望体験がある

気分変調症の原因はまだ十分に分かっていませんが、子供の頃に失望した体験が原因であるという説があります。人間関係で傷ついたことが、その後の性格形成に何らかの影響を与えたのではないかというのです。子供の頃の辛かった体験を通して、「自分は必要のない人間である」、「誰も助けてくれない」、「一生幸せになれない」といった、ネガティブな考え方が、心に染みついてしまったのかも知れません。





4 治療は長くかかる

子供の頃の心理の問題が影響していることから、治療は、カウンセリングが中心になりやすい傾向にあります。しかし、抗うつ薬の治療に大きな効果があるので、医師から薬を勧められたら積極的に飲むようにしましょう。

抗うつ薬の力で気持ちが楽になると、社会との接点も増えてきます。それを通して、楽しみが増え、生活が良い方向に向いてくると、自己肯定感も改善されます。このように、薬を飲むことをきっかけに、生活の良いループに入ることが、最も回復につながります。

ただし、1年間の治療で良くなるのは、10%くらいと言われており、治療には何年間もかかります。「どうせ長くかかるなら、治療を受けなくても良い」と考える人もいますが、時間はかかっても、治療を受ければ回復しますので、放置するのは良くありません。



5 うつ病や双極症になることがある

気分変調症の人の経過をたどってみると、20%の人がうつ病になり、15%が双極Ⅱ型障害になるという調査結果があります。気分変調症に、うつ病や双極Ⅱ型障害が重なるケースはとても多いのです。むしろ、気分変調症だけでは、病気と気づかなかったのに、うつ病や双極Ⅱ型障害になったことがきっかけで、精神科に通うようになったという人もいます。

また、うつ病の診断で、2年以上精神科に通院している人がいますが、その半分近い人に気分変調症があるという調査結果もあります。


大きな原因もなく、若い頃から生きる価値を感じられていない人は、気分変調症の可能性があります。うつ病のようですが、うつ的な暗い性格と間違ってしまう病気です。

ずっと性格の問題かと思っていて、30才、40才になってから病院へ行って、抗うつ薬を飲んだところ、生活がとても楽になったという人もたくさんいます。長い間、「性格の問題では?」、「親子関係の問題では?」など、苦しんでいた気持ちが、薬1粒で良くなるというケースもあるのです。


ただし、薬は長く飲む必要があります。特に大きな副作用はありません。精神科の薬に抵抗がある人も多いのですが、治療が面倒な手術やリハビリでなく、「毎日1粒の薬を飲むだけで人生が楽になるならラッキー」と、考えてはどうでしょうか?


苦労が心の豊かさとして実るために

世の中には、何をやってもうまく行く人と、何をやってもうまく行かない人がいます。誰だって、何でもうまく行くようになりたいと思います。しかし、残念ながら人は生まれた時から平等ではありません。才能を持って生まれる人、お金持ちの家に生まれる人など、生まれた時から出発するところが違います。

徒競走で例えると、ゴールの近くからスタートできる人から、遠いところからスタートしなくてはならない人がいるようなものです。スタート時点が違うので、同じ幸せを手に入れるためにも、楽できる人もいれば、苦労する人もでてくるでしょう。

苦労が多すぎれば、「なんでこんな酷い目に会うのだろう」、「こんな人生に価値はない」と、恨みになることもあります。しかし、人より苦労することは決してマイナスではありません。苦労は心の豊かさにつながります。苦労が心の成長を促し、その人の魅力として実ることがあるのです。


今回は、オーストリアの精神科医・フランクルの言葉を通して、苦労が心の豊かさとして実るために必要なことを紹介しましょう。

フランクルは、アウシュビッツ強制収容所に収監されながらも生還した人です。ガス室で処刑される不安、過酷な労働、兵士からの暴力、栄養失調、チフスの流行、寒さという、あらゆる地獄を経験しました。そうした極限の状況で、自分や収容所の人の心の動きを客観的に観察し、1946年に「夜と霧」という本を発表しました。そこには、絶望が人を滅ぼすこと、生きる目的をもつ人は、過酷な環境でも耐えられることが描かれています。現在、生きる意味に注目するフランクルの心理療法は、ロゴセラピーと呼ばれています。





1 希望がない苦労は、心に悪い影響がある

すべてを失い、抵抗もできない強制収容所の人の多くは、感情を失い、無反応、無気力になりました。辛いことでも、いつまでに終わると分かっていれば、我慢することができます。収容所の人たちは、「クリスマスには解放されるだろう」と楽観的な希望を持ち、耐えていました。しかし、苦労がいつまで続くか分からなくなった時に、すべての希望を失います。実際には、クリスマスを過ぎても収容所の様子は変わりませんでした。

すると、それから数日の間に、処刑されたわけでもないのに大量の死者が出ました。直接の原因は、チフスであったり、栄養失調であったかも知れませんが、絶望によってたくさんの命が尽きてしまったのです。

