恨みをなくすための3つの方法

なかなか忘れられない悪い思い出はありませんか?忘れたくても自然と浮かんできて、何をしても気持ちを紛らわすことができない思い出です。

特に、信じていた人や職場に裏切られた思い出は、つよい恨みとなって心に残ります。親や親友などに対して、信じ愛し、期待していたのに、裏切られた時の辛さは心に深く刻まれるのです。この気持ちを解消するにはどうしたら良いのでしょうか?


復讐が唯一の解消法と考える人がいます。辛ければ辛いほどに「思い知らせてやりたい」と感じるのは当然なことです。それだけでなく、復讐すれば他の犠牲者も救うことができるので復讐は正当化されます。

しかし、時間が経つにつれて、復讐するべきでないという心も湧いて来るのが自然です。復讐は本質的な解決方法ではなく、復讐すれば、こちらも憎い相手と同じレベルの低い人間に落ちてしまうことに気づくからです。

それよりも、恨みの感情から解放されて、より良い人生を生きたいと思うようになります。結局、相手を許すようになることが、自分を苦しみから解放する最善の方法であることに気づくようになるのです。


16世紀イギリスの哲学者・フランシス・ベーコンは、「復讐する時、恨みの相手と同じレベルである。しかし、許す時、恨みの相手よりも上にある。」と言いました。しかし、頭では、許すことがより良いことである分かっていても、気持ちは納得しません。

恨みや怒りを無理やり心の底に押し込んでしまうと、心や体がおかしくなることがあります。結局、恨みの気持ちは、心の外に出しても報われないし、中に押し込んでも苦しくなる、とても厄介な存在なのです。


では、このような恨みや怒りを自然に解消するためには、どうしたら良いのでしょうか?今回は、悪い思い出を消して、恨みをなくすための3つの方法を紹介しましょう。





1 人に話す

気持ちを言葉にすることは、心に溜まっている悪い感情を外に出す効果があります。これを心理学では「カタルシス」と呼びます。同じ体験をもつ人と話し合ったり、カウンセラーなどの理解してくれる人に話すことで、悪い思い出や恨みの感情を薄めることができます。




2 今の生活に集中する

人間の脳は、コンピューターのように一字一句正確に記憶しません。感情に左右され、無意識のうちに記憶が書き換えられることがあります。これは脳がコンピューターよりも劣っているという意味ではありません。

脳は自分を守るために、記憶を都合よく書き換える作業ができるのです。心が安定していると、悪い記憶は少しずつ消去されていき、害がなくなります。大きなトラウマを受けても、その後に安心できる生活を送っていれば、トラウマは自然に消えていきます。いまの生活に満足していると、悪い思い出は自然に書き換えられ、恨みも消えていくのです。脳はコンピューターよりもはるかに優秀です。

ところが、心が不安定で過去に執着してばかりいると、悪い記憶は余分なものまで付け足されて、もっと悪い記憶に更新されてしまうことがあります。なかったことがあったことと記憶され、恨みの気持ちが高まってしまうこともあるのです。過去にとらわれてばかりいると、悪い思い出はもっと悪いものになってしまいます。

「幸福に生きることが最高の復讐である。」というスペインのことわざがあります。脳の仕組みから考えると、幸せに向かって今を大切に生きていくことが、悪い思い出を消すための最善の方法なのです。




3 恨みを社会に役立つ方向に向ける

親から虐待された人が、親を恨むのは当然のことです。しかし、自分以外の子供たちには、同じような辛い思いを経験させたくないと感じて、大人になってから子供たちを守るボランティアに参加する人もいます。

親を恨む気持ちを、子供を守るためのエネルギーに変えているのです。大切な家族を交通事故で亡くしても、加害者を恨む気持ちをエネルギーに変えて、交通事故撲滅のための運動をしている人もいます。これらは、恨みや怒りのエネルギーを、社会に役立つ方向に向けて発散させているのです。社会貢献が人から喜ばれると、そこに自分の新しい価値をみつけることができます。また、そこから新しい出会いも生まれるでしょう。生活には充実感が生まれ、心の成長も期待できます。

このように、辛い気持ちを社会に貢献するエネルギーに転換することを、心理学では「昇華」と呼んでいます。長い時間と大変なエネルギーが必要なことですが、辛い気持ちから解放されるための理想的な方法と考えられています。




いまを大切に生きていると、過去の辛い思い出は、自然に毒が薄まり、心の中にあっても受け入れられるレベルになります。人によっては、加害者の立場に共感できるようにもなるでしょう。例えば、親に辛い思いをさせられたのならば、「親自身も子供の頃に酷い目に合っていた」「親は精神的な障害を抱えていた」と、親の仕打ちを自分なりに理解できるようになります。

悪い思い出を受け入れるまでには、大きな愛情やエネルギーが必要なことです。恨みがつよいほどに時間もかかります。しかし、そこに到達できたら、大きな満足や解放感を手に入れることができます。これは人として大きく成長した証拠でもあります。誰からも褒められることはありませんが、人生の大きな試練を乗り越えたと誇ることができるでしょう。

ただし、実際に人を傷つけようとしたり、物を壊したり、恨みの気持ちが自分で制御できないくらいつよい場合は、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神疾患の可能性も考えられます。このような場合は、精神科に相談してみましょう。


子供の頃のトラウマがまだ完全に癒えていない6つのサイン

子供の頃に、親からひどい仕打ちを受けたり、学校でいじめを受けると、心に傷跡が残ります。これをトラウマと呼びます。軽い場合は、時間と共に自然に癒されますが、重症な場合はすぐには消えません。親やクラスメートからの、深刻な暴力、否定、無視が長い期間にわたって続いた場合、大人になってもトラウマが残ることがあります。