人は、絶望によって滅びてしまいます。心が動かなくなるだけでなく、内臓の動きや免疫力も低下することによって、生命を維持することもできなくなります。希望がない苦労は、心に悪い影響しかありません。



2 苦労の意味を見つける

フランクルは、生き残って、収容所の体験を発表することを夢にもちました。極限の状況の人々の心理を研究し、それを将来に残すことを使命に感じたのです。このことを希望として、過酷な生活を耐え抜きました。

収容所の中には、自分のことよりも、他人を優先する人もたくさんいました。極限の状況でも、弱っている人を励(はげ)ましたり、食べ物を分けて与える人もいて、フランクルも生きる力をもらったそうです。こうした人たちは、収容所生活に何か自分なりの意味を見出していたと言います。

苦労の中でも、何か自分なりの意味を見つけようとする人は、苦労が無駄になりません。苦労の意味は、その時は分からなくても、後から理解できることもあります。また、自分のためにというより、身近な人や世の中に役に立つことを使命として考える人は、苦労が心の成長につながると言うのが、フランクルの考えです。





3 名もなき人の生き方が偉大

ここで、うつ病で長年闘病中のAさんの話を紹介しましょう。

Aさんのお父さんは早くに亡くなり、年老いたお母さんと2人で生活しています。兄弟たちはそれぞれに家庭を持ち、今は遠いところに住んでいて、ほとんど会う機会もありません。Aさんは、何で自分だけ貧乏くじを引いてしまい、こんな苦労をしなくてはならないのか不満です。「若い頃から病気で何もできず、いまでも家族に迷惑ばかりかけている。そんな人生に意味などない。」と、いつも考えています。

先日、お母さんがケガで入院することになりました。Aさんの体調も良くなかったのですが、遠方の兄弟を頼ることもできず、入院の付き添いをしました。その時、お母さんの口から、「いつも近くにいてくれて、1番親孝行な子供だと思う。」と、感謝の言葉をもらいました。早くに夫をなくして、心細かったお母さんにとって、Aさんはいつも大きな存在だったと言うのです。

1番お母さんの役に立っていたのは、成功して立派に働いている兄弟たちでなく、病気で何もできない自分だったことを知って、Aさんは嬉しく思いました。自分の人生にも意味があったのだと感じ、気持ちが楽になったそうです。

良心的に生きている人は、気付かないうちに、必ず誰かの役に立っています。フランクルは、「名もなき人の生き方が偉大」と呼びました。何か大きなことを成功させて世の中に貢献する人たちは立派ですが、ささやかに暮らしている名もなき人たちの生き方にも、必ず意味があると言うのです。むしろ、良心を持っているひとりひとりが、世の中を良い方向に進ませているのであり、大きなことを成し遂げる人は、それを代表しているだけのことであるというのが、フランクルの考えです。




どんな時も、人生には意味がある。
あなたを待っている「誰か」がいて、あなたを待っている「何か」がある。
そして、その「何か」や「誰か」のために、あなたにもできることがある。

これは、フランクルが残した多くの言葉の中のひとつです。ここには、フランクルの思いが詰まっています。もしかすると、何かきっかけがあったときに、ふと思い出すことがあるかもしれませんね。


心が苦しいと身体が痛くなる?心因性の痛みとは

頭痛、腹痛、腰痛など、体の痛みを感じた時はまず整形外科や内科を受診します。ところが、検査でも異常が見つからず、きちんとした病名もつかないまま、痛み止めだけ処方されたという経験はありませんか?これで良くなれば問題ないのですが、中にはいつまでも痛みがとれず、別の医師を訪ねる人もいます。

改めて検査をしても、異常が認められません。それだけでなく、「心の問題なので精神科へ行ってください」と医師から告げられてしまう場合があります。「実際に痛いのに、何で心の問題なのだろう?」と腑に落ちません。

病気の原因が心の問題であることを心因性と呼びます。痛みの訴えで整形外科や内科を受診する人の10~20%は心因性である、という調査結果があります。

「病は気から」という言葉があるように、実際に感じる痛みも気のせいなのでしょうか。気の持ちようで痛みは消えるのでしょうか。


今回は、心因性の痛みについて、その原因と対応の仕方について説明します。





1 心因性で現れる痛みの種類

原因が分からない痛みは、体のいたるところに起こる可能性があります。例をあげると、頭痛、顔面痛、頸部痛(けいぶつう)、肩や肩関節痛、腹痛、腰痛、陰部痛などがあります。検査で異常が見つからず、痛み止めがほとんど効かない場合、心因性と診断されます。

特に、痛みが慢性化した場合を慢性疼痛(まんせいとうつう)と呼びます。原因不明の痛みで代表的な病気は、線維筋痛症と慢性疲労症候群です。線維筋痛症では、関節以外の筋肉などに痛みとこわばりが現れます。痛みは首・肩に多いのですが、手足腰にも起こり、痛みのツボのような圧痛点があることが特徴です。
慢性疲労症候群は、新型コロナやインフルエンザなどのウイルスの病気にかかった後に疲労感がとれなくなる病気です。

どちらも慢性的な痛みにより日常生活ができなくなります。それだけでなく、疲労感、不眠症、うつ気分といった症状もみられます。しかし、未だに原因は解明されていません。うつ病との区別も難しく、心因も関わっている可能性があると考えられています。


2 不快な感情が痛みとして現れる

心の中の葛藤が、痛みなどといった体の症状として現れることもあります。これは「身体化」と呼ばれています。原因不明の痛みを訴える人の中には、何らかの絶望感や喪失感を抱えている場合もあるのです。

しかし、不快な感情を気付かぬうちに心の奥底に押し込んでしまうため、体の痛みとして現れるのだろうという考えです。

例えば、「学校でいじめられていると、学校へ行こうとするとお腹が痛くなる」、「嫌な上司の会議がある日は、頭が痛くなる」というのは身体化であると考えられます。





3 心の中の葛藤が体に出やすい体質

喘息やアトピー性皮膚炎はアレルギーの病気です。しかし、症状が心の影響を受けやすいことが知られており、これを心身症と呼びます。そして、心身症の研究を通して、心の状態が体に現れやすい体質の人がいることが分かりました。失感情症(アレキシサイミア)です。

失感情症とは、ストレスを感じても自覚できず、痛みなどの不調になりやすい病気です。感じたことを言葉で十分に表現することができず、まるで感情を失っているように見えることからこの名前が付けられました。

失感情症は、脳の構造に原因があると言われています。具体的には、ストレスの刺激を前頭葉に伝える神経で、何らかの障害が起こっていると考えられるのです。

前頭葉は思考を司る部分です。その前頭葉に刺激が伝わらないため、ストレスを分析して言葉で理解することが難しくなります。その結果、心の葛藤が身体化しやすく、体の痛みとして現れやすくなるということがあります。

失感情症は生まれつき持っている要素も大きく、発達障害の人に多く見られます。また、家庭での虐待や学校でのいじめにより、我慢が強いられていた場合など、子供の頃から自分の気持ちを押し殺す生活を続けていることがきっかけとなることもあります。



4 うつ病で痛みが出る

心因性の痛みをもつ人を調査したところ、80%以上の人がうつ病や不安症といった精神疾患を患っていることが分かりました。

うつ病や不安症になると、痛みを感じる脳の偏桃体という部分が敏感になり、痛みが増幅されて感じられます。また、痛みを抑える前頭葉の神経の効果も弱くなります。

うつ病や不安症になると、脳が痛みに敏感に反応するようになり、本来の痛みの10倍、100倍も強く感じることがあるのです。

これらのことから、心因性の痛みは、背後にうつ病や不安症が隠れている場合も多いことが考えられます。特に失感情症がある場合は、うつ病の心の症状が出にくく、体の症状ばかりが目立つということもあるのです。

うつ病や不安症を理由に痛みが出ているものの痛み止めがあまり効かないという場合、抗うつ薬で効果が出ることがあります。なぜなら、抗うつ薬は脳のセロトニン分泌を増やすことを通して、扁桃体の敏感さを抑えたり、痛みを抑える前頭葉の神経を元気にしてくれるため、痛みを感じにくくなるためです。


心因性の痛みは、単に心の問題だけでなく、脳神経の問題、失感情症という体質の問題など、たくさんの要素が加わっています。

そのため、痛みで辛い思いをしている人に対して、検査で異常がないからと言っても、「気の持ちようだよ」というのは間違っています。心と体の両方から治療が必要なのです。例えば、整形外科での理学療法、麻酔科でのブロック注射、精神科での薬物治療や認知行動療法などを組み合わせて治療を行っていくことが求められるでしょう。

痛みには、無理をしないでゆっくり休んで欲しいと言う心と体からのメッセージが含まれています。また、心の奥底には絶望感や喪失感があるのかも知れません。痛みとは、心が癒しを求めるサインでもあるのです。


叱られることに敏感に反応してしまう人の特徴

人から叱られて、泣きたくもないのに涙が出たことはありませんか?例えば、入ったばかりの職場で、「仕事ができない!」と叱られて、何も言い返すことができず、涙がこみ上げてくるのです。仕事をきちんと教えてもらっていないのが原因なのに、まるで人格をすべて否定されているように感じ、二度と上司の顔を見たくありません。場合によっては、叱られたことがきっかけで職場に行かれなくなり、辞めてしまう人もいます。

残念ながら、ハラスメントの問題が騒がれて久しいにも関わらず、「叱られて当たり前」「叱られて仕事を覚える」といった考えがまかり通っている職場はたくさんあります。


不思議なことに、叱られても何も感じない人から敏感に感じる人まで、感じ方には個人差があります。叱られて敏感に感じてしまう人は、何か心に問題があるのでしょうか?