子供の頃に大きなケガを負うと、大人になっても何かのきっかけで痛みが走るように、トラウマも生活の様々な場面で生きづらさとして現れることがあります。自分では、もう辛いことはお別れできたと思っていても、トラウマが治りきっていないことがあるのです。


そこで今回は、子供の頃のトラウマがまだ完全に癒えていないサインを6つ紹介します。





1 自己評価が低い

「自分は生まれて来なければ良かった」と感じており、生きていることに罪悪感を持っています。人の好意にも心を開けません。人前で自分を出すことができず、目立つことを避けてしまいます。「どうせダメだから」と新しいことにチャレンジできません。



2 孤独

人への恐怖、不安、怒りが残っており、基本的に人を信頼できません。人と接しているとイライラや怒りを感じることが多く、人づき合いが苦手です。人との関りを避けてしまい、いつも孤独を感じています。



3 現実感がない

現実がぼんやりして、目が覚めていても夢の中にいるようです。自分と現実に壁があると表現する人もいます。また、心と体が離れてしまい、自分を外から見ていることもあります。これを離人感と呼び、時間がすすむのを遅く感じる人もいます。



4 集中できない

親の機嫌を気にして子供時代を過ごしていると、脳が周囲の状況にすぐに反応できるように、常に警戒している覚醒状態となります。すると、眠りは浅くなり、ちょっとした物音で目が覚めてしまいます。日中は頭にモヤがかかったようになり、集中できません。これを脳に霧がかかっているという意味で「ブレイン・フォグ」と呼びます。



5 自己破壊行為

ベトナム戦争を描いたアカデミー賞作品の「ディア・ハンター」では、戦争でトラウマを受け、ロシアンルーレットというデス・ゲームに参加し続ける男性の姿が描かれます。トラウマがあると、アルコールや薬物の乱用、ギャンブル、自傷行為、危険な性関係などの自己破壊的な行為で自分の気持ちを紛らわそうとする場合があります。なぜこのような危険に自分から飛び込むのか、自分でも説明できません。いつのまにか依存的になり、常習となることがあります。



6 うつ病やパニック症になりやすい

学生時代のいじめの被害で、うつ病やパニック症になるリスクが1.5倍に増えるというデータがあります。トラウマが残っていると社会と歯車が合いません。それがストレスとなり精神疾患を発症しやすいのです。精神科に通院するようになり、そこでトラウマがあることを指摘され、初めて自覚できるケースもあります。


トラウマは、安心できる場所で安心できる人に、トラウマを受けた状況を話すことで少しずつ癒されて行きます。相手は治療者に限らず、家族でも良いし、恋人や親しい友人でもかまいません。相手に共感してもらうことで、トラウマは解消されて行きます。ただし、無理は禁物です。安心した状況で再体験できることがポイントです。


また、不安感・不眠がつよい場合、うつ病やパニック症を合併した場合は、精神科で薬の治療を受けましょう。薬の力で体調や気分が良くなることで、トラウマが解消されやすくなります。また、医療機関での安心できる人間関係が、トラウマを解消するために役立ってくれます。

勉強はできるのに、仕事ができない?

勉強ができる人は、何事もうまくこなせる印象があります。ところが、学校では成績優秀だったのに、会社に入ると仕事ができない人がいます。勉強の成績とは、脳の一部分の能力が反映されているだけで、脳の能力のすべてを反映しているわけではありません。仕事をこなすためには、勉強以外の脳の能力も重要なのです。

脳の知的な能力は大きく4つに分けられます。そのうちの1つである「言語理解」という能力が、勉強の成績と関係しています。他の3つの能力のどれかに問題があると、勉強ができるのに仕事ができない人になってしまうのです。
例えば、耳から聞いたことを一時的に記憶しておいて、それをもとに思考する「ワーキングメモリー」という能力があります。この「ワーキングメモリー」が劣っていると、上司から機械の使い方を何度聞いても、理解できないということが起きてしまいます。実際に、有名大学を卒業しているのに、スーパーのレジ打ちができない人もいるのです。
実は、このようなアンバランスな脳があることが分かってきたのは、最近30年くらいのことです。それまで発達障害と言えば、脳の能力が全体的に遅れてしまったものと考えられていました。
ところが、学校の勉強はできても、他の脳の能力の発達が遅れてしまい、最終的にアンバランスな脳になっている発達障害も知られるようになりました。これらは、大人になって気づかれることから「大人の発達障害」とも呼ばれています。学校では優秀な成績だったのに、職場では仕事ができない人は、大人の発達障害がある可能性があるのです。


それでは、大人の発達障害では、どのような仕事の内容ができないのでしょうか。職場でうまくいかない状況を具体的に紹介しましょう。





1 報告・連絡・相談ができない

職場は共同作業ですから、メンバー同士のコミュニケーションはとても大切なことです。職場でまず教えられることは、上司に「報告・連絡・相談」をすることです。略して「ほう・れん・そう」とも言います。
ところが、発達障害の人は、人の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを伝えることに問題があるため、「ほう・れん・そう」が苦手です。マイペースで仕事をしているため、上司からは、協調性がないとか、自分勝手と誤解されます。逆に、臨機応変な対応ができないので、何でもかんでも「ほう・れん・そう」してしまい、上司に呆れられてしまうこともあります。

2 会話が苦手

発達障害の人は、会話の仕方に特徴があります。人の話を聞かない、自分のことだけを一方的に話す人がいます。空気を読むのが苦手で、その上思ったことをそのまま口に出してしまうので、会議でとんでもない発言をすることもあります。目上の人への挨拶の仕方や敬語の使い方がおかしいために、変な目で見られることもあるでしょう。

3 小さなミスが多い

集中力に問題があり、何度注意されても同じミスを繰り返す人がいます。事務作業や単純作業が苦手、作業のスピードが極端に遅いこともあります。ただし、発達障害の中でも自閉症スペクトラム障害・ASDの人は、細かい数字を扱うなどの繊細な作業が得意です。