心理学では、心は傷つかないように、バリアで守られていると考えています。ウルトラマンが、怪獣の攻撃を防ぐために使う透明なバリアをイメージしてください。心のバリアは、専門的に「個人の境界線」「自他境界」「バウンダリー」などとも呼ばれ、他人の思いが心の中に侵入してくるのを防いでくれる存在です。

叱られても、バリアがしっかり張られていれば、それほど気になりません。むしろ、間違いを正してくれたとポジティブに捉えることもできます。叱られて心が傷つきやすい人は、心のバリアが弱くなっているのです。


今回は、叱られることに敏感に反応してしまう人の特徴について説明します。特に心のバリア、個人の境界線についても触れていきたいと思います。





1 「叱る」と「怒る」は違う

「職場で叱られた」というのは、「怒られた」と表現する方が正確かも知れません。まずは「叱る」と「怒る」の違いについて説明しましょう。叱るとは、相手を良い方向に導くために間違いを正すことです。感情的に言うのでなく、道筋をたてて論理的に説明するものです。

これに対して、怒るとは、思い通りにならなかったり、気に入らないことがあると、腹を立てて、感情を相手にぶつけることです。相手の人格を否定したり、人前で注意して恥をかかせたり、大声で注意をするのは、叱るではなく、怒るが正しいでしょう。ただし、明確に区別していない人の方が多いかも知れません。


私たちの心が傷つくのは、大概怒られている場合です。相手からネガティブな感情をぶつけられるために傷ついてしまうのです。



2 怒られると攻撃を受けていると感じる

お互いに信頼関係がない場合に、相手から怒られることは、感情的に攻撃を受けるのと同じです。突然、ズカズカと心の中に入ってきて、ネガティブな感情をぶつけられていると考えられます。そうなると、例え、正しい内容を指摘されていても、素直には受け入れられません。人によっては、人格を否定されているように受け止めてしまう場合もあるでしょう。こうした理不尽な攻撃から心を守ってくれるのが、心のバリアの存在です。



3 心のバリアが弱い

心のバリアとは、自分と他人を区別する境界線のことです。この境界線がはっきりしていると、「自分は自分、人は人」という自分の意識が明確になります。自分のことは自分で決められるようになり、自分は何に責任を持つべきかがハッキリします。生きて行く上でとても大切なことです。


子供は、親との距離が近いために、自分と親の境界線が曖昧です。成長するに従い、境界線が明確になって行き、自分と親が別の存在であると認識できるようになります。ところが、自分の境界線が曖昧なまま大人になると、相手の影響を受けやすかったり、自分のことに責任を持てなかったりと、メンタルヘルスにマイナスになるでしょう。


心のバリアが弱いと、怒られた場合には、相手の感情が心に飛び込んできて、激しく動揺します。反撃することもできず、涙が出てくるようになるのです。他人が怒られているのを聞いているだけで、まるで自分が怒られているようで緊張してくることもあります。共感する力があると言えば、聞こえがいいのですが、つねに相手の感情に左右されてしまうのです。





4 心のバリアが弱くなる原因

それでは、心のバリアはなぜ弱くなるのでしょうか?次に、心のバリアが弱くなる3つの理由を説明しましょう。


1つ目は、生まれつき音や光などの刺激に敏感なために、周りとの境界線を引きにくい人です。感覚過敏と言われるもので、自閉スペクトラム症などの発達障害の人に見られます。また、心理学用語のHSPという言葉が流行していますが、これも感覚過敏の一つです。


2つ目に、先ほども説明したように、親子関係の影響もあります。虐待やネグレクトなど、親が子供の人格を認めず、自分の付属品のようにして接していると、親子の境界線が曖昧なまま成長することになります。また、いつも親の機嫌を気にして生きていると、親の言動が自分の責任であるように感じ、自分と親の境界線がなくなってしまいます。そうなると、他の人との境界線も明確にできなくなり、心のバリアが弱い状態が続きます。


ここまでは、生まれつきの問題や養育の問題が原因の場合ですが、3つ目に、心が不安定になると、一時的に心のバリアが弱くなることもあります。仕事が忙しい、心配事がある、いじめがある、などの状況では、人との境界線が曖昧になり、相手の影響を受けやすくなってしまうのです。うつ病でも、同じ理屈で涙が出やすくなります。



5 心のバリアをつよくする方法

まずは、ふだんから、心のバリアが弱くなっていることを意識しましょう。心のバリアを簡単に言うと、やりたくないこと、嫌いなことを「イヤだ」と拒否する力のことです。毎日の生活で我慢をし過ぎて、自分でも気づかないうちにバリアが弱くなっていることはないでしょうか?

我慢のし過ぎは、自分からバリアを弱め、外からの侵入を許してしまっている状態です。家に鍵をかけないで、毎日を過ごしているのに似ています。これでは悪い人が土足で入ってきてしまいます。


そして、親の考え方、職場のやり方、グループのルール、周りの評判といったものを優先するのでなく、何よりも自分の素直な気持ちを優先しましょう。自分が心地よく感じることをやり、不愉快に感じることは避けるようにするのです。


次に、怒ってばかりいる人、危害を加える人とは、できるだけ距離を置きましょう。当たり前のことのように聞こえますが、逃げることは物理的に人との境界線を引くことでもあります。


最後に、毎日の生活からできるだけストレスを取り除きましょう。ストレスは、心のバリアを弱くしてしまいます。生活に安心感があれば、人との境界線を自然にひけるようになります。心のバリアが回復して行くのです。


失感情症とは―5つの特徴―

「クールな人」と言うと、ヒーローのように冷静でかっこいいイメージがあります。しかし、「失感情症」という感情がないことで苦しんでいる人がいることをご存知でしょうか。辛いことがあっても、心の中で何が起きているのか言葉にできません。不快な感情を心で自覚できないために、痛みなどの体の不調として現れやすくなります。


1972年、アメリカのシフネオス医師は、つよいストレスを受けても、それが心の症状に現れず、胃腸障害や喘息などの体の症状に出やすい人の研究をしました。そして、共通する性格として失感情症を見つけました。英語では「アレキシサイミア」と言います。辛いことがあっても、それを言葉で表現することが苦手で、ストレスが体の症状として現れやすい傾向があるのです。


ストレスは、まず脳の間脳(かんのう)というところで喜怒哀楽の感情の動きとして認識されます。さらに、この喜怒哀楽の情報は脳の上下2つの方向へ伝えられます。脳の下の方へは自律神経系を通じて伝わり、心臓や肺などの内臓の動きとなります。脳の上の方に伝達されると、前頭葉という部分で分析されて、この喜怒哀楽が何なのかが言葉になって理解されます。
失感情症では、ストレスによる喜怒哀楽の情報が前頭葉へきちんと伝わらないために、言葉に変換されないのです。


失感情症は、症状として一時的に現れることもありますが、基本的には生まれつきの性格と考えられており、生きづらさを感じている人も多いのです。心の中で起きていることなので、自覚できていない人もいます。今回は、失感情症の特徴を5つ紹介しましょう。





1 自分の感情を言葉で表現するのが苦手

例えば、家族でお笑い番組を見てみんなが笑っていても、笑えません。決してつまらないわけではありません。学校でいじめがあることが分かっていても、文句を言わず休まずに学校へ行きます。もちろん辛いのです。戦争で捕虜になった人たちが、無表情になって抵抗せずに連れられて行く雰囲気に似ています。

失感情と言っても、感情を失っているわけではなく、感じることはできます。それを言葉に表現できないために自覚ができないのです。不快な感じが続いていても、それが何か自覚できません。そのうちに耐え切れなくなった感情が爆発してしまうこともあります。失感情症は心の不健康につながりやすいのです。



2 人に気持ちを伝えられない

自分の心で起きている感情を言葉で表現できないため、それを他人に伝えることができません。相手に感謝や喜びを伝えられずに誤解されたり、不快感や辛いことを伝えられないために苦しい思いをすることがあります。こうして対人関係で問題が起きることがあります。

子供の頃は、いつもニコニコして泣くことが少ないため、親から「育てやすい子供」と思われます。そうではなく、失感情症によって自分の気持ちを親に伝えられていないのです。



3 体調不良を起こしやすい

ストレスにより辛いことがあると、不快な感情は心と体に分配されます。心に伝わると言葉になり、自律神経系に伝わると体の症状になります。ストレスは言葉にして発散すれば解消できます。

ところが失感情症ではそれができないために、不快な感情は自律神経系を通じて体の不調としてだけ現れます。倦怠感、頭痛、腰痛、胃腸障害、喘息、しびれ、めまいなど、いわゆる心身症というものが起こります。体の病気で、病院で検査しても異常が見つからない場合は、失感情症が関わっていることが多くあります。





4 辛い時は逃げるか、心を閉ざす

何か葛藤がある時、それを言葉で自覚できないために、心の中を見つめ直したり、解決方法を考えることができません。そうなると辛いことから逃げるか、心を閉ざすしか手がなくなります。同時に体の調子が悪くなるため、体の不調を理由に責任から逃れることになります。

子供が学校で嫌なことがあると、頭痛や腹痛がして学校へ行けなくなることがあります。これは、子供の心や脳は十分に成長していないため、辛いことを心で処理しきれずに体だけが反応してしまうのです。