4 マネージメントができない

決められたことをやるのは得意ですが、自分から仕事を作り出したり、部下にリーダーシップをとることが苦手です。全体を見通す力に欠けていて、興味のあることから手をつけようとする傾向があり、仕事の優先順位をつけられません。一つのことをやっていると、他のことが意識から外れてしまうため、複数の仕事を同時に進行できないことがあります。





5 感情のコントロールができない

人の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを伝えることが苦手なため、感情をため込んで、突然爆発することがあります。普段から落ち着きがなく、喜怒哀楽の波が大きい人もいます。
また、感情に振り回されて、物事を冷静に判断できないことがあり、うまく行かない時には、「上司のせいだ」、「親のせいだ」と他人のせいにする傾向もみられます。感情的に他人に文句を言うことが多いのに、それを自分がされると敏感に反応するため、身勝手な人と誤解されることもあります。

6 孤立する

コミュニケーションの問題、感情のコントロールの問題があるために、周りの人と馴染めません。周りからは、気が利かない人だ、自分勝手な人と誤解されます。自分としては精一杯頑張っているつもりなのに、それを分かってもらえません。そこから職場で孤立してしまいます。

7 体調を壊しやすい

ストレスが体調に出やすく、仕事を休みがちです。自分で体調の変化を予測できないので、「明日は行きます」と言っておきながら、突然休んでしまうことがあります。そうなると、上司からは、虚言癖(きょげんへき)があると誤解されてしまいます。また、仕事に大きな穴を開けても、平気な顔で出社するので、周りからの評判も悪くなります。



職場でこうした問題がある場合は、大人の発達障害の可能性があります。小さなトラブルはあるけれども、仲間で助け合いながら楽しく働けるならば良いのですが、問題が大きくなる場合は、精神科で診断を受けましょう。
大人の発達障害には、自閉症スペクトラム障害・ASDや注意欠如多動症・ADHDなどの種類があります。ASDとADHDの両方が合併していることも多いので、診断がつけにくいこともあります。治療としては、発達障害そのものを治す薬はありませんが、症状を抑える薬があります。また、問題が出ているのは、いまの職場が自分の特性に合っていないことが原因かも知れません。診断を通して自分の特性を知り、それに合った仕事を選ぶことも大切なことです。

表情に隠される心の病気


心の状態は表情や目つきに現れます。健康な人は、喜怒哀楽に応じてさまざまな表情をしますが、心の病気になると、不安定な心の状態が表情にも現れます。

精神科医や心理カウンセラーが相手の心の読み取るためには話を聞くだけではありません。相手の表情も大きな情報源になっています。


心の病気は自分で気づけないことがあります。早めに治療すれば、早く良くなるにも関わらず、治療のタイミングを逃している人がたくさんいます。周りの人が気づいてあげることも大切なのです。

言葉でSOSを言わなくても、いつもと違う表情や目つきから、その人に何らかの心の病気があることに気づくことができます。気づいた人から、「いつもと違うよ、何か辛いことがあるの?」と、優しく声をかけてあげられたら、治療のきっかけにつながるかも知れません。


今回は、人の表情や目つきにどのような心の病気が隠されているかを紹介しましょう。











1 無表情


無表情になるのは、心の喜怒哀楽の動きがなくなっている証拠です。うつ病の人によく見られる症状です。

ただし、子供の頃からずっと表情に乏しい人は、自閉症スペクトラム障害・ASDの可能性があります。


無表情でも蝋人形のように全く表情が動かない場合は、重度のうつ病、統合失調症、パーキンソン病が考えられます。

統合失調症の場合は、飲んでいる抗精神病薬の影響で無表情になることもあります。



2 怒った表情


機嫌が悪く、怒っているような表情は、うつ病の人に見られます。本当は休みたいのに無理をしている気持ちが現れています。


また、目が吊り上がり、まるで般若のお面のような表情になっているのは、境界型パーソナリティ症、双極性障害の躁状態、統合失調症に見られます。心の中で怒りや恨みが渦巻いている状況です。



3 生気(せいき)がなく暗い表情


うつ気分がある人の表情は暗く、疲れている印象を受けます。うつ気分は、うつ病、不安症、双極性障害、統合失調症など多くの精神疾患にある症状です。暗い表情は心の病気全般に見られます。



4 不安げな表情


暗い表情と似ていますが、表情は強張り(こわばり)、眼球の動きが落ち着きません。目が泳いでいるとも表現されます。

これは、不安と緊張を表わしていて、社交不安症の人によく見られます。また、うつ病や統合失調症などの他の精神疾患でも見られることがあります。



5 作り笑い


作り笑いは、軽症のうつ病の人によく見られます。共感していないのに、周りに合わせようとして無理やり表情を作っているのです。

笑顔が途切れた一瞬、本来の辛そうな表情に戻ることがあります。会話の途中で見られるその表情の差に「あれ、怒らせてしまったのかな?」と思ってしまいますが、そうではなく、本来の表情に戻っただけなのです。


医学用語ではありませんが、「微笑みうつ病」という言葉があります。軽症のうつ病の人が、自分の心の変化を認めたくないために、無理やり笑顔をつくって生活することを表わした言葉です。