これが大人になっても続く場合は失感情症と考えられます。例えば、ストレスから体調不良を起こして職場に行けなくなる人がいます。心配した会社の人が連絡すると、「明日は必ず行きます!」と言いますが、結局次の日も欠勤してしまいます。これは自分の心の状態を理解できていないのです。決して、心が弱いから逃げ回っているのではありません。



5 自閉症スペクトラム障害・ASD、愛着障害、複雑性PTSDにみられることがある。

自閉症スペクトラム障害・ASDは、人の気持ちを読み取れない障害ですが、自分の心を客観的に見る能力にも劣ります。そのために、失感情症の症状が大変多く見られます。また、愛着障害、複雑性PTSD、統合失調症にも見られることがあります。


以上、失感情症の特徴を紹介しました。一時的な症状のこともありますが、基本的には生まれつきの性格傾向なので決定的な治療方法はありません。自分の個性として仲良くやっていくのが賢い対処法です。
まずは、無理をしすぎている時の体のSOSを自覚するようにしましょう。頭痛、腰痛、胃腸障害、喘息、倦怠感などの体の異変は、心が悲鳴を上げているサインなのです。そんな時は、「いつもの奴が来た!」と理解してゆっくり休むことです。体の不調にならないためにも、ふだんから体調に気を配り、予定以上のスケジュールは入れないようにしましょう。
また、体が緊張していることが多いので、体全体をほぐすようなマッサージに良い効果があります。体をリラックスさせることが心の癒しにもつながるのです。

失感情症と言っても、冷静さを求められる職場で活躍している人もたくさんいます。突然の出来事にも動揺せずに仕事に取り組むことができるのです。「冷静」というポジティブな個性と捉えてみると良いかも知れません。


自殺の直前に見せる8つのサイン

何事もなかったのに、ある日突然自殺をするということはありえません。必ず、自殺に至るまでの長いプロセスがあります。お金や仕事の心配、人間関係の悩みなど、辛いことがあると心はどんどんと弱ってきます。これが、限界に達してしまうと、何かのきっかけで衝動的に自殺を試みます。引き金になるのは、いじめや争いごとで、心が傷つく言葉を浴びせられることが最も多いようです。


ある調査では、自殺者の70%には遺書がなく、自殺のほとんどが衝動的な行為と言われています。自殺を試みるときは、「死んだらどうなるのだろう?」「みんなを悲しませるかな?」「死ぬ時って痛いのかな?」と、普通ならば思いつくことを考えるスキもありません。正常な精神状態ではないのです。

自殺をする人は甘えと言われることがありますが、助けをもらえなかった人が自殺をしてしまいます。大切な人が自殺をしてしまうことは、大きな心の傷になります。「もしかしたら助けられたかも知れない」と、後悔をしないように、今回は「自殺の直前に見せる8つのサイン」をご紹介いたします。





1 生気がない

いつもと違って明らかに元気がないような場合は要注意です。好きなことをしなくなったり、「何をしても楽しくない」という言葉を発します。休日は寝たきりになり、自分から外に出て行動をすることがなくなります。
2週間程度で元に戻る場合は問題ないですが、それ以上続くようであれば、うつ病の可能性があります。自殺の原因のほとんどに精神疾患が背景にあると言われています。



2 いつもと言動が違う

自殺の直前に、人はいつもと違う言動をとります。例えば、「このままではいけない」と言って突然仕事を辞めたり、精神科に通院している場合は、「薬に頼っている場合でない」と言って薬を飲むのをやめたり、普段と違う行動をするのです。
 「死にたい」と漏らしていた人が、急に言動が変わった時は要注意のサインです。特にうつ病で治療中の人が急に薬をやめてしまうことは大変危険なことです。



3 自殺の仕方をサイトで調べる

「自殺の仕方」や「楽に死ねる方法」などをサイトで調べる行為は、とても危険なサインです。本人のスマホを調べることはなかなか難しいので、会話の中で「自殺」などの言葉が出てきたら注意が必要です。
「死にたい」という言葉は簡単に出てくる言葉ではありません。きっとその人はあなたなら相談に乗ってくれると思って打ち明けたのだと思います。「死にたい」と言うと、相手の気を引くために言っているのではないかと疑う人もいますが、本当に自殺してしまうケースも多のです。聞く側が真面目に受け止めてあげなくてはいけません。また、「死んでほしくない」と相手にきちんと伝えることも大切です。



4 自傷行為

リストカットなどの自傷行為を行うことが、すぐに死につながる訳ではありませんが、自傷行為が繰り返されて、自殺に至る可能性もあります。自傷行為は本人が何らかのSOSを出しているサインでもあり、本人の辛い気持ちに目を向ける必要があります。もし自傷行為を発見したら、無理やりやめさせようと説教するのではなく、何が辛いかについて優しく聞いてあげましょう。