自分が弱っていること、周りとうまく合わせられないことを知られたくないため、自分の素直な心の状態に笑顔でふたをしているのです。






6 顔が浮腫(むく)んでいる


過食嘔吐をする摂食障害では、唾液腺の炎症や栄養の偏りから顔に浮腫みが出やすくなります。

アルコール依存症の人も、アルコールの影響で顔の浮腫みが出ます。また、睡眠薬など精神科の薬の副作用で利尿作用が抑えられて、やはり顔が浮腫む場合もあります。



7 目がすわっている


すわった目つきと言うのは、一点を見つめるように眼球が動かない状態のことを言います。これは、感情が固まり、喜怒哀楽がなくなっているサインです。

重度のうつ病や統合失調症で見られます。また、トランス状態やせん妄などの特殊な意識状態でも見られます。催眠術にかかっている人の目つきも良い例でしょう。



8 目に輝きがない


元気がない人の目つきを、「目に輝きない」、「死んだような目つき」と表現されることがありますが、実際に目の輝き方が変わっているのではありません。

表情に乏しく、眼球の動きがあまりないために、目から生気が伝わって来ないのです。目に輝きがないのは、生気に乏しい状態です。うつ病によく見られます。



9 ギラギラした怖い目つき


相手に貪欲な印象を与えるような目つきのことです。目の輝き方が変わっているのではなく、相手から何かを奪い取ろうとするような目的があり、表情は豊かですが、眼球の動きがあまりありません。

何かを要求しているような圧迫感を与えます。双極性障害の躁状態、ADHD、薬物依存などに見られることがあります。



10 目を合わせない


自閉症スペクトラム障害・ASDの人は、会話の時に目を合わせません。目を伏せていたり、横を向いていたり、目をつぶって会話する人もいます。

ASDの人は、コミュニケーションの障害があるため、言葉の情報だけを頼りにして、相手の目や顔の表情から情報を手に入れることをしないのです。

マナーとして、会話の時に相手の目を見るように意識することで、少しずつ改善させることができます。



「目は心の鏡」ともいいます。言葉には発しないけれども、表情や目つきから伝わってくるメッセージがあります。

もし身近な人の表情からSOSのサインを感じた時、何か心の病気を患っているのかも知れません。そのような時は、本音を聞いてあげて、専門家の助けが必要と感じたら、精神科や心理カウンセリングに行くことを勧めてあげましょう。



人間関係に気を遣い過ぎて疲れてしまう6つのタイプ


毎日の職場で、同僚や上司の顔色ばかり気になってしまう人がいます。仕事終わりには、仕事の内容よりも人間関係で疲れてしまいます。疲れすぎて体調を崩してしまい、翌日の仕事に支障が出ることもあります。

もっとリラックスして働きたいのが本音なのに、自然と人に気を遣い過ぎてしまうのです。



家に帰ってからも、自分が言ったこと、相手から言われたことをグルグル考えてしまい、「あれはどういう意味だったのだろう」、「私をどう思っているのだろう」と眠れなくなることもあります。

もともと人の好き嫌いがある方で、苦手と感じると、拒絶反応が出てしまいます。無理して会うと胃が痛くなったり、蕁麻疹が出たりします。
特に感情的で怒りっぽい人、無口で何を考えているか分からない人、裏表がある人、などが苦手です。

自分ではやめたくても、人間関係に気を遣い過ぎてしまう人には、いくつかのタイプがあります。今回は6つのタイプを紹介しましょう。




1 HSP


気疲れしやすい人の代表といえばHSPです。HSPとは、ハイリー・センシティブ・パーソンの略で、生まれつき感覚が敏感な人の性格を指す心理学の用語です。「繊細さん」とも呼ばれることがあります。


音や光などの物理的な刺激に敏感で、それだけでなく相手の表情、態度、雰囲気、なども敏感に察知してしまいます。相手の気持ちに反応し過ぎたり、共感し過ぎて疲れてしまいます。



2 アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害・ASD


自閉症スペクトラム障害・ASDとは、相手の気持ちを理解する能力に劣る生まれつきの障害です。

やはり、音や光などの物理的な刺激に敏感ですが、人の表情や態度から気持ちを察することが苦手で、人の気持ちを間違って理解してしまうことがあります。
相手の気持ちを理解できないまま、自分の意見も主張できず、不快な気分を我慢し過ぎて疲れてしまいます。時に我慢しきれずに感情が爆発してパニックを起こすことがあります。



3 大人の愛着障害、複雑性PTSD


子供の頃に親がいなくなる、虐待を受ける、学校でいじめなどを受けるなど、大切な人を失う体験や拒絶される体験をすると心にトラウマが残ります。トラウマがあると、物事を歪んで感じ取ってしまうことがあります。

「大切な人はいなくなる」「自分は嫌われれている」といった思い込みのフィルター越しに人を見るようになってしまうのです。
特に仲が良くなるとこのフィルターが働くようになり、嫌われないように相手の気持ちに敏感になり、気を遣い過ぎてしまいます。





4 失感情症


ストレスが、気持ちでなく体に出やすい人の性格を失感情症と言います。ストレスで不快な感情が湧いても、それが何かを言葉で自覚できません。対人関係の疲れを自覚できないまま過ごし、倦怠感、頭痛、胃腸障害などの体の症状で出てしまいます。

間脳と前頭葉をつなぐ神経系に生まれつきの障害があるとも考えられています。自閉症スペクトラム障害・ASDの人の性格にも多く認められます。



5 社交不安症
 

「自分は変に思われていないか」と不安に思う病気です。発表や会食などの集団の場面で、相手の目を気にし過ぎて疲れてしまいます。

病状が悪くなると、1対1の場面でも、相手の思いが気になるようになります。こんなに辛い思いをするなら人と会わない生活がいい、と引きこもりになるケースもあります。

薬の治療に効果がありますので、精神科を受診しましょう。



6 スピリチュアルな人


心理学や精神医学のカテゴリーではありませんが、霊的な世界を信じ、勘がするどく、直観で生きている人です。

物事を理性的に考えることが得意ではありません。にわかには信じ難いがたいですが、話していないのに相手の考えていることが分かることがあります。

極端な例では、腹が痛い人に合うと、同じく腹が痛くなるという現象もあります。相手の思いがストレートに心に飛び込んできて、それを制御できないので疲れてしまいます。幽霊や妖精を見たり、その声を聞くこともあります。

HSPの中でもさらに感受性がつよい人と言えるかも知れません。過敏すぎて生活に支障が出る場合、精神科では解離性障害と診断されることがあります。






人に気を遣い過ぎてしまう人のタイプを6つ紹介しました。社交不安症のように治療で改善するものもありますが、性格の傾向の場合は大きく変えることができません。

そもそも、「気を遣う」とは、相手に気持ちよく過ごしてもらうために、相手の立場にたって配慮することです。結果的に、相手の気分が良くなれば良いわけです。

ところが相手の気持ちを読み取れない場合や、相手の要求が伝わり過ぎてしまう場合は疲れてしまうのです。相手に気持ち良く過ごしてもらおうと思いながら、自分が不愉快な気持ちになってしまっては何の意味がありません。

このような場合は、その人と少し距離を置いてみることが必要でしょう。その人によって心が乱されるならば、むしろできるだけ関わらないようにするのが賢明な方法です。


「君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)」ということわざがあります。君子とは、古代中国の学識をもった地位の高い人の意味です。

「賢い人は自ら危ないところには近寄らない」という意味ですが、「自分の身を守るのは、自分の行動である」という意味合いもあります。相手のことを思いやり、気を遣うことは礼儀として大切なことです。

ただし、気を遣い過ぎて自分が壊れてしまうことないように、自分の気持ちを大切にしましょう。


難治性のうつ病とは



うつ病で、十分な薬の治療を2年以上行っても良くならない場合を、難治性(なんじせい)うつ病とか慢性うつ病と呼びます。


薬の治療はうつ病の人の7割に効果があります。薬で良くならない場合には、通電治療や磁気治療などの特殊な治療を行うと、さらに1割くらいの人に効果があります。しかし、残りの2割くらいの人は治療にも関わらず、症状が改善されずに難治性になります。現在でもかなり多くの人が難治性うつ病に苦しめられているのです。





今回は、難治性うつ病について説明しましょう。


1 薬を飲んで発病前と同じ生活が送れていれば難治性ではない

薬を飲んでいれば、仕事ができて日常生活が送れているならば難治性ではありません。
難治性とは、薬を飲んでも、発病前の生活に戻れない人を指します。「薬を飲むのをやめるまでは治ったことにならない」と考える人もいますが、抗うつ薬などの精神科の薬は長い期間でも服用できるので、焦らずゆっくり薬を減らしていけば良いのです。同じ薬で状態が安定しているなら薬への依存は心配ありません。
ただし、薬を減らすためには生活の見直しが必要です。現代社会において、ほとんどの病気の原因は自分の心身のキャパを越えた生活にあります。さらに、お酒やたばこなどの嗜好品の取り過ぎ、運動不足、不規則な生活も良くありません。背伸びをしなくては生きていけない時代ですが、病気をきっかけに無理のし過ぎを少しずつ改善させていきましょう。

10年、20年と薬を飲んでいても、現役を引退して薬をやめた人、ローンを返済できて薬をやめた人、よいパートナーと出会って薬をやめた人、など、生活が改善されて薬が必要なくなった人はたくさんいます。長く飲んでいても、薬はやめることができるのです。
2 治りにくいうつ病がある

現在のうつ病の診断の方法は、発病の原因は考慮せず、いくつかの症状がある場合をうつ病と呼ぶことになっています。例えば、ストレスが原因でうつ症状が出た人も、生まれつきの発達障害が原因でうつ症状が出た人も、出産後のホルモンバランスの影響でうつ症状が出た人も、同じうつ病と診断されます。
ですから、うつ病は一つの病気というよりも、いくつかの病気をまとめた症候群のようなものです。発達障害が基礎にあったり、産後うつ病などは長期化しやすいと言われています。同じうつ病でも、治りやすい場合と治りにくい場合があるのです。
また、難治性の大きな原因の一つに、生きることへの絶望があります。大切な人や物を失う、信頼していた人から裏切られる、大きな事故や事件に合う、など避けがたい不幸が重なり、生きていくエネルギーがなくなってしまうのです。絶望感からうつ病になり、うつ病がまた絶望感をつくり、そのサイクルから抜け出せなくなってしまいます。
こうした場合、「希望を持ちましょう」と言われても、そんなに簡単に楽観的になれません。時間が問題を解決してくれるのを待つしかない場合もあります。



3 難治性の人はどうなるか?

ずっと寝たきりで一生を過ごすようなことはありません。障害年金や生活保護などの経済的な援助を受けて、少しずつ改善していく人が多いようです。見た目は元気がないだけで普通なために、福祉の援助を受けていることを負債に感じる人もいますが、うつ病は脳の機能が弱ってしまう病気です。決して怠けているのではありません。公的な援助を受けながらゆっくり回復を持ちましょう。
うつ病はまだ十分に解明されていない病気ですから、予期していなかった何かのきっかけで良くなることがたくさんあります。10年近くほとんど寝たきりに近い状態でも、家族関係に変化が起きて良くなること、病院を変えて新しい主治医との相性で良くなること、簡単な仕事を少しずつ手伝って良くなること、など色々なケースがあります。
4 難治性うつ病の治療は進歩している

20年くらいから前から難治性うつ病が注目されるようになり、その治療も少しずつ進んでいます。以前は医療側に問題があったのも事実です。治らないからと言って、同じような薬を重ねて処方する多剤投与がありました。

また、双極性障害Ⅱ型を難治性うつ病と診断してしまい、治療がこじれることもありました。こうした医原性の問題は、現在では解決されつつあります。また、難治性うつ病に有効な薬の使い方も工夫されており、治療は日々進歩しています。
5 とりあえず好きなこと・楽しいことからやってみましょう