5 薬を沢山飲む

命の危険をかえりみずに、快楽目的で大量の薬を飲むことを、「オーバードーズ」、略してODと言い、最近では「トーヨコキッズ」と呼ばれる子供たちの間で行われていたことがニュースになっていました。自傷行為の1つであり、「自己破壊的行動」とも呼ばれています。
薬は多く飲まれないように医師が調整していますが、いくつかの病院をはしごして、たくさんの薬を蓄えている人もいます。死につながる危険な行動のため、注意が必要です。



6 感情の起伏が激しい

突然怒ったり、泣いたり、感情の起伏が激しい状態は、自殺の危険なサインです。気持ちが落ち込んでいるときは、自殺をするエネルギーはありませんが、むしろ、感情の起伏が激しいときに、衝動的に自殺が起こりやすいと言われています。
例えば、口喧嘩をしてしまい、そのまま窓から飛び降りてしまう、などもあるので気をつけましょう。相手が感情的になっているときこそ、冷静に対応することが求められます。



7 お酒を飲み過ぎている

お酒を飲んでいて、理性が働かない状態は、自殺の危険なサインです。特に、楽しくお酒を飲んでいるのは良いのですが、やけ酒のような場合は非常に危険です。普段から死にたいという気持ちを強くもっている場合、お酒を飲むことで衝動的になり、自殺を実行に移してしまうことがあります。



8 大切な人がいなくなる

家族との死別、失恋など、大切な人がいなくなった時、人は大きな悲しみを感じ、これを喪失体験と言います。喪失体験はうつ状態と似ていますが、薬が効きにくいことが多く、時間が解決してくれるのを待つしかありません。絶望に陥ってしまい、生きる希望がなくなり、後を追いたい気持ちが出て来ることもあります。これは危険なサインです。



今回は、自殺の直前の8つのサインをご紹介しました。


統計データによると、どの国でも自殺者は圧倒的に女性よりも男性が多くいます。困ったとき、女性の方が、周囲に助けを求めることができるからです。別の調査では、男性の方が、相談相手のいないケースが多く、辛い時にがまんして、弱音を吐くことを嫌う傾向がありました。孤独で相談相手がいないことや、「弱音を吐いてはいけない」という考えを持っていることが、自殺につながる大きなリスクであることが理解できるでしょう。


自殺を防ぐためには、周りの身近な人の対応が重要です。もし、「死にたい」と相談されたら、「何で死にたいの?」「何が辛いの?」と聞いてあげるようにしましょう。


逆に、「その考えは間違っている」、「私も苦労を乗り越えてきたんだ」と説教や自分語りをしても意味がありません。話を遮らずに聞いてあげて、気持ちを理解してあげることが大切です。自殺を食い止めようと努力するよりも、気持ちを理解してあげようと努力するべきなのです。


ASDが持つあまり知られていない9つの特徴

大人の発達障害の代表として、自閉スペクトラム症・ASDがあります。以前は、アスペルガー症候群という名前で知られていましたが、最近はASDという呼び方が一般的になってきました。

相手の気持ちや場の空気を読みとる能力に劣り、友達をつくることや、友達関係を続けることが得意でありません。こだわりという症状もあり、自分のルールを変えられず、あらゆる場面で融通が利きません。社会に出ると、チームプレイの必要な職場で浮いてしまうのが特徴です。症状のレベルに差はありますが、日本人の10%に見られる一般的なものです。


ASDというと対人関係の問題と考えがちですが、それ以外にも、心の抵抗力の弱さ、体の感覚の違和感などが見られることがあります。それほど知られていませんが、大人になってからの生きづらさとして実感されることがあるのです。


今回は、あまり知られていないASDの特徴を9つ紹介しましょう。





1 辛いことに向かっていけない

心の抵抗力が弱いため、心に傷を負いやすい傾向があります。辛い出来事があると、後遺症でトラウマが残りやすいのです。普通の人なら、「そんなことで傷つくの?」と言われるような小さな出来事でもトラウマになり、苦しかった場面がフラッシュバックしたり、繰り返して夢で見るようになります。また、出来事に関連した場所や人を無意識に避けるようにもなります。

何かのきっかけで傷つくと、そのことを再度チャレンジできません。気持ちに強力なブレーキがかかってしまうのです。それでも向かって行こうとすると心が壊れてしまいます。はたから見ていると辛いことから逃げているように見えますが、本人もできずに苦しんでいるのです。



2 知らないうちに相手を傷つけ、自分も傷つく

これを言ったら相手がどう反応するか想像できません。例えば、最近体重が増えて気にしている女性に向かって、「太りました?」と言って、相手の機嫌を損ねるといった感じです。しかし、何で怒っているのかが理解できません。