病気のことばかりを考えることは良くありません。病気を早く治そうと焦らずに、むしろ病気から意識を離すようにしましょう。そのためには、気軽にできる楽しいこと、好きなことから始めましょう。音楽、ゲーム、ペットを飼う、物作り、スポーツなど、少しでも「生きていて良かったな」と感じられることに出会えたら良いでしょう。

心が疲れている12のサイン



普段何気なく過ごしていても、心にとてもストレスがかかっていることがあります。まだ頑張れると思っていても、実は心は限界であったりしてあらゆるサインを出して気付いてもらおうとしています。




今回はそんな心のSOSサインを見逃さないように、「心の疲れているサイン12個」をご紹介します。



1 何もやりたくなくなる

突然、糸が切れたかのように何もやる気が起きなくなります。やらなきゃいけないと頭ではわかっているのに、全く動けません。まさに心が止まってしまうというような表現で表されるような状態になります。



2 寝過ぎや眠れないなど睡眠に異常をきたす

朝起きれない、お昼まで寝過ぎてしまう、もしくは夜寝れないなど、睡眠に異常が出てきた場合も、心が疲れているサインです。休日にずっと寝てしまって、全く外にでる力がない人は、少し働き方を見直した方が良いですね。

さらに悪化して仕事や学校なのに朝起きれない、夜中になっても眠れない日が続くなどがある場合は、一度精神科を受診しましょう。



3 片付けられない

心が疲れていると片付けられなくなります。ペットボトルの飲みっぱなし、気付いたら、とんでもなく部屋が汚くなっています。
よく部屋は心の状態を表すと言いますが、心が疲れていると散らかっている方が、何故か落ち着くという感覚に陥ることもあります。



4 イライラする
うつの症状でもありますが、自分の心に余裕がないと小さなことでイライラしたり、怒りっぽくなります。その場の感情で怒ってしまうと、とても状況が悪くなることもあります。最近イライラするなと感じたらいつもより、睡眠時間を多く取ると良いです。



5 孤独感を感じる、息苦しい

孤独感を感じ、息苦しさを感じている場合は、すでにうつ病の入り口にいるかもしれません。孤独感が長く続き、息苦しさがでるようであれば一度病院で診てもらいましょう。


6 人に会うのが嫌になる

人に会うのはとてもエネルギーを使います。直前になって友達との約束をドタキャンしてしまったとか、予約を入れていた美容室を当日にキャンセルしてしまうなどです。最近疲れているなと感じたら、変に予定をいれるよりも休日はダラダラする時間を作りましょう。



7 身だしなみに気をつかわなくなる

普段お化粧していたのに、面倒くさくなったり、外にでるのにもお洒落をしなくなったりと、身だしなみに気を遣わなくなったら、心が疲れているサインです。服に汚れがついていても気づかなかったり、服に穴が空いていても気にしないで着てしまいます。それは、細かいことに気を遣う余裕がなくなるからです。



8 ミスが多くなる

心が疲れているとミスが多くなります。小さなミスから大きなミスまで色々なミスをしてしまいます。最近ミスが多いなと思ったら、心が疲れているのかもしれません。一度しっかりと休む時間を取りましょう。



9 食べ過ぎ、食べなさすぎ

心が疲れていると食欲に異常がでてきます。過食をしてしまい、いつもよりこってりとしたものを食べたくなったり、ポテチや甘いものが異常に美味しく感じてしまい、止まらなくなってしまいます。心が疲れているときは、変にダイエットするよりも、自分の好きなものを食べるのが良いです。

また、食欲がなくなって、食べられない状態が続く人は、うつ病が発症している可能性がありますので気を付けましょう。



10 笑顔が少なくなる、ゆううつな気分になる

とにかく笑えなくなります。自分の頬がかたまってしまったかのような感覚に陥り、何もかも楽しくない気持ちを感じます。最近心から笑えてないなと感じたら
心が疲れている証拠です。

ただ、無理に笑顔を作る必要はありません。自然に笑顔になれるよう、自分の好きなことをやってみてストレス発散してみてはどうでしょうか。



11 お酒の量が増える

お酒の量が増えるのも心が疲れているサインです。お酒で一時的に気分が良くなり、疲れがとれたように感じますが、日に日にお酒の量が増えていって、お酒がないと生きていけないようなアルコール中毒になる可能性もあります。たまにはお酒に頼ってもいいですが、飲み過ぎはやめましょう。



12 集中力がなくなる

仕事がいつもよりはかどらなかったり、勉強で覚えなきゃいけないことが記憶できない時があります。これも心が疲れているサインです。

普段の自分の仕事の進め方や記憶力などは自分自身ではあまりわからないかもしれませんが、スランプにおちいったり、結果があまりでないなどした場合は、もしかしたら、心が疲れて、効率が落ちているのかもしれませんね。そんなときは、一度しっかりと休むことも大切です。




心が疲れているサインを12個ご紹介しました。1つでも該当するものがあれば、一度しっかりと休みを取った方が良いかもしれません。心の疲れをほっておくと、うつ病が発症する可能性がありますので、気を付けましょう。

双極性障害における「うつ状態」の特徴



気分が高揚する躁状態と、気分が落ち込むうつ状態が繰り返し起きる病気を双極性障害と言います。躁とうつという気分の2つの極が見られるために双極性と呼んでいます。躁うつ病とは同じ意味です。以前は躁うつ病とうつ病が同じ病気であると考えられていましたが、20年ほど前に別の病気であることが判明しました。そこで、うつ病ときちんと区別をつける目的で、躁うつ病を双極性障害と呼ぶようになったのです。





双極性障害は、躁状態から始まる人もいればうつ状態から始まる人もいます。躁状態とは、簡単に言うと元気過ぎる状態です。気分が高揚し、寝ないで活動し、よくしゃべり、浪費が多くなります。しかし、苦痛を感じないので自ら受診することはありません。
それに対して、うつ状態は気分が落ち込むなど、苦痛を感じるために病院を受診するきっかけになります。ほとんどの双極性障害の人は、受診した時にうつ状態の訴えだけをして、躁状態があったことを医師に話しません。そのために、医師は双極性障害に気づかずにうつ病と診断してしまいます。光トポグラフィー検査というものがありますが、残念ながら100%信頼がおけるものではありません。このような感じで、双極性障害のうつ状態は、半分以上が最初にうつ病と診断されています。





治療をすすめる中で抗うつ薬が効かなかったり、薬のせいで躁状態になることもあり、ようやく双極性障害に気づかれます。実際に、最初にうつ病と診断された人の20%が、後から双極性障害と診断を変更されています。正しい診断がつくまでに数年~10年かかる人もいます。双極性障害とうつ病では治療方法が異なりますので、できるだけ早い時期に区別されるのが好ましいでしょう。



今回は、双極性障害のうつ状態の特徴を説明します。特にうつ病と区別するために参考となる6つのことを上げてみました。


1 循環気質

循環気質とは、躁うつ気質とも言われ、双極性障害になりやすい性格的な傾向です。具体的な特徴としては、明るく社交的で、笑顔の多い話好きな人です。容姿は、丸顔で比較的ふくよかな人が多いとも言われています。しかし、良いことがあると気分が上がり、悪いことがあると下がるといったように、気分が環境に左右される傾向があります。



2 親族に双極性障害の人がいる

双極性障害は、遺伝の影響がつよいことが知られています。双極性障害の人の半分は、親もそうであるというデータがあります。ただし、病気をおこす単一の遺伝子があるわけではありません。遺伝と環境の問題が複雑に絡みながら発病に至ります。双極性障害の人の子供が必ず発病するわけではありませんので、結婚して子供を産まない方が良いということではありません。



3 子供の頃に何らかの神経的な問題があった

双極性障害や統合失調症は、生まれつきの脳神経の問題があることが知られています。そのために、子供の頃に何らかの発達の遅れがあることや、チック症状などの神経症状が見られることもあります。就学前後から中学生にかけて、何らかの神経的な症状で小児科や精神科を受診した経験がある人は、その後にうつ状態が出た場合、双極性障害や統合失調症の可能性も考えるべきでしょう。


4 25才より前にうつ状態を発症している

双極性障害のほとんどは、10~20代で発症しています。うつ病と違って、40代以降に発症する人はあまりいません。ですから、25才より前に発症したうつ病に関しては、双極性障害の可能性も考えた方が良いでしょう。



5 過食・過眠・体重増加がある

うつ状態では食欲と睡眠に症状が出ます。うつ病の場合は、食欲が低下し、眠れなくなる人が多く、体重が減ってしまいます。まさに憔悴(しょうすい)するという言葉が当てはまる状態です。

ところが、双極性障害のうつ状態では、むしろ食欲は亢進して過食になり、「体が鉛のように重い」と倦怠感を訴えてずっと眠っていることが多くなります。そのために、体重が増える傾向にあります。



6 抗うつ薬が効かない、効きすぎる

抗うつ薬を服用しても全く効果がない人、もしくは急激に良くなる人は双極性障害の疑いがあります。全く効果がない場合は双極性障害の診断が早めにつきやすいのですが、良くなっている場合はなかなか区別がつきません。うつ病の場合は抗うつ薬の力で少しずつ改善していくのが普通ですが、急激に元気になり、短期間でうつ状態が嘘だったように活動的になるようでしたら双極性障害の可能性がつよいでしょう。

女性のADHD



集中する能力や感情を抑える能力に偏りがあり、いつも気が散ってジッとしていられないことを注意欠如多動障害、略してADHDと呼んでいます。不注意・多動・衝動の3つの症状があることが特徴ですが、不注意優勢型という不注意だけが目立つ場合もあります。





ADHDは、小学生の頃に気づかれることが普通です。しかし、女性の場合は不注意優勢型が多いために、障害に気づかれないまま大人になってしまうことがあります。親のサポートがなくなり、一人暮らしや、結婚して家庭生活をする中で、当たり前の家事ができないことから何かおかしいと気づかれます。




これを障害と考えられたら良いのですが、「だらしない」と周りから注意をされ、努力してもできないことから、「自分はダメな人間なんだ」と自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。




大人になって気づかれるADHDを「大人のADHD」と呼んでいます。今回は、家庭生活で見られる女性のADHDの特徴を6つ紹介しましょう。




1 毎日の家事が苦手

料理、掃除、洗濯などの家事がうまくできません。これは不器用だとか、料理が下手とかいう意味ではありません。一つ一つのことはできても、優先順位が立てられずに思いつきでやってしまうためです。また、やるべきことをうっかり忘れてしまうこともあります。その結果、決まった時間に料理、掃除、洗濯と計画的にできません。



主婦なのに満足に家事ができないため、自信を失うADHDの女性は多いのです。残念ながら、これは脳の機能の問題なので変えることはできません。家事が得意でないことを一緒に住んでいる人に理解してもらい、それを前提に生活を組み立てたら良いでしょう。



家事は思いつきでやるのでなく、朝のうちに1日のスケジュール表を作っておきます。9時から洗濯、14時から買い物、などのようにメモに書くのも良いですし、スマホのカレンダーやメモ機能を利用するのも良いでしょう。このスケジュール表に従って動くようにします。また、1週間のスケジュールとして、仕事や用事がある平日の家事は最低限のものにして、できるだけ余裕のある週末にまとめてやるようにしましょう。



2 片付けが苦手

片付けができず、いつも部屋が散らかっています。エアコンのスイッチがない、大切な領収書がない、着ていく服がない、と探し物ばかりしています。散らかっている原因は、やりっぱなし、置きっぱなし、脱ぎっぱなしだからです。また、無計画な買い物のために物が多く、いざ片づけようとしても、どこから手をつけたらよいのか分からないのも原因です。