むしろ、突然相手が怒ったことにびっくりするのです。「失礼なことを言わないでください!」と怒られてしまうと、心の抵抗力が弱いために深く傷つきます。相手を知らないうちに傷つけて、自分も傷ついてしまうのです。



3 ストレスが体に出やすい

例えば、職場で辛いことがあると、翌日は倦怠感がつよくて家を出られません。声が出なくなったり、手足にしびれが出る人もいます。他にも、体の痛みや胃腸障害が出ることもあります。自分の心の状態を言葉で理解する力に劣るため、ストレスをため込んでしまい、心の不調が体の不調として現れやすいのです。



4 疲れているのに気づかない

脳と体は神経系やホルモンによって密接につながっていて、体は脳からの指令で動きます。この仕組みがあるため、自分の意思によって体が動き、心と体が一体である感覚を持つことができるのです。ところが、ASDの人は、神経系やホルモン系の発達に問題があることから、心と体の一体感に乏しいと言われています。

困ってしまうのは、実際の体の疲れと、感じている疲れにギャップがあることです。一旦仕事を始めると、仕事への義務感や集中のしすぎも重なり、終わるまでは疲れを感じません。仕事が終わって、ひどい疲れに気づき、何日間も寝込んでしまうこともあります。こうしたことを続けていると、職場で信頼を失ってしまいます。





5 体の性に違和感をもつ

思春期には体の性的な成長が起こりますが、心と体の一体感に乏しい場合、このような体の変化を自分のものでないように感じるASDの人がいます。その上、異性との関係で傷ついたりすると、自分の体の性を否定的に感じることもあります。ASDの中には、心の性と体の性が一致しないでいる人もいるのです。



6 酷い仕打ちをされても関係を続ける

普通ならば、危害を加えそうな人には近づきませんし、酷い仕打ちをされたら、その人との付き合いをやめます。ところが、ASDの人は、危ない人と知り合いになろうとしたり、良くない関係を保ち続けようとすることがあります。
例えば、パートナーからDVを受けても別れない、詐欺でお金をとられても友達でいる、職場でハラスメントを受けても辞めない、といったような感じです。

闇バイトに手を出してしまい、いつのまにか、悪のグループの手下になっていることもあります。



7 心配性で不安になりがち

ASDの人は、想像力を働かせるのが苦手と言われています。辛い状況では、それが良くなっていくというイメージを広げられません。何かトラブルにぶつかると、最悪のことばかりが頭に浮かんで、不安になります。
冷静に解決策を考える気持ちの余裕は出てきません。ひどいとパニックを起こす場合もあります。周りの人からは、心配性でいつも不安を抱えているように見えてしまうのです。



8 ASDの60%近い人がADHDも合併している

大人の発達障害でもう一つ代表的なものが、ADHD・注意欠如多動症です。不注意、落ち着きのなさ、衝動性があるため、大人になってからも、「おっちょこちょい」「時間を守れない」「片付けができない」「計画性がない」といった問題が起きます。
最近のアメリカの調査では、ASDの人の約60%に、ADHDの症状が見られることが分かってきました。どちらも脳の報酬系という部分に問題があるので、両方が合併することは当然のことなのです。

精神医学では、最も大きな症状を通して病名をつけます。ASDと診断されている人でも、その半分以上には、不注意、落ち着きのなさ、衝動性といったADHDの症状も見られるのです。自分は、ASDかADHDか分からないと言う人も多いのですが、それは両方がいっしょにあると考えたら良いでしょう。



9 HSPの中にはASDが多く含まれている

HSPとは、ハイパー・センシティブ・パーソンの略で、生まれつき感覚の敏感な人を呼ぶ心理学用語です。感覚の敏感な人が、どのような心の傾向をもっているかを研究したことから始まったものですが、いつしか自己啓発本やネットで取り上げられるようになり、社会でも広く知られるようになりました。「繊細さん」とも呼ばれています。あくまでも心理的な傾向を説明するものなので、障害ではありません。

ASDには、音・光・臭いなどの刺激に敏感な感覚過敏という症状を持つ人がいるため、それだけを取り上げるとHSPに含まれてしまいます。HSPと思っている人の中には、ASDがかなり含まれているということです。「病院でASDと診断されているけれど、本当はHSPだと思う」という人がいますが、そうでなく両方あると考えるべきでしょう。


こうしたASDの症状を見ていくと、仕事の効率や実績が最優先される現代社会では、とても生きづらいことを理解できたかと思います。それだけでなく、本人は一生懸命頑張っているのに、「努力していない」「辛いことから逃げている」と、誤解される場面も多くあるでしょう。
生まれつきの脳の仕組みからそうなっているので、努力で大きく変えられるものではありません。背伸びをして社会の歯車に合わせていると、自分が壊れてしまうことがあります。人の価値は、能力や仕事の実績で決められるものではありません。周りと比べることなく、自分なりの生き方のペースをつかめることが大切です。