これを解決する一番のコツは、使ったら必ず元の場所に戻す習慣をつけることです。日頃から意識をしているとずいぶん変わってきます。脱いだ服は必ずハンガーにかける、エアコンやテレビのスイッチはスイッチ入れに戻す、飲み食いした皿や容器は台所にもっていく、など、一つ一つを面倒に思わずに実行しましょう。物が多すぎることは、各シーズンに1回、まとめて断捨離をすることで解決します。





3 家計簿をつけられない

家計のやりくりが苦手です。欲しい物から優先して買ってしまい、衝動買いも多いためです。お金があったらあるだけ使ってしまう傾向もあります。買ったことを忘れて、棚や冷蔵庫に同じものがいくつも置きっぱなしになっていることもあります。



時代はキャッシュレス払いに移っていますが、できるだけ現金払いにしましょう。カードですぐにいくらでも買える状況は良くありません。大きなお金は自分一人で管理するのではなく、いっしょに住んでいる家族にも管理してもらうことが必要でしょう。






4 手続きが苦手

役所や学校への書類提出、公共料金や税金の手続きなど、細かい事務作業が苦手です。面倒なので後回しにしているうちに忘れてしまい、提出の期限を過ぎてしまいます。


対策としては、大切なことはその場ですぐやる習慣をつけることです。後回しにしようと思ったら、その思いと闘うようにしましょう。手続き関係は、社会的な信用の問題に関わることなので、何とか改善させたいものです。



また、病院、歯医者などの予約を忘れてすっぽかすこともあります。これも社会的な信用に関わることです。自分の記憶力を信用しないで、スマホのカレンダー機能を利用したり、目につきやすい机や冷蔵庫にメモを貼ってみましょう。





5 自分の楽しみを優先してしまう

マイペースで家族をおいて自分のことを優先してしまいます。子供をつれて自分のショッピングだけをしてしまうなど、自分の楽しみに家族を付き合わせてしまうこともあります。不評を買ってしまいますので、よく家族の意見に耳を傾けるようにしましょう。





6 子育てが苦手

子育てほど思い通りにならないことはありません。ADHDのお母さんは子供の行動をジッと待つことができません。また、子育ては同じことを繰り返し根気強く続ける要素が多いのですが、それも苦手です。こうしたことから子供にイライラして、衝動的に子供を怒鳴ってしまうことがあります。一度怒りのスイッチが入ると止まらなくなり、子供が泣き続けていても、延々と叱り続けてしまうことがあります。



女性なら誰でも当たり前に子育てができるという訳ではありません。家族はよく障害を理解して、積極的に子育てのサポートをするようにしましょう。保育園や学童保育などの福祉を有効に利用しましょう。





ADHDの人は、障害の特徴から家事などの家庭生活に支障が出ます。これは、だらしない性格だからではありません。悲観的にならずに、自分の特徴を理解して、苦手を前提に生活を工夫すると良いでしょう。また、周りの人に障害を理解してもらい、サポートしてもらうことも大切なことです。




音楽が聴けなくなるうつ病って?



うつ病に音楽が聴けなくなる、聴きたくなくなるという症状があることを知っていますか?



・「散歩中や通勤中にイヤホンで音楽を聴くことが好きだったのに煩わしくなった。」

・「リラックスしたくて音楽を聴こうとしたが、いつも好きな曲が雑音にしか聞こえず、よけいイライラして途中でやめてしまった。」
・「部屋にいる時はいつもBGMを流していたが、いまは音がない方が落ち着く。」







音楽だけではありません、エンターテイメント全般にこんな症状があります。



・「映画が見られない。ストーリーに頭がついていかない。日本映画なら少しいいが、字幕スーパーが読めない。」

・「辛うじてニュースは見られるが、ドラマやバラエティーはうるさいだけなのでテレビが見られない。」

・「文字が読めない。長い文章は意味を理解するのが難しい。雑誌の写真や絵を見たり、新聞の見出しを読むくらいならできるが、普通の本が読めない。」


これらはうつ病で集中力が低下したり、物事への興味や関心が薄れてしまうことが原因です。刺激に敏感になるために、大きな音や明るい映像に正常な反応ができなくなることも理由の一つです。




これらは軽症から重症まで広くうつ病に見られる症状です。うつ病だけでなく、統合失調症や躁うつ病など、うつ症状の伴う精神疾患にも見られることがあります。



治療を受けてうつ病が治っていくと、これらの症状は必ず改善されます。しかし、比較的遅い段階で改善するので焦らず回復を待つのが良いでしょう。うつ病を治療しながら、久しぶりにイヤホンをつけて音楽を聴いた、映画を1本楽しめた、となるとうつ病が相当回復したサインになります。




うつ病が回復していくと、少しずつできることが増えていきます。簡単で好きなことから始まり、徐々に難しいことができるようになります。



最初は寝たきりで散らかった部屋の片づけからできるようになる人が多いようです。少しずつ動けるようになっても、初めの頃は好きなことしかできません。はたから見ていると、難しいことから逃げて好きなことしかやらないように思われやすい時期です。



自分でも「甘えているのではないか」と錯覚してしまう時期でもあります。この時期は周囲も自分も「甘えている」「怠けている」と思わず、むしろ「やれなかったことができた」と褒めてあげるべきでしょう。




好きなことだけできる時期を経て、ようやく仕事や勉強などのレベルの高いことができるようになります。好きだった音楽を聴きたくなり、楽しめるようになったら大変良いサインなのです。休んでいるのに好きなことしかできないと負債に感じることなく、好きなことから始めていくことが大切です。



音楽が聴けなくなる、聴きたくなくなる、という状態は、うつ病のサインです。いつもの自分と違うと感じたら、早めに専門機関を訪ねてみましょう。